毎年、憲法記念日には娘の誕生日会を開いている。2日後のこどもの日には、甥の節句を祝うため妹の家に行くのが常だったが、退院後まもない父を那須から呼ぶわけにはいかない。
「今年はどうする? ジジババが来られないならやめようか」
「そうだねぇ。私たち抜きでやってとは言われたけど、なんだか悪いし」
「いっそのこと那須でやるとか」
「えー、仕事があるから無理だよ」
妹と相談していたら、娘が横から口を挟んできた。
「やめないでよ! 来年は社会人になるから、今年で最後なんだよ」
大学4年の今年がラストだから、省略しないでほしいという気持ちはわかる。しかし、それ以上に「誕プレもらえなかったらどうしよう」という焦りが透けて見えた。くくく。
「それもそうね。じゃあ、誕生日とこどもの日を1日で済ませるっていうのはどう?」
折衷案が浮かんできた。妹と娘にも異論はないようだ。
「いいんじゃない。ジジババいないから、一度でちょうどいいよ。うちに来る?」
「行く行く」
料理は半分ずつ負担し、妹の家が会場となった。娘のためのバースデーケーキは妹が、甥のための兜ケーキは私が用意することにすれば、肉体的にも、経済的にも楽チンでありがたい。
妹は、いや正確には妹のダンナは、野菜のチーズ焼き、ステーキを作っていた。豚汁だけは、たぶん妹が準備したと思われる。温かい料理は、心までホカホカにしてくれる。
一方、私が持参したのは、冷え切ったカボチャのコロッケにカットフルーツ、寿司である。バースデークーポンを使えば10%オフだから、自宅付近の寿司屋に注文し、届いたものを車で運んできた。冷たいものばかりで少々分が悪い。
「えーと、こっちの桶は1人11貫でシャリ普通。で、あっちの桶は1人9貫でシャリ小さめ」
妹と義弟、義兄、夫は食べる気十分だが、血糖値の高い私と小食の姉・娘は量を抑えたかった。甥にはマグロづくし、姪にはイクラづくしをリクエストされている。
「じゃあ、寿司桶に合わせて座ったほうがいいね」
定位置に逆らって、この日は席替えをした。糖質控えめの寿司桶をキープし、姉と娘を呼ぶ。
「はーい、女の子チームはこっちだよ」
義兄がすぐさま反応した。
「え、女の子ってどこ? まあ、ミキちゃんはわかるけど」
そうか、私と姉は50代に突入したんだっけ。すっかり忘れていた。
ブーイングは無視して席に着く。この寿司は注文者の特権で、ハマチをズワイガニに、イカを炙りエンガワにネタ替えしたのだ。いいネタばかりなのだぞ、ワッハッハ。
両親がいないと、イマイチ話が盛り上がらない。子や孫たちが「ジジババにこの話を聞かせてあげよう」と考えなくなるからだろうか。笑って座っているだけの父、的外れな反応をして失笑を買う母の存在は、思っていたよりも大きいと気づかされた。
「さーて、ケーキだ、ケーキ」
妹が買ってきてくれたバースデーケーキはこれ。
さっそくロウソクを立てる。ハッピーバースデーの歌を歌ったあと、娘がロウソクを吹き消した。
一方、甥への兜ケーキはこれ。
「あれ、ロウソクは?」
「ロウソク? なかったよ」
簡単に答えたあと、もらってくればよかったと反省した。甥も同じことをしたいだろうに。
幸い、妹の家には予備のロウソクがあった。
「この辺でいいかしらね」
妹が豪快に兜の側面にブッ刺して火をつける。
「い~ら~か~のな~みと、く~も~のな~み」
「たーかくおーよーげや、こーいーのーぼり」
歌が終わると甥がロウソクを吹き消す。あとは切るだけだ。
2種のケーキを食べながら、私は来週の予定を考えていた。
13日は母の日である。退院後の父を見舞い、母を労うタイミングとしてはちょうどいい。
「6月のジイさんの誕生日、那須の家でお祝いできそうか見てくるよ」
姉や妹、義兄たちに声をかけてみた。
「それは助かる」
「頼むね」
よし、偵察部隊として、来週は那須に行って来よう。
娘が「ミキも休みだから行く」と宣言した。
祖父母を元気づけようという気持ちはもちろんある。
加えて、顔には「誕プレもらえるかも」と書いてあったような気が……。
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
「今年はどうする? ジジババが来られないならやめようか」
「そうだねぇ。私たち抜きでやってとは言われたけど、なんだか悪いし」
「いっそのこと那須でやるとか」
「えー、仕事があるから無理だよ」
妹と相談していたら、娘が横から口を挟んできた。
「やめないでよ! 来年は社会人になるから、今年で最後なんだよ」
大学4年の今年がラストだから、省略しないでほしいという気持ちはわかる。しかし、それ以上に「誕プレもらえなかったらどうしよう」という焦りが透けて見えた。くくく。
「それもそうね。じゃあ、誕生日とこどもの日を1日で済ませるっていうのはどう?」
折衷案が浮かんできた。妹と娘にも異論はないようだ。
「いいんじゃない。ジジババいないから、一度でちょうどいいよ。うちに来る?」
「行く行く」
料理は半分ずつ負担し、妹の家が会場となった。娘のためのバースデーケーキは妹が、甥のための兜ケーキは私が用意することにすれば、肉体的にも、経済的にも楽チンでありがたい。
妹は、いや正確には妹のダンナは、野菜のチーズ焼き、ステーキを作っていた。豚汁だけは、たぶん妹が準備したと思われる。温かい料理は、心までホカホカにしてくれる。
一方、私が持参したのは、冷え切ったカボチャのコロッケにカットフルーツ、寿司である。バースデークーポンを使えば10%オフだから、自宅付近の寿司屋に注文し、届いたものを車で運んできた。冷たいものばかりで少々分が悪い。
「えーと、こっちの桶は1人11貫でシャリ普通。で、あっちの桶は1人9貫でシャリ小さめ」
妹と義弟、義兄、夫は食べる気十分だが、血糖値の高い私と小食の姉・娘は量を抑えたかった。甥にはマグロづくし、姪にはイクラづくしをリクエストされている。
「じゃあ、寿司桶に合わせて座ったほうがいいね」
定位置に逆らって、この日は席替えをした。糖質控えめの寿司桶をキープし、姉と娘を呼ぶ。
「はーい、女の子チームはこっちだよ」
義兄がすぐさま反応した。
「え、女の子ってどこ? まあ、ミキちゃんはわかるけど」
そうか、私と姉は50代に突入したんだっけ。すっかり忘れていた。
ブーイングは無視して席に着く。この寿司は注文者の特権で、ハマチをズワイガニに、イカを炙りエンガワにネタ替えしたのだ。いいネタばかりなのだぞ、ワッハッハ。
両親がいないと、イマイチ話が盛り上がらない。子や孫たちが「ジジババにこの話を聞かせてあげよう」と考えなくなるからだろうか。笑って座っているだけの父、的外れな反応をして失笑を買う母の存在は、思っていたよりも大きいと気づかされた。
「さーて、ケーキだ、ケーキ」
妹が買ってきてくれたバースデーケーキはこれ。
さっそくロウソクを立てる。ハッピーバースデーの歌を歌ったあと、娘がロウソクを吹き消した。
一方、甥への兜ケーキはこれ。
「あれ、ロウソクは?」
「ロウソク? なかったよ」
簡単に答えたあと、もらってくればよかったと反省した。甥も同じことをしたいだろうに。
幸い、妹の家には予備のロウソクがあった。
「この辺でいいかしらね」
妹が豪快に兜の側面にブッ刺して火をつける。
「い~ら~か~のな~みと、く~も~のな~み」
「たーかくおーよーげや、こーいーのーぼり」
歌が終わると甥がロウソクを吹き消す。あとは切るだけだ。
2種のケーキを食べながら、私は来週の予定を考えていた。
13日は母の日である。退院後の父を見舞い、母を労うタイミングとしてはちょうどいい。
「6月のジイさんの誕生日、那須の家でお祝いできそうか見てくるよ」
姉や妹、義兄たちに声をかけてみた。
「それは助かる」
「頼むね」
よし、偵察部隊として、来週は那須に行って来よう。
娘が「ミキも休みだから行く」と宣言した。
祖父母を元気づけようという気持ちはもちろんある。
加えて、顔には「誕プレもらえるかも」と書いてあったような気が……。
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