これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

いい迷惑

2011年09月04日 07時23分38秒 | エッセイ
 一番好きな服は何かと問われれば、パジャマと答えるかもしれない。
 お風呂あがりにパジャマを着て、ぐっすり眠り、朝は出かける直前まで着替えない。パジャマのままでお弁当を作り、朝食をとる。一日8時間は着ているから、人生の3分の1をパジャマで過ごすことになる。
 ゆったりとしたデザインで、肌触りのいいところが魅力だ。下着をつけないから、開放感は抜群である。仕事のない日は、9時10時まで、パジャマでいることもある。
 しかし、家族には、いい迷惑らしい。夫も娘も、起きたら真っ先に着替えるタイプだから、いつまでもパジャマでウロウロしていることはない。

 日曜日の朝、インターフォンが鳴り、宅配便が来た。
「ミキ、出てちょうだい。お母さんはパジャマだから」
「ムキーッ! 何で着替えないのよッ!」という具合だ。しかも、私あての荷物ばかりなので、ますますひんしゅくを買う。
 昨日は、こんなことがあった。
 娘が部活に出かけた直後、箸箱を入れ忘れたことに気づいた。お弁当があっても、箸がなければ困るだろう。いつも、100m先の友人宅に寄るので、急げば間に合うかもしれない。
 私は箸箱をつかみ、夫に渡した。
「お願い、これ持っていって!」
「俺が!?」
「だって私、パジャマだもん。さあ、早く早く」
 夫は、わけがわからないという顔をしたが、逆らわずに、のしのしと歩き始めた。本当は走ってほしかったのだが、デブなりに急いでいる様子である。外は、台風12号の影響で、強い風が吹いている。雨がやんでいたのは幸いだった。
 はたして、間に合っただろうか?
 5分後、夫が戻ってきた。手には箸箱が握られたままだ。
「もういなかった……」
「あー、残念!」
「風が強かった……」
「ありがとね。あとは何とかするからいいよ」
「無理やり、運動させられた……」
 夫はかなり不満そうだが、いちいちかまっていられない。受話器を取り上げ、中学校に電話をかける。運よく、顧問の先生が出てくれた。
「すみません、今日はお箸を入れ忘れたので、あとで持っていきたいのですが、何時頃どこに行けばよろしいでしょうか」
「ああ、お箸ですか。もしよろしければ、私の割り箸がありますから、それを渡しましょうか」
「えっ、いいんですか!」
「いいです、いいです」
「助かりました。よろしくお願いしま~す!」
 ニンマリとして受話器を置くと、夫が横目で見ていた。
「ずるい……」
 
 家族に迷惑をかけるのも、だんだん心苦しくなってきた。
 誰か、起きたらすぐに着替えたくなるような、すてきな部屋着を買ってくれないかしら。



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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (12)
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