これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

桃色クローゼット

2016年07月07日 22時46分52秒 | エッセイ
 私のクローゼットにはピンクの衣類がいくつも吊るされている。
 入学式にも着られるスーツ、淡い色合いのワンピースにコート、半袖のツーピース、アンサンブルなどなど、茶や紺よりも多いくらいだ。



 一番のお気に入りはこれ。



 ゴチャゴチャして賑やかな感じが好きだ。
 最初から揃えていたわけではなく、15年ほど前に母からパンプスをもらったことがきっかけとなった。
「これ、よかったら履いてみて」
 当時、母は靴や帽子などを扱う店で働いており、お買い得と思ったものを買ってくることがあった。手渡された新品のパンプスは、パステルピンクのフェイクスエード。こんな色に合わせる服なんてある?
 使い道がないわと決めつけ、靴箱に押し込んだままだった。
 母は味音痴なだけでなく、色音痴でもある。目に突き刺さりそうなくらい濃い紫の服を買ってきたり、ヤクザが選びそうな柄物のネクタイをプレゼントしたりする。ブラウスとスカートの組み合わせは奇妙だし、どこに行くにも一緒に歩くには勇気がいる。
 そのときは、また変なものを買って、くらいに思っていた。
 何年か後に通販のカタログで、ピンクのクロコダイル柄のバッグに一目ぼれした。お弁当が入る割には大きすぎず、留め具に金色のリングがついていてカッコいい。コーディネートを考えようと靴箱を探し、放置したままのパンプスを発見した。
「あれ? これ、使えるんじゃ……」
 思った通りバッグとの相性は抜群だ。ようやく日の目を見たパンプスが、やけに張り切っているように見えた。手元も足元も明るくなり、こりゃいいわと私の気分も上を向く。
「そうだ、ピンクの服も買ってみよう」
 派手すぎるかしらと心配しつつ、試着室で袖を通すと、実際よりも肌がキレイに見え、何歳か若返ったような気がした。こうして、私のクローゼットには、ピンクの衣類がぞくぞくと集まるようになった。
 一方、黄色は着こなせない。やけにくすんだ肌に見え、鏡の中には十歳上の自分がいる。黄色は私の敵に違いない、いや絶対にそうだ。
 何色が似合うかは、試してみるまでわからない。
 今年は青にチャレンジしてみよう。


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コメント (8)
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