これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

2013 ひな祭りパーティー

2013年03月03日 17時05分04秒 | エッセイ
 今年も親族を呼んで、ひな祭りパーティーをした。
 全部で11人集まるので、ワイン選びにも力が入る。店員さんに相談して、シャンパンは甘口のルイ・ロデレール カルトブランシュ・ドゥミ・セック。白はヴェネツィア・ジュリアのシャルドネ、ドイツの温めるグリューワインを用意した。赤は、姉がブルネッロ・ディ・モンタルチーノを持ってきてくれた。



 こんな蒲鉾もゲットした。



 寿司をとり、チキンを焼き、ほうれん草のおひたしを作って、と料理の準備をしたが、どうも時間に間に合わないようだ。
「こんばんは~」
 両親と妹一家がやってきた。来客は全員そろったが、私の料理ができていない。これから、カニクリームコロッケに衣をつけて、揚げるところだった。
 こんなこともあろうかと、時間稼ぎの策はある。
「食事の前に、これを作ってくれる?」
 私は、ガンプラ作りの得意な甥に「ミルクチョコレートの家」を渡し、組み立ててくれるよう頼んだ。



「いいよ!」
 4月から中学生になる甥は、快く引き受けてくれた。ついでに、甥の父である義弟、模型作りの好きな義兄も加わり、男3人で協力しながら作業したようだ。



「50度くらいのお湯もらえる?」
 コロッケが半分ほど揚がったところで、妹が使い走りにやってきた。チョコの家は、ペン型のチョコを接着剤代わりにして、屋根や壁などを組み立てる。温めないとチョコレートが溶けず、絞り出せないようだ。
 台紙のガイドに沿って、まずは壁をくっつける。



 男3人は顔を近づけ、「ペンが詰まった」などと言い始めた。
「つまようじ、ちょうだい」
 今度は、小4の姪がパシリに使われていた。絞り口に楊枝を差し、出がよくなったら先に進む。



 甘いもの大好きな甥は、早く食べたい一心で、写真がブレるほど早く手を動かしていたようだ……。
 壁ができ上がると、屋根の取り付けとなる。たっぷりチョコレートを塗りつけ、屋根の板チョコを載せる。





 2枚載せたら、煙突で最後となる。甥は、別の場所で組み立てていた。



 だが。体温でチョコが溶けてしまったらしい。



 冷蔵庫で冷やしておけばよかったのかもしれないが、ひとまず、チョコレートの家が完成した。





「お待たせ~」
 私の料理も完成し、宴会が始まる。チョコの家は、冷蔵庫にしまっておいた。



 姉が、娘と姪に桃の花を買ってきてくれた。つぼみはまだ小さいが、これからしばらく楽しめそうだ。



「来年は金婚式だからね。みんな、来てちょうだい」
 母が嬉しそうに報告する。姉は知っていたようだが、私も妹もビックリだ。
「へえ、すごい! おめでとう」
「ははは」
 父も笑顔で応えていた。最近は離婚が多いから、50年も続く夫婦は貴重かもしれない。
 食事のあとは、妹が買ってきてくれたケーキにろうそくを立てる。



 あらかじめ妹には、チョコレートケーキを避けるように頼んでおいた。抜かりはない。
「この、プリンみたいなケーキ、美味しいわねぇ」
 姉は、ろうそくを立てなかったほうのケーキが気に入ったようだ。
 いよいよ、チョコレートの家を解体するときがやってきた。せっかく作ったものを壊すのはどうかと思ったけれど、食べたい気持ちのほうが勝つらしい。甥は、まず自分の指紋がついた煙突をもぎ取った。
「金槌か何かある?」
 義弟に木槌を渡すと、屋根や壁などを、一口サイズに砕いてくれた。口に運ぶと、いつものチョコレートの味がする。
「うん、美味しい」
 しかし、みんなお腹がいっぱいだった。11人いたのに、壁2枚分が残ってしまった。
「持って帰りなよ」
「うん」
 大活躍の甥に、ご褒美をあげることにした。ラップに包み、冷蔵庫で保管する。
「ねえ、今年の夏は、みんなで鳥羽水族館に行かない?」
「いいね~!」
「切符は僕にまかせて」
 夏休みの計画がスタートする。私も、今年の夏はのんびりできそうだ。ぜひ参加せねば。
 そんなこんなで、おしゃべりを続けていたら、あっという間に23時を回っていた。
「もう帰らなくちゃ」
 車にエンジンをかけ、姉夫婦や妹一家が、あわただしく家を出る。
「じゃあ、気をつけてね」
「またね~!」
 来客を見送ったあとは、こちらも後片づけだ。残ったチーズをしまおうと冷蔵庫を開けたら、チョコの壁があった。
 
 忘れたんだ!

 哀れな甥は、一生懸命作ったのに、煙突しか食べられなかった。
「じゃあ、俺が食べてやるか。ふっふっ」
 振り返ると、夫が目を輝かせて、チョコの壁を眺めていた……。


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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コメント (12)
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