これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

休校の裏側

2015年07月16日 21時23分46秒 | エッセイ
 台風は遥か彼方だが、朝から威勢よく雨が降っていた。ジャンジャンドバドバ、ズーズーザーザーと、お祭りのような賑やかさだ。

 これはもしや……。

 案の定、大雨洪水警報が発令されていた。私の勤務する高校では、午前6時の段階でエリア内に何らかの警報が出ていると、まず午前中の授業がなくなる。10時になっても解除されなければ、その日は休校である。昨日は23時半過ぎまで教材を作り、睡眠不足だというのに、何たる仕打ちであろう。
 教員は、雨が降ろうが槍が降ろうが出勤だ。交通機関に影響が出る前に、いそいそと家を出た。
「笹木せんせーい、今日は学校ありますかぁ!?」
 校門の手前で、女の子たちが話しかけてきた。彼女たちは警報を確認せず、登校してしまったようだ。
「警報が出ているから、今のところなし。でも、校内で待機していてね」
「はあーい」
 こういう日に、間違えて登校するのは、たいていが気のいい子どもである。「授業がないなら来なきゃよかった」などとふて腐れることもなく、おしゃべりしたりスマホをいじったりして10時になるのを待っていた。
 食べ盛りのせいか、男子は早々にお弁当を開いている。
「あれ、朝ご飯、食べてこなかったの?」
「食べてきた。でも、もうお腹がすいちゃって」
 女子はお菓子を広げ、笑いながら手を伸ばす。まるで、校内ピクニックだ。大人になってから、「そういえば、こんなこともあったな」と思い出すのではないだろうか。
 そして迎えた10時。警報は解除されていなかった。
「みなさん、今日は休校になりました。今ならちょうど雨がやんでいるから、気をつけて帰りましょう」
「はあーい」
 突然の休校で、困ったこともある。学校に出入りしているパン屋さんだ。良心的な価格で、美味しい手作りパンを売りに来てくれるのに、今日ばかりは客が足りない。売れ残っては気の毒だからと、ひと言つけ加える。
「そうそう、パン屋さんが来ているよ。今日は生徒が少ないから、選び放題。好きなの買えるからね」
「えっ、マジ? 行こう行こう。先生、さようなら」
 早弁した男子たちが、今度はパンを求めて走る。一体、どれだけ食べるのだろうか。負けじと女子も購買に向かい、パンの争奪戦が始まった。その日に限っては、値引きまでしてくれたそうで、お得感がいっそう高まったようだ。
 職員室では、教員にも協力を求められる。
「先生方も、よろしければパンを買っていただけますか。よろしくお願いします」
 パン販売担当の先生に頭を下げられては、買わないわけにいかない。お弁当はあるから、パンは明日の朝食にすればよい。
「コロッケパンとメロンパンください」



 これで220円なら安い。
 お弁当のあとに、甘いものが欲しくなり、メロンパンを平らげた。クッキー部分はしっとり、中はふわふわで、焼き立ての味が楽しめた。
「パンが完売しました! 先生方、どうもありがとうございました」
「よかったね~!」
 誰もが「今日はいいことをした」という気分に浸り、ホッとする。
 休校の裏側では、こんなことが起きていたりする。


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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コメント (12)
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