お叱りを受けることを覚悟で打ち明けるが、スクリーンで日本を代表する大女優・吉永小百合を観るのは、これが初めてだ。
監督 山田洋次 「母と暮せば」
70歳という年齢には決して見えない、若々しさと美貌。
3月には71歳になるというが、「ウソでしょ?」としか言えない張りのある美肌。実に素晴らしい。
包容力や勇気もあり、外見のみならず、内面までピカピカに磨かれている方とお見受けした。
さて、この女優の名を聞くと、ついセットで思い出してしまう大学講師がいる。
「商学部のみなさん、これから一年間、日本商業史の講義を担当するホニャララと申します」
今から30年前、私が大学1年だったときのことである。まだ30代か40代だった担当の男性は、教授でも准教授でもなく、講師という肩書だった。でも、講義に手抜きはしなかったし、休講もなく、熱心であった。
あるとき、ホニャララ氏は唐突に昔話を始めた。商業史に関する脱線は、たまにあったけれど、プライベートな話を披露したことはない。
「私は早稲田大学出身なんですが、一度、図書館で吉永小百合を見たことがあります」
吉永小百合に反応し、眠そうな目をした学生も、友人とコソコソ話をしていた学生も、「なんだなんだ」と耳を傾けた。
「当時はすでに人気女優で、テレビで見るよりずっとキレイでした。私は目が釘付けになり、ジッと吉永小百合を見つめていました」
うんうん、それで?
「すると、吉永さんは視線に気づいてこちらを見たんです。彼女は目が悪くて、私を友人か誰かだと思ったようでした」
おお、すごいぞ~!
「私と小百合ちゃんは、5秒くらいずっと見つめ合っていたんです! 知り合いではないとわかり、目をそらされるましたが、このことは何年たっても忘れられません!」
ついに小百合ちゃんときたか。熱を帯びた視線に、力のこもった声。教壇で、仁王立ちするサユリストに度肝を抜かれ、学生たちはその年一番の集中力を発揮した。
ちなみに、日本商業史の講義内容は全然おぼえていないが、小百合ちゃんに関する話だけは、講師の表情や身振り手振りまで記憶している。この映画を観たら、堅物のホニャララ氏を夢中にさせた大女優の魅力を理解して、私にとっても憧れの人となった。
吉永小百合が演じる母・伸子は霊感体質のようだ。戦地に赴いた長男の霊を見たことから戦死を悟り、原爆で亡くなった次男とは会話まで交わす。だが、原爆症を患っていたのだろうか、少しずつ弱って元気がなくなっていく。
次男の浩二役に抜擢されたのが、嵐の二宮和也である。
婚約者の町子を一途に想い続け、ときには涙をこぼすことも。素直な好青年ぶりに、「こんな息子がいたらなぁ」と笑みがもれる。吉永小百合とは、本当の親子のように睦まじく見え、息が合っていると感じた。
浩二の婚約者・町子には黒木華。
町子は原爆投下の日、運よく難を逃れたが、「死んでいった仲間に申し訳ない」と自分を責め続けている。死なずにすんだ者にも、別の地獄が待っていたのだ。こんな社会はおかしい。
浅野忠信も出ていたようだが影が薄い。エンドロールで名前を見つけ、首を傾げて隣の娘にささやいた。
「浅野忠信なんていたっけ?」
「え? いないんじゃない?」
「もしかして、上海のおじさんとか」
「は? どんな特殊メイクだよ」
プログラムで確認したら、戦争で左足を失った、黒田という男の役であった。メガネをかけていたせいもあり、「ヴィヨンの妻」とはまったくイメージが違う。この人は決して美男ではないけれど、スクリーンに登場すると、なぜかそちらを見てしまう。これも名優の条件なのだろうか。
最後に、音楽担当の坂本龍一を忘れてはならない。この映画が病気休業から復帰して、初の仕事だそうだ。
坂本氏は、反戦・反原発のスタンスで長らく活動されている。今年が戦後70年の節目であり、長崎の原爆の話であることから、自分がやらねばという気持ちで引き受けたという。私は、YMOからのファンなので、音楽が流れるたび、全神経を耳に集中させて聴いた。音楽には詳しくないけれど、ラストの合唱曲は、世代も職業も違うたくさんの人々が、「長崎の鎮魂」のために一つになったようで、心を揺さぶられた。
隣で観ていた娘は、私の3倍泣いていたように見える。近くに座っていた老夫婦の嗚咽も聞こえてきた。嵐のファンとおぼしき少女3人組も、しきりにハンカチで目元をぬぐっていた。
親子、兄弟、恋人、友人……。戦争によって絆を断たれ、元に戻れぬ哀しさよ。
若い世代には、特に観てほしい映画である。
↑
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
監督 山田洋次 「母と暮せば」
70歳という年齢には決して見えない、若々しさと美貌。
3月には71歳になるというが、「ウソでしょ?」としか言えない張りのある美肌。実に素晴らしい。
包容力や勇気もあり、外見のみならず、内面までピカピカに磨かれている方とお見受けした。
さて、この女優の名を聞くと、ついセットで思い出してしまう大学講師がいる。
「商学部のみなさん、これから一年間、日本商業史の講義を担当するホニャララと申します」
今から30年前、私が大学1年だったときのことである。まだ30代か40代だった担当の男性は、教授でも准教授でもなく、講師という肩書だった。でも、講義に手抜きはしなかったし、休講もなく、熱心であった。
あるとき、ホニャララ氏は唐突に昔話を始めた。商業史に関する脱線は、たまにあったけれど、プライベートな話を披露したことはない。
「私は早稲田大学出身なんですが、一度、図書館で吉永小百合を見たことがあります」
吉永小百合に反応し、眠そうな目をした学生も、友人とコソコソ話をしていた学生も、「なんだなんだ」と耳を傾けた。
「当時はすでに人気女優で、テレビで見るよりずっとキレイでした。私は目が釘付けになり、ジッと吉永小百合を見つめていました」
うんうん、それで?
「すると、吉永さんは視線に気づいてこちらを見たんです。彼女は目が悪くて、私を友人か誰かだと思ったようでした」
おお、すごいぞ~!
「私と小百合ちゃんは、5秒くらいずっと見つめ合っていたんです! 知り合いではないとわかり、目をそらされるましたが、このことは何年たっても忘れられません!」
ついに小百合ちゃんときたか。熱を帯びた視線に、力のこもった声。教壇で、仁王立ちするサユリストに度肝を抜かれ、学生たちはその年一番の集中力を発揮した。
ちなみに、日本商業史の講義内容は全然おぼえていないが、小百合ちゃんに関する話だけは、講師の表情や身振り手振りまで記憶している。この映画を観たら、堅物のホニャララ氏を夢中にさせた大女優の魅力を理解して、私にとっても憧れの人となった。
吉永小百合が演じる母・伸子は霊感体質のようだ。戦地に赴いた長男の霊を見たことから戦死を悟り、原爆で亡くなった次男とは会話まで交わす。だが、原爆症を患っていたのだろうか、少しずつ弱って元気がなくなっていく。
次男の浩二役に抜擢されたのが、嵐の二宮和也である。
婚約者の町子を一途に想い続け、ときには涙をこぼすことも。素直な好青年ぶりに、「こんな息子がいたらなぁ」と笑みがもれる。吉永小百合とは、本当の親子のように睦まじく見え、息が合っていると感じた。
浩二の婚約者・町子には黒木華。
町子は原爆投下の日、運よく難を逃れたが、「死んでいった仲間に申し訳ない」と自分を責め続けている。死なずにすんだ者にも、別の地獄が待っていたのだ。こんな社会はおかしい。
浅野忠信も出ていたようだが影が薄い。エンドロールで名前を見つけ、首を傾げて隣の娘にささやいた。
「浅野忠信なんていたっけ?」
「え? いないんじゃない?」
「もしかして、上海のおじさんとか」
「は? どんな特殊メイクだよ」
プログラムで確認したら、戦争で左足を失った、黒田という男の役であった。メガネをかけていたせいもあり、「ヴィヨンの妻」とはまったくイメージが違う。この人は決して美男ではないけれど、スクリーンに登場すると、なぜかそちらを見てしまう。これも名優の条件なのだろうか。
最後に、音楽担当の坂本龍一を忘れてはならない。この映画が病気休業から復帰して、初の仕事だそうだ。
坂本氏は、反戦・反原発のスタンスで長らく活動されている。今年が戦後70年の節目であり、長崎の原爆の話であることから、自分がやらねばという気持ちで引き受けたという。私は、YMOからのファンなので、音楽が流れるたび、全神経を耳に集中させて聴いた。音楽には詳しくないけれど、ラストの合唱曲は、世代も職業も違うたくさんの人々が、「長崎の鎮魂」のために一つになったようで、心を揺さぶられた。
隣で観ていた娘は、私の3倍泣いていたように見える。近くに座っていた老夫婦の嗚咽も聞こえてきた。嵐のファンとおぼしき少女3人組も、しきりにハンカチで目元をぬぐっていた。
親子、兄弟、恋人、友人……。戦争によって絆を断たれ、元に戻れぬ哀しさよ。
若い世代には、特に観てほしい映画である。
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
そして、見事な紹介&まとめぶり、すばらしいです。
この記事を読んで見に行かれる方、きっと多いと思います。
小百合さんやニノ目当てでも、最後にはちゃんと
感動と反戦の思いが伝わる、すばらしい映画ですね。
吉永さん、ホントお綺麗。もう70歳なんですか?
世紀の変わり目頃にスイミングしてるCMを見た時も驚きましたが、今もこの状態…。凄い。
嵐目当てであれ、戦争を知らない世代が、その時期に想いを馳せることは大切だと思います。
霊を感じることができるってのは、僕が過日観劇した舞台版『レーカン』と同じで、他の人が感じることが出来ない、本来有り得ない想いを理解し、繋げていける人がいることを置くによって、更に大きな想いを伝えられるのかな…って思いました。
実は、白玉さんがネタバレをアップされたとき、「観たあとにしよう」と時間を置きました。
意中ではない映画だと、率直な感想を読んでみます。
もし、観ようとも思っていなかった方が興味を持ってくれれば、それで十分ですよ。
私は広島にも長崎にも行っていますし、原爆の威力や被害、後遺症についても十分学習しました。
広島ではウランが使われましたが、長崎ではプルトニウムが原料となっています。
威力は広島の1.5倍だったとか。
当時の長崎は推定人口24万人だったそうですが、7万人以上が亡くなったことを考えると、まさに大量殺戮兵器なのです。
三輪明宏さんはご自宅の室内にいたそうですが、もし窓に近い場所にいたら、生きていられたか疑問とおっしゃっていました。
広島では一瞬にして人が蒸発し、影だけ残された階段が衝撃でしたよ。
ただ、資料館に展示された惨状をこの映画に持ち込む必要はありません。
愛する人と離れ離れとなり、心が引き裂かれる想いを共有できればと思います。
吉永さんは、誘惑に流されないストイックな方なんでしょうね。
私のように年中「甘いものが食べた~い」とか、「腹筋は明日にしよう」などと考えないのではないかしら。
お若いときは、年間16本の映画に出たこともあるそうです。
でも、どの作品でもセリフは完璧におぼえてきて、プロ意識の高さではピカイチだったとか。
見た目の美しさも、その延長線上にある気がしますよ。
霊感の強い人っていますよね……。
私も母もからっきしなのに、母の祖母にはあったようです。
観音様を信仰し、肉や魚を一切食べない生活をしている人でした。
両手の爪から「疳(かん)の虫」を出して、虫切りをすることができたと聞いています。
母の妹は、癇癪持ちで感情の起伏が激しいせいか、他の兄弟より疳の虫がニュルニュルニュル~と長かったんですって。
私がピンチを乗り切ったときは、この曾祖母が助けに来てくれた気がして仕方ありません。
私は肉と魚を手放せない……。
心のバランスをとるのに持ってつけの映画だったようで、吉永さんの魅力をへぇ、へぇと読み進めました。
この映画、そんなに感激できるんだ。
もうすぐ冬休みだし、観に行こうかぁと思ったら…
あら、しまった!
オチまで読んじゃいました。
しまったぁ~!
でも、ストーリーを追うのではなくて、美貌の秘訣を盗みに行くだけでも価値がありそうですね!
だから映画は見たことが無くて…
声が嫌いなんですm(。・ε・。)mスイマソ-ン
私よりも年上の年代にはかなり多くのサユリストがいたはずです、
早稲田といえばタモリ、講師の方と同期だったのかも…
でも、お若いですね、サユリストトになるとしたら、これからでも遅くないのかしらん(*^^*)ポッ
あっ、坂本さんの件でたしかにラストが……。
ネタバレって入れておこうかしら。
いえいえ、もっとオブラートに包む表記に変えます。
失礼しました。
でも、細かい場面はあえて入れていません。
そこが見どころだと思っています。
不覚にも、見どころのひとつで眠くなりました(笑)
ちょっとウトウト。
アクションじゃないと、仕事帰りは危険です。
ところで、スターウォーズがこれまでの興行成績を塗り替えたそうですね。
あれはなぜか観たいと思いません。
なんでだろう……。
あっ、それわかります!
ちょっと鼻にかかった声なのかしら。
見た目とギャップのある声ですね。
別に悪くないけど、もっと透き通った声を期待しちゃいます。
映画は私も今回が初ですから、似たようなものです。
私は以前から岩下志麻のファン♪
彼女の声はいいでしょ?
清純派とは対極のような方ですが、凛とした佇まいには共通したものがあるかと。
他にも、舞台をやらないという共通点があると書いてありました。
歳をとらない女優さんはスゴイ!