木村一基が王位になった。
ということで、前回はそのお祝いに木村一基王位の名局を紹介したが(→こちら)、今回もその持ち味が存分に出た珍局(?)を。
2012年、第70期B級1組順位戦。
相手は前回と同じく藤井猛九段。
藤井の角交換振り飛車から、やはり木村が自陣飛車を打つ独特の戦いを見せる。
むかえたこの局面。
ここからの2手を当てたアナタは気ちが……もとい個性派プロ級の腕前と言っていいでしょう。
やはり、ブロンソンズのごとく「木村一基ならこうやるね」と、したり顔で選びたいのは……。
▲36飛が、のけぞるような異能感覚。
まあ、そりゃ先手陣はコビンが攻められていて、どこかで△66歩の突き捨てとかイヤらしいけど、それにしたって、スゴイところに手が伸びるもんだ。
さらに、これに対する藤井の手もブッ飛んでいる。
△66飛と打ちこんで勝負と。
先手が飛車を投入してまでコビンを受けているのに、「ゆるさん」と歩の頭に飛車。
なんだか、意地と意地のぶつかり合いがすごく、2枚の飛車の形も異常で目が回る。いやあ、熱いですわ。
この将棋は中終盤の攻防も見ごたえたっぷりで、ぜひ盤に並べて味わってほしいが、終盤の決め手がまた木村っぽかった。
△46角と後手が銀を取ってせまったところ。
▲同金は△57銀で受けが難しいが、ここではすでに見切りであった。
▲58玉とあがるのが、「千駄ヶ谷の受け師」らしい力強い玉さばき。
以下、藤井も懸命に攻め続けるが、最後まで切っ先は届かなかった。
それにしても、木村の飛車とか竜は、いつも自陣にいるなあ。
(羽生善治の寄せ編に続く→こちら)
(木村一基の無冠時代の苦闘は→こちら)