前回(→こちら)の続き。
「男前や美人は退屈」
との偏見の例として、高校時代のクラスメートである、タカツ君を例に挙げてみた。
彼のおもしろさに不自由したギャグが、女子に死ぬほどウケるので、ねたんでいるのか。
それとも自分こそが、天才のセンスに気づかない、愚昧な男なのかと疑心暗鬼におちいったほどだが、その疑惑が晴れたのが、ある月曜日の朝のことだった。
朝礼前の時間、タカツ君は教室の前に立ってコントを披露していた。
これは当時うちのクラスの恒例行事であって、タカツ君とその仲間たちが、おもしろコントを披露し、爆笑をとるのだ。
といっても、さすがにオリジナルを考えるのは大変なよう。
ちょうど、ダウンタウンの『ごっつええ感じ』が大ブームだったこともあって、前日の夜に松本人志さんが言っていたセリフを、そこで再現することで代用していたのだった。
余談だが、彼らは文化祭の出し物でも『ごっつ』の完コピを披露していた。
私が全力で、クラス活動から逃亡したのは言うまでもない。
こういうのは、まあ、
「そんなの関係ねえ!」
「ルネッサ~ンス」
「ワイルドだろ~」
「ラッスンゴレライ」
など、みなさまも学校の昼休みなどに、やっていた記憶はあるのではないか。
今から見れば、人気番組や流行語大賞にノミネートされそうなギャグをコピーするなど、おおおよそ
「オレは笑いのセンスがある」
と自認する者ならば、絶対にやってはいけない行動だが、これを
「いたたまれない」
と取るのは我々サイレントマイノリティーだけで、もう女子の笑いを、ドッカンドッカンかっさらう。
一番衝撃的だったのは、ちょっと遅刻して教室に入ってきた、タナコちゃんという女子の反応。
入室するなり彼女は、タカツ君らのパフォーマンスを目にし、すぐさま笑いだした。
さすがは爆笑王である。というか、本家のダウンタウンより、全然ウケている。
それを見て、仲間たちも
「おいタカツ、オマエもう、吉本行くしかないで。絶対売れるわ」
などと、合いの手を入れ、女子も
「キャー、じゃあサインちょうだーい」
などとノリノリだ。
その光景は今でいう「リア充」だが、はた目には「地獄絵図」でもある。
とそこに、やはり遅れて入ってきたのが、タナコちゃんの友人セリコちゃん。
彼女は、涙を流して腹を抱えている友人に、
「ねえねえ、なにが、おもしろいの?」
それに対して、タナコちゃんは
「うん、またタカツ君が、メッチャおもろいこというてん」
やはり、タカツ君のファンであるセリコちゃんはパッと期待に目を輝かせて、
「なんていうてたの?」
それに対するタナコちゃんの答えというのが、エラリィ・クイーンもビックリの、強烈なサプライズ・アタック。
教室じゅう……はそうでもないけど、私をふくめ「非イケてるチーム」の面々が、騒然となる一撃だったのであった。
(続く→こちら)