小田急山のホテルには、ちょっとした思い入れがある。
高校生のときから、秋里和国(わくに)さんの漫画が好きだった。ある作品で、主役の女の子が意中の男の子を山のホテルに誘う場面を思い出す。結局、彼らはお泊りせずに帰るのだが、外観も部屋もシチュエーションも「何てロマンティックなんでしょう」とウットリしたものだ。いつかは行きたい場所のひとつになっていたから、銀婚旅行でそれが実現したことを、私はこっそり喜んでいた。
漫画と違って、私たちが泊まったのはトリプルルーム。
三人家族にはちょうどよい。ついでに、三角関係の人たちにも、喜ばれるかもしれない。
ベッドの向かい側にはテレビがある。
バスルームの外にはドレッサー。
しかし、女子力のない私と娘は、ついにこの場所を使わなかった。それをいいことに、夫がカバン置き場にしていたところは申し訳なかったと思う。
山のホテルは、色とりどりの花の咲く庭園が有名だが、4月上旬はまだまだ。
5月上旬から下旬が見ごろというから、これからが本番であろう。
評判通り、フレンチディナーは花丸。スタッフのサービスも非常によかった。
しかし、朝食ではちょっとした問題があった。
「おはようございます。こちらへどうぞ」
スタッフの男性に案内された席は、なんとオヤジ団体客の巣窟であった。若手がいないところを見ると、社員旅行ではなさそうだ。研修か会議か。脂ののった中高年ばかりが20人、数人ずつ5つのテーブルに分かれて座っていた。
私たちが勧められたのは、オヤジ席の隣である。椅子を引いた途端、ぶしつけな視線が飛んでくる。時おり「うっへっへっへ」だの、「いいっひっひっひ」などといった下卑た笑い声も聞こえてきて、朝からげんなりした。一角には、整髪料の臭いと加齢臭が漂い、二酸化炭素濃度も濃いようだ。
「お母さん、この席いやだ。替えてもらおう」
娘が静かに立ち上がり、スタッフを探しにいった。
「失礼いたしました。別のお席にご案内します」
かくして、落ち着いた席に替えてもらったのだが、満席だったわけではない。空いていた席はいくつもあったのに、なぜ、あの席が選ばれたのか。どうにも理解しがたい。
意思表示をすることは大事だ。気に入らなかったら交渉する。おかげで問題は解決したし、美味しい朝食をいただくことができた。
「うえっへっへっへ」
下品な笑い声が近づいてきた。先ほどのオヤジ団体が、朝食を終え引き揚げてきたのだ。私たちが席を移動したことなど、まったく気にしていないように見える。考えてみれば、彼らは何も悪いことをしていないのだから、そんなものだろう。
出発前に、ホテルの外観を撮影する。
霧が深くて、全景が見えないところが憎い。
Facebookのカバー写真にしたかったから、かなり残念である。
秋里和国さんも、このレトロなホテルに魅せられたのではないか。
同感だ。霧に浮かぶクラシカルな姿も、なかなか乙なものである。
リベンジで、また泊まりに来たいものだ。
次も、トリプルルームを予約しなくちゃ。
↑
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
高校生のときから、秋里和国(わくに)さんの漫画が好きだった。ある作品で、主役の女の子が意中の男の子を山のホテルに誘う場面を思い出す。結局、彼らはお泊りせずに帰るのだが、外観も部屋もシチュエーションも「何てロマンティックなんでしょう」とウットリしたものだ。いつかは行きたい場所のひとつになっていたから、銀婚旅行でそれが実現したことを、私はこっそり喜んでいた。
漫画と違って、私たちが泊まったのはトリプルルーム。
三人家族にはちょうどよい。ついでに、三角関係の人たちにも、喜ばれるかもしれない。
ベッドの向かい側にはテレビがある。
バスルームの外にはドレッサー。
しかし、女子力のない私と娘は、ついにこの場所を使わなかった。それをいいことに、夫がカバン置き場にしていたところは申し訳なかったと思う。
山のホテルは、色とりどりの花の咲く庭園が有名だが、4月上旬はまだまだ。
5月上旬から下旬が見ごろというから、これからが本番であろう。
評判通り、フレンチディナーは花丸。スタッフのサービスも非常によかった。
しかし、朝食ではちょっとした問題があった。
「おはようございます。こちらへどうぞ」
スタッフの男性に案内された席は、なんとオヤジ団体客の巣窟であった。若手がいないところを見ると、社員旅行ではなさそうだ。研修か会議か。脂ののった中高年ばかりが20人、数人ずつ5つのテーブルに分かれて座っていた。
私たちが勧められたのは、オヤジ席の隣である。椅子を引いた途端、ぶしつけな視線が飛んでくる。時おり「うっへっへっへ」だの、「いいっひっひっひ」などといった下卑た笑い声も聞こえてきて、朝からげんなりした。一角には、整髪料の臭いと加齢臭が漂い、二酸化炭素濃度も濃いようだ。
「お母さん、この席いやだ。替えてもらおう」
娘が静かに立ち上がり、スタッフを探しにいった。
「失礼いたしました。別のお席にご案内します」
かくして、落ち着いた席に替えてもらったのだが、満席だったわけではない。空いていた席はいくつもあったのに、なぜ、あの席が選ばれたのか。どうにも理解しがたい。
意思表示をすることは大事だ。気に入らなかったら交渉する。おかげで問題は解決したし、美味しい朝食をいただくことができた。
「うえっへっへっへ」
下品な笑い声が近づいてきた。先ほどのオヤジ団体が、朝食を終え引き揚げてきたのだ。私たちが席を移動したことなど、まったく気にしていないように見える。考えてみれば、彼らは何も悪いことをしていないのだから、そんなものだろう。
出発前に、ホテルの外観を撮影する。
霧が深くて、全景が見えないところが憎い。
Facebookのカバー写真にしたかったから、かなり残念である。
秋里和国さんも、このレトロなホテルに魅せられたのではないか。
同感だ。霧に浮かぶクラシカルな姿も、なかなか乙なものである。
リベンジで、また泊まりに来たいものだ。
次も、トリプルルームを予約しなくちゃ。
↑
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
小田急山のホテルは霧に包まれても素敵な佇まいですね。
私も一度は泊まってみたいものです。
山のホテルは漫画や小説でしかお目にかかっていません。
素敵なホテルですね。
笹木家なら合うかもしれないけど、我が家では、正統なお客様から白眼視されるに違いありません。
下品な笑い声を立てる集団と一緒にされるのは嫌だあ!
大きなベッドが3つも。
こういうお部屋もあるのですね。
三角関係には喜ばれないのでは?ベッドを三角形に並べ直さなきゃ。
あるいは退廃の勧めか…
いや、一晩中話し合うのか…
それも漫画チックです。
ありがとうございます。
長い長い25年でした。
霧に隠れてしまいましたが、晴天に見る楽しみを残してくれたと思えば気になりません。
また行きたいわぁ~。
新宿からだと直通バスがあります。
2時間半もかかるのが恐怖ですが……。
このネタで何篇書いたことか(笑)
私自身も嬉しいんです。
24歳で結婚したので、結婚生活25年というのは、既婚が未婚を上回った証なんですね。
これからはどんどん増えていきます。
忍耐と努力の結晶でしょうか。
ホテル内には外国人客がたくさんいました。
箱根だからかもしれませんね。
フレンチレストランもドレスコードはありません。
気負わず気取らず。
お料理にもサービスにも手抜きなし。
素敵なところでしたよ。
昇進記念にどうでしょう(笑)
「うえっへっへっへ」は思い当たる節がたくさん(*゚.゚)ゞポリポリ
会の理事をやって居る頃は東北管内の交流を図る目的でけっこう温泉ホテルで研修がありましたが、やっぱりどうしてもそうなっちゃいます~
落ち着いた雰囲気の格調高いホテルのようですね。ツツジが咲いたら見事な庭になることでしょう(*^^*)ポッ
三角関係にはどう考えても向いてないのでは…(笑)
実は、オヤジ軍団がチェックアウトする場面も見てしまいました。
ちゃんとスーツを着込んで、別人のようでしたよ。
さっきまで、下卑た笑い声を立てていたくせに。
単品なら無害でも、集団になると有害でいけません。
普通の温泉旅館でやればよかったのに。
三角関係もまた楽しいかもしれませんよ。
同室に泊まれる親子、義父母とはあんまり・・・
様々な家族が存在するのだから、トリプルもありですね。
オヤジもオバサンも、集団だとパワーは倍じゃなく乗数。
羽目を外さず、余生を楽しめたらいいなと痛感します。
おそらく、オヤジ連中は、自分たちが人に迷惑をかけているとは思っていません。
食事をしてときおり笑っただけですからね。
でも、それがイヤな人もいると自覚してほしいです。
ロマンスグレイを目指すとか、見た目にも気をつかってくれるといいのに。
もし、昔からトリプルルームがあったなら、3姉妹で泊まりたかったわぁ。
誰かがエキストラベッドにならないから便利なんですよ。