登場人物
村上哲成(むらかみてつなり)
色白、眼鏡、身長159cm、某電機メーカー子会社勤務。
色白、眼鏡、身長159cm、某電機メーカー子会社勤務。
中学からの同級生・村上享吾と長い長い回り道した末に、ようやく一緒に住むことになったのが2019年夏のこと。
『風のゆくえには〜二つの円の位置関係』主人公1。
村上享吾(むらかみきょうご)
容姿端麗。人目を引くイケメン。身長178cm。会計事務所を個人経営している。
『風のゆくえには〜二つの円の位置関係』主人公2。
先週、上記二人が主人公の『二つの円の位置関係』3部作を延々と読んでいたら(自分で書いたものを自分で楽しむ地産地消)、今の哲成と享吾にどうしても会いたくなりまして。ということで久しぶりの哲成視点です。
享吾が哲成を見てため息をついている理由は、哲成が眼鏡を外さなくなったせい!と、桜井浩介に力説された哲成君。(2024年1月26日投稿『~眼鏡の話前編・後編』)
試しに、眼鏡外してみることにしました。2024年1月のお話です。
【哲成視点】
『今日帰ったら、是非、眼鏡こうやって外してみて。絶対喜ぶよ!』
と、高校の同級生・桜井浩介に自信たっぷりに言われて、その恋人の渋谷慶(こいつとは小中高の同級生だ)にも、『やるだけやってみろよ?』と、言われたため、
(…………やってみるか)
やるのはタダだし。何も損しないし。違っても桜井に文句言うだけだし。と、色々と頭に言い訳を並べながら帰宅した。
「ただいまー」
「おかえり」
今日も仕事だった享吾は、遅い夕飯の最中だった。ダイニングテーブルで、タブレットを見ながら、駅前スーパーの値引きシールがついた弁当を食べている。
「渋谷と桜井、元気だったか?」
「うん。あいかわらずだった」
カバンを置いて、手を洗って……
(いつも通りいつも通り……)
なんとなく緊張してしまっているので、いつも通り、を心掛けながら、ソファに座る。
チラリと見ると、享吾は仕事中なのか、タブレットから目を離す様子がないので、ちょっとホッとする。
(……で? スマホでもみるか)
いつもしているように、ソファの肘掛けに頭を預けて寝っころがり、スマホを取り出した。
遠近眼鏡のため、顔の前まで持ってくるとぼやける。腹にスマホを立てて置くとちょうどピントが合う。この体勢、腕が疲れなくて気に入ってるんだけど……
(で、眼鏡を外す、と)
桜井の言っていた通りに、頭まで眼鏡を押しあげる。途端に視界がぼやけて何も見えなくなったので、スマホを顔の前まで持ってきた。
(こうすると良くみえるんだよな〜。老眼って不思議だよな〜)
老眼になる前は、眼鏡をかけたままでも普通に見えていたのに、なんでこうなるんだろう?
(…………なんてことは置いておいて)
これで享吾が喜ぶって?
ふいっと、ダイニングテーブルにいる享吾を見たけれど……
…………。
(しまった。なんも見えねー……)
裸眼0.03なので、享吾の表情がまったく見えない……。というか、たぶん、タブレット見てて、オレが眼鏡外したことに気がついていないと思う。
(これじゃ、喜んでんだか何だかなんも分かんねーな)
ま、いっか。と思って、スマホをみると、妹の梨華からLINEが入っていることに気がついた。
(えーと? 今度の日曜日、花梨を預かれって?)
妹はうちを託児所扱いしている……。姪の花梨はもう小学生だからそんなに手はかからないけれど……。
(日曜……、キョウ、空いてるかな……)
花梨は享吾にも懐いているので、三人で出かけることが多いのだ。そうすると、なぜか享吾が父親に間違えられる率が高い。
(キョウが父親だとしたら、オレは?)
母親? なんてな……
(でも、同性カップルで子ども育ててる人たちもいるわけで……)
そうしたら……
(二人とも父親ってことになるのかな?)
いや、父親母親って括りもナンセンスだな。保護者ってことだな。
(実際、オレは梨華の保護者として……、ん?)
ふ、と視線を感じて、スマホからダイニングに目線をうつす。と……
(…………)
享吾がこっちを見てる……のは分かるけど、表情までは分からない。でも、なんか……ジッと見てる……よな。
「……何?」
「…………いや」
立ち上がり、弁当の容器を持った享吾。食べ終わったらしい。
キッチンに向かった享吾の後ろ姿に問いかける。
「なー、日曜日、花梨を預かれって梨華が言ってきてるんだけど、いいかー?」
「もちろん」
カウンターキッチンの向こうから、声が聞こえてくる。
「こないだ約束したケーキの食べ放題に行こう」
「おー、いいな」
先日花梨が行きたいと言っていたのだ。中年男二人だとちょっと敷居が高いケーキの食べ放題も、子ども連れだと行きやすくていい。享吾も花梨と出かけることを楽しんでくれていることが嬉しい。
「じゃー、そう言っとくー」
梨華あてに、了解の旨と、ケーキの食べ放題に連れていくことを返信し、腕を下ろしたところで、
「?」
真横に享吾が立っていることに気がついた。ジッとこちらを見下ろしている。
「どうし……、っ」
言いかけて、止めた。目尻のあたりに口唇が落ちてきたからだ。
「キョウ?」
「……哲成」
今度は、おでこにキス。頭の上にのせていた眼鏡を勝手に取ってテーブルに置き、頭を撫でてきた。
「…………なんだよ?」
享吾は膝立ちをしているので、眼鏡をしていなくても表情が分かる距離に顔がある。これは……
(嬉しそう……)
普段はポーカーフェイスだが、時々こうして崩れる。これは……嬉しいの顔だ。
「いや……」
享吾は『愛おしい』のこもった瞳で微笑むと、
「やっぱり可愛いな、と思って」
「…………え。何が」
お、これは桜井説正解で、眼鏡してないことが可愛いってことか?
と、思いつつ聞いてみると、享吾は意外なことを言った。
「哲成、眼鏡しないでスマホ見てるとき、ちょっと口尖らせるんだよな。それが可愛い」
「え」
意識してなかった……
「画面を近づけるせいかもな。眼鏡の時はならないから」
「えー……知らなかった……」
すーすー、と髪を撫でられるのが気持ちよくて思わず目をつむると、今度は口唇にキスがおりてきた。
「遠近にしてから、眼鏡外さなくなって、ちょっと残念だったから……」
「嬉しい?」
答えの代わりに、もう一度キスされる。ふつふつと胸のあたりが温かくなってくる。
「じゃあ、時々は眼鏡外そうかな?」
「是非」
「…………ん」
3度目のキスが深いものになってきたので、スマホを置いて、その大きな背中に手を回す。
「……キョウ」
大好きだよ、の気持ちをこめて腕に力を入れると、
愛してるよ
と、耳元で囁かれて、腰が砕けそうになる。
(あー、あとで二人に報告しないとだ……)
快楽の波に飲まれる前に、チラリとそんなことを思った。
若干の違いはあるものの、概ね桜井の説は正解だ。すげー。
完
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お読みくださりありがとうございました!
えー、ラブラブや〜ん💕と嬉しくなっちゃいました✨
そんな感じで。哲成と享吾、幸せに暮らしてて安心しました✨
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