勤務先の高校で、年明け早々、窓清掃が行われた。
「業者さんが入りますので、窓ぎわの荷物は片づけておいてください」
担当者からの指示を受け、窓に目をやると、結構いろいろなものが置かれている。
書類や備品が入った、腰までの高さのスチール棚は動かせない。だが、その上の扇風機やレターケース、クリアーファイル、本棚などは別の場所に移さねばなるまい。
あいにく、部屋には私一人しかおらず、ほこりだらけの荷物をせっせと運ぶ作業が、今年の初仕事となった。ちと虚しい……。
前任者の忘れ物やゴミを捨てると、かなりスッキリしたが、どうにも始末に困るものもあった。
華道部顧問の持ち物、剣山だ。
窓ぎわには、生け花を突き刺して固定する、この針の山が3個もある。クラブで使用したあと洗い、日当たりのよい場所に干しておいたのだろう。ところどころ黒ずみ、かなり年季が入っているのに、指名手配中の殺人犯のような凄みがある。
「触りたくない」と私は思った。
だからといって、こんな危険なものを放置するわけにはいかない。気が進まなかったけれども、端の平らな部分を目指し、こわごわ手を伸ばした。金属特有の、ひんやりとした感触が伝わってくる。そのまま持ち上げようとしたが、想像以上の重みがあり、スルリと手から抜け落ちた。
弾みで、触れたくなかった先端を、指先がかすめる。「ヒッ」と小さな悲鳴を上げて手を見ると、血こそ出なかったが、皮がちょっぴり剥けていた。
さすがは凶悪犯だ……。
今度は軍手をはめ、慎重に移動を試みる。うっかり手を滑らせ、足の上に落とした日には、目も当てられない。1個、2個、3個と無事運搬を終え、私は安堵のため息をついた。
「失礼しま~す、窓清掃に来ました」
ようやく業者がやって来て、作業に取りかかる。この部屋の担当は、20代とおぼしき若い女性と、アラカン世代の初老男性のペアである。華奢で小柄な女性に、窓清掃という仕事は不向きなのではないだろうか。気になって見ていたら、決してそんなことはなかった。
アームの長い道具を使う上、脚立もあるから、高い場所にも楽々届くし、キビキビとよく働く。おかげで、たまりにたまった汚れがキレイに落ちた。
スチール棚の上の窓は、脚立を置くスペースがないため、靴下で棚の上に上がっている。もし、剣山を置いたままだったら、えらいことになっていたと、胸をなでおろした。
わずか10分ほどで、2人は全ての窓を磨き上げ、「失礼しました」と挨拶して出ていった。
「あら、剣山出しっぱなしで、すみませんでしたね」
翌日、華道部の先生からお詫びの言葉があった。
「いえいえ、このまま窓ぎわに置いておくと、防犯になっていいかもしれませんね」
私が剣山の威力を褒め称えると、彼女も大いにうなずいた。
「刺さったら痛いですよ~! でも、足は靴を履いているから、手を狙わないと。よじ登るとき、手をかけるところに仕掛けておけば、撃退できますね、きっと」
「あはははは」
剣山は、1個1000円前後で買えるらしい。
空き巣対策に、いかが?
楽しんでいただけましたか? クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
「業者さんが入りますので、窓ぎわの荷物は片づけておいてください」
担当者からの指示を受け、窓に目をやると、結構いろいろなものが置かれている。
書類や備品が入った、腰までの高さのスチール棚は動かせない。だが、その上の扇風機やレターケース、クリアーファイル、本棚などは別の場所に移さねばなるまい。
あいにく、部屋には私一人しかおらず、ほこりだらけの荷物をせっせと運ぶ作業が、今年の初仕事となった。ちと虚しい……。
前任者の忘れ物やゴミを捨てると、かなりスッキリしたが、どうにも始末に困るものもあった。
華道部顧問の持ち物、剣山だ。
窓ぎわには、生け花を突き刺して固定する、この針の山が3個もある。クラブで使用したあと洗い、日当たりのよい場所に干しておいたのだろう。ところどころ黒ずみ、かなり年季が入っているのに、指名手配中の殺人犯のような凄みがある。
「触りたくない」と私は思った。
だからといって、こんな危険なものを放置するわけにはいかない。気が進まなかったけれども、端の平らな部分を目指し、こわごわ手を伸ばした。金属特有の、ひんやりとした感触が伝わってくる。そのまま持ち上げようとしたが、想像以上の重みがあり、スルリと手から抜け落ちた。
弾みで、触れたくなかった先端を、指先がかすめる。「ヒッ」と小さな悲鳴を上げて手を見ると、血こそ出なかったが、皮がちょっぴり剥けていた。
さすがは凶悪犯だ……。
今度は軍手をはめ、慎重に移動を試みる。うっかり手を滑らせ、足の上に落とした日には、目も当てられない。1個、2個、3個と無事運搬を終え、私は安堵のため息をついた。
「失礼しま~す、窓清掃に来ました」
ようやく業者がやって来て、作業に取りかかる。この部屋の担当は、20代とおぼしき若い女性と、アラカン世代の初老男性のペアである。華奢で小柄な女性に、窓清掃という仕事は不向きなのではないだろうか。気になって見ていたら、決してそんなことはなかった。
アームの長い道具を使う上、脚立もあるから、高い場所にも楽々届くし、キビキビとよく働く。おかげで、たまりにたまった汚れがキレイに落ちた。
スチール棚の上の窓は、脚立を置くスペースがないため、靴下で棚の上に上がっている。もし、剣山を置いたままだったら、えらいことになっていたと、胸をなでおろした。
わずか10分ほどで、2人は全ての窓を磨き上げ、「失礼しました」と挨拶して出ていった。
「あら、剣山出しっぱなしで、すみませんでしたね」
翌日、華道部の先生からお詫びの言葉があった。
「いえいえ、このまま窓ぎわに置いておくと、防犯になっていいかもしれませんね」
私が剣山の威力を褒め称えると、彼女も大いにうなずいた。
「刺さったら痛いですよ~! でも、足は靴を履いているから、手を狙わないと。よじ登るとき、手をかけるところに仕掛けておけば、撃退できますね、きっと」
「あはははは」
剣山は、1個1000円前後で買えるらしい。
空き巣対策に、いかが?
楽しんでいただけましたか? クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
剣山ですか?全然縁が無いんですが、たしかに痛いでしょうね。罠として置いておくといいですよね。また、暴漢撃退に有効だと思いますが、持ち歩きにはちと難しい。
やっぱ置いておくのがいいってことかな。
剣山は家にもいくつかありますが…母は針を物ともぜずに掴んで洗ったりしてますよ(笑) 歳をとると皮まで厚くなるのかね(笑)(笑)
剣山を見るといつも思うのは死んだらこの針の山を歩くのかな~~って思ったりします(涙)
財務事務所に行くと各階に朝から晩まで担当階の掃除をしている女性たちがいます。
なんとなく気配を殺しながら掃除している姿を見ると「くノ一」を想像します。
「くノ一」には剣山や忍び返しは有効でしょうけど、時代は平成ですよ。
そんなことをしたら「盗みに入った学校で非合法な手段で痛めつけられた」と訴えられます。
発案者は泥棒に慰謝料請求されたりして~
おおっ、風水ですか!
幸運が舞い込むかも~♪
昔のマンガに、よく剣山が出てきましたが、実物を見るのは初めてです。
ネットで調べてみたら、扇形、丸形、角型など、花器に合わせた形があるんですね。
剣山の足もあるようです(笑)
奥が深い…。
ブラシの代わりに、髪をすいたらどうでしょう??
大惨事になりますね。
ええっ、剣山を鷲づかみ??
きっと、鍋つかみなしで、熱い取っ手を触れる口でしょう。
ウチの母も近いものがあるかも(笑)
私はちと無理…。
顔の皮は厚いんだけどね~。
地獄の種類はたくさんあって、生前の行いで振り分けられると言われているよ。
私は飢餓地獄かな?
食い意地の張った罪です(笑)
そうそう、気配を消して邪魔にならぬよう、気をつかっていますね。
足や腕には、黒のアミアミが見えませんでした?
伊賀者か甲賀者か、といったところでしょうか。
泥棒が剣山で怪我をしたところで、問題ないですよ。
たまたま干していただけですから(笑)
有刺鉄線っていう手もありますね。
窓の装飾にいいかも!
いつか、どうしても合わない先生の椅子に剣山を置いちゃいなよ。(←小声)(^^)
裸足で乗ればツボのいい刺激になるかな…?
うん、学校の予算から清掃費を割り振って、トイレ、受水槽、床、窓、樹木剪定などの外注をしているよ。
今年、割安のトイレ清掃業者を頼んだら、夏に倒産してしまい、新しい業者が決まるまで職員が掃除した、なんてこともあったな。
小さな剣山を、合わない先生の靴に入れるとか(笑)
やり返されたりして~!
裸足で乗ると、刺さって抜けなくなるかもよ…。
子供や生徒・職員では、掃除できる範囲も限られますからね。
でも、日直に当たってしまい、お疲れ様でした。
そして、華道部顧問の先生には、剣山がかすった痛みと砂希さんの反撃?は
気付いてもらえなかったようですね。
生徒数が多かった時代は、トイレなども生徒が掃除していた気がします。
今は変わりました。
掃除をさせることにクレームをつける親がいたり、家庭で掃除をする習慣がなかったりして、清掃活動もひと苦労ですよ。
我が家の窓も掃除しましたが、年に一度キレイにしただけでは意味ないですね。
月イチくらいでやらないと、すぐ汚れてしまいます。
業者さんの窓拭きグッズが欲しいと思うこの頃…。