「ボクたちは、ダブルスの《じゃない方》選手です」
テニスのダブルスは楽しい。
ダブルスはシングルスとくらべて、テレビ放映はほとんどないし、トップ選手もあんまり出てない。
なもんで、ふだんはマイナーなあつかいだけど、もっと取り上げられてもいいのでは、といつも思っている。
そんなダブルスの最大の特徴といえば、コートに4人も人がいること。
ふだんより2倍の選手のプレーを見ることができて、その意味ではオトク。
なのだが、このテニスのダブルスペアにも、よく見るとコンビ芸人のような「格差」が存在するのだ。
ダブルスの組み合わせパターンは大きく分けて3つ。
1.双方ともにシングルスでもメジャー選手で、みんなおなじみ。
2.両方ともシングルスでマイナー、もしくはダブルスのスペシャリストで、シングルスにはあまり出ないから、ファン以外は知る人ぞ知る。
3.片方は知られているけど、もう一方は「だれ?」。
シングルスのトップ選手、特に男子はダブルスに出ないケースも多いので、1は女子に多い。
たとえば私の世代だと、アランチャ・サンチェス・ビカリオとヤナ・ノボトナのチームは、シングルスでもダブルスでも、グランドスラムを優勝している。
日本のエースだった杉山愛さんは、
ジュリー・アラール=デキュジス
キム・クライシュテルス
ダニエラ・ハンチュコバ
といった、人気、実力ともにトップクラスの選手と組んで、ダブルスの世界1位に。
また、女王マルチナ・ヒンギスも、
アンナ・クルニコワ
ミリヤナ・ルチッチ=バローニ
サニア・ミルザ
などなど、華のある選手と組んで大きな実績を残している。
オリンピックでの、ロジャー・フェデラーとのミックスダブルスが実現しなかったのを、残念に思ったファンは多いだろう。これは私も相当に見たかったものだ。
男子だと、かつてダブルスのタイトルを総なめにした最強コンビ「ウッディーズ」の、トッド・ウッドブリッジと、マーク・ウッドフォード。
ここが、双方シングルスでもトップ20位入りを果たしているけど、ツアーよりデビスカップで大物ペアが生まれることが多いかもしれない。
バルセロナ五輪で金メダルを取った、ドイツのボリス・ベッカー&ミヒャエル・シュティヒ。
2002年ロシア初優勝時の、エフゲニー・カフェルニコフ&マラト・サフィン。
オーストラリアの、レイトン・ヒューイット&パトリック・ラフター。
クロアチアの、マリオ・アンチッチ&イワン・リュビチッチ。
スイスの、ロジャー・フェデラー&スタン・ワウリンカ。
並べるだけでも、ため息が出そうな豪華な顔ぶれ。
調べてみたら、ジョン・マッケンローと、ピート・サンプラスなんてのあった。
双方世界一位、グランドスラム優勝数がふたりで21個。
単純な数字だけなら、このペアが最強かもしれない。
ここまでゴージャスじゃなくても、フランスのジュリアン・ベネトー&リシャール・ガスケ組。
スペインの、フェリシアーノ・ロペス&フェルナンド・ベルダスコ組。
ここくらいでも、十二分すぎるほど魅力的なチームといえる。
2のケースは、まあどちらかといえば、これが普通か。
そもそもダブルス自体がマイナーなのだから、どうしてもそうなってしまうわけだが、これはもう、歴代のグランドスラム優勝選手を見てもらえば一目瞭然。
グランドスラム歴代最多の16勝を誇る「史上最強のコンビ」マイクとボブのブライアン兄弟は、シングルスの戦績は皆無に等しい。
他にも、マへシュ・ブパシ&リアンダー・パエス組。
テニスファンならおなじみの、インドが誇るスーパーコンビだが(ちなみに仲もスーパー悪い)、一般の認知度は低いだろう。
他にも、ヘンリ・コンティネンとジョン・ピアースとか。
ピエール=ユーグ・エルベールとニコラ・マユ。
マルセル・グラノリェルス&マルク・ロペス。
ロハン・ボパンナ&ダニエル・ネスター。
イワン・ドディグ&マルセロ・メロ。
あとエドゥアール・ロジェ=バセランとか、ミシェル・ロドラとか……。
などなど、わりとコアなテニスファンでも「まあ、名前くらいは……」な選手がズラリ。
すげえな、ネスターってまだ現役なんだ。
昔はマーク・ノールズと組んでたなあ。
で、2015年ウィンブルドン優勝の、ジャン=ジュリアン・ロジェとホリア・テカウって、だれですか?
もちろんその世界では最高レベルの猛者たちばかりだが、フェデラーやナダルのような知名度は望むべくもなく、これがなんとも惜しい。
それでも今は動画サイトなどで試合を見られるようになったから、いい時代になったなとは思う。
実際に見てみたら、スピーディーでおもしろいんだよ、ダブルスって。
生観戦が、もっとオススメ。
と、ここまでは前置き。
上記の2パターンは、知名度に差はあれど、双方がほぼ同レベルの位置にいるのだから、そんなに観ていて不自然さというのは感じない。
問題は、そのバランスが合ってないコンビである。
片方がスターなのに、もう片方は全然知られてない。
もしくは、ダブルスはどっちもトップなのに、シングルスのランキングにものすごい差がある。もっといえば、稼ぎが全然違う。
こういうコンビというのもいて、様々なビッグタイトルをものにしているにもかかわらず、ファンからも、
「あの、こないだ優勝したコンビの知らん方」
なんて言われて、なんとも悲しい目に合っているのではないか、とか想像するわけだ。
次回は、そういう選手について語ってみたい。
(続く→こちら)
>マッケンロー/サンプラスはエドベリ/ヤリードと対戦した記憶。
ちょっと調べてみたら、1992年のデビスカップ準決勝でやってるみたいですね。
かなりいい試合だったそうですが、残念ながら動画は見れなくなってました。