「変な人」が変に見えるのは「論理的」であるから 河童のサラリーマン編

2018年06月10日 | コラム
 「変な人は論理的である」。

 というと、たいていの人は

 「えー、そんなことないよ。変な人は考え方が論理的じゃないから変なんでしょ」

 そう返してくるものだが、これがそうではない。

 そこで前回は「共産主義国家のサンタクロース問題」を例にあげたが(→こちら)、今回は中島らもさんの本から。

 らもさんの知り合いの編集者に、頭をカッパのように丸く剃り上げている人がいたという。

 学校の先生なら100%「ザビエル」とあだ名をつけられるタイプの髪型だが、ハゲているわけでもなく自らの意思でそのような髪型にするのは、なんとも面妖である。

 「オシャレ」とも思えないし、たとえどのような思惑があるにしろ、これはどう見ても「変な人」であろう。

 らもさんがその理由を問うならば「ザビエル」氏は、

 「私はね、変人なんですよ」

 はあ、それは見たらわかりますけど。

 といってもそれは「この髪型だから変」というわけではなく、

 「変だとされるがゆえに、この髪型にせざるをえない」

 順序が逆なのだという。続けて曰く、 

 「だから普通の頭にしてると、みんな普通の人だと思って話しかけてくる。この頭にしておくと、一目で変人とわかるでしょう。あとで変人だとか、やいやい言われなくてすむ」

 なるほど、そう説明されると理解できるところはある。

 つまり、この「ザビエル」氏は変人だが、自分でそのことを納得しているわけではない。

 なので「普通の人」として、ごくまっとうな普通の髪型をしていたのだが、いざつきあってみると、

 「え? この人って、こんなに変だったの」

 そうおどろかれてしまうことが、多々あるのだろう。

 こうなると、仕事や人間関係に問題が出る。

 なまじパッと見が「まとも」なだけに、そのギャップが悪い方に出て、「ドン引きされる」ということになるのだ。

 「こんな人だと思わなかった」と。

 よく昭和のマンガやテレビドラマなどで

 「動物を助けて好感度が上がるヤンキー」

 というキャラが出たりしたものだが、その逆パターンといえよう。

 そこで氏は考えたのだ。どうすれば、「変」であることに、おどろかれないのか。

 そこで思いついたのだろう。《普通に見えるのに変》だからビックリされるんだと。だったら、最初から

 《見た瞬間に変だとわかる》

 このようにしておけばいいんだと。

 そのためには、一番目立つところに異物を置くのがいい。で、選んだのが

 「カッパのようなハゲ」であると。

 これなら、第一印象で「変」だとわかるから、あとで「そんなはずでは」となることがない!

 中学生くらいのころ、これを読んだ私は、

 「なんと明快で、論理的な思考経路なのか!」

 と感嘆し、「ザビエル」氏の頭のよさに感心したが、同時にこうも思ったわけなのだ。

 「変な人……」。


 (森下卓九段編に続く→こちら



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