これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

好きです、白バイ

2016年07月14日 22時25分43秒 | エッセイ
 去年、私のクラスから警察官採用試験に合格した男子がいる。
 今は警察学校に入っていて、2月に卒業する予定らしい。
「今年も、警察官になりたいっていう生徒さんはいませんかね」
 先月、警視庁からのリクルーターが来校し、仕事の内容や採用試験について熱心に説明してくれた。東京オリンピックを控えて、採用枠を広げているのなら、今がチャンスかもしれない。
「いないこともないのですが、他の職種と迷っているようです」
「そうですか。じゃあ、お近くですから、一度、施設見学にいらしたらどうですか?」
「いいですね」
「できれば先生もご一緒に」
 見学や体験という言葉には弱い。公務員希望の男子に声をかけると、彼らも大いに乗り気だった。
 早速、弾んだ声でリクルーターに電話をかけ、見学の日どりを決める。もちろん、私も引率でついていくことにした。
「お邪魔しまーす」
 男子生徒3人と一緒に庁舎に入り、まずは職務内容のDVDを見る。地域警察官、交通警官、刑事警察、生活安全警察、警備警察などから始まって、一般職としては事務職員、鑑識、電気、自動車運転免許試験管などなど、予想以上に多様な職種があるとわかった。
 警察学校は府中にあり、毎年1500人が入校するという。法学・倫理を学び、取り調べや職務質問のやり方を身につけるのはもっともなことだ。だが、華道、茶道、道徳、伝統文化もカリキュラムに含まれていることは知らなかった。柔道、剣道、合気道などの武道に射撃訓練、応急措置、心肺蘇生法に取り組む様子は、まさに警察官の卵。苦労して迎える卒業式では、涙涙のオンパレードらしい。
「どうですか、仕事についてご理解いただけましたか?」
「はい」
 生徒たちは目をくりくりと動かして答える。自分も、警察官になった気分に浸れたのかもしれない。
「じゃあ、白バイを見に行きましょう」
 リクルーターは現役の白バイ隊員である。青と水色の中間くらいの色で塗られた制服がりりしい。
 一番多いのはホンダ製だというが、ヤマハ製やモトクロス仕様の白バイも見せてくれた。
「それぞれに、スピーカーとサイレンがついていますから、転倒したら修理代が大変なんですよ。みんな慎重に運転しています」
「へー」
 私は白バイをじっくり観察していたが、男の子たちは喜びの余り、落ち着きを失っていた。リクルーターは彼らの心理を十分に理解しているようで、言葉もなく動くと、280kgものバイクを彼らの前まで持ってきた。
「どうです? 乗ってみませんか」
「わあ、いいんですか!」
 ここで断る男の子がいるのだろうか。乗車したところで写真も撮ってくれる。普段は無口な男の子たちだが、この日ばかりははしゃいでいた。
「先生もよかったら」
「はいっ」
 私まで……。調子に乗り過ぎたかもしれない。



 このあと、パトカーにも乗せてもらって、館内を見学したあと出口に向かった。
「ありがとうございました!!」
 到着時と、挨拶のボリュームが違う。普通はできないことをさせてもらって、彼らも満足したようだ。
 警察官になれるかどうかはともかく、警察の仕事を理解することは一市民として必要だと思う。
 さて、本校には、自衛隊のリクルーターもときどきやってくる。
「どうですか、自衛官になりたいという生徒さんはいますか」
「公務員志望は多いので、いるかもしれません。体験や見学はないですか」
「潜水艦に乗る体験はありますが、有料なんですよね」
「えー、警視庁は白バイやパトカーに乗る体験をさせてくれたのに」
「じゃあ、調べておきます……」
 ちょっと図々しい?


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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コメント (8)
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