風呂上がりに髪を乾かしていたら、パナソニック製のドライヤーが急に動かなくなった。コンセントは入っているのに、うんともすんとも言わない。すぐに諦めてスイッチを切った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3c/26/ca0a945183824f40adcbdd291947e7e6.jpg)
これは、変圧器内臓タイプで、海外でも使用できるものだったのだが……。2年ほどしか使っていないのに、もう壊れたかと悔しくなった。
まだ実家にいた頃は、古い家電で怖い思いをしたことがある。
大学から帰ってきたら、掃除機の一部分が黒くなっていた。ちょうど、コンセントのつけ根あたりだ。どこのメーカーか忘れたが、この掃除機も、ときどき止まることがあり、母はイライラしながら使い続けていた。しかし、この日はついに、止まるどころか火を噴いたそうだ。
くるくるドライヤーでも似たようなことがある。実家には、母、姉、私、妹と4人も女がいた。当然、ドライヤーの稼働率は高い。ホコリやフケ、抜けた髪などが内部にたまっていたのかもしれない。ある日、やたらと持ち手が熱くなり、部屋中に何かが焦げるような臭いが充満した。
「ドライヤーじゃない?」
「危ないよ、それ。すぐ切って」
掃除機で家電製品の危険を学習した私たちは、すぐに電源を切りコンセントを抜いた。プラグまで熱くなっていた。
30年ほど前の記憶がよみがえり、新しいドライヤーを買わねばと、私は電器屋に急いだ。
池袋の駅前には、家電量販店が2つある。このところ、暑くてたまらないので、駅構内に直結しているほうの店を選んだ。
店員に聞くと、ドライヤーは地下1階で扱っているらしい。なるべく早く帰って、夕飯の支度をしたかったから、売り場の係員に声を掛けた。
「すみません、一番パワーの強いドライヤーはどれですか」
「強いドライヤー欲しいですか? これ、売れてます」
まだ20代前半に見える女性係員だが、日本人ではないようだ。話し方からすると、中国人だろう。
「1200ワットです。1個しか残ってません」
彼女は、最後の1箱を指してこちらを見た。結構な値段がついている。定価で20000円弱、値下げしても15676円。ドライヤーは10000円未満で買えるものだと思っていたから、予算オーバーだ。日本語に詰まりながらも、彼女は熱心に説明を続けた。
「ナノイーついてます。髪傷まないから人気です」
ナノイー? なんじゃそれ。詳しく聞きたかったが、言葉のハンディを考えると、ちょっと無理かもしれない。何で日本人スタッフではないのか疑問に感じたが、中国人の爆買い対応では日本人スタッフよりも頼りになるのかもしれない。結局、「時間ないし、まあいいか」と妥協することにした。
「じゃあ、これにします」
目を大きく見開いてにっこり笑い、彼女は商品を手渡した。なかなか可愛らしい。
「こっちのレジ混んでます。空いてるほうにご案内します」
行列の短いレジに連れて行ってもらい、彼女とお別れした。なんだかんだで、中国人にも日本人にも、商売上手な係員だったに違いない。
「あのう、ポイント使えますか」
レジで申し出ると、いくらたまっているかを確認してくれた。
「今、18000円分あります。全額ポイントでお支払いされますか」
「はい」
そんなにポイントがあるとは知らなかった。かくして、私は1円も払わず、新しい、これまたパナソニック製のドライヤーをゲットしたのである。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2c/76/26572fde4d57e72e4502008aa41994d2.jpg)
スイッチを入れると、ピンクの女性的なボディから思いがけない突風が吹き荒れ、髪の毛がもぎ取られそうになる。濡れた髪がすぐに乾き、「強いドライヤー」の威力を思い知る。さて、壊れたドライヤーを不燃ごみに出さねば。一応、もう一度コンセントに差し込んでみると……。
「ブオー」
あれれ。
動かなかったはずのドライヤーが、身の危険を察知したのか、急に作動し始めた。
今さら遅いっちゅうに。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7f/18/b2b19eb2db2595e3407c99e2498c999f.png)
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これは、変圧器内臓タイプで、海外でも使用できるものだったのだが……。2年ほどしか使っていないのに、もう壊れたかと悔しくなった。
まだ実家にいた頃は、古い家電で怖い思いをしたことがある。
大学から帰ってきたら、掃除機の一部分が黒くなっていた。ちょうど、コンセントのつけ根あたりだ。どこのメーカーか忘れたが、この掃除機も、ときどき止まることがあり、母はイライラしながら使い続けていた。しかし、この日はついに、止まるどころか火を噴いたそうだ。
くるくるドライヤーでも似たようなことがある。実家には、母、姉、私、妹と4人も女がいた。当然、ドライヤーの稼働率は高い。ホコリやフケ、抜けた髪などが内部にたまっていたのかもしれない。ある日、やたらと持ち手が熱くなり、部屋中に何かが焦げるような臭いが充満した。
「ドライヤーじゃない?」
「危ないよ、それ。すぐ切って」
掃除機で家電製品の危険を学習した私たちは、すぐに電源を切りコンセントを抜いた。プラグまで熱くなっていた。
30年ほど前の記憶がよみがえり、新しいドライヤーを買わねばと、私は電器屋に急いだ。
池袋の駅前には、家電量販店が2つある。このところ、暑くてたまらないので、駅構内に直結しているほうの店を選んだ。
店員に聞くと、ドライヤーは地下1階で扱っているらしい。なるべく早く帰って、夕飯の支度をしたかったから、売り場の係員に声を掛けた。
「すみません、一番パワーの強いドライヤーはどれですか」
「強いドライヤー欲しいですか? これ、売れてます」
まだ20代前半に見える女性係員だが、日本人ではないようだ。話し方からすると、中国人だろう。
「1200ワットです。1個しか残ってません」
彼女は、最後の1箱を指してこちらを見た。結構な値段がついている。定価で20000円弱、値下げしても15676円。ドライヤーは10000円未満で買えるものだと思っていたから、予算オーバーだ。日本語に詰まりながらも、彼女は熱心に説明を続けた。
「ナノイーついてます。髪傷まないから人気です」
ナノイー? なんじゃそれ。詳しく聞きたかったが、言葉のハンディを考えると、ちょっと無理かもしれない。何で日本人スタッフではないのか疑問に感じたが、中国人の爆買い対応では日本人スタッフよりも頼りになるのかもしれない。結局、「時間ないし、まあいいか」と妥協することにした。
「じゃあ、これにします」
目を大きく見開いてにっこり笑い、彼女は商品を手渡した。なかなか可愛らしい。
「こっちのレジ混んでます。空いてるほうにご案内します」
行列の短いレジに連れて行ってもらい、彼女とお別れした。なんだかんだで、中国人にも日本人にも、商売上手な係員だったに違いない。
「あのう、ポイント使えますか」
レジで申し出ると、いくらたまっているかを確認してくれた。
「今、18000円分あります。全額ポイントでお支払いされますか」
「はい」
そんなにポイントがあるとは知らなかった。かくして、私は1円も払わず、新しい、これまたパナソニック製のドライヤーをゲットしたのである。
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スイッチを入れると、ピンクの女性的なボディから思いがけない突風が吹き荒れ、髪の毛がもぎ取られそうになる。濡れた髪がすぐに乾き、「強いドライヤー」の威力を思い知る。さて、壊れたドライヤーを不燃ごみに出さねば。一応、もう一度コンセントに差し込んでみると……。
「ブオー」
あれれ。
動かなかったはずのドライヤーが、身の危険を察知したのか、急に作動し始めた。
今さら遅いっちゅうに。
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