夕方の直島埠頭で
今から11年以上前の東京での話なので、私が上海に拠点を置く前の話。長年仕事をしたある編集部の編集者と編集長から、私の人物写真は背景がボケてないので写真として良くないと言われ、唖然とした事があった。それも、当時同じ雑誌の仕事をしていて、私より年上で名の知れた職業写真家も言っていましたよ、と言われたのだ。馬鹿げた話である。自分に確たる自信のない奴らが、他人の言葉を借りて使う言い回しの典型パターン。
その後、その編集者から一度褒められた事があった。「今回の写真は背景がボケていてとても良いですね。今後もこんな感じてお願いします」と言われたのだ。そのお褒めをいただいた写真は、人物の背景に大きな窓があり、その背景は被写体から10m以上後ろに大きな木があるようなシュチュエーションなので、どんなレンズを使っても背景はボケるに決まっている。この雑誌の仕事はインタビュー写真がほとんどなので、会社の狭い応接室や会議室などで撮影する事が多く、人物と背景までの距離を取る事はほとんど不可能なのだが、たまたまカメラの引きが取れ背景が抜けていたので撮れた写真だった。
一度だけそのボケ編集者どもに、レンズの特性として、被写体から背景までの距離が長ければ、そして望遠レンズの絞りを開けぎみにすればボケ量が増えるが、狭い室内で引きのとれない場所では無理。また、写真の背景をボカす時に、何でもかんでもボケれば良い訳ではない。仮に背景をボカしたとしても、背景に意味がある場合はボカし過ぎると、その背景を選んだ意味がなくなるのだと説明。でも当然そのボケどもには理解出来ない話なので、馬の耳に念仏となったのはいうまでもない。その後その二人には会ってないし仕事もやりたくないが、おそらく今も進歩してないだろうな。結構多いんだよね、こんな編集者達。
トップの写真は、今回から新しく仲間入りしたFujinon 50mm f1.4開放での撮影。ピントはカボチャなのだが、手前のボケ方は私にとっては丁度よい。これ以上手前がボケるとボケが煩くなり目障りになる。というより、50mmf1.4開放でこれ以上のボケを望む場合は、f0.95クラスのレンズを使うか、ティルトレンズを使うしか方法はない。
この写真を先ほどのボケ編集者どもが見たら、カボチャにピントを合わせているのに、何で背景の雲や島にピントが来ているんだ?もうちょと雲や島がボケた方が良いのではないか?と言われそうな気がするが、是非言って欲しいなぁ。