《2》弁証法の基礎的概念を俯瞰する
2)弁証法3法則と「世界」の意味
弁証法の構造にいよいよ立ち入ってみると、エンゲルスが定義したように、3つの法則にまとめることができるとしたのである。構造とはやさしく言い換えれば、骨組みでありそれが
3「対立物の相互浸透」とはどういうことか
4「量質転化」とはどういうことか
5「否定の否定」とはどういうことか
という3法則の解説になっている。
ただ初心者はこのままそれぞれの法則を理解するよう努めねばならないが、三浦さんは3法則を並列にならべてしまっている。本当は3法則が弁証法の体系のなかでどのように位置づけられるか、それぞれがどう互いに連関しているか、3法則にまとめたメリットは何でデメリットはなにであるかを説かねばならなかった。
もとは一つであった物質が、運動するときの、ある側面からみれば相互浸透であり、別の側面からみると量質転化だ…というものなのだが、三浦さんはそれぞれ3つ法則がある、としてしまった。
しかし、先にも言ったように、教科書としてはこれで良いのであろう。
私たちがこの3法則を学ぶと、よく陥りがちな間違いがある。それは3法則は何にでも当てはまるので、それで弁証法がわかった気になってしまうことである。
しかし弁証法は、対象の運動性を3法則に分類することではない。例えば山に降った雨が地下にしみ込んで、それが量質転化したものが川である、といったところで何も意味はない。何の役にもたたない。あくまで対象の現実の運動、あるいは運動性を世界の運動から扱うものである。
対象に、これは量質転化、これは相互浸透などと当てはめるのではなく、世界の運動発展のなかに自分の専門分野を位置づけることにある。そのための弁証法だからだ。
対象をきちんと具体的に位置づけ、その運動過程における弁証法性を捉えて、対象を究明するのが弁証法の役割である。