これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

もらって嬉しい引き出物

2017年04月27日 21時13分28秒 | エッセイ
 もらって嬉しい結婚式の引き出物は?
「食器かしら。カレー皿とスプーンのセットは重宝するわ」
 じゃあ、もらって困る引き出物は?
「花瓶ね。大きすぎて使いにくいから、箱にしまったまま放置しているの」
 これが20年前の私の答えである。
 今は、カタログから好みの品を選ぶことのできる引き出物が主流のようだが、昔はそうではなかった。あちこちから似たような品をいただき、捨てることもできずに収納庫で眠っている。そういえば、グリルパンは2つあるし、サラダボウルセットも使っていない。
 おそらくは、私が贈った引き出物も同じ運命を辿っているのだろう。外側がパステルグリーン、内側が乳白色の大皿、中皿、小鉢の食器セットにしたのだが、気に入ったと言ってくれたのは母と義母くらいだ。
 18年前、友人の結婚式からの帰り道で、私はつい「引き出物が重い」と弱音を吐いた。しかし、並んで歩いていた友人からは、「砂希のときよりは軽いよ」という返事が返ってきた。「えっ」と驚き苦笑したが、案外、苦労して持ち帰ったものだから大事にしているかも……と都合のいい解釈をするしかない。うむうむ。
 さて、使えない引き出物代表の花瓶だが、収納庫を整理していて久しぶりに対面した。
「あっ、なにこれ、いいじゃない」



 20年ぶりに再会した花瓶は、やけに妖しく艶めかしく見えた。
 中学時代の洟垂れ坊主が、渋いロマンスグレイになったわけではない。おさげ髪のイモ娘が、真紅のバラのごとく咲き誇っているわけでもない。花瓶は最初から変わらないから、この20年間で私の好みが変わったのだ。白地に映える赤に加えて、華やかな金色が輝いている。でっぷりせずに、ほどよくシェイプされたシルエットにも惹かれる。もっと早く、この魅力に気づけばよかった。
「こんなにキレイなんだから、しまっておいたらもったいない」
 花はなくてもよい。せっかくだから、日常的に目にする場所に、この美女を飾っておきたいのだが、それらしい場所が見当たらない。
「出窓だと、地震が来たら落ちて割れちゃうよね」
「床に置いたら、夫が蹴って割れちゃうよね」
 うーむ。
 結局、破損することが心配で、収納庫に戻してしまった。
 貧乏性とは、こういうことをいうのだろうか。


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コメント (8)
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