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BL小説・風のゆくえには〜変わらない日々

2020年08月28日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ R18・読切
※ほんのり(?)性表現があるので、お気をつけください。


【慶視点】

 ここ数ヶ月で、変わったことがいくつかある。
 一つは、浩介と寝室を別々にしたこと。おれがベッドを使い、浩介がリビングに布団をひいて寝ている。それから、家でもマスクを着用するようになった。食事をリビングで横並びでするようになった。それから……

「……キスしたい」
「…………」
「けど……ダメだよね」

 浴室中、シャワーを浴びた直後に抱き寄せられて言われたセリフに小さく肯くと、深い深いため息が頭上から聞こえてきた。

(最後にキスしたのいつだろうな……)

 思い返しても分からないくらい、キスをしていない。だぶん聞いたら日にちまで正確に答えてくれそうだけれども、その期間の長さを思って余計凹みそうなのでやめた。

 浩介が引き続きため息をつきながらつぶやいた。

「唾液の交換はさすがにマズイもんねえ」
「…………。具体的名称を言うな」

 あいかわらず浩介は変な奴だ。

「あー、慶のあの、柔らかい唇の感触……何が一番近いかな……」
「なんだそりゃ」

 ホント、変な奴だ。……、と!

「………っ!」

 耳朶を軽く喰まれて、ビクッと震えてしまった。嬉しそうな声が聞こえてくる。

「うん。唇に近い♥」
「……アホか」

 ホント、変な奴……

「あとは、コウクウナイのサイゲンですが……」
「???」

 引き続き、頭上から聞こえた変なセリフに、頭の中がハテナで埋め尽くされる。

 コウクウナイのサイゲンって何だ?

 と、漢字変換できないまま、聞こうとした、が。

「…………っ!」

 腰に痺れが走って、思わず身を離しそうになった。けれど、また強引に引き寄せられて、額が浩介の肩口に戻される。

(…………っっ)

 腰が引ける。
 浩介が少し膝を折って、大きな手でおれのモノと浩介のモノを一緒に掴んで、揉み込むように合わせてきたのだ。

「…………っ」
「キスがあんなに気持ちいいのはさ……」

 浩介のつぶやくような声が頭上から聞こえてくる。

「粘膜と粘膜の触れ合いだからなのかなって思うんだよね…」
「…………ん」
「これ、舌と舌、絡めてるのと似てない?」
「何言って……っ、あ」

 2つのものを一つにしたいかのように、両手でぎゅっと握られ、ゆるゆると上下に動かされる。

「…………浩、介」

 思わず、しがみつく。緩やかに快感を集めていく感じ。気持ちいいと、もどかしいの間で腰が痺れてきて……

 …………。我慢できねえ。

「……浩介」

 腰を突き上げたくなる衝動に抗えず、浩介の背中に腕を回した。

「え、ちょ……っ」

 戸惑った様子の浩介に構わず、片足を浴槽の縁に乗せて、密着度をあげる。

「ちゃんと持ってろよ?」
「え、わ…っ」

 返事を待たず、腰を動かしはじめる。浩介の手の中で合わさったモノとモノが、ガシガシと擦れていく。ますます大きく熱くなってくる。

「慶……っ」
「ん」

 浩介の慌てたような声にますます興奮をかきたてられて、腰の動きが速くなる。粘膜と粘膜が、グチャグチャと音をたてながら、擦れて、擦れて擦れて……

「慶……っ」
「…………っ」

 ほぼ同時に達した。
 達した瞬間に浩介が手を離してぎゅうっと抱きしめてきたので、余波を逃すためにお互いのモノを下腹のあたりに挟んだまま腰を上下させる。

 気持ちいい。この余波の中、いつもだったら……

(いつもだったら、ここでキスするのになあ……)

 そんなことが頭をよぎった瞬間、

「……………あ、そういうことか」

 ふいに先程の浩介のセリフの意味が分かった。

「コウクウナイって、口腔内ってことな? 口の中。その再現、か」
「ん、あ……、うん」

 ふう……っと、ため息交じりの浩介の声。色っぽくて良い。

「でも、こっちの方が刺激が直接的過ぎて、もたないね……」
「だな」

 ちょっと久しぶりだったから余計にだ。

 シャワーでお互いの腹にべっとりとついているものを流しながら肯く。と、浩介がまた、抱き寄せてきて、頭上から言った。

「それじゃ、続きはベッドでね」
「続き?」
「イチャイチャはベッドでしたいって、慶が言ってくれたんじゃん♥」
「あー……」
 
 そういやそんなこと言ったな……
 しかし、続きって……。確かに挿入はしてないけど、出すもの出したんだからこれで終わりでも……

 ……とも、思わないでもなかったけれど。

「……明日休みだしな」
「うんうん」

 サワサワと動かされる手。もっともっと触れて欲しいと思う。もっともっと触れたいと思う。だから……

「じゃ、するか。イチャイチャ」
「うん♪」

 ここ数ヶ月で、変わったことはいくつもある。でも……

「大好き慶」
「ん」
「あー、幸せ♥」
「…………だな」

 この思いだけは、変わらない。

 いつもの、日々。

---

お読みくださりありがとうございました!
前回アップした、2020年8月10日夜の「膝と膝」の続きのお話でした。

クリックしてくださった方、読みにきてくださった方、本当に本当にありがとうございます!
来月10日は浩介誕生日です。その頃にまたどうでもいい話を更新したいなあと思っております。
どうぞよろしくお願いします。


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BL小説・風のゆくえには〜膝と膝(ブログ開設14年記念)

2020年08月11日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 短編読切
【浩介視点】

「飯食うとき、テレビつけようか」

と、慶が提案してくれたのは、一ヶ月くらい前のことだ。

 今までは、一人で食べる時や、どうしても見たい番組がある時はつけていたけれど、日常的にはなかった。食事をしながら、他愛のないお喋りをするのが至福のひとときだった。

 でも、感染症予防の一環で、食事は横並び、極力話さないで食べる……となって、その時間は無くなった。その上、食べるスピードも速くなってしまって、良くないなあ、とは思っていた。だから、

「賛成。じゃ、あっちで食べよっか?」

と、おれからも提案した。ダイニングテーブルからは、距離的にも角度的にもテレビが見えにくいけれど、テレビ前のローテーブルだったら若干近すぎるものの、見えやすいのだ。

 慶との距離も、ダイニングテーブルの時よりも近くなった。ローテーブルの下、あぐらをかいた膝と膝がぶつかる。

 いや、ぶつかる、じゃなくて、慶がわざと少し乗せてきてくれるのだ。

(可愛いなあ……)

 始めはそのことに気がつかなくて、座り直した時にぶつからないようにしたのだけれども、すぐにくっつけてくるから、さすがに気がついた。

(そういえば慶、高校生の時、バスの中で膝くっつけてきたことあったよな……)

 渋谷の足、あったかいな……って思った感覚が、ふっと甦ってきて、今更、ドキッとする。

(おれに片思いしてくれてたころだったかな……)

 あの頃から、慶はずっとおれにくっついてくれてたんだな……。

 そう思うと余計に愛しい気持ちが募ってくる。
 こうして一緒に暮らすことになるなんて、あの頃は思いもしなかったな……


 今日は祝日で病院は休みだったのに、仕事だった慶。でもいつもよりも早く帰ってこられたので、珍しく19時半に食事が終わった。が、

「…………浩介」

 慶がボソッと小さく言った。

「これ、うまい。まだある?」
「うん。あるよ」

 竜田揚げだ。明日の昼にアレンジして出すつもりで多めに作ってある。

「持ってくるね」
「いや、自分でいく」
「いいよ、座ってて」
「……じゃあ一緒に行く」
「え」

 立ち上がったおれの背中に、慶がピッタリとくっついてきた。

「慶?」
「一緒に行く」
「…………うん」

 ポンポンと後ろ手に慶の腿を叩いて、台所に移動する。

「慶……明日お休みだね」
「おお」

 おれも夏休み中だ。だから、

「食べ終わったら、イチャイチャしよ?」
「あ?」

 キョトンとした様子の慶に構わず、言葉を継ぐ。

「お風呂、一緒入ろ?」
「……あー」
「あー?」

 振り返ったけれど、慶はギューギューにおれの背中に顔を押し付けているから見えない……

「嫌?」
「嫌じゃないけど……」
「うん」

 サワサワとおれの脇腹のあたり、慶の温かい手が上下する。と、慶がボソッと言った。

「イチャイチャはベッドでしてーな」
「……っ」

 うわ……っ
 すっごい誘い文句!

 今すぐここで押し倒したくなったのを、何とか理性で抑えて、その手をギュッと握る。

「…………うん。ベッドでしよう」
「おお。その前に、食べる
「うん」

 台所に置いてあったお皿から竜田揚げを一つ取り、振り返る。

 あーん、として待っている慶。可愛すぎる……

 ぽんっと一つ、その小さな口にほおりこんで、我慢できずにギューッと抱きしめる。

 可愛い可愛い慶。

 咀嚼してる振動が伝わってきて、何だかものすごく幸せな気持ちになってくる。

「あー幸せ♥」
「ん」
「くっついてるっていいね」
「ん」

 ああ、早くもっとくっつきたい。

「終わった?」
「ん」

 慶はコクコクとうなずくと……

「もう一個食う」
「………」

 …………。そうですか。

「じゃ、はい。もう一個」
「ん」

 一口でいけるサイズを、また「あーん」としている可愛い口に放り込む。

 可愛い……

「…………慶」

 咀嚼音が終わったタイミングで、耳元に唇を寄せた。

 が。

「やっぱ、スープもおかわりしてーなー」
「……………え」

 おかわり………ですか?

 …………。そうですか……

「…………じゃ、ちゃんと座って食べようか」
「ん」

 ふいっと腕の中からすり抜けて、スープのカップを取りにいく慶。

 そうですか……まだ食べますか……

 スープの鍋に火をつける。キャベツのクタクタ具合が良い感じだ。

(おれも食べようかな……)

と、思っていたら、気が利く慶がおれのカップも持ってきてくれた。さすが以心伝心。

 それぞれのカップにスープをついで、また、ローテーブルの前に座る。

(…………あ)

 当然のように、くっつく膝と膝。愛しいぬくもり。温かいスープ。

「…………あー、うめー」

 ボソッと言う慶の声。

 たまらなくなって、そっと慶の膝の上に左手を乗せると、慶がちょっと笑って、温かい手を重ねてくれた。


---

お読みくださりありがとうございました!
2006年8月10日がブログ開設記念日、ということで。2020年8月10日夜のラブラブな二人のお話を書いてみました♥あいかわらずオチも何もない小話でm(_ _)m

クリックしてくださった方、読みにきてくださった方、本当に本当にありがとうございます! おかげでボチボチ続けさせていただいております。またいつか。よろしくお願いいたします。


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