NHKスペシャル「シルクロード」を見る。
人にはそれぞれ「伝説の未見作品」というのが存在し、
「いつか見られるかなあ」
「もしチャンスがあれば、いくらまでなら出すだろう」
なんて胸を焦がすことになる。
私の場合はたとえば、『ウルトラセブン』の欠番作品である第12話「遊星より愛をこめて」とか。
カルト映画ファンにはおなじみ、丹波哲郎の怪演が光る、トラウマ必至の『ノストラダムスの大予言』とか。
洋画なら当時ソフト化されてなくて、なんとか観たかったエルンスト・ルビッチに、プレストン・スタージェスなどハリウッドのスクリューボール・コメディ。
テレビでは恩田陸、山本弘など幾多のSF作家に影響をあたえて、エッセイなどでとにかく頻出するNHKの少年ドラマシリーズ。
この中でスペル星人は特撮ファンの友人にビデオ(VHSの時代)を手に入れてもらって、『愛國戰隊大日本』やDAICON版『帰ってきたウルトラマン マットアロー1号発進命令』(今はアマゾンプライムで観れる!)などと一緒に鑑賞。
ルビッチは大阪の地下映画館ACTシネマ・ヴェリテで観ることができたし、スタージェスはWOWOWで放送してくれたりしたけど、『ノストラダムス』はまだ未見。
少年ドラマシリーズはそもそもフィルムが存在しないため(当時は使ったフィルムに上書きして再使用していたため)、ほとんど見る可能性はないと言っていい。
まあ、今はネットがあるから、見ようと思えば意外と簡単に見れたりもするけど(ありがたいことです)、そんな中にNHK特集の「シルクロード」も入っていたわけだ。
「シルクロード」というのは、1980年代に放送されたドキュメンタリー番組。
『三国志』好きなら名前はよく聞く長安の歴史や、当時はじめてカメラが入ったという始皇帝の墳墓。
西に行けばウイグルの街やカシュガルなど、われわれ日本人のイメージする「中華」とは違う、多文化で他民族な大陸を味わうことができる。
これがですねえ、なんで見たかったのかといえば、旅行好きなバックパッカーだから。
といっても、中国に行ったことはないし、シルクロードの中継点である街も訪れたことはないし、とりたててアジアにロマンを感じていたわけでもない。
ではなぜ、そんなにこの番組が見たかったのかと問うならば、これはもう先輩のバックパッカーが語りまくるからである。
旅行好きは当然、旅行にまつわる本も好きである。
で、そういう旅行記とか旅行マンガに、よく出てくるんだ、これが。
世代的に、こちらの一回り上くらいの作家さんなどに多い。
グレゴリ青山さんのように、これきっかけで「鑑真号」に乗って中国に出かけるとか、モロ影響を受けている人もたくさんいて、こういうのを山盛り読まされると、行かなイカンと言う気になる。
『名探偵コナン』ファンの女子が『機動戦士ガンダム』を勉強したり、クエンティン・タランティーノの映画を愛するあまり、三池崇史や石井輝男の映画を観まくるとか、それみたいなもの。
まあ、一種の聖地巡礼ですね。
それで、ずーっと「観んとなあ」なんて思いながら、機会もなく、そもそも古い番組だから今では熱意も冷め気味だったが、少し前にテレビで再放送したのを機に鑑賞した。
で、これがなかなかおもしろかったのだ。
なんせ40年前くらいのことだしNHKだから地味でテンポも遅いんだけど、それが昭和の味である。
フィルム撮影の湿った画面もなつかしいし、なにより今となってみれば資料的価値が高い。
「なんか、ロールプレイングゲームのフィールドみたい」
ということで、ゲーム好きな人も結構楽しめるんではないか。
(続く)