これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

恐怖の3文字

2016年04月21日 21時18分33秒 | エッセイ
 昨年10月に健康診断を受け、相変わらず血糖値が高いとはわかっていた。正常値は越えていないが上限ギリギリ。しかし、年明けに職場の福利厚生課から届いた「健康診断ワンポイントアドバイス」を読み、考えの甘さを思い知らされた。
「あなたは、糖尿病になる一歩手前です」
 糖・尿・病……。
 拳で心臓を叩かれたような衝撃である。
 学生のとき、仲間の一人が糖尿病にかかった。しかも、若年性ではなく老人性の。夏の強い日差しの下で、冷えたコーラやファンタを美味しそうに飲んでいる友人を横目に、彼は下を向いて一人ウーロン茶をすすっていた。何だか気の毒で声もかけられず、彼の小さく丸まった背中を見つめるだけだった。
 私は、そうなりたくない。まずは、仕事帰りのケーキやドーナツをやめよう。一時はやめていたのに、ストレスが増えたら復活してしまった。職場での甘いものもダメ。何か食べたくなったら、ナッツや小魚で我慢我慢。



 さすがに、夕方になればお腹もすくけれど、糖尿病の3文字を思い浮かべてやり過ごす。血液中の糖度が高まれば、血管を傷つけたり失明したりと、命に関わる問題が起きる。たかがおやつのために、危険な目にあうのは真っ平御免だ。
 先日、たまたま夫が見ていたテレビ番組で、血糖値を下げる食事のコツを特集していた。普段、テレビに興味はないのに、このときばかりは息を殺して画面を食い入るように見る。
「朝の血糖値を上げないことが大事です。ご飯はとろろ芋などのネバネバした食品と一緒に食べると血糖値が上がりません」
 へ? とろろ? 考えたこともなかった。
「つまり、消化のいいものを食べるから血糖値が上がるわけで、消化が悪くなるようにネバネバでコーディングするんですね。みそ汁の具も、なるべく大きく切ってください」
 ほおお。納豆やオクラでも同様らしい。
「食前のフルーツも効果があります。適度に糖分をとることで、インスリンの準備運動ができて糖の仕分けがスムーズになります」
 ダメで元々。試してみる価値はある。早速山芋を購入し、すりおろして製氷皿に冷凍保存する。



 これを2つずつ取り出し、自然解凍してご飯にかけるのだ。



 食前のフルーツとしてはリンゴを勧めていた。血糖値の上昇を抑える働きがあるのだとか。
 ……本当?
 白黒つけるのは、しばらく続けてみてからにしよう。効果があることを期待して。
 しかし、時間が経つと危機感が薄れ、疲れた脳が「甘いものをよこせ」と命令してくる。忙しいときは「時間がないから無理よ」と断れるが、暇なときが危ない。まめに体を動かして、脳につけこまれないようにしなくては。
 最近は、「スイーツにとろろをかけて食べたらどうよ」と誘惑してくる。
 んん?
 それって、もはやスイーツじゃないのでは……。


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コメント (12)
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