昨年、地学団体研究会に所属している化石の先生と知り合いになり、何度か化石採集に連れて行ってもらった。
場所は主に多摩川。ここで取れる化石は二枚貝や巻貝・ウニなどだが、広大な河原のどこに埋まっているかはわからない。一生懸命掘っても空振りが多く、根気と忍耐が必要だ。宝探しのように、ここぞと思う場所を選んでタガネを差し込み、ハンマーで叩いて、ひたすら地面を掘っくり返す。
「お母さん、これ化石かなぁ?」
小学生の娘のほうがのめり込んでいる。過去にはシラトリガイ、クルミガイなどを次々と発掘したことがあるから、鑑定眼もなかなかのものだ。小さいものや欠けているものには関心がなく、学術的にも価値の高い、完全な形をした大きな化石を求めている。
「ダメだね、これは小さいからいらないや」
シジミのような貝には目もくれず、あっさりと河原に戻す。彼女が狙っているのは、自宅にある鶏卵大のシラトリガイより大型の化石だ。ほとんど損傷もなく、優美な姿をしたシラトリガイは娘の宝物だが、今回はこれ以上のものを狙っている。
熱心に河原を掘る娘を見て、『したきり雀』のおばあさんを連想した。「大きなつづら、大きなつづら」と唱えながら、ハンマーを叩いているような印象を受ける。
得てして昔話では、無欲で心の清らかな者が富を手に入れ幸せになるが、強欲で浅ましい者は戒めに遭い改心させられる。欲がなくて人のよいおじいさんは小さなつづらを持ち帰り、金銀財宝をゲットしたのに、欲深なおばあさんは大きなつづらを選んだ結果、宝どころかお化けに懲らしめられた。
しかし、これは昔話での教訓であるから、現代のような地球的規模での競争社会では通用しない気がする。
おじいさんは目的意識が低く、目的達成のための具体的手法もない。その一方、おばあさんは明確な目的意識を持ち、それを叶えるための行動力も旺盛だ。もちろん、手段については改善しなければならないとしても、現代社会で勝ち組に入るのは間違いなくおばあさんの方であろう。成功哲学で高名なナポレオン・ヒル博士も「信念なくして成功はない」と言っているではないか。
信じる力が足りなかったのか、娘はなかなか成功しない。
「ここは、小さな化石しかない場所なんじゃないの~?」
娘があきらめモードになったとき、化石の先生が声を弾ませて駆け寄ってきた。
「アカガイが出ました! かなり大きいですよ。ちょっと見てください」
娘はハンマーを放り投げ、まさかという表情で走っていった。すでに、アカガイの周りには人だかりができている。隙間から覗くと、長さ10cmほどの立派な化石が見えた。
「すごい……。こんなに大きな化石があるんだ……」
私も娘も、突如として現れたアカガイに驚き、すっかり心を奪われてしまった。
刺激を受けて、娘も採掘に熱が入る。負けてなるものかと、再び「大きなつづら、大きなつづら」のリズムで手を動かしていたが、成果が上がらないまま終了となってしまった。
「ミキもアカガイが欲しかったよう」
彼女はしおれた花のように下を向き、悔しさと戦っていた。
ナポレオン・ヒルはこうも言っている。
「負けると思えばあなたは負ける。負けてなるものかと思えばあなたは負けない。負けるのじゃないかなと思ったら、あなたはもう負けている」
大きな化石を手に入れるためには、ネガティブな思考に惑わされず、成功することだけを信じなくてはならないようだ。
がっかりしている娘を元気づけようと、化石の先生が言った。
「じゃあ、次は大きな化石がたくさんあるところに行きましょうか」
とたんに、娘が顔を上げて力強く言った。
「行きたい!!」
次こそは、お宝化石が手に入るかもしれない。
お気に召したら、クリックしてくださいませ♪
場所は主に多摩川。ここで取れる化石は二枚貝や巻貝・ウニなどだが、広大な河原のどこに埋まっているかはわからない。一生懸命掘っても空振りが多く、根気と忍耐が必要だ。宝探しのように、ここぞと思う場所を選んでタガネを差し込み、ハンマーで叩いて、ひたすら地面を掘っくり返す。
「お母さん、これ化石かなぁ?」
小学生の娘のほうがのめり込んでいる。過去にはシラトリガイ、クルミガイなどを次々と発掘したことがあるから、鑑定眼もなかなかのものだ。小さいものや欠けているものには関心がなく、学術的にも価値の高い、完全な形をした大きな化石を求めている。
「ダメだね、これは小さいからいらないや」
シジミのような貝には目もくれず、あっさりと河原に戻す。彼女が狙っているのは、自宅にある鶏卵大のシラトリガイより大型の化石だ。ほとんど損傷もなく、優美な姿をしたシラトリガイは娘の宝物だが、今回はこれ以上のものを狙っている。
熱心に河原を掘る娘を見て、『したきり雀』のおばあさんを連想した。「大きなつづら、大きなつづら」と唱えながら、ハンマーを叩いているような印象を受ける。
得てして昔話では、無欲で心の清らかな者が富を手に入れ幸せになるが、強欲で浅ましい者は戒めに遭い改心させられる。欲がなくて人のよいおじいさんは小さなつづらを持ち帰り、金銀財宝をゲットしたのに、欲深なおばあさんは大きなつづらを選んだ結果、宝どころかお化けに懲らしめられた。
しかし、これは昔話での教訓であるから、現代のような地球的規模での競争社会では通用しない気がする。
おじいさんは目的意識が低く、目的達成のための具体的手法もない。その一方、おばあさんは明確な目的意識を持ち、それを叶えるための行動力も旺盛だ。もちろん、手段については改善しなければならないとしても、現代社会で勝ち組に入るのは間違いなくおばあさんの方であろう。成功哲学で高名なナポレオン・ヒル博士も「信念なくして成功はない」と言っているではないか。
信じる力が足りなかったのか、娘はなかなか成功しない。
「ここは、小さな化石しかない場所なんじゃないの~?」
娘があきらめモードになったとき、化石の先生が声を弾ませて駆け寄ってきた。
「アカガイが出ました! かなり大きいですよ。ちょっと見てください」
娘はハンマーを放り投げ、まさかという表情で走っていった。すでに、アカガイの周りには人だかりができている。隙間から覗くと、長さ10cmほどの立派な化石が見えた。
「すごい……。こんなに大きな化石があるんだ……」
私も娘も、突如として現れたアカガイに驚き、すっかり心を奪われてしまった。
刺激を受けて、娘も採掘に熱が入る。負けてなるものかと、再び「大きなつづら、大きなつづら」のリズムで手を動かしていたが、成果が上がらないまま終了となってしまった。
「ミキもアカガイが欲しかったよう」
彼女はしおれた花のように下を向き、悔しさと戦っていた。
ナポレオン・ヒルはこうも言っている。
「負けると思えばあなたは負ける。負けてなるものかと思えばあなたは負けない。負けるのじゃないかなと思ったら、あなたはもう負けている」
大きな化石を手に入れるためには、ネガティブな思考に惑わされず、成功することだけを信じなくてはならないようだ。
がっかりしている娘を元気づけようと、化石の先生が言った。
「じゃあ、次は大きな化石がたくさんあるところに行きましょうか」
とたんに、娘が顔を上げて力強く言った。
「行きたい!!」
次こそは、お宝化石が手に入るかもしれない。
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それ以来、行ってないなぁ!(遠い目)
裏山は化石の宝庫だったらしいです。
しかし、化石探しは夢があっていいですね!
お嬢さんはやる気満々だからいつかはもっとデカイのを採取できますよ!
一つ質問ですが、お姉さんや妹さんはこのエッセィにコメントなされてますが、旦那さんやお嬢さんも当然このエッセィは見ているんですよね?毎朝早くに起きて、パソコンチェック、夜寝る前にもチェックしている奥さんの姿を目にしているのですから。でも文面からは、旦那さんやお嬢さんは知らないのかな?と思うような時がありますよ。
しかし、家に本があるからやはり知ってらっしゃいますね?失礼しました
娘は読みたがっていますが、見せていません。
書き放題です(笑)
別に読まれてもいいんですけどね。
興味がないのか、字が読めないのか(笑)
見ないほうが幸せかも。