今年も親族を呼んで、ひな祭りパーティーをした。
全部で11人集まるので、ワイン選びにも力が入る。店員さんに相談して、シャンパンは甘口のルイ・ロデレール カルトブランシュ・ドゥミ・セック。白はヴェネツィア・ジュリアのシャルドネ、ドイツの温めるグリューワインを用意した。赤は、姉がブルネッロ・ディ・モンタルチーノを持ってきてくれた。
こんな蒲鉾もゲットした。
寿司をとり、チキンを焼き、ほうれん草のおひたしを作って、と料理の準備をしたが、どうも時間に間に合わないようだ。
「こんばんは~」
両親と妹一家がやってきた。来客は全員そろったが、私の料理ができていない。これから、カニクリームコロッケに衣をつけて、揚げるところだった。
こんなこともあろうかと、時間稼ぎの策はある。
「食事の前に、これを作ってくれる?」
私は、ガンプラ作りの得意な甥に「ミルクチョコレートの家」を渡し、組み立ててくれるよう頼んだ。
「いいよ!」
4月から中学生になる甥は、快く引き受けてくれた。ついでに、甥の父である義弟、模型作りの好きな義兄も加わり、男3人で協力しながら作業したようだ。
「50度くらいのお湯もらえる?」
コロッケが半分ほど揚がったところで、妹が使い走りにやってきた。チョコの家は、ペン型のチョコを接着剤代わりにして、屋根や壁などを組み立てる。温めないとチョコレートが溶けず、絞り出せないようだ。
台紙のガイドに沿って、まずは壁をくっつける。
男3人は顔を近づけ、「ペンが詰まった」などと言い始めた。
「つまようじ、ちょうだい」
今度は、小4の姪がパシリに使われていた。絞り口に楊枝を差し、出がよくなったら先に進む。
甘いもの大好きな甥は、早く食べたい一心で、写真がブレるほど早く手を動かしていたようだ……。
壁ができ上がると、屋根の取り付けとなる。たっぷりチョコレートを塗りつけ、屋根の板チョコを載せる。
2枚載せたら、煙突で最後となる。甥は、別の場所で組み立てていた。
だが。体温でチョコが溶けてしまったらしい。
冷蔵庫で冷やしておけばよかったのかもしれないが、ひとまず、チョコレートの家が完成した。
「お待たせ~」
私の料理も完成し、宴会が始まる。チョコの家は、冷蔵庫にしまっておいた。
姉が、娘と姪に桃の花を買ってきてくれた。つぼみはまだ小さいが、これからしばらく楽しめそうだ。
「来年は金婚式だからね。みんな、来てちょうだい」
母が嬉しそうに報告する。姉は知っていたようだが、私も妹もビックリだ。
「へえ、すごい! おめでとう」
「ははは」
父も笑顔で応えていた。最近は離婚が多いから、50年も続く夫婦は貴重かもしれない。
食事のあとは、妹が買ってきてくれたケーキにろうそくを立てる。
あらかじめ妹には、チョコレートケーキを避けるように頼んでおいた。抜かりはない。
「この、プリンみたいなケーキ、美味しいわねぇ」
姉は、ろうそくを立てなかったほうのケーキが気に入ったようだ。
いよいよ、チョコレートの家を解体するときがやってきた。せっかく作ったものを壊すのはどうかと思ったけれど、食べたい気持ちのほうが勝つらしい。甥は、まず自分の指紋がついた煙突をもぎ取った。
「金槌か何かある?」
義弟に木槌を渡すと、屋根や壁などを、一口サイズに砕いてくれた。口に運ぶと、いつものチョコレートの味がする。
「うん、美味しい」
しかし、みんなお腹がいっぱいだった。11人いたのに、壁2枚分が残ってしまった。
「持って帰りなよ」
「うん」
大活躍の甥に、ご褒美をあげることにした。ラップに包み、冷蔵庫で保管する。
「ねえ、今年の夏は、みんなで鳥羽水族館に行かない?」
「いいね~!」
「切符は僕にまかせて」
夏休みの計画がスタートする。私も、今年の夏はのんびりできそうだ。ぜひ参加せねば。
そんなこんなで、おしゃべりを続けていたら、あっという間に23時を回っていた。
「もう帰らなくちゃ」
車にエンジンをかけ、姉夫婦や妹一家が、あわただしく家を出る。
「じゃあ、気をつけてね」
「またね~!」
来客を見送ったあとは、こちらも後片づけだ。残ったチーズをしまおうと冷蔵庫を開けたら、チョコの壁があった。
忘れたんだ!
哀れな甥は、一生懸命作ったのに、煙突しか食べられなかった。
「じゃあ、俺が食べてやるか。ふっふっ」
振り返ると、夫が目を輝かせて、チョコの壁を眺めていた……。
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
全部で11人集まるので、ワイン選びにも力が入る。店員さんに相談して、シャンパンは甘口のルイ・ロデレール カルトブランシュ・ドゥミ・セック。白はヴェネツィア・ジュリアのシャルドネ、ドイツの温めるグリューワインを用意した。赤は、姉がブルネッロ・ディ・モンタルチーノを持ってきてくれた。
こんな蒲鉾もゲットした。
寿司をとり、チキンを焼き、ほうれん草のおひたしを作って、と料理の準備をしたが、どうも時間に間に合わないようだ。
「こんばんは~」
両親と妹一家がやってきた。来客は全員そろったが、私の料理ができていない。これから、カニクリームコロッケに衣をつけて、揚げるところだった。
こんなこともあろうかと、時間稼ぎの策はある。
「食事の前に、これを作ってくれる?」
私は、ガンプラ作りの得意な甥に「ミルクチョコレートの家」を渡し、組み立ててくれるよう頼んだ。
「いいよ!」
4月から中学生になる甥は、快く引き受けてくれた。ついでに、甥の父である義弟、模型作りの好きな義兄も加わり、男3人で協力しながら作業したようだ。
「50度くらいのお湯もらえる?」
コロッケが半分ほど揚がったところで、妹が使い走りにやってきた。チョコの家は、ペン型のチョコを接着剤代わりにして、屋根や壁などを組み立てる。温めないとチョコレートが溶けず、絞り出せないようだ。
台紙のガイドに沿って、まずは壁をくっつける。
男3人は顔を近づけ、「ペンが詰まった」などと言い始めた。
「つまようじ、ちょうだい」
今度は、小4の姪がパシリに使われていた。絞り口に楊枝を差し、出がよくなったら先に進む。
甘いもの大好きな甥は、早く食べたい一心で、写真がブレるほど早く手を動かしていたようだ……。
壁ができ上がると、屋根の取り付けとなる。たっぷりチョコレートを塗りつけ、屋根の板チョコを載せる。
2枚載せたら、煙突で最後となる。甥は、別の場所で組み立てていた。
だが。体温でチョコが溶けてしまったらしい。
冷蔵庫で冷やしておけばよかったのかもしれないが、ひとまず、チョコレートの家が完成した。
「お待たせ~」
私の料理も完成し、宴会が始まる。チョコの家は、冷蔵庫にしまっておいた。
姉が、娘と姪に桃の花を買ってきてくれた。つぼみはまだ小さいが、これからしばらく楽しめそうだ。
「来年は金婚式だからね。みんな、来てちょうだい」
母が嬉しそうに報告する。姉は知っていたようだが、私も妹もビックリだ。
「へえ、すごい! おめでとう」
「ははは」
父も笑顔で応えていた。最近は離婚が多いから、50年も続く夫婦は貴重かもしれない。
食事のあとは、妹が買ってきてくれたケーキにろうそくを立てる。
あらかじめ妹には、チョコレートケーキを避けるように頼んでおいた。抜かりはない。
「この、プリンみたいなケーキ、美味しいわねぇ」
姉は、ろうそくを立てなかったほうのケーキが気に入ったようだ。
いよいよ、チョコレートの家を解体するときがやってきた。せっかく作ったものを壊すのはどうかと思ったけれど、食べたい気持ちのほうが勝つらしい。甥は、まず自分の指紋がついた煙突をもぎ取った。
「金槌か何かある?」
義弟に木槌を渡すと、屋根や壁などを、一口サイズに砕いてくれた。口に運ぶと、いつものチョコレートの味がする。
「うん、美味しい」
しかし、みんなお腹がいっぱいだった。11人いたのに、壁2枚分が残ってしまった。
「持って帰りなよ」
「うん」
大活躍の甥に、ご褒美をあげることにした。ラップに包み、冷蔵庫で保管する。
「ねえ、今年の夏は、みんなで鳥羽水族館に行かない?」
「いいね~!」
「切符は僕にまかせて」
夏休みの計画がスタートする。私も、今年の夏はのんびりできそうだ。ぜひ参加せねば。
そんなこんなで、おしゃべりを続けていたら、あっという間に23時を回っていた。
「もう帰らなくちゃ」
車にエンジンをかけ、姉夫婦や妹一家が、あわただしく家を出る。
「じゃあ、気をつけてね」
「またね~!」
来客を見送ったあとは、こちらも後片づけだ。残ったチーズをしまおうと冷蔵庫を開けたら、チョコの壁があった。
忘れたんだ!
哀れな甥は、一生懸命作ったのに、煙突しか食べられなかった。
「じゃあ、俺が食べてやるか。ふっふっ」
振り返ると、夫が目を輝かせて、チョコの壁を眺めていた……。
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