「俺たちを【バーラト】と呼べ!」
突然にそんな声明を出したのは、インドのモディ首相であった。
「バーラト」とは我々が「インド」と認識している国の、ヒンディー語による正式名称で、こういう「思てたんとちがう!」というケースはままあるもの。
そんな流れから世界地図とにらめっこしていると、必然楽しそうだったり、おぼえやすかったりする地名というのが出てくる。
「ルクセンブルク」とか「リヒテンシュタイン」のような、ファンタジーの世界に出てきそうな国。
「ブルキナファソ」「サントメ・プリンシペ」「シエラレオネ」のような、微妙に日本語の語感にないけど、聞くと案外と違和感のないもの。
あと、「こっちの方が雰囲気出るなあ」というものもあって、「ミャンマー」よりも「ビルマ」とか「アラブ」よりも「アラビア」とか。
中でも楽しいのは、妙に語感のいい場所。
前に出した「チェコスロバキア」というのは、一昔前に流行った「声に出して読みたい日本語(?)」だ。
のちにチェコとスロバキアに分離することになるが、なんとなく発音が普通になり、「語感のいい国名」マニアには残念であった。
歴史の本に出てくる「コンスタンティノープル」も人気。
「コンスタンティ」と着て、突然「ノープル」と語尾が上がる感じが、ちょっとジェットコースターっぽくてグッド。
もっとも個人的には、『コンスタンティノープルの陥落』という著書もある塩野七生先生も指摘するように、本来のギリシャ語で正式名称でもある「コンスタンティノポリス」の方が好みではあるが。
「コンスタンティノープル」は英語読みで、どうも私はこの英語読みというのが、わびさびが感じられず楽しくない。
「パリ」がパリスとか、あと人名が顕著でヨハンがジョンとか、シャルルがチャールズとか、パウロがポールとか、ピエトロがピーターとか、なーんか散文的に感じてしまうのだ。
アジア代表で、一番有名なのはスリランカの元首都スリジャヤワルダナプラコッテ。
こんな長いのに、一撃でおぼえてしまうという語感がすばらしい。コロンボより、絶対こっちでしょう。
分解すると、スリ・ジャヤワルダナプラ・コッテと、絶妙に語感が悪くなるのも味である。ドン・キホーテに綺羅、星のごとく状態。
失われた地名では、ティノティティトラン。
歴史に残るウルトラスーパー野蛮人であるエルナン・コルテスに滅ぼされたアステカの首都。
これも「t」連発が妙に心地よく、やはり一発で暗記できる。地理が苦手な私がこれだから、相当な才能(?)ではないか。
ガルミッシュ=パルテンキルヒェンもかなりいい。
バイエルン地方にある小都市で、冬季オリンピックが行われたことでも知られている。
ただでさえ、ドイツ語の語感は
「ホーエンツォレルン家」
「レッセルシュプルンク作戦」
「ボルシア=メンヒェングラートバッハ」
のように、長いわりに口について出てくるものが多いが、中でもこれが一番であろう。
あと、長いで言えば、おなじみのこれがあり、
クルンテープ・マハーナコーン・アモーンラッタナコーシン・マヒンタラーユッタヤー・マハーディロック・ポップ・ノッパラット・ラーチャタニーブリーロム・ウドムラーチャニウェートマハーサターン・アモーンピマーン・アワターンサティット・サッカタッティヤウィサヌカムプラシット
タイの首都バンコクの正式名称だけど、これはさすがに頭には入りませんわな。