先日、FIFA世界年間表彰式で、澤穂希選手が女子最優秀選手に選ばれた。
実のところ、私はサッカーが好きではない。なかなか点が入らないからだ。それなのに、まだ大丈夫だろうと高をくくってトイレに立つと、戻ってきたときには得点が入っている。肝心な場面を見逃すことが続くと面白くなくて、だいぶ疎遠になってしまった。
非国民といわれそうだが、なでしこジャパンの活躍も、ニュースのハイライトで見た程度だ。
私には、バスケットボールやバレーボールのように、バカスカ点数の増える競技が、性に合っているらしい。
意外なことに、過去には、サッカースタジアムに足を運んだことがある。
高校時代の友人・サエコの両親が、サッカー場内で飲食物の販売をしていたからだ。最初は、アルバイトを雇っていたのだが、売上金をくすねられたことから、身元の知れない人に頼むのはやめたという。
ある日、サエコから電話がかかってきた。
「ねえ、砂希。今度の日曜日、ヒマ?」
当時、私は浦和に住んでいて、教員3年目だった。すでに結婚していたが、まだ子供はいない。てっきり遊びの誘いだと思い、ワクワクしながら返事をした。
「うん、ヒマだよ。どっか行くの?」
「ううん、ヒマだったら、ウチの店を手伝ってもらえないかと思ってさ。もちろん、バイト代は弾むから」
しまった! と後悔したがもう遅い。平日はOL、土日は両親の手伝いをしているサエコの頼みを、スパッと断るには勇気がいる。結局、オーケーせざるを得なかった。サエコは受話器を置く前に、再度確認をした。
「じゃあ、エプロン持って、3時に大宮サッカー場ね」
サエコの母は、肝っ玉母さんで、横に大きな体と、歯に衣着せぬ物言いが特徴だ。
「砂希ちゃん、アンタ、サエコと一緒にドリンクやって。サエコ、しっかり教えてやりな」
おばさんはそう言うと、パッパとヤキソバを作り始めた。おじさんは、その隣でお好み焼きを焼いている。
サエコの指導によると、私の仕事はプラカップに氷を入れ、ペットボトルの清涼飲料水を注いだら、250円をもらっておしまいだ。夏だったので、クーラーなしはつらかったけれど、単純作業の繰り返しなら問題ない。
「混む前に、これ食べちゃいな」
おばさんが、お好み焼きとヤキソバを持ってくる。サエコと2人で、おしゃべりしながら美味しくいただいた。
日が傾く頃には、お客さんがぼちぼちやってくる。
「えーと、ウーロン茶とコーラ」
さすがに、最初の客は緊張したが、スムーズに商品を手渡し、500円玉を受け取った。何回か繰り返せば、軌道に乗ってくる。楽勝、楽勝! 私の様子を見守っていたサエコも、ホッとしたようだったが、釘を刺すことは忘れなかった。
「今はいいんだけど、ハーフタイムはすごく混むから覚悟してね」
試合が始まると、お客さんはほとんど来ない。ポツポツと来ることもあるが、スタジアムがどよめくと、急いで席に戻っていく。私のように、肝心な場面を見逃したのかもしれない。
その分、ハーフタイムの混雑ぶりはすさまじかった。暑かったこともあり、あちらからも、こちらからも人が押し寄せ、果てしない長さの行列ができた。
「アンバサ」
「はちみつレモンとウーロン茶」
「コーラ」
「アンバサ」
次から次へと注文をさばいても切りがない。
「ファンタ」
「コーラ」
「コーラとアンバサ」
誰もが小銭や1000円札を握りしめ、自分の順番をじっと待っている。
「おい、俺が頼んだのはファンタだよ」
隣を見ると、サエコが注文を間違えたようで、怒られていた。幸いなことに、私は飲み食いするものには、やたらと記憶力がよくなる。注文ミスはなかったし、お客さんと会話を交わしていたら、だんだん楽しくなってきた。
やばい、この仕事、向いてるかも……!?
中には、マニュアル通りに行かない客もいる。
「あのう、ウーロン茶をペットボトルごと売ってもらえませんか?」
つまり、プラカップではなく、2リットルのサイズで買いたいというのだ。どうすりゃいいんだ、と助けを求めて振り返ったら、肝っ玉母さんが吹っ飛んできた。
「ペットボトルごと? 別に構わないけど、うちも商売だからね。4杯分として、1000円になります。砂希ちゃん、カップに氷入れて、一緒に渡して」
暴利だろうと思ったが、口出しする立場ではない。客は、おばさんの迫力に負けたのか、おとなしく1000円札を払い、カップとともに持っていった。実に頼もしい上司である。
ハーフタイムが終わる頃には、列の終わりが見え、通勤ラッシュのような戦場もおさまってきた。
ゲームが再開すれば、また閑古鳥となる。交代で休憩を取った。
バイト代は8000円と記憶している。ハーフタイム以外、ろくに働かなかったから、申し訳ないような気がした。
私は、サッカー観戦には向いていないが、サッカー場での販売には適性があるらしい。
教員に飽きたら、おばさんに雇ってもらおうかな……。
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
実のところ、私はサッカーが好きではない。なかなか点が入らないからだ。それなのに、まだ大丈夫だろうと高をくくってトイレに立つと、戻ってきたときには得点が入っている。肝心な場面を見逃すことが続くと面白くなくて、だいぶ疎遠になってしまった。
非国民といわれそうだが、なでしこジャパンの活躍も、ニュースのハイライトで見た程度だ。
私には、バスケットボールやバレーボールのように、バカスカ点数の増える競技が、性に合っているらしい。
意外なことに、過去には、サッカースタジアムに足を運んだことがある。
高校時代の友人・サエコの両親が、サッカー場内で飲食物の販売をしていたからだ。最初は、アルバイトを雇っていたのだが、売上金をくすねられたことから、身元の知れない人に頼むのはやめたという。
ある日、サエコから電話がかかってきた。
「ねえ、砂希。今度の日曜日、ヒマ?」
当時、私は浦和に住んでいて、教員3年目だった。すでに結婚していたが、まだ子供はいない。てっきり遊びの誘いだと思い、ワクワクしながら返事をした。
「うん、ヒマだよ。どっか行くの?」
「ううん、ヒマだったら、ウチの店を手伝ってもらえないかと思ってさ。もちろん、バイト代は弾むから」
しまった! と後悔したがもう遅い。平日はOL、土日は両親の手伝いをしているサエコの頼みを、スパッと断るには勇気がいる。結局、オーケーせざるを得なかった。サエコは受話器を置く前に、再度確認をした。
「じゃあ、エプロン持って、3時に大宮サッカー場ね」
サエコの母は、肝っ玉母さんで、横に大きな体と、歯に衣着せぬ物言いが特徴だ。
「砂希ちゃん、アンタ、サエコと一緒にドリンクやって。サエコ、しっかり教えてやりな」
おばさんはそう言うと、パッパとヤキソバを作り始めた。おじさんは、その隣でお好み焼きを焼いている。
サエコの指導によると、私の仕事はプラカップに氷を入れ、ペットボトルの清涼飲料水を注いだら、250円をもらっておしまいだ。夏だったので、クーラーなしはつらかったけれど、単純作業の繰り返しなら問題ない。
「混む前に、これ食べちゃいな」
おばさんが、お好み焼きとヤキソバを持ってくる。サエコと2人で、おしゃべりしながら美味しくいただいた。
日が傾く頃には、お客さんがぼちぼちやってくる。
「えーと、ウーロン茶とコーラ」
さすがに、最初の客は緊張したが、スムーズに商品を手渡し、500円玉を受け取った。何回か繰り返せば、軌道に乗ってくる。楽勝、楽勝! 私の様子を見守っていたサエコも、ホッとしたようだったが、釘を刺すことは忘れなかった。
「今はいいんだけど、ハーフタイムはすごく混むから覚悟してね」
試合が始まると、お客さんはほとんど来ない。ポツポツと来ることもあるが、スタジアムがどよめくと、急いで席に戻っていく。私のように、肝心な場面を見逃したのかもしれない。
その分、ハーフタイムの混雑ぶりはすさまじかった。暑かったこともあり、あちらからも、こちらからも人が押し寄せ、果てしない長さの行列ができた。
「アンバサ」
「はちみつレモンとウーロン茶」
「コーラ」
「アンバサ」
次から次へと注文をさばいても切りがない。
「ファンタ」
「コーラ」
「コーラとアンバサ」
誰もが小銭や1000円札を握りしめ、自分の順番をじっと待っている。
「おい、俺が頼んだのはファンタだよ」
隣を見ると、サエコが注文を間違えたようで、怒られていた。幸いなことに、私は飲み食いするものには、やたらと記憶力がよくなる。注文ミスはなかったし、お客さんと会話を交わしていたら、だんだん楽しくなってきた。
やばい、この仕事、向いてるかも……!?
中には、マニュアル通りに行かない客もいる。
「あのう、ウーロン茶をペットボトルごと売ってもらえませんか?」
つまり、プラカップではなく、2リットルのサイズで買いたいというのだ。どうすりゃいいんだ、と助けを求めて振り返ったら、肝っ玉母さんが吹っ飛んできた。
「ペットボトルごと? 別に構わないけど、うちも商売だからね。4杯分として、1000円になります。砂希ちゃん、カップに氷入れて、一緒に渡して」
暴利だろうと思ったが、口出しする立場ではない。客は、おばさんの迫力に負けたのか、おとなしく1000円札を払い、カップとともに持っていった。実に頼もしい上司である。
ハーフタイムが終わる頃には、列の終わりが見え、通勤ラッシュのような戦場もおさまってきた。
ゲームが再開すれば、また閑古鳥となる。交代で休憩を取った。
バイト代は8000円と記憶している。ハーフタイム以外、ろくに働かなかったから、申し訳ないような気がした。
私は、サッカー観戦には向いていないが、サッカー場での販売には適性があるらしい。
教員に飽きたら、おばさんに雇ってもらおうかな……。
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
売店はともかくトイレが混むのが面倒くさい。
でも、最近はその野球もなかなか気合いを入れて見なくなったかな…
一昨年の夏に何年かぶりにジャイアンツが来たので友人と観戦して来ました。で、必ずビールはつき物で…(笑)ただ場内の廊下で売ってるビールと売り子が捌いてるビールの値段は同じでも量が少ないって事に気がつきました(笑)しかし、一度座ると買いに行くのが面倒なのでどうしても売り子を呼んでしまう(笑)それになかなかの美人さんやし…たぶん店側もそれを見越してるんじゃないかな(笑)
やっぱり商いはある程度フェイスが大事かと思い知らされた…
家のそば屋は味で勝負!!!ナ~ンチャッテね(^。^;)
サワーホワイト・アンバサ!!!飲んだことありますよ~
砂希さんは販売の適性があるのでしたら経営者のほうがいいかも(*^^*)ポッ
先生だから帳簿誤魔化すのも簡単そう。ヾ(・・ )ォィォィ
でも売店はアルコールが入ってなくても水商売だし、雨降ったら売れないし。
そうそう、公務員のバイトは見つかったら怒られるみたいですよ。
以前看護婦をバイトで使ったことがあります。
もちろん私服で働いてもらいました。(*^^*)ポッ
実のところ、野球もサッカーも、生で見たことがないの。
一度くらいは野球デートをしておけばよかったわ。
バレーボールのワールドカップは見に行ったけど、体育館にはビールなんか売ってないし(笑)
トイレが混むのは女性用だけかと思ったら、男性用も混むんだね。
野球だったら、チェンジのとき、いっせいに押しかけるんだろうか??
売り子のルックスは大事だね。
でも、愛想のよさはもっと大事だと思う。
陽水さんには、ぜひ、歌って踊れる蕎麦職人を目指していただきたいわぁ。
今、思い出したんだけど、たしかビールも売っていたんだよ。
サエコの叔父さんが担当してた気がする。
東京ドームで、ウチの女子生徒がビールの売り子をしているらしい…。
あまりほめられた行為じゃないけど、お金を稼ぐ苦労を体験できるね。
私は経営者向きじゃないですね。
誰かに使われているほうが楽です。
難しいことを考えなくてすむし、責任とらされるのもイヤだも~ん(笑)
しかし、上司が無能のときは、自分が上に立ったほうがいいと思うことでしょう。
公務員のバイトは厳禁ですね。
でも、教員のルールは緩いんですよ。
教科書や問題集を作ったり、執筆したりという兼業は、届けを出せばおおむね認められます。
英検や漢検のお手当ても、兼業届けさえあれば堂々と受け取れます。
スタジアムでの売り子は、絶対却下される自信があります(笑)
看護婦さんには、ぜひナース服でバイトしていただきたかったですね。
私もあんまりサッカーは観ないな~。
旦那様が見るけど、どこが面白いのかあんまり分からなかったりして。
自分では事務屋だと思っていたのですが、人と関わる販売の仕事もできるのかもしれせん。
食わず嫌いはダメですね。
しかし、サッカーの面白さはわからない…。
お仲間でよかった(笑)
だんだん慣れてくると仕事がおもしろくなったりします
体力仕事は苦手な私でしたが、田舎の育ちで
アルバイト先がなく、道路舗装の仕事を
高校1年生の時にやりました
要領がわかってくると自分に向いた作業をみつけ
返って喜ばれたり…今ではいい思い出です
道路舗装の仕事というのは、いわゆる土方ですよね。
高1でやるのは勇気がいります。
でも、いいお金になると聞きました。
肉体労働は女性向けの仕事ではありませんが、男性ならではの選択肢です。
女性だと、水商売があります。
私にはちょっと無理ですが、一度やったら他の仕事ができなくなるとか。
お堅い公務員でいいんです。