今月末で父が77歳になる。
「喜寿のお祝いどうする?」
姉から相談を受けたのが4月だった。両親は那須塩原に住んでいるので、すっかり出不精になった父のために、みんなでお祝いを持って押しかけようと思ったのだが……。
「お母さんは都内に行きたいって言ってる」
繁華街が恋しい母は、何かと口実を作って遠出したいようだ。ならば、親族みんなが集まりやすい池袋で食事をすることにした。
「ホテルメトロポリタンだったら社割が利くから、そこでどう?」
「いいよ~」
姉が花、私が記念品を用意することにした。
「これがいいかも」
富士山の椀やぐい飲み、箸のセットが気に入り、包んでもらう。ちゃんと使ってくれればいいのだが、貧乏性の母は、いただきものを大事に大事にしまっておくことが多い。今度遊びに行ったら、戸棚をチェックしなくては。
「こんにちは~」
「こんにちは」
フォーマルな場とあって、甥と姪は制服で来たようだ。しかし、母はTシャツ、父は作業着である。年をとると、オシャレをするのが面倒になるのだろうか。
まあよい。
「喜寿、おめでとう!」
シャンパンで乾杯し、料理に舌鼓を打つ。
先付が運ばれてきた。ウニが舌の上でとろけて、幸せな気分になった。
前菜。蛸柔煮の歯ごたえを楽しみ、おかわりが欲しくなった。
さざえ沢煮椀。貝類は総じて好きである。貝殻を傾けてお椀に汁を注ぐと、絶品のお吸い物となる。
造り。氷の屋根が涼感を高める。
和牛フィレステーキ。焼けた石の上に載せると、肉片が「ジュッ」と小さな悲鳴を上げて、身をよじる。
ミディアムになったところで「いただきます」。
デザートは、あんみつ、バニラアイスであった。
「美味しかった~」
食後は、みんなで記念写真を撮った。姉はアルコールで童心に返ったらしく、母の頭にツノを作っていた。
あとは、まっすぐ帰るはずだったのだが……。
「コーヒー飲みたい」
まだ遊びたかったのか、母が駄々をこねはじめた。
「じゃあ、ロビーのラウンジに行こう」
しかし、父は家でくつろぎたかったようだ。おかわりをもらう母を横目に、「そろそろ帰ろうや」などと落ち着かない。母の食欲が満たされたところで、ようやくお開きとなった。
「今日はありがとうございました」
父も母も、かしこまって頭を深々と下げる。記念品の紙袋を、大事そうに持っているところがうれしい。
4年後には、母が喜寿を迎える。
今度は、食後のコーヒーもつけてもらおう。
↑
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
「喜寿のお祝いどうする?」
姉から相談を受けたのが4月だった。両親は那須塩原に住んでいるので、すっかり出不精になった父のために、みんなでお祝いを持って押しかけようと思ったのだが……。
「お母さんは都内に行きたいって言ってる」
繁華街が恋しい母は、何かと口実を作って遠出したいようだ。ならば、親族みんなが集まりやすい池袋で食事をすることにした。
「ホテルメトロポリタンだったら社割が利くから、そこでどう?」
「いいよ~」
姉が花、私が記念品を用意することにした。
「これがいいかも」
富士山の椀やぐい飲み、箸のセットが気に入り、包んでもらう。ちゃんと使ってくれればいいのだが、貧乏性の母は、いただきものを大事に大事にしまっておくことが多い。今度遊びに行ったら、戸棚をチェックしなくては。
「こんにちは~」
「こんにちは」
フォーマルな場とあって、甥と姪は制服で来たようだ。しかし、母はTシャツ、父は作業着である。年をとると、オシャレをするのが面倒になるのだろうか。
まあよい。
「喜寿、おめでとう!」
シャンパンで乾杯し、料理に舌鼓を打つ。
先付が運ばれてきた。ウニが舌の上でとろけて、幸せな気分になった。
前菜。蛸柔煮の歯ごたえを楽しみ、おかわりが欲しくなった。
さざえ沢煮椀。貝類は総じて好きである。貝殻を傾けてお椀に汁を注ぐと、絶品のお吸い物となる。
造り。氷の屋根が涼感を高める。
和牛フィレステーキ。焼けた石の上に載せると、肉片が「ジュッ」と小さな悲鳴を上げて、身をよじる。
ミディアムになったところで「いただきます」。
デザートは、あんみつ、バニラアイスであった。
「美味しかった~」
食後は、みんなで記念写真を撮った。姉はアルコールで童心に返ったらしく、母の頭にツノを作っていた。
あとは、まっすぐ帰るはずだったのだが……。
「コーヒー飲みたい」
まだ遊びたかったのか、母が駄々をこねはじめた。
「じゃあ、ロビーのラウンジに行こう」
しかし、父は家でくつろぎたかったようだ。おかわりをもらう母を横目に、「そろそろ帰ろうや」などと落ち着かない。母の食欲が満たされたところで、ようやくお開きとなった。
「今日はありがとうございました」
父も母も、かしこまって頭を深々と下げる。記念品の紙袋を、大事そうに持っているところがうれしい。
4年後には、母が喜寿を迎える。
今度は、食後のコーヒーもつけてもらおう。
↑
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
こういうお祝いのときはご馳走が一番ですね。
お姉様のお母様の頭にツノを作っているところが微笑ましいです。
和食もいいですね。
お母様の都会が恋しい気持ちもわかります。
その辺に男女の差が出るのですかね。
うちは母の米寿までもう少し。
そこまでは長生きしてほしいな。
還暦のお祝いをしてから、もう17年経つんですね。
早いです。
すぐに喜寿がやってきたような気もします。
11年後は米寿。
母のお祝いを忘れないようにしなくては。
姉は結構お茶目なんですよ(笑)
母はたまの上京を喜んでいます。
那須では、いい刺身や魚がないんですよ。
のんびりしすぎて刺激もないし。
父は面倒がっていますが、ボケ防止にいいかも。
お母さま、もうすぐ米寿を迎えられるんですね!
お祝いの企画にも熱が入るのではないでしょうか。
一緒に旅行というのもよさそうです。
お父様の喜寿おめでとうございます
これほどの御馳走を前によくブログ用の写真を撮る余裕があると感心します(笑)
お母様はまだお若いのですね、私のブロ友さんには喜寿の方もいるのでなんだかな~
最近思うのですが感性とかは幾つになっても変わらないものですね(*^^*)ポッ
ブログはなさらないのかな…お友達になりたい(笑)
それ、私も使いたい~と思いました。
しまっておくなんて、もったいない!
こういうお話を拝見すると心が和みます。
きっと、当たり前にお祝いするんでしょうね。
私には叶わないことなので、間接的にでも参加したような気分になれて、ハッピーです。
いつまでもお元気で。
長生きして、美味しいご飯もコーヒーも楽しんでください!
喜寿のブロ友さんは国宝ものでしょう。
うちの母は73歳だと思いますが、デジタル音痴でパソコンが使えません。
ガラケーならデコメールまで送れるようになりました。
しかし、文章が用件のみで全然面白くないんです。
ブログなんてとてもとても。
長距離を歩くのがツライとか、判断力の低下が激しいなどの老化現象が見られます。
しかし、旺盛な食欲に変化はありませんね。
この調子で過ごしてほしいです。
はい、富士山セットは私が欲しくて、つい選ぶんです。
お椀だけだと5000円です。
以前、お世話になった方に贈って以来、手頃な贈答品として利用しています。
ゴブレットもありました。
湯のみも揃っていますよ。
私は箸置きを買って、全然使っていません。
これはいかんですね。
でも、一番欲しいのは、窓から見える富士山でしょうか。
東京にいたら無理だ~(笑)
せめて、米寿こそは・・・元気で迎えてもらわなくてはね。
女性は年をとっても、都会に惹かれるものなのでしょうか。
男女の差、あるんですね。
美味しいごちそうと記念品で満足してもらえると、本当にうれしいでしょうね。
最後のお二人の様子が、微笑ましいです。
普通の誕生日の延長線として、ささやかなお祝いをしてみました。
もっと盛大にお祝いするご家庭もありそうですね。
そこまでしなくても、気持ちが届けばいいと思います。
米寿のお祝いが楽しみですね。
母は田舎暮らしを嫌っているわけではありません。
でも、ときどき華やかな場所が恋しくなるみたい。
父との対比が面白かったです。