イケメンと美人はなぜ「退屈」なのかについての考察 その3

2016年05月26日 | モテ活

 前回(→こちら)の続き。

 クラスの人気者タカツ君のギャグに、大爆笑するタナコちゃん。

 これに対して彼女の友人セリコちゃんは

 

 「どんなおもしろいことを言ったのか」

 

 当然そこを問うわけだが、その答えというのが、思いもかけないものだった。

 タナコちゃんは、大口を開けたまま首を振ると、

 

 「わからん、うるさくて、なに言うてるか、聞こえへんかってん」



 これを耳にしたとき、私は大げさでなく、座っていたイスから転げ落ちそうになった。

 な、な、なんやてえ?

 なにをいっているのか、聞こえてないのに、

 「めっちゃ、おもろい」

 と爆笑。まさかの展開。

 あまつさえ、セリコちゃんの問いを受けて、



 「ねえねえタカツ君、さっきなんてギャグやったの? 聞こえなかったから、教えてよ



 そこでもう一回、「ギャグ」を再現してもらって

 「あらためて笑い直す」

 という行為をするにおよんでは、これはもう、ヤングの笑いというのが、センス理屈じゃないことは、火を見るよりも明らかである。

 そう、彼女らにとっては、男子のギャグがどうとかトークがどうとかは、心底どうでもいい

 タカツ君はなにをいっても、それこそ「布団がふっとんだ」でもいいのだ。

 きっと、それでも山をも揺るがすくらいに笑ってくれる。

 聞こえなかったギャグで爆笑し、もう一度確認しなおして、笑いなおすくらいやもの。

 なんてシュールな光景なんや……。

 男前ならどんなギャグでも、果ては、

 

 「聞こえてなくてもOK」

 

 なのだ。まるで達人が放つ、空気投げみたいではないか。

 当時はそんな言葉なかったけど、これには思わず


 「リア充おそるべし」



 うなったものである。

 かように、男前というのは、笑いに対するハードルが、凡人やブ男よりも相当に低い

 愛があるから、なんでも笑ってくれる。

 そこで生まれるのが例の、



 「オレは、笑いのセンスがある」



 という、関西でありがちなカン違いである。

 よく、非関西圏の人らが、



 「関西人は、自分のことをおもしろいと思っているのがウザイ」



 なんて眉をしかめることがあるけど、これはまったくその通り。

 同じ関西人でも、しんどいときが多いのです。

 特にダウンタウン出現以降は、



 「結局、笑いのセンスがあるヤツが、一番カッコイイ」



 という価値観が支配的になったので、そのめんどくささも倍増だ。しかもこれは、今では関西以外にも伝播したくさいし。

 そのカン違いに「男前特権」が、大きく貢献していることは間違いないだろう。

 なんでもOKになると、その人のポテンシャルは育たない。

 野球でいえば、棒球しか投げないのに、それをチームメイトが

 「ナイスボール!」「今日も走ってるよ!」

 しか言わなければ、それ以上のボールを投げる必要もない。

 そこを「実力」とカン違いした男子は、目も当てられない。

 お笑いコンビ、キングコング西野さんや、関西で一時期あった「小劇団ブーム」のときの中島らもさんは、人気絶頂のときに



 「なにを言っても爆笑する女子」



 に悩まされてきたそうだが、こういう人たちはそれが「幻想」であることが、理解できる知性の持ち主だ。

 一方で、「甘やかされた」男前の人気者は、このような事情があって、ずーっとおもしろくないまま成長してしまうのだ。

 今田耕司さんはかつて、男前でさわやかで、なんのてらいもない人気者だった、若手のころの石田靖さんを見て、



 「一番、この世界に入ってきたらアカンやつや思った」



 とおっしゃっていたが、いいたいことはよくわかる。



 「だれもつっこまない」

 

 ことによって、レベルが低いまま、という意味では、彼らのやることは「オヤジギャグ」と並列の存在。

 それをそのまま「男前特権」の効かない、それどころか、多くはマイナスに作用するわれわれ男子にぶつけられると、もう地獄である。

 でも、スルーすると女子から



 「顔がいいのをねたんで、あえて笑わないなど、なんと醜い心の持ち主なのか!」



 とか責めたてられたりして、もうどうしたらいいのやら。


 (続く→こちら

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