浩介、就職3年目、慶、大学6年生。
浩介のアパートで半同棲していた幸せ絶頂期……が終わる頃のお話。浩介視点で。
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明け方、ふっと目を覚ますと………
(………慶?)
慶がおれの上にのっかっていた。どうりで温かくて………重かったわけだ。
慶は身長はおれより13センチ低いけれど、体重はそこまで差が無い。華奢そうな容貌を裏切って、実はすごく鍛えているので、筋肉で重いのだ。
(…………?)
なぜかおれのパジャマのボタン、全部外されていて、下着のTシャツの上に慶がのっている。だから余計に熱を感じられて温かいらしい。
外されたこともまったく気がつかなかった。相当熟睡していたようだ。
最近、休日も顧問をしているバスケ部の試合の付き添いがあったり、入試関係で連日残業だったりで、休む暇がなく、自分が思っている以上に疲れていたのか……
(…………かわいいな)
窓から差し込む薄い明かりに、慶の頬が白く浮き出されている。ぴったりとおれの胸のあたりにくっついているのが可愛くてしょうがない。触りたいけれど、起こしてしまわないように我慢する。
(……天井が高い)
我慢するために、天井を見上げて、あらためて思う。
深夜に帰宅したところ、慶がベッドの真ん中で寝ていたので(慶も卒業間近で連日忙しく、いつも帰ってくるのも遅いし、帰ってきても遅くまでパソコンで何かしていたりするから、寝てるのは珍しい)、起こすのがかわいそうで、おれは床に座蒲団を並べてその上に寝たのだ。
床からだと、ベッドの上から見る天井よりもずいぶん高い気がする。
(慶、途中で起きたんだ……)
せっかくベッドで一人広々(シングルだから広々ではないけど……)寝てたのに、わざわざおれの上で寝直すなんて……可愛い。嬉しい。愛しい。
(慶、何もかけてない。寒くないかな……おれは慶がかかってて温かいけど……)
そっと、慶の背中に手を回そうとして、
(…………あれ?)
違和感に気がついた。
(あれ?あれあれあれ……?)
慶………………
お尻が出てる…………。
(お尻だけ出てる……)
上下揃いのトレーナー地の部屋着を着てるんだけど……なぜかお尻だけプリっと……
「???」
これはどういう状況?
ズボン引き下げてるってこと?
(……じゃ、前も……?)
おれのパジャマに直接当たってる……?
なんて思ったら、興奮してきてしまい、ウズウズと血の巡りが……。と思ったら、
「…………んー」
「!」
びくっと跳ね上がってしまった。慶が身じろぎして、おれから落ちて床にゴロンと転がったのだ。仰向けになったので、下半身が無防備に露に………
(…………)
思わずジーっと見てしまう……
こんな状態の慶のものをマジマジと見る機会なんてなかなかない、というか、はじめてだ……
(…………かわいい)
しゅん、と小さくまとまっている慶のもの。薄い茂みの中に隠れるようにひっそりと……
(触りたい……。触ったら起きちゃうかな……怒られるかな……)
でも、この小さいものが力を持って、大きくなっていく様子をじっくり観察したい……
そっと触れてみる。柔らかい……それに温かい……
「……ん」
慶の顎が上がる……色っぽい……
その白い首にしゃぶりつきたい、という欲求と、まだ兆していない温かいものを包み込んで扱きはじめたい、という欲求と、起こしたらかわいそうだからやめよう、という理性とで、頭の中がグルグルになって、行動が止まってしまっていたら………
「!」
バチっと慶の目が開いてしまった。慌てて手を離す。あああ……起きちゃった……。
慶は自分の格好を見て「あ、やべー……」といいながら起き上がり、ズボンとトランクスを一緒に引き上げると、
「あーお帰り……。おれ、あのまま寝ちゃったんだな……」
「あのまま?」
「んー……」
慶はキョロキョロとまわりをみると、「あー、あったあった……」と言って近くにあった、丸められたティッシュを掴んで立ち上がった。
「それって……」
それって…………、あれですか?
慶はそれをもう一重ティッシュで包んでゴミ箱に捨てると、ボソッと一言。
「……みこすりはんだな」
「え?」
なんて言った今?
聞き返したおれを置いて、手を洗ってから、スーッと戻ってきた。
「ごめんなー、おれ、ベッド占領してた?」
「え……あ、うん。大丈夫……」
そんなことより、さっき……と言いかけたのに、慶は聞こえないかのように、ぐいっとおれの腕を掴んで引き上げた。
「ほら、ベッドで寝ようぜ? まだ時間あるし」
促され、いつものようにベッドに横になる。おれの左側に慶。コツンとおでこを合わせるなり、慶が言った。
「じゃ、おやすみ」
「あ……うん、おやすみ………」
「………………」
「………………」
って、気になって眠れない!!
人の気も知らないで、目をつむったままの慶。我慢できなくて、その瞼に唇を落とす。頬にも、鼻にも、唇の端にも……
すると、慶が目をつむったまま、ボソッと言った。
「…………なんだよ?」
「なんだよって……」
むにっと鼻をつまんでやる。
「気になって眠れない」
「何が」
「何がって……」
うーん………
諸々気になることはあるけれども……
「慶がお尻だして寝てた、とか」
「…………」
ようやく慶の目が開いた。湖面のようにキラキラしている目。大好きな目……
でも、その穢れない瞳とは真逆に、慶はムッとしながら、
「それはお前、察しろよ。ツッコむなよ」
「だって……」
慶の口から聞きたいんだもん、というと、慶はくるりと体の向きを変えてしまった。
後ろから抱きしめて、頭の後ろに唇を当てる。
「慶……」
「だーかーらー」
お腹に回した手を上からぎゅっと押さえられた。
「お前が床で寝てんのみたら我慢できなくなって、自分で抜いたんだよ。でも終わった途端、眠っちゃって服そのままだった、ってだけだ」
「…………」
予想通りの答え。嬉しい。でも、あと一つ………
「慶、さっき『みこすりはん』って言った?」
「…………」
慶……ゆっくりとこちらに向き直り、首を傾げた。
「言ったけど……お前『みこすりはん』知らねえの?」
「えーっと……早漏の俗語だよね?」
そんなことくらいは知っている。
高校生の時に部活のみんなが話しているのを聞いて覚えた。
でも、慶は可笑しそうに笑うと、
「俗語って、お前は学校の先生か。あ、先生だった」
「いや、先生だけどさ……。じゃなくて」
どういう意味だ?
「だって、慶、別に早漏じゃないじゃん。なのに……」
「言葉の通りだよ。溜まってたから、本当に、言葉の通り、三回半で出ちゃったってだけの話だ」
「え」
三回半で?!
驚くと、慶は引き続き可笑しそうに笑って、軽く唇を合わせてくれた。
「お前、ほんと面白いよなー……」
「?」
何が面白いのか分からない。分からないけれど……慶が笑ってるから、いっか。
「お前は? お前は溜まってねーの?」
「えーっと……」
聞かれて、頬をかく。
実は慶のことは言えない。おれも、寝る前に……
「寝る前に慶のこと見ながら自分で抜いた」
「お前もかっ」
さらに笑いだした慶。楽しそう。
「最近、お互い忙しすぎだよなー」
「うん」
再びチュッと唇を合わせる。
「でも、4月からはもっと会えなくなるな……」
「…………」
しょぼんと言われた言葉に、ギクリとなる。
4月から、慶は勤務先の病院の独身者用の社宅に入ってしまうのだ……
でも、明るく返す。
「大丈夫だよ。なるべく行ったりきたりしようね?」
「うん……」
「お互いの着替えお互いの家に置くようにして、泊まりっこしよう?」
「うん」
おれも本当は不安でしょうがないし、落ち込みそうになるけれど、そんなところを見せてはいけない。
せっかく慶は希望の病院に決まったんだ。憧れの島袋先生のいる病院。一番に喜んであげないといけない。
「慶……」
「ん……」
ゆっくりと首元に唇を落とす。
「慶……する?」
「したい」
「………」
嬉しい言葉に、ぎゅうっと抱きしめる。
「一回抜いたから、もう、大丈夫だぞ?」
「ん? 何が?」
「みこすり半にはならねえって話」
「………」
笑ってしまう。
「じゃあ、ゆっくり……」
「ん……」
ゆっくり、しごきはじめる。兆しはじめる慶のもの。かわいい……
「……あ、もう3回半過ぎた」
「ばーか」
くすくす笑う慶が愛おしくてしょうがない。
用意をはじめなくてはならない時間まであと2時間くらい。
ゆっくり、ゆっくり、体を重ねよう。
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お読みくださりありがとうございました!
過去話の中で、浩介君が一番幸せだった時代……自分が働いていて慶が学生、半同棲時代の終わり頃のお話でした。
落ちもなにもない話、失礼しました~。ただ、お尻出して寝てる慶の図を書きたかったの。安定ラブラブ~~まだ若い二人、可愛い!
この幸せ絶頂期から約1年後にはじまる浩介暗黒時代を、次回から連載する予定にしております……が、
以前お知らせさせていただいた通り、しばらくお休みをいただきます。
とりあえず、次回は、11月3日に何らかの更新をしたいと思っております。
11月3日……慶と浩介の初キス記念日です(*^-^)
クリックしてくださった方、見に来てくださった方、本当にありがとうございます!
おかげでここまで書くことができました。
よろしければ、次回11月3日、宜しくお願いいたします!
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