これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

高齢化お誕生会

2014年09月21日 20時15分47秒 | エッセイ
 妹の娘と息子は、どちらも9月生まれである。
「今年は20日に誕生日会をやるから来てね」
 メールをもらい、昨日がその日だった。
 甥は中2、姪は小6になり、背も伸びて顔つきも大人びてきた。人の子どもの成長は早いという通り、急に大きくなった感じだ。
 対する大人は、年々高齢化が進んでいる。76歳の父は乾杯の前に、グラスに口をつけようとしていた。



「コラ、まだでしょ」
「あっ、まだだったか」
 姉に注意され、父は照れ笑いをしていた。乾杯というセレモニーを忘れ、目の前の飲み物を反射的に飲もうとしていたらしい。年々、状況判断ができなくなっている。
 夫も負けていない。出かける前に、おかしなことを聞いてきた。
「えーと、今日は誰の誕生日会だっけ」
 親族には子どもが少ないので、甥・姪以外に誕生日を祝う対象はいないのだが、こちらも記憶になかったようだ。
 まあ、私だって人のことは言えない。
 宴会が始まる前に、コンビニから帰った甥を見て、買い忘れた食パンを思い出した。
「私もコンビニ行ってこようかな」
「バス停の近くにあるよ」
 店まで2分ほど歩き、入口のドアを開けた。しかし、次の瞬間、頭の中が雪見大福の色になった。

 あれっ、私、何を買いに来たんだっけ?

 食パンにたどり着くまで、10秒くらい考えたと思う。記憶がよみがえったときは、「そうだ、そうだ」と安どした。しかし、記憶力の衰えは相当なショックである。
「かんぱーい」
 宴会が始まり、飲んで食べておしゃべりしたが、お料理はなかなか減らない。歳をとり、大人は食べる量が少なくなったのだ。全員が肉食のため、肉だけはほとんどなくなったが、カニや唐揚げ、サラダなどはいつまでも売れなかった。
「じゃあ、ケーキにしよう」
「ケーキ、ケーキ」



 2種類のデコレーションケーキを切り分けていると、また父が、目の前に置かれたケーキにフォークを伸ばしている。
「コラ、まだでしょ」
 ふたたび、姉に叱られていた。
「もう、お父さんの分は、最後にあげるようにしないとダメだよ」
 そうすれば、怒らなくてすむのだ。
 このあと、クリスマス、新年会と続くわけだが、そろそろメニューや分量を見直す時期なのかもしれない。
 こちらが歳をとる一方で、子どもは徐々に一人前に近づいていく。
 楽しくお祝いするためには、年相応の内容に変えていかねば。
 おっと、記憶力がアップする食べ物は何かしら……。


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コメント (12)
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