これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

国立新美術館「ミュシャ展」

2017年04月16日 21時05分08秒 | エッセイ
 30年来の友人から「ミュシャ展」のチケットをもらった。



 国立新美術館で開催されていることは知っていたが、2013年に森アーツセンターギャラリーでの展示を見ていたから、今回はスルーするつもりでいた。(「ミュシャ展 あと2週間」はこちらから)
 しかし、今回の展示は、リトグラフ中心の前回とは、まったく違うようだ。
「晩年の精魂込めた油彩画の大作が初公開されています」
 友人のメールを見て、「ほおお」と俄然興味を持った。
 ミュシャという名前はフランス語読みだ。華麗なアールヌーボー代表にふさわしく、チャラい……もとい、軽快な印象を受ける。


  (リーフレットより)
 だが、50歳で故郷のモラヴィアに帰ってからは、まったく画風の異なるメッセージ性の強い絵を描いている。6m×8mといったサイズも多く、相当な大きさだ。ここでは、チェコ語読みのムハという名前で表記されており、骨太な響きがピッタリであると思った。
 たとえば、リーフレットやチケットの顔となっているこの絵。



 スラヴ叙事詩「原故郷のスラヴ民族」というタイトルがついている。隅から隅まで丁寧に描き込まれているので、絵の前に5分はいた。巨大なカンヴァスを選んだ理由を、「等身大の大人や子どもを描きたかったからでしょう」と評する知識人もいたが、私は「絵に閉じ込めた想いに、奥行きと広がりが必要だったから」ではないかといいう気がした。遠近感を生かしたアングルに、人々や動物の表情、動作などをこまかく描き分け、風景や建物には陰影をつけたりスポットライトを当てたりして、全力で絵を完成させている。どの作品も素晴らしい。
 一番長く見ていた絵は、スラヴ叙事詩「スラヴ式典礼の導入」である。


        
 輪を持っている青年は、とてもきれいな腰ひもをつけている。巫女の男版なのかもしれない。中央の明るさとは対照的に、逆光となり、影ができているところも好きだ。
 タイトルにも解説にも、カタカナが多くて泣かされた。たとえば、「ニコラ・シュビッチ・ズリンスキーによるシゲットの対トルコ防衛」などと言うタイトルを見ても頭に入らない。たどたどしく読むので精一杯となり、意味を理解するなんてとてもとても。解説も同様で、疲れた頭には難し過ぎた。途中からは絵だけを見て、心で感じることにした。
 撮影可能エリアには、5つの作品が並んでいる。人の切れ目を狙って、「エイヤッ」とシャッターを切ってみた。
「イヴァンチツェの兄弟団学校」



 前列左から4人目が、若き日のムハだそうだ。インテリジェンスでイケメンではないか。
「スラヴ菩提樹の下で行われるオムラジナ会の誓い」



 これは「未完成」となっているが、どこを描き足すつもりだったのだろう。
「独立のための闘い」というコーナーには、チェコの郵便切手と紙幣がある。「金だ金だ」と顔を近づけると、ムハが無報酬でデザインしたと書かれており、国家の役に立ちたいという想いが伝わってきた。
 ほとばしる郷土愛を感じたまま、レストランでミュシャ展特別ディナーをいただいた。



 料理はもちろん美味しかったし、ワインも3杯いただいた。
 アルコールよりも、残りの人生を故郷に捧げたムハの情熱と、素晴らしいチケットをもらった自分の幸運に酔った。
 友人よ、ありがとう。


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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コメント (6)
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