11月は学園祭のシーズンだ。月末に大学受験を控えた娘が、志望大の学園祭に行こうと誘ってきた。
ホームページでイベントをチェックする。何か面白い企画はないかと探していたら、あったあった、「お煎餅を焼く体験コーナー」である。文字を見たとたん、醤油の焦げる香ばしい匂いを思い出し、ぜひ行かねばと決めた。
「えっ、煎餅? 好きじゃないし、矯正中だから硬いものは食べたくないんだけど」
「大丈夫、大丈夫。お母さんが食べるから」
まったく乗り気でない娘を説得し、混雑する前に到着する計画を立てた。「眠い」と文句を言う娘を追い立て、電車に乗せて体験コーナーを目指す。テントに入ると、女子学生が笑顔で応対してくれた。
「こんにちは。まずはアルコール消毒からお願いします」
思った通り、すでに子ども連れの家族が並んでおり、手を清めて順番を待った。
「では、この軍手をしてください。お煎餅はプレーンと胡麻のどちらがいいですか」
娘はプレーン、私は胡麻にした。直径がロールケーキくらいで、厚さが2mmほどの白くてのっぺりした生地が手渡される。えびせんべいを、白くして小さくしたらこんな感じかもしれない。
「ほお~」
焼く前の煎餅を見るのは初めてだ。珍しくて、煎餅が恥ずかしくなるくらい、ジロジロと観察した。
「お待たせしました。あちらの機械が空きましたので、どうぞ」
ピザが4枚ほど焼けそうな大きさの電熱器に案内された。上には、粗い目の網が載っている。そこで、別の女子学生がトングを用意して待っていた。
「じゃあ、これでお煎餅を挟んで、網の上に載せてください。なるべく真ん中へんに」
「こうかな」
娘も楽しくなってきたのか、さっきまでの無関心はどこへやら、網の中央にドーンとプレーン煎餅を置いた。おかげで、私の胡麻煎餅は、火力の弱い隅っこで焼く破目になった。
私は煎餅ばかりを見ていたが、娘は女子学生と雑談している。どうやら、希望する学部、学科に在籍しているとわかり、ますます話が弾んでいるようだ。煎餅も、少しずつ膨らんできた。
「じゃあ、そろそろ裏返しましょう」
厚みは1cmほどになったが、まだ焼き色はついていない。空気の入っている箇所が、ところどころ膨らみ小山を作る。まめにひっくり返して、トータルで10分弱焼くと、白かった生地が小麦色に変わってきた。そろそろ醤油を塗る頃だ。波打った表面から醤油の蒸発するいい匂いがした。
これこれ!
塗ったらトングで挟み、網に置かず炙って水分を飛ばす。両面が乾いたらできあがりだ。
「海苔もどうぞ」
焼きたての煎餅に、パリッとした海苔は最強の組み合わせである。学生に礼を言い、ホカホカの煎餅を受け取った。
ひと口かじると、舌の上で、いそべ焼きに似た味わいが広がる。予想と違わず美味しい。
「硬い。やっぱり無理だ」
娘がプレーンの煎餅をパスしてきた。
温かな二つの味が、どちらも私の元へ。
この日の昼食は煎餅になった。
↑
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
ホームページでイベントをチェックする。何か面白い企画はないかと探していたら、あったあった、「お煎餅を焼く体験コーナー」である。文字を見たとたん、醤油の焦げる香ばしい匂いを思い出し、ぜひ行かねばと決めた。
「えっ、煎餅? 好きじゃないし、矯正中だから硬いものは食べたくないんだけど」
「大丈夫、大丈夫。お母さんが食べるから」
まったく乗り気でない娘を説得し、混雑する前に到着する計画を立てた。「眠い」と文句を言う娘を追い立て、電車に乗せて体験コーナーを目指す。テントに入ると、女子学生が笑顔で応対してくれた。
「こんにちは。まずはアルコール消毒からお願いします」
思った通り、すでに子ども連れの家族が並んでおり、手を清めて順番を待った。
「では、この軍手をしてください。お煎餅はプレーンと胡麻のどちらがいいですか」
娘はプレーン、私は胡麻にした。直径がロールケーキくらいで、厚さが2mmほどの白くてのっぺりした生地が手渡される。えびせんべいを、白くして小さくしたらこんな感じかもしれない。
「ほお~」
焼く前の煎餅を見るのは初めてだ。珍しくて、煎餅が恥ずかしくなるくらい、ジロジロと観察した。
「お待たせしました。あちらの機械が空きましたので、どうぞ」
ピザが4枚ほど焼けそうな大きさの電熱器に案内された。上には、粗い目の網が載っている。そこで、別の女子学生がトングを用意して待っていた。
「じゃあ、これでお煎餅を挟んで、網の上に載せてください。なるべく真ん中へんに」
「こうかな」
娘も楽しくなってきたのか、さっきまでの無関心はどこへやら、網の中央にドーンとプレーン煎餅を置いた。おかげで、私の胡麻煎餅は、火力の弱い隅っこで焼く破目になった。
私は煎餅ばかりを見ていたが、娘は女子学生と雑談している。どうやら、希望する学部、学科に在籍しているとわかり、ますます話が弾んでいるようだ。煎餅も、少しずつ膨らんできた。
「じゃあ、そろそろ裏返しましょう」
厚みは1cmほどになったが、まだ焼き色はついていない。空気の入っている箇所が、ところどころ膨らみ小山を作る。まめにひっくり返して、トータルで10分弱焼くと、白かった生地が小麦色に変わってきた。そろそろ醤油を塗る頃だ。波打った表面から醤油の蒸発するいい匂いがした。
これこれ!
塗ったらトングで挟み、網に置かず炙って水分を飛ばす。両面が乾いたらできあがりだ。
「海苔もどうぞ」
焼きたての煎餅に、パリッとした海苔は最強の組み合わせである。学生に礼を言い、ホカホカの煎餅を受け取った。
ひと口かじると、舌の上で、いそべ焼きに似た味わいが広がる。予想と違わず美味しい。
「硬い。やっぱり無理だ」
娘がプレーンの煎餅をパスしてきた。
温かな二つの味が、どちらも私の元へ。
この日の昼食は煎餅になった。
↑
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
昔はフェリスや東洋英和や慶応国学院等の文化祭に毎年行ってました。楽しいですよね~!
私も煎餅🍘は自分で焼いた事が無いんですけど
やはり醤油の焼けた匂いには負けますよね~!
店頭で職人が焼いているのは見た事はありますが
一度はやってみたいですね~!濡れ煎餅もうまいですよね!もしあったらみきさんも食べられたのにね~!
亡くなった父が、食べながら歩くなんて絶対しない人なんですが、成田山に行ったときかな、おせんべいを買って食べるのを見て、びっくししたことを思い出しました。
文章から醤油の焦げる匂いが伝わってきます。焼きたては美味しかったでしょうね(*^^*)ポッ
砂希さんはずっと学校生活しているから、まだ学生気分が抜けてないのかも
もはや大学も客商売の時代です。いろいろなイベントで釣らないとね…
文字通り釣りはどうでしょうか?その場合私が参加しますヽ(^◇^*)/ ワーイ
こちらの大学には子どもの姿が目立ちました。
ご近所のようです。
高齢者も多かったです。
地域に根付いた大学なのだと感じます。
濡れ煎餅は家にありました。
これは先週の話ですが、昨日は娘が濡れ煎にとろけるチーズを載せ、チンして食べていましたよ。
美味しかったそうです。
私はカリカリした煎餅のほうがいいかな~。
お父さまの可愛らしい姿をご覧になったんですね。
小学生のとき、通学路に煎餅屋がありました。
焼き立てをバラ売りしているんです。
さすがに下校時には寄れません。
でも、友達の家に遊びに行った帰り、ついに念願かなって1枚だけ買えました。
とびきり美味しい煎餅だったことをおぼえています。
そのイメージがあったからかしら。
楽しかったです。
そうですね、大学は学生集めに必死です。
子どもにウケそうな煎餅だったら、成長してから戻ってくるかもしれないし(笑)
しかも、このイベントは無料なんです。
そこも気に入りました。
学生気分は一生ものかもしれません。
いまだに、オープンキャンパスに行くと、講義を聴いたり学食に行ったりして楽しいですもの。
そうそう、勉強するのも好きなんですよ。
チンするんですね~?了解しました。明日、買ってきて早速やってみます!
良い事を教えていただきありがとうございました!
濡れ煎の外袋にレシピが書いてありましたよ。
とろけるチーズをのせ、ラップをして、1枚につき10秒チンするんですって。
うまうま~と言って食べていました。
一口もらえばよかったかも(笑)
写真見る限りうまく焼けてるじゃないですか。
焼きたてに海苔はうまいでしょう。
僕が応援しているアイドルさんもいくつか学祭のステージに立ったみたいなブログ書いてます。
僕も現役時代に早稲田の学祭で行われるアイドルライブのチケット購入したけど、結局行けなかったことを思い出しました。
宣伝で100日前ってのを見かけるシーズンになりました。
母娘とも体調に気をつけて頑張ってください。
温かいお言葉ありがとうございます。
センター入試まで残り日数が少なくなってきました。
ミキも受けますが、本命は推薦なんです。
高校の規定で、推薦を受ける者は学力キープのために、センター試験も受験することが義務付けられています。
一応、勉強はしています。
そういえば、この大学にもアイドルみたいな子が来ていたようです。
名前はおぼえていないけど…。
煎餅しか頭になかった(笑)