なにやら、不快な臭いがする。何か腐ったような、鼻が拒否する悪臭だ。
どこが発生源なのだろう。臭いの元をたどってみたら、左手の小指のつけ根あたりだった。
なぜ、こんなところが、こんな臭いになっているのか、まったくわからない。入浴を終え、あとは寝るだけだというのに気分が悪い。
一体何の臭いなのか。私は記憶を巻き戻し、心当たりを探した。
帰宅したのは3時間前だ。駅に着いたら、雨が降っていた。「夜から雨」との予報通りである。私は折り畳み傘を差して、家まで歩き出した。
さすがに、12月ともなると、手袋なしでは寒くて我慢できない。バッグから、フリースの赤い手袋を取り出し、両手にはめる。10分ほど歩いて、玄関で傘をたたもうとしたら、結構濡れていた。そのまま、玄関先で乾かそうと思い、ドアの外に広げてカギを開けた。
夕食のあとは、明日のお弁当の下ごしらえをした。メニューは、肉団子の甘酢あんかけだ。合いびき肉にたまねぎのみじん切り、片栗粉を加え、油で揚げればよい。
前回は手抜きしたせいで、みじん切りが大きくなってしまい、玉ねぎ団子と呼んだほうがいいような失敗作となった。左手で玉ねぎを押さえ、今回はねちねちと包丁を動かし、しつこいくらいに細かくする。
「みじん切り器が欲しいなぁ」としみじみ感じた。
お風呂のあと、干した傘を取り込みに行く。すっかり乾いたようなので、たたんでバッグにしまおうとしたら、まだ濡れているところがあった。ひんやりした水滴が、わずかに手を湿らせる。「まだだったか」と諦め、そのまま放置した。
記憶をほじくり出しても、それらしいものがない。「まあいいや」と気持ちを切り替え、ハンドソープをたっぷりつけて手を洗った。すっきりしたところで、暖かい布団に入り、ぐっすり眠った。
翌朝、出勤するとき、玄関の傘に手を伸ばす。もう完璧に乾いているはずだ。
だが、よく見ると、まだ水滴が残っている。
これはおかしい。
一応、乾燥してはいるが、水であれば、しずくの跡が残るのは変だ。ここ以外にも、水滴のあとが見つかった。
そこで、ようやく謎がとけた。
傘を干した場所に視線を落とすと、やはり思った通りである。
この小さなシミこそ、手の臭いの元凶なのだ。
傘を干していたとき、どこぞの猫に、おしっこをかけられたのだろう。そうとは気づかぬまま、傘をたたむさい、左手が尿に触れてしまった。それで、ひどい臭いに悩まされたというわけだ。
バラバラのジグソーパズルが組み合わされて、絵柄が見えてきた気分である。原因がわかって気が晴れた反面、けしからぬ猫に腹を立てた。
スポーツの表彰式や祝勝会で、シャンパンをかけあって勝利を喜ぶことを、シャンパンファイトまたはシャンパンシャワーと呼ぶようだ。
当ブログも、おかげさまで、本日500回目の更新を迎えた。足かけ4年半、ちまちま続けてきた身としては、一杯飲みたい気分である。
しかし、私がかけられたのは、シャンパンでなくショ……。
ううう、言わんでおこう……。
↑
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
どこが発生源なのだろう。臭いの元をたどってみたら、左手の小指のつけ根あたりだった。
なぜ、こんなところが、こんな臭いになっているのか、まったくわからない。入浴を終え、あとは寝るだけだというのに気分が悪い。
一体何の臭いなのか。私は記憶を巻き戻し、心当たりを探した。
帰宅したのは3時間前だ。駅に着いたら、雨が降っていた。「夜から雨」との予報通りである。私は折り畳み傘を差して、家まで歩き出した。
さすがに、12月ともなると、手袋なしでは寒くて我慢できない。バッグから、フリースの赤い手袋を取り出し、両手にはめる。10分ほど歩いて、玄関で傘をたたもうとしたら、結構濡れていた。そのまま、玄関先で乾かそうと思い、ドアの外に広げてカギを開けた。
夕食のあとは、明日のお弁当の下ごしらえをした。メニューは、肉団子の甘酢あんかけだ。合いびき肉にたまねぎのみじん切り、片栗粉を加え、油で揚げればよい。
前回は手抜きしたせいで、みじん切りが大きくなってしまい、玉ねぎ団子と呼んだほうがいいような失敗作となった。左手で玉ねぎを押さえ、今回はねちねちと包丁を動かし、しつこいくらいに細かくする。
「みじん切り器が欲しいなぁ」としみじみ感じた。
お風呂のあと、干した傘を取り込みに行く。すっかり乾いたようなので、たたんでバッグにしまおうとしたら、まだ濡れているところがあった。ひんやりした水滴が、わずかに手を湿らせる。「まだだったか」と諦め、そのまま放置した。
記憶をほじくり出しても、それらしいものがない。「まあいいや」と気持ちを切り替え、ハンドソープをたっぷりつけて手を洗った。すっきりしたところで、暖かい布団に入り、ぐっすり眠った。
翌朝、出勤するとき、玄関の傘に手を伸ばす。もう完璧に乾いているはずだ。
だが、よく見ると、まだ水滴が残っている。
これはおかしい。
一応、乾燥してはいるが、水であれば、しずくの跡が残るのは変だ。ここ以外にも、水滴のあとが見つかった。
そこで、ようやく謎がとけた。
傘を干した場所に視線を落とすと、やはり思った通りである。
この小さなシミこそ、手の臭いの元凶なのだ。
傘を干していたとき、どこぞの猫に、おしっこをかけられたのだろう。そうとは気づかぬまま、傘をたたむさい、左手が尿に触れてしまった。それで、ひどい臭いに悩まされたというわけだ。
バラバラのジグソーパズルが組み合わされて、絵柄が見えてきた気分である。原因がわかって気が晴れた反面、けしからぬ猫に腹を立てた。
スポーツの表彰式や祝勝会で、シャンパンをかけあって勝利を喜ぶことを、シャンパンファイトまたはシャンパンシャワーと呼ぶようだ。
当ブログも、おかげさまで、本日500回目の更新を迎えた。足かけ4年半、ちまちま続けてきた身としては、一杯飲みたい気分である。
しかし、私がかけられたのは、シャンパンでなくショ……。
ううう、言わんでおこう……。
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