「これはくるわよこれは」
子供のようにアサコさんは興奮している。鼻の穴をふくらませた顔がなんだかかわいい。僕らはゴール前の柵にへばりついていた。
『さあ、最後の直線です』
―驚いた。先頭集団の中に二頭とも食いついている。
「行けー! 正ちゃんも応援しなさいよっ」
言われる前にもう「うおー」とも「うわー」ともつかない声を張り上げていた。
『さあ、一番人気のブリリアントアークにぴったりくっついているのはライトファンサー、その後方、アサコクイーン。上がってくるかアサコクイーン』
場内がどよめく。おそろしいまでの一体感だ。思わず乗せられてしまう。
「うわあああっいいぞっ」
「いけーアサコクイーン!」
波のように歓声が響く。ひづめの音が近づいてくる。ドドドドっと地響きがつたわってくる。馬の群れが目の前を通りすぎた。三頭同時に見えた。写真判定になるとのアナウンスが流れた。
「……焼肉」
アサコさんがボソリといい僕の手を痛いほどつかんだ。思わず僕も握り返す。心臓が激しく波うっているのが分かる。
しばらく続いた奇妙な緊張感ののち、ふいにどよめきがおこった。電光掲示板に『確』
の文字が浮かび上がった。
一着はブリリアントアーク。ニ着ライトファンサー。三着アサコクイーン。とのこと。
「ちぇーっ。なんだよー。負けた!」
アサコさんが馬券をチリヂリにして思いきり空に放り投げた。ひらひらと光りを背にうけながら舞い降りてくる馬券。その光景をすごく綺麗だとなぜか思った。
子供のようにアサコさんは興奮している。鼻の穴をふくらませた顔がなんだかかわいい。僕らはゴール前の柵にへばりついていた。
『さあ、最後の直線です』
―驚いた。先頭集団の中に二頭とも食いついている。
「行けー! 正ちゃんも応援しなさいよっ」
言われる前にもう「うおー」とも「うわー」ともつかない声を張り上げていた。
『さあ、一番人気のブリリアントアークにぴったりくっついているのはライトファンサー、その後方、アサコクイーン。上がってくるかアサコクイーン』
場内がどよめく。おそろしいまでの一体感だ。思わず乗せられてしまう。
「うわあああっいいぞっ」
「いけーアサコクイーン!」
波のように歓声が響く。ひづめの音が近づいてくる。ドドドドっと地響きがつたわってくる。馬の群れが目の前を通りすぎた。三頭同時に見えた。写真判定になるとのアナウンスが流れた。
「……焼肉」
アサコさんがボソリといい僕の手を痛いほどつかんだ。思わず僕も握り返す。心臓が激しく波うっているのが分かる。
しばらく続いた奇妙な緊張感ののち、ふいにどよめきがおこった。電光掲示板に『確』
の文字が浮かび上がった。
一着はブリリアントアーク。ニ着ライトファンサー。三着アサコクイーン。とのこと。
「ちぇーっ。なんだよー。負けた!」
アサコさんが馬券をチリヂリにして思いきり空に放り投げた。ひらひらと光りを背にうけながら舞い降りてくる馬券。その光景をすごく綺麗だとなぜか思った。