その日は多人数の保護者にメールを送る予定があり、添付ファイルに貼り付けたURLが正しく機能するかのチェックが必要だった。
「自分のスマホに送ってみよう。そこからサイトに飛べればオッケーだから」
しかし、Outlookが不調で、スマホにメールが届かない。何どもやりなおして、ようやく正常に作動することが確認できた。窓を見ると外は暗く、すでに日没を迎えたことを知る。チャチャッとメールを送り、時計を見た。
「大変。もうこんな時間になっちゃった。急いで帰らなくては」
机上の片づけもそこそこに、洗った弁当箱をリュックに入れて、コートを羽織るや否や職員室を飛び出した。今なら急行に間に合う。その一心で駅に向かった。
「よーし、乗れた乗れた」
意中の電車の中で、スマホを取り出そうとした。ボスに翌朝の予定について連絡したかったからだ。財布やタオルの下に隠れているかと思ったけれど、それらしいものは見当たらない。
「うーむ。どうやら職場に忘れてきたみたいだ……」
帰る直前までスマホを見ていたことを思い出す。きっと机の上に置きざりになっているのだろう。今さら取りに戻ることはあり得ない。どうせLINEは家族からしか届かないし、なければないで何とかなるはず。それ以上は考えずに読みかけの本を開いた。小林弘幸先生流に言えば、自律神経を乱さず平常心で過ごせる状態だったはずだ。
「ただいまぁ」
帰宅してすぐにしたことは、古いスマホの充電であった。引退したスマホでも、Wi-Fiがあればある程度は活用できると知っている。どこまでできるか、試してみようではないか。
機種変更して以来、2年間使っていないので、バッテリーがすっからかんになっている。しばらく経つと起動しWi-Fiにつながった。画面には「SIMカードを挿入してください」とのメッセージが出てくる。通話はできないだろうが、それ以外の機能が使えるかを確認しようと思った。
まずはメールにアクセスする。「SIMカードなし」と表示しつつも送受信ができ、不要なダイレクトメールの削除も可能だ。PCアドレスにメールしてみたら、ちゃんと届くことに少々驚く。
次にショートメールにチャレンジした。何しろ、ボスに連絡したかったので、これが一番気になっていた。過去のやり取りは機種変更前で止まっている。予想としては、できないのではないかと絶望的な気持ちでいた。
「できなかったら、夫のスマホをひったくって、使わせてもらえばいいや」と安易に考えないでもなかったが、ボスが混乱するといけない。勇気を出して「明日の連絡」として、おそるおそる送信したら、エラーメッセージは表示されなかった。「おやおや」と画面を見守っていると、5分後にはボスから「承知しました」の返信が表示される。ちゃんと届くことがわかり、結構びっくりする。
「なーんだ、古いスマホでできちゃうんだ。へー」
夫のスマホを強奪せずに済んだことに安堵である。
しかし、LINEはデバイスが変わったことで、本人確認が必要となるらしい。認証のためのショートメッセージが送られても、なぜか古いスマホには届かない。おそらく現在のデバイスでしか開けないのだろう。仕方なくLINEは諦めた。どういう仕組みになっているのか、ひたすら首を傾げるばかりだ。Xやインスタ、FacebookはPCでもできるようになっているので、何の不自由もなく「いいね」の確認ができた。ついでに乗換案内もサクサクと動き、翌日の電車をチェックした。
寝る前にはアラームを設定する。スマホには、目覚まし時計という重要な役割を期待しており、私が寝坊しないで職場に行かれるかどうかがかかっていた。これも難なくクリア。ぐっすり眠った後は、ちゃんと4時53分に起こしてくれたので、朝の爽やかな空気を肺の中にたっぷり吸い込んで職場に向かうことができた。
職場で、まずスマホを探す。
「あった、あった」
予想通り、机の上に置きっぱなしになっていた。上にメモが載っていたので隠れてしまい、見落としたのであろう。画面を開くと、昨日チェックできなかった認証コードが届いていた。ついでに、ボスに送った「明日の連絡」も表示されていた。謎だったが「まあいいや」と流すことにする。
こうして、意外と簡単に、スマホのなかったひと晩を乗り切ったわけだ。「いつ忘れても大丈夫」という妙な自信がついてきたが、友達が多い人は、同じようにはいかないだろう。
しかし、娘には強く叱られた。
「何かあったら電話できないと困るんだよ! 絶対に忘れないで」
まあ、そうですね……。
調子に乗らないよう自戒しなくては。
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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「自分のスマホに送ってみよう。そこからサイトに飛べればオッケーだから」
しかし、Outlookが不調で、スマホにメールが届かない。何どもやりなおして、ようやく正常に作動することが確認できた。窓を見ると外は暗く、すでに日没を迎えたことを知る。チャチャッとメールを送り、時計を見た。
「大変。もうこんな時間になっちゃった。急いで帰らなくては」
机上の片づけもそこそこに、洗った弁当箱をリュックに入れて、コートを羽織るや否や職員室を飛び出した。今なら急行に間に合う。その一心で駅に向かった。
「よーし、乗れた乗れた」
意中の電車の中で、スマホを取り出そうとした。ボスに翌朝の予定について連絡したかったからだ。財布やタオルの下に隠れているかと思ったけれど、それらしいものは見当たらない。
「うーむ。どうやら職場に忘れてきたみたいだ……」
帰る直前までスマホを見ていたことを思い出す。きっと机の上に置きざりになっているのだろう。今さら取りに戻ることはあり得ない。どうせLINEは家族からしか届かないし、なければないで何とかなるはず。それ以上は考えずに読みかけの本を開いた。小林弘幸先生流に言えば、自律神経を乱さず平常心で過ごせる状態だったはずだ。
「ただいまぁ」
帰宅してすぐにしたことは、古いスマホの充電であった。引退したスマホでも、Wi-Fiがあればある程度は活用できると知っている。どこまでできるか、試してみようではないか。
機種変更して以来、2年間使っていないので、バッテリーがすっからかんになっている。しばらく経つと起動しWi-Fiにつながった。画面には「SIMカードを挿入してください」とのメッセージが出てくる。通話はできないだろうが、それ以外の機能が使えるかを確認しようと思った。
まずはメールにアクセスする。「SIMカードなし」と表示しつつも送受信ができ、不要なダイレクトメールの削除も可能だ。PCアドレスにメールしてみたら、ちゃんと届くことに少々驚く。
次にショートメールにチャレンジした。何しろ、ボスに連絡したかったので、これが一番気になっていた。過去のやり取りは機種変更前で止まっている。予想としては、できないのではないかと絶望的な気持ちでいた。
「できなかったら、夫のスマホをひったくって、使わせてもらえばいいや」と安易に考えないでもなかったが、ボスが混乱するといけない。勇気を出して「明日の連絡」として、おそるおそる送信したら、エラーメッセージは表示されなかった。「おやおや」と画面を見守っていると、5分後にはボスから「承知しました」の返信が表示される。ちゃんと届くことがわかり、結構びっくりする。
「なーんだ、古いスマホでできちゃうんだ。へー」
夫のスマホを強奪せずに済んだことに安堵である。
しかし、LINEはデバイスが変わったことで、本人確認が必要となるらしい。認証のためのショートメッセージが送られても、なぜか古いスマホには届かない。おそらく現在のデバイスでしか開けないのだろう。仕方なくLINEは諦めた。どういう仕組みになっているのか、ひたすら首を傾げるばかりだ。Xやインスタ、FacebookはPCでもできるようになっているので、何の不自由もなく「いいね」の確認ができた。ついでに乗換案内もサクサクと動き、翌日の電車をチェックした。
寝る前にはアラームを設定する。スマホには、目覚まし時計という重要な役割を期待しており、私が寝坊しないで職場に行かれるかどうかがかかっていた。これも難なくクリア。ぐっすり眠った後は、ちゃんと4時53分に起こしてくれたので、朝の爽やかな空気を肺の中にたっぷり吸い込んで職場に向かうことができた。
職場で、まずスマホを探す。
「あった、あった」
予想通り、机の上に置きっぱなしになっていた。上にメモが載っていたので隠れてしまい、見落としたのであろう。画面を開くと、昨日チェックできなかった認証コードが届いていた。ついでに、ボスに送った「明日の連絡」も表示されていた。謎だったが「まあいいや」と流すことにする。
こうして、意外と簡単に、スマホのなかったひと晩を乗り切ったわけだ。「いつ忘れても大丈夫」という妙な自信がついてきたが、友達が多い人は、同じようにはいかないだろう。
しかし、娘には強く叱られた。
「何かあったら電話できないと困るんだよ! 絶対に忘れないで」
まあ、そうですね……。
調子に乗らないよう自戒しなくては。
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そんな使い方ができるとは!
スマートウォッチを使い始め、スマホの重量が気になります。
家以外に置き忘れせぬよう、気を付けます。
私の機種は古くて、もはや売れない状態ではないかと……。
家に置いて正解でした。
スマホは重いけれど、PCを持ち歩くことに比べれば軽いです(笑)
忘れ物にはお互い気をつけましょう!