すみません。再録です。
2017年4月18日投稿「現実的な話をします11-2」の「おまけ」のみ。
「おまけ」の話、探すのが面倒なので短編として抜き出してます
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☆今日のオマケ・慶視点
2月12日日曜日。
浩介と溝部と一緒に、高校の同級生の山崎の引っ越し祝いにいった。
山崎が、おれと同じ職場の戸田菜美子先生と結婚してから4か月。結婚式をしてからは2か月。はじめは山崎の1人暮らしのマンションに一緒に住もうとしたけれど、やはり手狭すぎて荷物が入りきらない……ということで、お互いの部屋をいったりきたりしながら新居を探していて、ようやく二人の納得いく家が見つかった、ということだ。
「でも、将来的には戸建てかな……とは思ってるんだよね」
「テラスハウスを選んだのは、その予行練習ってことか?」
溝部が興味深々に山崎に問いかけている。家に入る前も、このテラスハウスの造りに妙に関心を持っていた溝部……
「いや、そういうわけではないんだけど……」
「じゃあどうして?」
「ここらへん、駅近の賃貸ってワンルームが多くて………って、何でそんな食いついてるわけ?」
「え!?」
溝部は分かりやすく動揺して「いやいやいや……」なんて言っている。なんだその、ツッコンでください、と言いたげな態度は……
「何? 鈴木となんか進展でもあった?」
「あーいや、まあ………」
気の優しい山崎のツッコミに、溝部はニヤニヤしながら、
「鈴木とは進展ないんだけどな」
「ないのかよっ」
「いやー、鈴木とはないんだけど、陽太からは全面的に応援の言葉をもらえてさっ」
溝部のニヤニヤは止まらない。なんでも、「息子になってやる」「お母さんと結婚しろ」と言われたそうで……
「昨日の夜、久しぶりに陽太と通信したんだけどさー」
「通信?」
「ああ、ゲーム。最近忙しくて全然できてなかったから、ホント久しぶりにな」
思いだし笑いをしている溝部……気味が悪い……
「そしたらさー、陽太が、バレンタイン、チョコあげるように言っておくって、言ってくれてさー!」
パンっと手を打った溝部。
「これオレきたよな!? 今年のバレンタインは、人生を左右する超大事な日になるよな!?な!?」
「………………」
「………………」
「………………」
な、と言われても………。おれは思わず黙ってしまったのだけれども……
「うん……そうだね。きっと」
またしても、優しい山崎がうなずいてあげ、溝部が「だよな!だよな!」と調子にのり……、そこにエプロン姿の戸田先生が顔をだした。
「ご飯、運んでもいいですか?」
「あ、ごめん、菜美子さん、やらせっぱなしで……」
慌てて山崎が立ち上がり、戸田先生のところにいくと、溝部がますますはしゃいだ声をあげはじめた。
「うわーー!!山崎、いつの間に名前呼び!? 菜美子さんとか言ってる!」
「そりゃ夫婦なんだから……」
「でもこないだまで、戸田さんって言ってたじゃん! ねえねえ、菜美子ちゃんは山崎のことなんて呼んでんの!?」
わあわあ言いながら溝部もキッチンに行ってしまい……
「たく、しょうがねえなあ………、?」
二人に絡んでいる溝部の声に苦笑しながら、浩介を振り返ったのだけれども……
「浩介?」
「…………え?」
「…………」
なんだ? なんか浩介、今日様子がおかしいんだよな………
「どうかしたのか?」
「あ、ううん。なんでもない」
「…………?」
浩介はちょっと笑って首を振ると、
「名前で呼ぶのって特別な感じがしていいよね」
「あ? ああ……そうだな」
「ねえ……慶」
ふっと真面目な瞳をした浩介。
「慶のこと名前呼びつけで呼んでるのって、まだ、おれだけ?」
「え?」
「あ、海外では名前呼びだったから、日本人でって意味なんだけど……」
「?」
なんだ? 何をいまさら……
「?? あとは親と姉貴……だけだけど?」
「そう……」
浩介が安心したようにうなずいたのと同時に、溝部がまたわあわあ言いながら戻ってきた。
「やっぱり名前で呼ぶと俄然親密度が上がった感じするよな? オレも鈴木のこと名前で呼ぼうかな~」
「速攻で殴られる気がするけど……」
「いい。殴られてもいい。親密度上げるためならいくらでも殴られるっ」
「…………」
溝部、なんか変な方向に進もうとしてる……
「卓也さん、これも」
「あ、うん」
キッチンから聞こえてくる山崎と戸田先生の会話に心が温かくなってくる。
「まあ……親密度は上がるよな」
「だよな~だよな~」
溝部は一人「有希……有希。うーん……有希?」とニヤニヤしながら練習をはじめ……
「慶」
「あ?」
テーブルの下で浩介の膝がコツンとおれの膝にあたってきた。
「慶」
「うん」
「慶……」
「………」
ああ、いいな。お前に名前を呼ばれると、すごく幸せな気持ちになる。
「浩介?」
「……うん」
「浩介」
「うん」
そして、お前の名前を呼ぶと、愛しい気持ちがますます増えてくる。
見つめ合い、テーブルの下でそっと手を触れあ……
「……って、お前ら人前でイチャイチャすんなーーーー!!!」
溝部の怒鳴り声にハッと我にかえった。
「あ、ごめん」
「存在忘れてた」
「なんだとーーー!!」
溝部に怒られ、笑いだしてしまった。続きは帰ってからにしよう。
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お読みくださりありがとうございました!
浩介さんの様子がおかしい理由はこれ→→「秘密のショコラ(前編)」。
二人でお出かけした日曜日の朝、の行先は山崎新居なのでした。朝から出て、引っ越し祝い買って、お昼前に到着、でした。
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2017年4月18日投稿「現実的な話をします11-2」の「おまけ」のみ。
「おまけ」の話、探すのが面倒なので短編として抜き出してます
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☆今日のオマケ・慶視点
2月12日日曜日。
浩介と溝部と一緒に、高校の同級生の山崎の引っ越し祝いにいった。
山崎が、おれと同じ職場の戸田菜美子先生と結婚してから4か月。結婚式をしてからは2か月。はじめは山崎の1人暮らしのマンションに一緒に住もうとしたけれど、やはり手狭すぎて荷物が入りきらない……ということで、お互いの部屋をいったりきたりしながら新居を探していて、ようやく二人の納得いく家が見つかった、ということだ。
「でも、将来的には戸建てかな……とは思ってるんだよね」
「テラスハウスを選んだのは、その予行練習ってことか?」
溝部が興味深々に山崎に問いかけている。家に入る前も、このテラスハウスの造りに妙に関心を持っていた溝部……
「いや、そういうわけではないんだけど……」
「じゃあどうして?」
「ここらへん、駅近の賃貸ってワンルームが多くて………って、何でそんな食いついてるわけ?」
「え!?」
溝部は分かりやすく動揺して「いやいやいや……」なんて言っている。なんだその、ツッコンでください、と言いたげな態度は……
「何? 鈴木となんか進展でもあった?」
「あーいや、まあ………」
気の優しい山崎のツッコミに、溝部はニヤニヤしながら、
「鈴木とは進展ないんだけどな」
「ないのかよっ」
「いやー、鈴木とはないんだけど、陽太からは全面的に応援の言葉をもらえてさっ」
溝部のニヤニヤは止まらない。なんでも、「息子になってやる」「お母さんと結婚しろ」と言われたそうで……
「昨日の夜、久しぶりに陽太と通信したんだけどさー」
「通信?」
「ああ、ゲーム。最近忙しくて全然できてなかったから、ホント久しぶりにな」
思いだし笑いをしている溝部……気味が悪い……
「そしたらさー、陽太が、バレンタイン、チョコあげるように言っておくって、言ってくれてさー!」
パンっと手を打った溝部。
「これオレきたよな!? 今年のバレンタインは、人生を左右する超大事な日になるよな!?な!?」
「………………」
「………………」
「………………」
な、と言われても………。おれは思わず黙ってしまったのだけれども……
「うん……そうだね。きっと」
またしても、優しい山崎がうなずいてあげ、溝部が「だよな!だよな!」と調子にのり……、そこにエプロン姿の戸田先生が顔をだした。
「ご飯、運んでもいいですか?」
「あ、ごめん、菜美子さん、やらせっぱなしで……」
慌てて山崎が立ち上がり、戸田先生のところにいくと、溝部がますますはしゃいだ声をあげはじめた。
「うわーー!!山崎、いつの間に名前呼び!? 菜美子さんとか言ってる!」
「そりゃ夫婦なんだから……」
「でもこないだまで、戸田さんって言ってたじゃん! ねえねえ、菜美子ちゃんは山崎のことなんて呼んでんの!?」
わあわあ言いながら溝部もキッチンに行ってしまい……
「たく、しょうがねえなあ………、?」
二人に絡んでいる溝部の声に苦笑しながら、浩介を振り返ったのだけれども……
「浩介?」
「…………え?」
「…………」
なんだ? なんか浩介、今日様子がおかしいんだよな………
「どうかしたのか?」
「あ、ううん。なんでもない」
「…………?」
浩介はちょっと笑って首を振ると、
「名前で呼ぶのって特別な感じがしていいよね」
「あ? ああ……そうだな」
「ねえ……慶」
ふっと真面目な瞳をした浩介。
「慶のこと名前呼びつけで呼んでるのって、まだ、おれだけ?」
「え?」
「あ、海外では名前呼びだったから、日本人でって意味なんだけど……」
「?」
なんだ? 何をいまさら……
「?? あとは親と姉貴……だけだけど?」
「そう……」
浩介が安心したようにうなずいたのと同時に、溝部がまたわあわあ言いながら戻ってきた。
「やっぱり名前で呼ぶと俄然親密度が上がった感じするよな? オレも鈴木のこと名前で呼ぼうかな~」
「速攻で殴られる気がするけど……」
「いい。殴られてもいい。親密度上げるためならいくらでも殴られるっ」
「…………」
溝部、なんか変な方向に進もうとしてる……
「卓也さん、これも」
「あ、うん」
キッチンから聞こえてくる山崎と戸田先生の会話に心が温かくなってくる。
「まあ……親密度は上がるよな」
「だよな~だよな~」
溝部は一人「有希……有希。うーん……有希?」とニヤニヤしながら練習をはじめ……
「慶」
「あ?」
テーブルの下で浩介の膝がコツンとおれの膝にあたってきた。
「慶」
「うん」
「慶……」
「………」
ああ、いいな。お前に名前を呼ばれると、すごく幸せな気持ちになる。
「浩介?」
「……うん」
「浩介」
「うん」
そして、お前の名前を呼ぶと、愛しい気持ちがますます増えてくる。
見つめ合い、テーブルの下でそっと手を触れあ……
「……って、お前ら人前でイチャイチャすんなーーーー!!!」
溝部の怒鳴り声にハッと我にかえった。
「あ、ごめん」
「存在忘れてた」
「なんだとーーー!!」
溝部に怒られ、笑いだしてしまった。続きは帰ってからにしよう。
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お読みくださりありがとうございました!
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二人でお出かけした日曜日の朝、の行先は山崎新居なのでした。朝から出て、引っ越し祝い買って、お昼前に到着、でした。
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