これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

アマリリスと桜と青い空

2016年04月10日 21時40分16秒 | エッセイ
 年明けに妹から純白のアマリリスをもらった。



 初々しく、若いエネルギーを見せつけるように、弾けるような花をいくつも咲かせた。



「うわあ、キレイねぇ。白も素敵」
「豪華だね。見とれちゃうよ」
 私も夫も、思わず彼女を褒めまくる。
 隣には、数年前からいるアマリリスが、波平のような葉を垂らしたまま、無言で横を向いていた。ちょっと拗ねているらしい。



 まるで、男性陣からチヤホヤされるキャピキャピの新入社員を見て、面白くない顔をしている年配女性のようだ。
「うん、わかるわかる。私だってそうだもん」
 決して、若い女性が悪いわけではないけれど、対応に差をつけられれば腹が立つ。
「じゃあ、若い男性とむさ苦しいオヤジがいたら、笹木さんは平等に接するんですか?」と聞かれたとしよう。お恥ずかしながら、私の答えは「……いいえ」である。
 自分のことはさておき、人に厳しくなりがちなのはよくない。
 遅ればせながら3月中旬に、年配アマリリスもつぼみをつけ、桜の開花と同時に花を咲かせている。この艶やかさを、写真に残しておきたくなった。
 鉢を持ってベランダに移動する。
 植物は日光のあるほうに向かって伸びるので、熟女ちゃんは斜めになっている。



 今日は日光を浴びて、機嫌がよさそうだ。
 透けた花びらが色っぽく映る。白い肌が、ほんのり桃色に染まった女優に見えないこともない。



 今まで4つの花をつけていたが、今回は3つ。栄養不足だったのかもしれない。動物虐待ならぬ植物虐待だったら申し訳ない。ちゃんと肥料をやらねばと反省した。



「あっ、まだ桜が残ってる。桜を背景に撮ろうよ」
 アマリリスは、ちょっとはにかんでいる。鉢をベランダの手すりに載せて、桜の前に配置すると、斜に構えてポーズを取った。



「あら、いい出来。もっと撮ろう」
 その日は風が強かった。東からのぬるい風に身をのけぞらせ、アマリリスが笑っているように見えた。



「おっと、落ちないように気をつけなきゃね」
 風がやむと、彼女はカメラの正面を向く。キリリと姿勢を正し、強いまなざしでこちらを見る。



「はーい、おしまい。よく撮れたよ」
 風から守るように鉢を持ち上げ、室内に戻す。
 早く肥料を買わなくちゃ。来年はさらに妖しく美しく咲きますように。
 ちゃんと新入りアマリリスにもあげますから、ご安心を~!


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コメント (4)
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