Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

§159「オン!」 池田晶子, 1995.

2022-09-03 | Book Reviews
 ある出来事や物事のかたちやありようは、視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚によって認知しうるものであり、それらに自らが何らかの意味を与えた結果を事象として認識するのかもしれません。

「現代に生きているというそのことだけで、人類の歴史の最先端に居ると思ってしまうのは、私たちの歴史意識が陥りやすい錯覚」(p.58)

 いわゆる、錯覚とは共通認識が誤認識であった事象であり、それに気付くためには、ありとしあらゆるものについて、それらがなぜそうなのかと考える必要があるのかもしれません。

「あたり前なことほど人はわからない。わからないほど人は有難がる。有難がる限り自分では考えていない」(p.186)

 さっきまで、海だと認識していた事象が忽然と陸に変貌したとき、五感によって自らが何らかの力を認知し、そこは干満差が大きい遠浅の海であり、そしてそれは月の引力が引き起こした事象であると認識するのだろうと思います。

 ひょっとしたら、あたり前だと思い込んでいる世界は存在するのではなく、あ!なるほどそういうことなんだと思った途端、人は受け入れることができる世界が生まれるような気がします。

「本書のタイトル『オン!』は、ギリシャ語で「存在」〜あるいは、来るべき世紀へ向けて、スイッチ・オン」(p.235)

初稿 2022/09/03
出典 「オン! 埴谷雄高との形而上対話」 池田晶子, 1995. 講談社
写真 月の引力を感じる有明海
撮影 2022/08/11(佐賀・鹿島)


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