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(BL小説)風のゆくえには~君は僕のもの3/3*R18

2016年05月31日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 短編読切



*今回は若干具体的性表現があります。苦手な方ご注意ください*


渋谷慶……大学一年。身長164センチ。中性的で美しい容姿。でも性格は男らしい。

桜井浩介……大学二年。身長177センチ。外面明るく、内面病んでる。慶の親友兼恋人。



☆前回までのあらすじ☆


高校2年生のクリスマス前日から晴れて恋人同士となった慶と浩介。
慶は一年間の浪人生活を終え、無事に医大生になり、部活とバイトと浩介漬けの日々を送っている。
浩介は、慶がバイト先の喫茶店『アマリリリス』で女性客にモテモテなことが心配だけれども、慶との関係を知られてはならないため、一度行ったきり見に行くこともできず、イライラモヤモヤ……。


そんな4月末の日曜日。
待ち合わせ場所にいる慶を遠くからうっとりと眺めていた浩介。

その後偶然、高校の同級生で同じバスケ部だった上岡武史とその彼女のミコちゃんに出会う。
実は昔、ミコちゃんは慶に片想いをしていたそうで、そのことに対する嫉妬から、中学時代、武史は慶に嫌がらせをしていたらしい……ということが発覚。
浩介は、慶と武史の絆を思い出して不快になってくる。

その美しい容姿でまわりから視線を集めてしまう慶。浩介は不安でたまらず、独占欲の渦に飲み込まれていく……


------------------




 ホテルに入るなり、どうしても我慢できなくて早急に求めた。

「腹減った! 飯食ってから!」

 慶にはそう文句を言われたけれど、実力行使で黙らせた。
 嫉妬心と独占欲で心の中がぐちゃぐちゃで、行為も少々乱暴になってしまい………


「………ごめん」

 欲望を吐き出した数分後……
 猛烈反省モードに入り、ベッドの上に正座で慶に頭を下げた。

「ホント、ごめんなさい。お腹空いてるって言ってたのに……」
「…………」
「しかも、強引に、その……」
「…………あほか」

 寝転んだままの慶が、呆れたように言う。

「謝るな」
「だって……嫌だったでしょ?」
「…………。浩介」

 おいで、というように両手を伸ばしてくれたので、遠慮なく横に寝そべり、慶の肩口に顔を埋めながら、細い腰に腕を回す。素肌の触れ合いが気持ちいい。

「ごめんね」
「だから謝るな」

 慶が頭を撫でてくれる。

「別にヤじゃなかったぞ?」
「え」

 耳元で慶の優しい声が聞こえる。

「全然ヤじゃなかった」
「…………ホントに?」
「ん」

 慶は優しい。優しい慶……

「お前、どうかしたのか?」

 頭を撫でてくれながら聞いてくれる。

「まさか、武史に何か言われたのか?」
「ううん」

 首を振ってますますぎゅうっと抱きつく。

「ただ……慶がモテモテなのが心配なだけ」
「なんだそりゃ」

 意味わかんねーな、という慶。
 おれも自分の心がシーソーのように揺れていて、よく分からなくなる。

 片方は、モテモテの慶がおれだけを見てくれていることに対する優越感。もう片方は、慶を誰にも見られたくないという独占欲。

 つまるところ……やっぱり慶がモテモテなのがいけないんだ。

「だって、慶モテモテなんだもん……」
「別にモテモテじゃねーよ」
「バイト先でも散々声かけられてたじゃん」
「それはウェイターだからだろ」

 普通のウェイターは声なんかかけられませんっ。
 思わずブツブツ文句を言ってしまう。

「上岡の彼女だって慶のこと好きだったっていってたし」
「中学の時の話だろ」

 だから、それも中学の時もやっぱりモテてたって話じゃん、とムッとしてしまう。
 それに、さっきだって……

「さっきの待ち合わせの時だってさ、何人もの人に声かけられててさ……」
「それは変な勧誘………」

 言いかけて、慶が「あ?」と頭を撫でてくれていた手を止めた。

「お前、なんで知ってるんだ?」
「……っ」

(しまった!)

 慶の冷静な声に血の気が引く。慶には内緒だったのに……っ

「お前まさか、もう来てたのか?」
「え……いや、その……」
「浩介」

 肩を押されて起き上がさせられ、ジーッと覗きこまれる。美形の真顔、こわい……。耐えきれず白状した。

「…………ごめん。見てた」
「は?」

 案の定「は?」と言われる。そりゃそうだ……。

「なんだよそれ」
「あのー……」

 ぐりぐりと肩を拳で押されながら、なんとか答える。

「……慶って本当に目立つんだよ? 人からチラチラ見られてること、気がついてない?」
「見られてねえよ」
「見られてるんだって」

 本当に気がついてないんだ……
 ムッとした慶を見つめ、正直に言う。

「でね、こんなにみんなから注目されてる慶が、他の人からの誘いは全部断って、おれを待っててくれてるんだーって思ったら嬉しくて……」
「…………」
「それでつい、遠くから眺めてて……」
「………なんだそりゃ」

 慶は呆れたように言うと、大きく大きくため息をついた。

「ばかじゃねーの?」

 そして、おれを押し退け、ベッドからおりてしまった。

「慶……」

 怒ってる……

「ごめん、慶、怒ってる……よね」
「別に」

 ああ、絶対怒ってる言い方じゃん……

 慶はこちらを振り返りもせず、浴室に入っていってしまった。すぐにシャワーの音が聞こえてくる。

(あー……そりゃ怒るよね……。人待たせておいて何やってるんだって話だよね……)

 浴室の扉をあけると、慶は頭からシャワーを浴びながら、ジーっと下を向いていた。

「慶……」
 横に立ち、再度頭をさげる。

「ホントごめん。待たされて嫌だったよね」
「…………」
「本当にごめ……」

 言いかけたところで、シャワーを止められた。浴室の中が妙にシーンとなる……

「慶………」
「………別に怒ってない」

 しばらくの沈黙の後、慶がうつむいたまま、小さくつぶやいた。

「ただ………おれは、お前に1分でも1秒でも早く会いたいって思ってたのに、お前はのんびり見学してたのかよって思っただけだ」
「…………え」

 それは…………

「慶……」

 慶、そんなこと思ってくれてたの……?

 おれが醜い優越感を満たすために立ち止まっている間、慶は……慶は。

 うつむいた慶の白い頬に落ちた睫毛の影……

「慶」

 心が震える。
 いつも見せてくれるあの笑顔は、本当におれだけに向けられてるんだ……

「慶……」

 うつむいたままの慶の腕を取り、引き寄せる。

「ごめんね」
「…………もういい」
「よくないよ」

 ぎゅうっと抱き締めて、濡れている慶の頭に唇を落とす。

「ごめんね………おれ、不安で……。慶がおれのものだっていうのを実感したくて」
「なんだそりゃ」
「だって……」

 慶の白い頬を囲み、その柔らかい唇に唇で触れる。ああ……愛しさが伝わってくる……

「慶……」
「ん……っ」

 そのまま顎に喉に鎖骨に唇を落としていく。膝立ちになって慶の腰を掴み、へその窪みに口づけると、びくっと慶の分身が反り返った。

「あ……、浩……っ」
「慶……」

 その素直なものを、味わうように口に含み、舌で絡めとると、慶が途端に切ない声をあげた。ああ、たまらない……。慶はおれのものだ……

「浩介……っ」
「……っ」

 慶がおれの頭を抑えながら、おれの名を呼んでくれる。その色っぽさに我慢できなくて、慶を口に含みながら、自身を扱きはじめると、

「浩……っ」

 鋭く慶に咎められた。

「自分ですんな……っ」
「だって……」
「おれがする。立て」
「………はい」

 素直に立ちあがる。今日は余計に逆らえません……。

 慶はおれの肩口におでこをくっつけ、上半身を密着させると、おれのものをぎゅっと掴んできた。慶の引き締まった下腹に先が擦れて腰が砕けそうになる。

「ん……っ慶っ」
「んんっ」

 おれも左手は慶の腰に回して、右手で慶のものを掴み、扱きはじめる。先走りで濡れた慶の感触に余計に感じてしまう。

「あ……んんっ」
「慶……気持ちいい……っ」

 時折、膝を曲げて位置を合わせ、わざとお互いのものをぶつけ合う。その度に何とも言えない快感が背筋を駆け巡る。熱い慶の分身……

(慶はおれのもの……慶はおれのもの)

 慶のうなじに顔をうずめ、迎えくる絶頂に備える。慶の余裕のない息づかい……おれの肩に食い込む慶の左手の指の痛み……ああ、愛しい……

「あ、も、イク……っ」
「一緒に……っ」
「あ、……んんんっ」
「慶……っ」

 あ……っ

 お互いの先を合わせるように扱きあった瞬間、同時に熱が最高潮に達し、吐き出された。

「慶、大好き大好き大好き……」
「あ……んんっ」

 びくびくとまだ震えているものを手の中に感じながら、慶の耳元で言い続ける。

 大好き、大好き……

 いとおしくて、いとおしくて、どうにかなってしまいそうだ……



***



「上岡、雰囲気ずいぶん変わってたよね。優しい感じになってた」

 買ってきたお弁当を食べながら、先ほどの上岡武史の様子を思い返していうと、慶もうんうんうなずいた。

「女で変わるもんなんだな」
「だね」

 自分でもうなずきながら、ふと思い出す。

「そういえば、おれも高2の終わり頃、色んな人から変わった変わった言われたよ」
「え、そうなのか?」
「そうだよ」

 慶と付き合うようになってから、少し自分に自信がついた。……そうだ。せっかく自信ついたのに……

「高2の終わり? そうかあ?」

 慶は首をかしげると、

「んじゃ、おれは? 変わった?」
「うん」

 即答して、慶の白い頬をつんつんつつく。

「ますますかっこよくなった。色っぽくなった」
「なんだそりゃ」

 クスクス笑う慶。愛しくてたまらない。

「そんな慶がおれのものなのが嬉しい」
「………わかってんじゃねーか」
「………うん」

 そう。わかってる。わかってるけど、不安になる。確かめたくなる。

 素直に言うと、ぽんぽんと腿をたたいてくれた。

「んじゃ、確かめたくなったら、おれに直接確かめろよ? 遠くで見学とかしてないで」
「ん……」

 うなずきはしたものの、自信はない。また優越感を満たしたくなる気がする……

 おれが浮かない顔をしていることに気がついたのか、慶がおれの頭をつかんで、ゴツンとオデコを合わせてきた。

「なんだ? 何が心配だ?」
「……慶がモテモテなこと」

 ボソッと言うと、慶が呆れたように言い返してくる。

「またその話か。だからモテモテじゃねえって言ってんだろ」
「モテモテだよ」

 下を向いたまま、ブツブツ言ってしまう。

「慶はそういうの鈍感だから気がついてないだけだよ。上岡の彼女のことだって気がついてなかったし……」
「中学の時の話だろ。中学の時は……まあ、それなりに話があったことは否定しねーよ。でもモテモテではなかったぞ?」
「モテてたことには変わりないじゃん」
「だからモテモテではないっつーの」
「同じだよ。バイト先でだって……」

 嫉妬してもしょうがないけれど、喫茶『アマリリリス』で散々声をかけられまくっていた光景を思いだして更に凹んでくる。

「慶目当てのお客さん来すぎだよ。慶が全部断ってくれるのは分かってるけど、でも心配っていうかさ……」

 落ち込みながら、引き続きブツブツブツブツ言っていたら、

「あーもう、鬱陶しい!」
「痛っ」

 いきなり、合わせていたおでこをゴンッと突き返された。

「じゃあ、見張りにこいよっ」
「え?」

 慶、口がへの字になっている。

「よくわかんねーけど、心配なんだろ? だったら、バイト先、見にこいよ?」
「え、でも」

 安倍が、おれ達の関係をお客さんには知られるなって……

「言わなきゃわかんねーだろ。他人のフリしてりゃいいじゃん」
「…………いいの?」
「いいだろ。それに……」

 慶はうつむいて、おれの腕をぎゅっと掴んだ。

「お前が店にきたら嬉しいし」
「慶………」

 慶……顔、赤い。か……かわいい。

「うん。行く。絶対行く。毎日行く!」

 思わず叫ぶと、慶がまた呆れたように言った。

「毎日は無理だろ。お前だってバイトとかサークルとかあるし」
「バイトはともかくサークルは遅くても6時までだから大丈夫。行くね。バイトない日は毎日行くね。それで……」

 女性客があっさりと慶に振られていく様を優越感と共に見届けてやろう………っていう本音は心にしまって、と。

「一緒に帰ろうね?」
「おお、いいな」

 にっとして、慶が食事を再開した。慶は食べる姿もモグモグ一生懸命で可愛らしい。ついつい見とれてしまう。

(慶はおれのもの……)

 愛しい横顔を見つめながら呪文のように唱える。でもいくら唱えても不安になってしまう。

 いつの日か不安にならなくなる日なんてくるのだろうか。
 その日がくるまで、おれは呪文を唱え続けなくてはならない。


 慶はおれのもの。
 慶はおれのもの。
 



---------------

お読みくださりありがとうございました!
ダラダラ長いわりに内容薄くてすみません……

「いつの日か不安にならなくなる日なんてくるのだろうか」?
→はい!40過ぎてからそんな日がきます(長編『あいじょうのかたち』にそんな話があります)。まだまだ先は長い!頑張れ!

今回のお話は、長編『自由への道』が始まる少し前にあたります。
こうして浩介は他人のフリして喫茶『アマリリリス』に通いつめることになり、この数日後、あかねが『アマリリリス』に登場するわけです。

次はもう少しサクッといきたい(希望)。
次回は、浩介就職1年目のお話しにしようかな……いや、その前に大学で合コンとか行っとく?とか思ったり……。
また一週間後くらいの更新になると思いますが、どうぞよろしくお願いいたします!


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(BL小説)風のゆくえには~君は僕のもの2/3

2016年05月30日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 短編読切


渋谷慶……大学一年。身長164センチ。中性的で美しい容姿。でも性格は男らしい。

桜井浩介……大学二年。身長177センチ。外面明るく、内面病んでる。慶の親友兼恋人。

上岡武史……大学二年。身長180センチ。高校の同級生で浩介と同じバスケ部。慶とは中学も同じでバスケ部のチームメイトだった。


☆前回までのあらすじ☆

高校2年生のクリスマス前日から晴れて恋人同士となった慶と浩介。
慶は一年間の浪人生活を終え、無事に医大生になり、部活とバイトと浩介漬けの日々を送っている。
浩介は、慶がバイト先でモテモテなことにイライラモヤモヤ中。

4月末の日曜日。
待ち合わせ場所にいる慶を遠くから眺めて、うっとりしていた浩介だが、突然、横から声をかけられビックリして振り向く。するとそこには高校の同級生で同じバスケ部だった上岡武史が立っていた。



------------------






「わあ、久しぶり」
「おお。久しぶり」

 卒業後、一緒に夏合宿に遊びに行ったとき以来だから、上岡に会うのは8ヶ月ぶりだ。いつもの尖った感じがなかったので、一瞬誰だか分からなかった。

(あ、背、抜かされたかも)

 高校一年で出会ったときは、おれより少し低いくらいだったけれども、途中で並ばれ、今はおれより高い気がする。

(慶もこんな感じだったのかな……)

 上岡と慶は同じ中学で同じバスケ部で、入部当時、二人の背は同じくらいだったけれど、中2になってから上岡だけがどんどん大きくなっていったそうだ。中学時代はレギュラー争いが激しく、二人はものすごく仲が悪かったそうで、高校入学後も途中までは微妙な関係が続いていた。

「待ち合わせか?」
「あ、うん」
「って………、相手、渋谷かよっ」

 少し離れたところにいる慶の姿を見つけ、ぎょっとしたように言う上岡。

「ちょ、ちょっと、渋谷つれて早くどっか行ってくれっ」
「え?」

 ずいぶん慌ててる。なんだなんだ?

「オレのツレが………あああっ」
「え? え?」

 何か言いかけた上岡が、あちゃーっと言いながら顔を覆った。なんなんだ……? と、慶の方を見ると……

「あれ……」

 慶に話しかけている女の子がいる。知っている子らしく慶もにこやかに対応している。

「上岡のツレってあの子? 慶も知ってる子?」
「ああ、同じ中学の1コ下でバスケ部だったから……」

 上岡、ムッとした表情作ってるけど、顔、赤い。ってことは!

「彼女?」
「え!? あ、いや、まあ………なんだ」

 照れてる………。こんな上岡、初めて見た。上岡は高校の時も彼女がいたことはあったけど、その時はこんな顔しなかったのに。

「いつから付き合ってるの?」
「……え?」

 二人の様子をジッと見ていた上岡が、上の空で振り返った。なんだか上岡、様子が変……。

「どうかした……」
「たーけーちゃーん!」

 言いかけたのを、女の子の甲高い声に遮られた。上岡が再び顔を覆う。

「こっちこっち!渋谷先輩がいたー!」
「あー……」

 上岡がその女の子に軽く手を挙げてから歩きだしたので、おれも慌ててついていく。

「あれ、浩介。一緒だったのかー?」
「あ、うん。そこで会った」

 ニコニコで手を振ってくれた慶に、おれも手を挙げる。上岡はなんだか気まずそうに慶を見た。

「よお……久しぶり」
「おお」

 慶は上岡に軽く肯くと、隣の女の子をさしながらおれの方に向き直った。

「この子、同じ中学のバスケ部だったミコちゃん」
「こんにちはー」

 紹介された『ミコちゃん』が嬉しそうに笑ってくれる。慶よりも少し小さい、ショートカットの可愛らしい子だ。

「こんにちは。上岡の彼女さん」
「きゃー彼女だって!たけちゃん!」
「痛い痛い痛いっ」

 バシバシ背中を叩かれて、上岡が悲鳴をあげる。
 慶がびっくりしたように目を丸くした。

「え、武史とミコちゃんって付き合ってるの?」
「そうでーす!もう1ヶ月!」
「も……っ」

 1ヶ月で『もう』!?と、笑ってしまう。

(うちは……2年と4ヶ月、だね)

 慶を見ると、慶もたぶん同じこと考えたのか苦笑気味におれを見返した。
 そんなおれ達にミコちゃんは嬉しそうに言葉を続けた。

「でも、たけちゃんは、小学生の時、あたしのこと好きだったんだって」
「へええええっ」

 小学生! ってことは、もしかして、初恋とか、そういう感じ? だから高校時代の彼女の時と雰囲気違うのかな?

「ミコト!」
 上岡が慌てたように遮ろうとしたけれど、ミコちゃんは構わずにこにこと続ける。

「高校になって会わなくなっちゃったけど、去年、家庭教師してもらうために会うようになって、それで……」
「家庭教師?」
「ミコト、余計なこと言うなっ」

 でも、ミコちゃんの言葉は止まらない。

「あたしとたけちゃん、うち近所で、母親同士仲良いから」
「あ、そういえば、そんなこと言ってたよね」

 慶がポンと手を打った。

「まだミコちゃんが小学生の時によく試合見にきてたから、なんで?って聞いたら……」
「そうそう!そうです!」

 ミコちゃんがはしゃいだように言う。

「でも、あの時はあたし、渋谷先輩のこと好きだったから、誤解されたくなくて必死に……」
「え?」

 好き?

「え?」
「え?!」
「ミコト!」

 とうとう上岡が強制的にミコちゃんの口をふさいで止めた。

「お前、その話は二度とするなって言っただろっ」
「あ……そうだった。ごめんね」

 ミコちゃんは悪びれもせず、ペロッと舌を出すと、

「忘れてくださーい」
「え……あ、うん」

 いや……忘れてと言われても……すごいこと聞いちゃった……。それで上岡、慶とミコちゃんが話しているところを睨むようにして見ていたわけか……

「行くぞ」
 上岡は仏頂面のまま、まだ話したそうなミコちゃんの肩を強引に抱くと、おれに視線を向けた。

「桜井、また夏合宿でな」
「うん」

 そして、慶にも何か言いかけるように口を開きかけ……結局、何も言わず雑踏の中に消えていってしまった。

 上岡にあんな一面があったなんて……

「………」
「………」

 慶と顔を見合わせ目をパチパチさせていたのだけれども……

「………………あっ!」

 ものすごいことに気がついて叫んでしまった。びっくりした顔の慶に畳みかける。

「もしかして、中学の時に上岡が慶に嫌がらせしてたのって、レギュラー争いのことだけじゃなくて、ミコちゃんのことがあったからなんじゃないの?」
「…………なんだそりゃ」

 こめかみのあたりを押さえた慶……

 そうだ。絶対そうに違いない。
 実は、レギュラー争いで嫌がらせって話、高校生の上岡からは想像できなくて不思議に思っていたのだ。上岡は自分の腕に自信を持っている。そんな彼がレギュラーを取るために嫌がらせなんて……。でも、好きな女の子が慶のことを好きで、その嫉妬から嫌がらせした、ということなら納得できる……。


『なあ……、渋谷、本当にもうバスケやらないつもりなのかな?』

 ふいに、高校一年生の夏合宿の帰り道に上岡に言われたことを思いだした。

『オレ、もう一回渋谷とバスケやりたいんだけどな』

 あれは心からの望みだったのだろう。子供じみた嫉妬で仲たがいをしたまま別れてしまったチームメイトへの後悔……

 その後、高二の時の体育の授業で、2人は同じチームになり、上岡の望みは果たされる。
 中学時代のゴールデンコンビ(慶と上岡はプライベートでは仲が悪かったけれど、コートの中では良いコンビだった)は、二年以上のブランクをものともせず、2人で点を入れまくり……

『お前まだまだ現役いけるじゃん。やっぱバスケ部入れよ』
『やなこった。お前がいるから入んねーよっ』
『なんでだよー!』

 試合終了直後、上岡が慶の頭をくしゃくしゃっとして、慶が笑って………

(あ、思いだしたら、腹立ってきた)

 あの時おれは、嫉妬心でどうしようもなくなって、みんなの前で叫んだんだよな……
 あの試合のおかげで、慶と上岡のわだかまりはなくなったようだけれども……

「………」
「わ、なんだよ?」

 ムッとしながら、慶の頭をくしゃくしゃくにしていたら、慶が笑いだした。そして、少し声をひそめておれに問いかけてきた。

「どうする? 食ってからいく? 買って向こうで食う?」
「買ってく……」

 これからホテルに行く約束をしているのだ。早く行きたい。どこかで食事なんて悠長なことはしていられない。

「慶……」
 耳元に唇を寄せてささやく。

「早く二人きりになりたい」
「……っ」

 カーッと真っ赤になった慶。

 通りすがりの女子高生の群れが、慶を見ながらきゃあきゃあ言っている。慶は本当に目立つ。慶は本当に綺麗。

 見せびらかしたい気持ちが、誰にも見せたくない気持ちに上書きされて、苦しくなってきた。

「……みんなして慶をみてる。慶はおれのものなのに……」
「うるせーよっわかったから黙れっ」

 ブツブツ言っていたら、普通に蹴られた。

 わかった、って言うけど、慶は全然わかってない。おれは不安で不安でしょうがない。




---------------

お読みくださりありがとうございました!

上岡武史の話は、ずっと前から書きたかったけど、書きそびれていて、結局今になってしまいました。
ミコちゃんの本名は『小川美琴』です。ザ・妹キャラな女の子です。
上岡君、高校生になって同じクラスの女子やバスケ部の女子と付き合ったりしてましたが、いずれも長続きせず……。まわりまわって初恋が叶って良かったね、ということでした。

中学時代、武史にとって慶はムカつく対象でしかありませんでした。入部当時は同じ背格好だったためよく比べられていて(しかも、慶はミニバス経験者でしたが、武史は中学になってから本格的にバスケをはじめたため、慶の方が上手だった)、その上、初恋のミコトは自分の応援のために試合に来たはずが、慶のファンになってしまうし……。
でも、2年の終わり頃からは『緑中ゴールデンコンビ』といわれるくらい、コートの中では良いコンビになって、
3年生の夏には、ようやく慶のことを認められる!って思えたのに、慶が怪我のため一足先に引退……その後もバスケ部には顔を出さず……
もやもやしたまま高校生になり……、という感じでした。

武史のここらへんの事情はいつか書いておきたかったので(実は『逢遭』の「もう一回渋谷とバスケやりたい」発言の頃から、書きたいなあと思いつつ、本筋と離れるため書けなかったのです)、書けてよかった……とすみません。自己満足です。

次回もよろしければどうぞよろしくお願いいたします。


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(BL小説)風のゆくえには~君は僕のもの1/3

2016年05月29日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 短編読切


渋谷慶……大学一年。身長164センチ。中性的で美しい容姿。でも性格は男らしい。
桜井浩介……大学二年。身長177センチ。外面明るく、内面病んでる。慶の親友兼恋人。


高校2年生のクリスマス前日から晴れて恋人同士となった慶と浩介。
慶は一年間の浪人生活を終え、無事に医大生になり、部活とバイトと浩介漬けの日々を送っている。
浩介は、慶がアルバイト先でモテモテなことにイライラモヤモヤ……
そんな二人の大学生時代(慶一年、浩介二年の4月末)。浩介視点で。




-------------



『風のゆくえには~君は僕のもの』



 慶は、大学に入学してすぐ水泳部に入部した。なんでも、医大生のほとんどは何かしらの部活に所属しているらしい。そして、水泳部は土日に時々練習や試合が入るけれど、基本は平日の朝練のみなので、平日の放課後、大学近くの喫茶店『アマリリリス』でアルバイトをはじめた。


 最近の慶は、キラキラ度が半端ない。
 ただでさえ美形なのに、最近通いはじめた美容室の担当者の腕が良くて……、くせっ毛を活かしたフワフワした長めの髪型がものすごく似合っていて、余計に芸能人みたいになっているのだ。さっそく『アマリリリス』にも慶目当ての女性客が訪れはじめているとは聞いていたけれど……

(多すぎだ!)

 『アマリリリス』は高校の同級生の安倍の伯母さんがやっている店のため、安倍から「くれぐれも客にお前らの関係を知られるな」と言われている。だから、ずっと行くのを控えていたのだけれども、先日我慢できずに行ってみたら、びっくりするほど慶が女性客に声をかけられていて……。
 カウンターの隅に座って本を読んでいるフリをしつつ、内心は嫉妬がグルグル渦巻いて、おいしいはずのコーヒーの味もまったく分からなかった。

「渋谷君、彼女いるの?」
「デートして!」
「合コンするからきてくれない?」

 なんなんだ?!ってくらいの量のお誘い。大学生、高校生、母親世代のおばさんまでにも声をかけられている。

 でも……

「すみません。彼女はいないけど、好きな人はいるので」

 慶はにっこりと営業スマイルを浮かべながら一刀両断に断ってくれていた。

 そして。

(………慶)

 他からは見えない角度でポンポンっとおれの腿をたたいてくれた。ものすごい優越感。

(おれのもの。慶はおれのもの!)

 叫びだしたくなったけれども、我慢我慢……。

 安倍に釘を刺されているので、その後は店に行っていない。きっとまた女性客に囲まれているんだろうな、と思うとため息しかでてこない……。


***


 日曜日。部活帰りの慶と、渋谷で待ち合わせをした。
 繁華街での待ち合わせでは、慶には絶対に言えない内緒の楽しみがある。


 慶は一人で立っていると、数分に一度は知らない人から声をかけられる。それは、逆ナンパだったり、芸能事務所のスカウトだったり、色々だ。慶はいつもそれを面倒くさそうに断る。誰が話しかけてもぶっきらぼうに対応する。

 でも。

『慶』
 おれが呼びかけて駆け寄ると、途端に、ぱああっと明るい表情になり、

『浩介!』
 嬉しそうに手を振ってくれるのだ。
 その可愛さといったらもう………何度我慢できずにその場で抱きしめたことだろう。(そして、毎回蹴られる……)


「あ、また……」

 待ち合わせ場所に一人で立っている慶をこっそり眺めていたら、慶が男性から名刺みたいなものを強引に渡されはじめた。芸能事務所とかかな……

 でも、慶はやっぱり仏頂面。慶は普段知ってる人には愛想いいけれど、こういうスカウト的な人にはとことん冷たい。騙されてお金を取られる、と本気で思っているからだ。絶対に本物のスカウトだと思うんだけど……。

 ようやく諦めたそのスカウトマンが去っていくと、慶はキョロキョロと左右を見渡しはじめた。その抜群の美貌で周りにいる人の視線を釘付けにしていることに本人は気がついていない。

(おれのこと、探してくれてる……)

 あんなに注目を集めてるのに、探している相手はおれだけ。なんて優越感……。先日の『アマリリリス』での秘密の触れ合いの時に感じた気持ちと似ている。

 根本的に自分に自信がないおれは、どうしても人と比べたくなってしまうのだ。それで安心したくなる。


 そろそろ出ていこうかな。声をかけたら、きっとあの眩しい笑顔を向けてくれるだろう。あの笑顔はおれだけのもの。この人はおれのものだ、と実感できる甘美な瞬間……。

 愛しい思いでうっとりとしていたところ、

「桜井?」
「わっ」

 いきなり横から声をかけられ飛び上がってしまった。振り向くとそこには………

「か、上岡?」
「何ニヤニヤしてんだよ」

 元バスケ部チームメイトの上岡武史が立っていた。



---------------


お読みくださりありがとうございました!続きは明日更新予定です。

読切のつもりだったのですが、ダラダラと長くなってしまい……
なんだかとりとめがなさすぎて、没ろうかとも一瞬思ったのですが、
せっかく書いたしな……武史のこと書いてあげたかったしな……ということで、載せさせていただくことにしました。
でもそのまま載せるにはあまりにもダラダラしすぎているので、少し手直しをして3つに分けることにしました。これでちょっとはダラダラ感が緩和されるといいのですが……
次回もよろしければどうぞよろしくお願いいたします!


更新していないのにも関わらず、見に来てくださった方、クリックしてくださった方、本当にありがとうございます!

なんだかすごーく古いのまで読んでくださっている方もいらっしゃって、嬉しいやら恥ずかしいやら、本当にありがとうございます!
慶と浩介の話を遡ってお読みくださった方も本当にありがとうございます!

読みにきてくださった皆々様に感謝申し上げます。
よろしければ、今後ともどうぞよろしくお願いいたします!

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(BL小説)風のゆくえには~南の決意

2016年05月23日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 短編読切

登場人物

渋谷南……高校3年生。兄の恋を影となり日向となり応援している。
天野千夏……高校生3年生。南の中学時代からの親友で同人誌作りの仲間。通称天野っち。

渋谷慶……浪人一年目。南の兄。超美形。
桜井浩介……大学一年生。慶の親友兼恋人。



---------------



『風のゆくえには~南の決意』



「南ちんのお兄さん……色っぽくなったよね」

 中学からの親友・天野っちが、うっとりと言うのを「ほえ?」と聞き返す。

「そうかね?」
「そうだよ~~半端ない色気ですぞ?」

 えー……と唸ってしまう。色気……かあ……。

「これはやはり愛されている証拠では?」
「うーん……」

 唸りながらも、心当たりは多いにある。

「まあさあ……愛されてるのは確かだよね。だって、私達がプレゼントしたあの潤滑ジェル使い終わったっていうんだから、そのくらいの回数は確実にヤって………」
「やめれっ!さっき実物の二人見たばっかだから、想像できすぎて鼻血ふくっ」

 うはは、と笑った天野っちに、イヒヒと返す。

「いや~~もしかしたら今ごろ、隣の部屋でいたしているかもしれないよ~~?」

 今、渋谷家は両親不在。私の部屋に私と天野っち。そして壁を挟んで隣の兄の部屋には、兄とその彼氏である浩介さんがいる。
 浩介さんは、一応、受験生である兄に勉強を教えにきてることになっているけど……狭い部屋に二人きりで長時間いて、変な気を起こさない可能性の方が少ない気がする!

「うお~~もしそうだとしたら……」
「見たい……よね」

「…………」
「…………」

 顔を見合わせ、にや~~っと笑う。

「なんと、こちらのこのベランダ、兄の部屋の前まで続いております!」
「マジですか!」

 キラキラ目になった天野っちと、グッと拳を突き合わせる。

「行きますか」
「行かれますか!」

 こうして、私と天野っちは、10月の爽やかな秋空の下、兄の部屋を覗き見るために、こーっそりとベランダを忍び足で歩きはじめたのである。


**


「ずっと勉強してますなあ……」
「……ね」

 つまらん……。本当に勉強してる……。
 せっかくレースのカーテンの隙間からバッチリ中の様子が見えるというのに、待てど暮らせど、二人は真面目に勉強し続けている……。

 でも、「もう、戻ろうか」と言いかけた、その時だった。

「南ちん!」

 ハッとしたような天野っちの言葉に部屋の中を覗き見ると……

(おおお!?)

 兄が立ち上がり、ベッドに腰かけた。続いて浩介さんも立ち上がり、兄の頭をくしゃくしゃと撫で……

「うひゃ……」
「マジで……」

 思わず天野っちと手を取り合った、のだが。

(え!?)

 スーっと浩介さんがこちらにやってきて………

(ヤバ……っ)

 見つかった! と思いきや……

「え?」

 浩介さん、私と天野っちにニッコリと笑いかけると、

「あ」

 ザーッと厚手のカーテンを引いてしまった……これじゃ見えんがな!!

 ……って、ちょっと待て。

 カーテン引いた。こんな真っ昼間からカーテン引いた。最後に目に入ったのは、ベッドに横になった兄の姿。

 と、いうことは? ……と、いうことは!?

「み……南ちんっ」
「と、とりあえず戻ろう……」

 小さい声で言い合い、来たとき同様、コッソリとベランダを歩き、部屋に入った途端、はああああっと二人で大きく息をはいた。

「南ちん……」
「くそー……見たい……」

 でもあれでは絶対に見えない……
 壁一枚挟んだ先でこんなおいしいことが起きているというのに見えないなんてー!!

「壁から声だけでも……」

 天野っちがピッタリと壁にへばりついたけれど、何も聞こえないらしく首を振った。

 壁が無理なら……

「ドア越しなら聞こえるかね……」
「よしっ行ってみよう!」

 おー!と二人で再びコッソリとドアを開け、廊下に出たのだけれども………

「え?」

 私達が出たのと同時に兄の部屋のドアが開き………

「浩介さ……」
「シーッ」

 人差し指を口に当てた浩介さんが立っていた……。


***


「慶が眠くなっちゃったって言うから、一時間したら起こす約束で寝かせたんだよ」

と、浩介さんがニッコリといった。さよですか……。

「いつから気が付いてた? 私達がいたこと」
「んー、カーテン閉める少し前かな。慶は気がついてないよ」

 知ったらものすごく怒るだろうから、内緒にしておくね?

 そういってくれる浩介さん。あいかわらず優しい。

 浩介さんは首をかしげて言葉を継いだ。

「それにしても、何でのぞいてたの?」
「え、そりゃ理由は一つでしょ」

 何を言ってるんだ。

「二人がナニしてるところを見学させていただこうかと思いまして」
「ナニって?」

 きょとんとした浩介さんに指をつきつける。

「ナニはナニでしょ。なにカマトトぶってるの。やることやってるくせに」
「カマ……ッ」

 浩介さん、ぷっと吹き出すと、手をぱたぱた振った。

「今日は勉強のために来たんだから、勉強以外しないよー」
「えー!!健康的な10代男子にあるまじき発言!」

 ソーダソーダ!と天野っちも加勢してくれる。でも浩介さんは手を振り続け、

「だいたい、隣に妹さんとその友達来てるのにやるわけないじゃん」
「えーそこは遠慮なさらずに」
「私達に構わずやってください」
「やらないやらないっ」

 あはははは、と笑う浩介さんにたたみかける。

「じゃあ、私達がいなくなったらやる?」
「お邪魔なら出てますから!」

 でも、浩介さん、首を横に振った。

「やらないよー。いつ帰ってくるかと思うと落ちつかなくて嫌だもん」
「えー……」

 天野っちと二人で口を尖らせる。

「じゃあ、2人いつもどこでやってんのー?」
「どこでって……」

 浩介さんは頬をポリポリかいて誤魔化そうとしたけれど、天野っちと一緒に「どこでどこでっ」としつこく言い続けたら、観念したように白状した。

「ラブホテル、だよ」
「ラブホテル!」

 おおおっと天野っちと手を取り合う。

「男同士で行っても大丈夫なもんなの?!」
「それ専用のホテルがあるとか?!」
「いやいやいや」

 浩介さん苦笑い。

「大丈夫だよ。清算も機械でしてくれるとこに行ってるから誰にも会わないし」
「おおおおっ」

 そんな便利機能が! 後学のために我々も今度行ってみよう!

 二人で盛り上がっていたら、浩介さんがいやいや、と止めてきた。

「二人ともまだ高校生でしょ。高校生がそういうとこ行くのどうかと思うよ。しかも南ちゃん、早生まれなんだからまだ17でしょ」
「えー……」

 つまらん。
 ナニするところも見れなければ、ナニする場所の見学もできないなんて。

 お兄ちゃんはただ寝てるだけだし……、と、そうだ。

「ねえねえ、おはようのキスする?」
「え」

 困ったように笑った浩介さんに更に詰め寄る。

「するよね? そのくらいはするよね?」
「南ちゃん……」

「そのくらい見せてくれてもいいよね?!」
「いいですよねっ?!」

 いやいやいやいや……と再び手を振った浩介さん。でも許さないっ。

「あのジェル、2本目使ってるんだよねえ?」
「え、いや、その」
「南ちんのお兄さん、すっかり色っぽくなったですもん。これは誰のおかげかな、と」
「それは浩介さんのおかげ、ひいてはジェルをあげた私達のおかげ!」
「ソーダソーダ!」
「いやいやいや……」

 その後、「無理無理」「無理じゃない!」の押し問答の末、浩介さんがようやく首を縦にふった。

 そうこなくっちゃ!!


**


 と、いうことで。

 兄の部屋のドアを開けっぱなしにしてもらい、天野っちと二人で少し顔をだした。
 兄の枕元に立った浩介さんは、一回こちらを振り返り、苦笑いを浮かべてから、そっと兄に顔を寄せた。

(うにゃーっっ)

 角度的に盛り上がった布団が邪魔で、あんまり見えないんだけどーーっっ

 反対側の天野っちも同様のようで、つま先立ちしたりソワソワしてる。

 そんな感じで結局、キスはちゃんとは見えなかったんだけど……

「慶……一時間たったよ?」

(うわっ)
 お兄ちゃんの耳元でささやくように言う浩介さんの声が、いつもより少し低くてドキッとする。

(二人きりの時はこんな声で喋ってんのー? うひゃーいいもの聞いたーっ)

 思わず天野っちを見ると、天野っちも手をお祈りするみたいに組んでうんうん肯いている。

 浩介さん、引き続きベッドに腰かけて、お兄ちゃんの顔の横に手をつき、耳元で囁いている。

「慶? 大丈夫?」
「………ん」

 兄が身じろぎをした。そして……

「浩介」

(うおっ)

 兄の白い両腕が伸ばされ、浩介さんの首の後ろに巻きついた。引き寄せられ、お兄ちゃんにのしかかるみたいになった浩介さん。あわてたようにワタワタとしている。

「ちょ、慶っ」
「あと5分ー一緒に寝よーぜー」
「わわわわわっちょっとちょっと!離してってばっ」
「なんでだよ」
「ごめん、ドア開けっ放し! 閉めてくるから!」
「ん」

 解放された浩介さん、さささっとドアのところまでくると、

『ごめんね』
と、苦笑いで声もださずに私と天野っちに言って、

「あ」
 パタン、と無情にドアを閉めてしまった。
 
「…………」
「…………」

 私と天野っち、一瞬顔を見合わせた後、速攻で揃ってドアに耳をつける。

 ……が、何も聞こえない……。

 辛抱強く5分ほど待ち続けた後、

「慶、5分たったよ」
「んー……起きる。起きる。起きる」

 普通の会話が聞こえてきた。くそーっと思った次の瞬間だった!

「……んんっ」
「慶……気持ちいい?」

(?!)

 天野っちも目を瞠ってる。こ、これは?!

「ん……そこ、いい」
「ここ?」
「ん……あ、んんっ」

 うそうそうそうそ!! ちょ、ちょっと!!
 浩介さんの嘘つき! うちではしないっていったじゃん!
 あ、いや、違う。嘘つき結構! してくれ! おおいにしてくれ!
 つか、見せてくれー!!

「………」
「………」

 天野っちと顔を見合わせコクコク肯き合うと、2人でドアノブに手をかけ、そーっと扉を開いた……。

 ……が。

「………何やってるの?」

 そこで私達の目に入ってきたのは……ベッドの上にうつぶせになってるお兄ちゃん。その足元でお兄ちゃんの足を持っている浩介さん……。

 浩介さんは私達にニッコリと笑いかけると、

「足つぼマッサージ。頭がシャキッとするよ? こことか……」
「うおおおおっそこは痛いっギブギブっ」
「あーここねえ、胃腸が弱ってるってことだよ?」
「胃腸ー?」

「………」
「………」

 ですよね……そうですよね……そういうオチですよね……。

 くそーーーっ期待させるだけさせておいてーーー!!

 ってか、浩介さんわざとじゃないの!? わざとでしょ?! 絶対そう!!

 ジトーッと睨みつけると、浩介さんは再びニッコリとして、

「南ちゃんもする?」
「………結構です」

 そのニッコリに確信した。やっぱりわざとだ!! からかわれた!!!

「くそー……」

 天野っちと顔を見合わせ肯き合う。そのうち絶対にのぞき見てやるっ。

 決意を新たに、私達は拳を握りしめたのであった。

 



---------------

お読みくださりありがとうございました!

「南ちゃん目線の話を」との嬉しいお言葉をいただき、書かせていただきました。
南ちゃん主人公だと何も考えずサクサク話が進む進む……
南が高校生ということは、まだ90年前半。「BL」という言葉も「腐女子」という言葉もなかった時代でございます。
あ、ちなみに南も天野っちも推薦で短大に進学するため、ガツガツ受験勉強とかはしてません。
そして現在は二人とも結婚して子供もいますが、あいかわらず腐っております。

そんな感じで。アホなお話失礼いたしましたっ。
次回は、バスケ部で一緒だった上岡武史が出てくるお話をお送りします。どうぞよろしくお願いいたします。


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(BL小説)風のゆくえには~キスで証明

2016年05月18日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 短編読切

<登場人物・あらすじ>

渋谷慶……浪人一年目。身長164センチ。中性的で美しい容姿。でも性格は男らしい。
桜井浩介……大学一年。身長176センチ。外面明るく、内面病んでる。慶の親友兼恋人。
安倍康彦……大学一年。身長172センチ。慶の高一の時の同級生。ずっと直子に片想いしている。
石川直子……短大一年。身長159センチ。慶の高一の時の同級生。ずっと慶に片想いしている。

高校2年生のクリスマス前日から晴れて恋人同士となった慶と浩介。
その関係を隠したまま高校は卒業し、卒業後、慶の友人安倍康彦(通称:ヤス)にだけはカミングアウトする。ヤスはそのことを石川直子に告げるが、直子は信じてくれず……。慶視点でお送りします。


-------------


『風のゆくえには~キスで証明』



 薄暗いカラオケボックスの中、隣に並んで座っている浩介に、ふいに身を引き寄せられた。

「慶」
「え……」

 愛しい瞳が近づいてきて、かあっと身体が火照ってくる。

「浩……ちょ、待……」
「待てない」
「ヤス達がきたら……」

 これから高校時代の同級生の安倍康彦と石川直子さんも来ることになっているのだ。それなのにこんな……

「大丈夫だよ。30分遅れるって言ってたよ」
「でも……っ」

 耳を咥えられ、ぞくぞくぞくっと快感が走り、思わず浩介に縋りつく。するとここぞとばかりに浩介が腰に回した手に力をこめ、首筋に唇を落としてきた。

「浩……っ」
「慶……」

 マズイ。キス以上のことはほとんどしなかった高校在学中とは違って、卒業後、何回か体を重ねる経験をした今は、以前よりもずっと反応が良くなってしまっていて……耳元で囁かれて腰が砕けてしまう。

「キスだけ。いいでしょ?」
「ダメだろ……って、んんんっ」

 カラオケボックスは歌を歌うところです。そういうことしちゃダメです。

 って分かってるのに、理性が流される……っ

(ダメだって……っ)

 頭で思いながらも、貪るように求めてくる浩介のキスに、我慢できず応戦してしまう。
 ソファーの上に膝立ちになり、背もたれに手を着いて、座っている浩介に覆いかぶさるような形で、唇を合わせる。舌を侵入させ絡めとる……

(これ以上したら、マジでとまんねえ……っ)

 思いながらも、止まらず、唇を吸い取り、軽く噛みつく。差し出してきた舌を舐めて、そして……


 と、その時。


「もういいぞ!」
「!?」

 声と共にいきなりドアが開いた。驚いて浩介から飛び離れる。振り向いた先には、30分遅れると言っていたというヤスが顔をのぞかせていて……

「時間になっても戻らなかったら帰っていいから! サンキューな!」

 そう叫ぶと、再びドアを閉めて行ってしまい……

「………」
「………」

 振り返ると、浩介が気まずそうに天井を見上げていて……

「浩介……」
「……はい」

 い、の口をしたまま、浩介はこちらに顔を向け……、えへ、と笑った。

「えへ、じゃねえよ!」

 可愛い子ぶっても無駄だ!!

「どういうことだ!!」
「えーっと……あのー………」

 頬を指でかきながら、浩介が言い出したのは、頭が痛くなるような話だった……


***


 安倍康彦、通称ヤス。
 高校一年生で同じクラスになって以来、気があってなんだかんだとつるんでいる。在学中は同じ帰宅部だから行動も共にしやすかった。

 学校帰りに一緒に区民プールに泳ぎに行ったり(ヤスは中学の時に水泳部だったそうで、いい勝負になるから面白い)、バイトを一緒にしたりと、浩介がバスケ部の練習でいない間はヤスと一緒にいることが多かった気がする。


 そのヤスが、ずっと片想いをしているのが、石川直子という高一の時に同じクラスだった女子。

 一般的にいって、可愛い部類に入る容姿をしていて、本人もそれを自覚して最大限に発揮しようとしている感じがする。
 その女女したところがおれは苦手だったんだけれども、彼女はなぜかおれのことを気に入っているらしく、3年連続でバレンタインを渡されそうになった。

「ごめん、誰からも受け取らないことにしてるから」

 一年の時から、そうキッパリハッキリ断っているのに、効果がない。

 表向きは、女の子に興味ない・付き合ったりするの面倒くさい、としながらも、本当は高2のクリスマス後からは『彼氏』(彼氏?)がいたわけで、騙しているようで申し訳ないというか何というか……

 でも、高2の時に文化祭実行委員を一緒にやった鈴木真弓先輩によると、

「あれは『振り向いてくれない彼を思い続ける私、健気で可愛い』って自分に酔ってるってとこでしょ」

 だから、気にすることないんじゃないの? と……

 …………。

 手厳しいというか何というか………。おれも何言われてるのか分かんないな……。


*** 


 結局、ヤスは一時間しても帰ってこなかった。歌を歌う趣味のないおれ達は、しょうがないので一時間勉強していた。そうでもしないと、色々したくなって困るからだ。(いやまあ、軽いキスとか、必要以上に体を密着させるとかくらいはしたけど……)

 店から出るとちょうどヤスがこちらに向かって歩いてくるところに出くわした。

「おー、変なこと頼んで悪かったなあー」
「…………」

 本当だよ……。まんまと巻き込まれた……。


 卒業後、ヤスにはおれ達の関係を告白した。

 ヤスはおれに「彼女を作れ」と、ことあるごとに言ってきていて(石川さんにおれを諦めさせるためだ)、在学中は「興味ない」で押しとおしてきたけれど、もういい加減、それも限界だと判断したからだ。

 でも話すことにはかなりの勇気がいった。「本当のことを言って、疎遠になるならなるでしょうがない」と、浩介には強がって言っていたけれど、心の中では「どうか理解して友達を続けて欲しい」と願わずにはいられなかった。せっかくのこんなに気の合う友達、できれば失いたくない。


 4月中旬、ヤスにおれのうちに来てもらった。かなり緊張しながら、おれと浩介が高2の冬からつき合っている、ということを話したのだけれども……

 ヤスは目をまん丸くして、「え? マジで? マジで? マジで?」と「マジで?」を連呼した後に、

「もっと早く教えろよーーー!!」

と、絶叫した。それから「石川さんにも言っていいよな?!いいよな?!」と言ってきて………予想と違う反応に戸惑ってしまう。

「お前……それだけ?」
「は? 何が?」

 思わず聞くと、ヤスがはて?と首をかしげた。何がって……

「いや……その、おれ達のこと、気持ち悪いとか……」
「は? 何で? んなことより、石川さんにっ」
「………」

 浩介を見上げると、浩介も苦笑気味に肯いたので、ヤスに手を広げてみせる。

「好きにしてくれ」
「おうっ。サンキュー! うちの大学、石川さんの大学と一緒のサークル結構あってさ。石川さん、テニスサークル入るっていってるから、オレも同じところに入ろうと思ってて。よし。じゃあ今度会った時に……」
「………」

 思わず……石川さんに感謝してしまいたくなった。石川さんへの思いの強さのおかげで、ヤスはおれと浩介の関係に嫌悪感を抱くことがなかったのではないか、と思う……。


 でも、それから3ヶ月以上たった今でも、石川さんはまったく信じてくれないそうだ。それで、今日、一芝居うたされた、というわけだ……

 石川さんをカラオケボックスに遅れて誘導し、『イチャイチャしているおれたち』を目撃させる、という作戦……。おれに本当のことを言うと協力を拒否されると思って、浩介だけに頼んでいたそうだ。まんまと乗せられて『イチャイチャ』してしまったおれ……情けないというかなんというか。


「石川さんは?」
「帰った」
「で? 納得してくれたのか?」
「んー……芝居だってバレてた」
「え」

 いや、あのキス自体は芝居じゃないんだけど……。

「『あんな演技をするくらい、諦めさせたいってことなのね』って、すっげーショック受けてた」
「なんだそりゃ」

 いつもながら石川さんの思考回路は理解できない……。
 でも、ヤスはグッとガッツポーズを作ると、

「まあ作戦は成功だ。これはチャンスだ」
「………」

 ヤス、前向き……

「と、いうことで、協力サンキューな」
「あ……いや」

 なんだかよくわからないけど、まあいいか。
 頭を下げてきたヤスに、浩介と揃って手をブンブン振ると、

「あー……そうだよなあ……」

 なぜかヤスはあらたまったようにおれ達二人をジロジロとみて、あごをなでながらシミジミとつぶやいた。

「お前ら、本当に付き合ってんだよなあ。目の前でイチャイチャ見せつけられてようやく本当のことだってわかった気がする」
「え………」

 あ、そうだ……あのキスを石川さんだけじゃなく、ヤスも見たってことだもんな……

 あごをなでながら、そうだよなあ……と言い続けているヤス……。それは、男同士のラブシーンなんてやっぱり気持ち悪いとかそういう……?

(まあ、普通はそうだよな……)

 内心、ちょっと落ち込みながらヤスの次の言葉を待っていたのだけれども……

「くそーーー!!うらやましい!!」
「!」

 いきなり拳を振り上げて叫ばれ、ビクッとなってしまった。

「な、なに……」
「おれもがんばろー。これからサークルの合宿もあるし!ガンガン行くぞガンガン!それでお前らに自慢し返してやる!」
「…………」

 ヤスの張りきった発言に、浩介と二人顔を見合わせ笑ってしまう。
 どうかヤスのこの一途な思いが届く日がきてくれますように……



 その日の帰り、いつも通り、うちの近所の川べりの土手に寄った。

「安倍って良い奴だよね」
「まあ……そうだな」

 浩介がボソッというのに、慎重に肯く。浩介が本当はおれとヤスが仲良いのを快く思っていないことは知っている。まあ、単なる焼きもちで、可愛いからいいんだけど。

 浩介はそっとおれの手を掴むと、下を向きながらつぶやいた。

「安倍は大丈夫だったけど………もし、他の友達にバレて……『男と付き合ってるような奴とは友達続けられない』って言われたら……」
「…………」
「慶………どうする?」
「…………」

 震える浩介の手をぎゅっと握り返す。

「別にどうもしねえよ。友達やめればいいだけの話だろ」
「…………でも」

 うつむき続ける浩介の手を、ぎゅっぎゅっぎゅっと握り続ける。
 
「おれはお前がいてくれればそれでいい。友達とかどーでもいい」
「慶……」
「あ、それにさ」

 泣きそうな浩介に、ニッと笑いかける。

「おれ達、『親友兼恋人』、だろ? 友達間に合ってんじゃん」
「慶………」

 浩介が泣き笑いの顔で、おれの手の甲に唇を落とした。

 そう、おれ達は『親友兼恋人』。そりゃあ友達も大切だけど、浩介以上に大切なものなんてこの世には存在しない。


***
 

 夏休み明け、再びのカラオケボックスの中。
 ヤスから、無事に石川さんと付き合うことになったと報告を受けた。

「それで、もう一回証明頼むよ」
「証明?」

 何の話だ? と聞いたおれに、ヤスは真面目な顔をして言った。

「キス。キスで証明。これから石川さん来たら、目の前でガッツリしてやって」
「…………」

 あほかっ!

「誰がするかっ」
「え、いいじゃん!」

 怒鳴ったおれの横で浩介がはしゃいだように言う。 

「するする!全然する!」
「しねーよ!」

 抱きついてこようとする浩介をグリグリと押し返す。

「どうせまた演技だって思われるのがオチだろっ」
「演技だと思われないくらい濃厚なものを……」
「ばかっあほっ離せっ」

 わたわたとしているところへ、石川さんがやってきた。
 やっぱりおれ達の関係はどうしても信じてくれないけれども……

「でももう私、渋谷君のこと好きじゃないから!」

 彼女はおれに向かってキッパリハッキリ言いきると、

「これが証拠!」

 そう言って、ヤスの頬にキスをした。

「石川さん……」

 真っ赤になったヤス。そのヤスににっこりとほほ笑みかける石川さん。

「………」
「………」

 幸せそうな二人の姿に感化され、思わずおれたちも見つめ合い……一瞬だけ唇を合わせた。

「慶」

 大好きだよ、と耳元で囁いてくれる浩介。

 幸せなキス。幸せの証明。これからもずっと続きますように……
 




-------------


お読みくださりありがとうございました!

年表をみて穴埋めをしております。
久しぶりなのにこんなまったりした話でいいのかしら……と、ドキドキしてます……
でも書きたかったんだもん。自分が読みたいからいいんだもん。…と自分を励ましているところです。

すみません、今後もこんな感じで、
「あの人どうなったの?」とか「あの時何してたの?」とか、年表の穴埋めをしていきたいと思っております。
よろしければお付き合いいただきたく……今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


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