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風のゆくえには~月光 目次・人物紹介・あらすじ

2016年02月19日 08時00分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 月光
(2016年2月7日に書いた記事ですが、カテゴリーで月光のはじめに表示させるために2016年2月19日に投稿日を操作しました)



目次↓

月光1(浩介視点)
月光2(慶視点)
月光3-1(浩介視点)
月光3-2(浩介視点)
月光4(慶視点)
月光5-1(浩介視点)
月光5-2(浩介視点)・完



人物紹介↓


主人公1:桜井浩介(さくらいこうすけ)

高校2年生。身長175cm(高3時176cm→177cm)
人の記憶にあまり残らないような平凡な顔立ち。
中学まで通っていた都内の私立男子校でいじめを受けていた影響で、高校ではとにかく笑顔でいることを心掛けている。
頭が良く、特に英語は学年首位の座を守り続けている(理数を含めると学年順位は毎回10位以内)。
威圧的な弁護士の父と過干渉な専業主婦の母がいる。一人っ子。

何だかんだと常に暗~いことを考えてしまうネガティブ男子。
親友である渋谷慶に対する依存度が高い。

バスケ部と写真部に所属。
バスケ部の先輩・美幸さんに片思いをしていたけれど、美幸さんとバスケ部キャプテン田辺先輩のキューピットをして、自らは失恋。



主人公2:渋谷慶(しぶやけい)

高校2年生。身長160cm(高3時164cm)
中性的な顔立ちと背が低いことがコンプレックス。そのせいか、口が悪く、喧嘩っ早い。
人懐っこく友達は多い。でも交遊関係は典型的な『広く浅く』。浩介は初めての『親友』といえる。

ものすごい美少年。でも、本人に自覚ナシ。
中学時代はバスケ部在籍。その顔の上に、スポーツ万能で頭もそこそこ良かったため女子に非常にモテた。けれども、理想の女の子がいない、と言って全部お断りしていた。
8歳年上の姉・2歳年下(学年は一年下)の妹がいる。両親共働き。

高校1年の秋に、浩介への恋心を自覚。以来ずっと、気持ちを隠しながら健気に片思い中。
写真部所属。



渋谷南(しぶやみなみ)
高校1年生。身長155cm
慶の妹。今で言う『腐女子』。陰となり日向となり勝手に兄の恋を応援している。
せっかく美人なのに自覚がなく洒落っ気もないため、隠れ美人止まり。
写真部所属。


橘真理子(たちばなまりこ)
高校1年生。身長149cm
写真部所属。ふわふわした可愛らしい容姿だが、実は腹黒いしっかり者。
実兄である橘雅己に片思い中。


橘雅己(たちばなまさき)
高校3年生。身長174cm
真理子の兄。写真部部長。学年首位。
将来は実家の家業を継ぐため写真家への道は諦めている。


五十嵐誠(いがらしまこと)
大学1年生。身長162cm
雅己が高1の時に、高3だった写真部の先輩。



篠原輝臣(しのはらてるおみ)
高校二年生。身長171cm
バスケ部所属。部活内で浩介と組まされることが多く、二人セットで『しのさくら』と呼ばれている。
平均的男子。恋愛話大好き。常に彼女絶賛募集中。


溝部祐太郎(みぞべゆうたろう)
高校二年生。身長168cm
ちょっと太め。野球部所属。お調子者。浩介と慶と同じクラス。


山崎卓也(やまざきたくや)
高校二年生。身長172cm
ヒョロリとしている。鉄道研究部所属。真面目。浩介と慶と同じクラス。




あらすじ↓

高校二年生の夏休み。
写真部での合宿の際に、浩介は部室で一冊のノートを発見する。そこには、遺書のようなものが書かれていた。もしかして、数年前に自殺したという生徒のもの……?
親の圧力や、クラスでのいじめに悩んでいることが綴られたノートに共感を覚える浩介。
暗闇に囚われそうになるところを助けてくれるのは、やっぱり『親友』慶の存在だった……

浩介が、両親の束縛や、過去のいじめられた経験の呪縛に正面から向き合おうとする物語。


----------------------------------------


本日朝7時21分からはじまる『月光編』の人物紹介とあらすじでした。
お読みくださりありがとうございました!

このシリーズは浩介が主体なので、暗くなりそうです(^-^;
でもここを通らないと、浩介は先に進めません。頑張ってもらいます。

あ、でも、初回は明るく!夏の海へ行きます!
そういうわけで。いつものように朝7時21分に!よろしくお願いいたします!

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BL小説・風のゆくえには~月光5-2(浩介視点)・完

2016年02月19日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 月光

 学校の屋上で、朝日の撮影をした。

 まだ暗いうちに三脚の用意をして、朝日が昇ってくるのを待ちながら軽食を取る。

「アンパンと牛乳って、刑事の張りこみみたいだな」
「え? そうなの?」
「そうだよ。ドラマとかでそうじゃん」

 あいにくドラマを、というかテレビを見ないので分からない……

「なあ……」
 慶が、橘先輩が真理子ちゃんと南ちゃんに指導しているのを横目に見ながら、ふいに声をひそめた。

「おれ、昨日の夜……」
「即寝だったね。3分たつ前に寝てたよ」
「なんか寝言とか、言ってた?」

 その言葉に笑みが浮かんできてしまう。
 慶は昨晩寝ぼけて、おれを抱きしめて「浩介」「ずっと一緒に」と言ってくれたのだ。でもきっとそんなこと言ったと知ったら、ものすごく恥ずかしがるだろうから教えないであげよう。おれだけの秘密だ。

「何も言ってないよ? おれもすぐ寝たから気がつかなかっただけかもしれないけど」
「そっか」

 なぜかホッと胸をなでおろした慶。なんだろう……

「なんでそんなこと気にしてるの?」
「いや、別に……」
「何か夢でも見た?」
「ああ、夢な」

 慶はニッとすると、

「すっげーいい夢みた」
「へえ。どんな夢?」
「教えなーい」

 最後の一欠けのアンパンを口の中に放り込み、慶がカメラに向き直った。おれもその横に並ぶ。
 太陽が出るであろうあたりの雲だけが赤く、雲のない空は濃い青。見事なグラデーションに目を奪われる。

「こんな景色初めて見た」
「おれも」

 息を飲むほど綺麗だ。そんな景色を慶と一緒に見られることが嬉しい。

 しばらくして、雲の合間から眩しい光が差し込んできた。
 慶の白い頬に光が写る。

(やっぱり……)

 昨晩の、月の光に照らされた慶も綺麗だったけれど、やっぱり慶には太陽が似合う。月はおれの方だ。自らは発光することなく太陽の光で白く光る月。慶が照らしてくれるから、おれは光ることができる……

「慶……」
「何だ?」

 三脚にのせたカメラのファインダーをのぞいたままの慶。その耳元に顔をよせ小さくつぶやいた。

「これからも、一緒にいてね?」

 一緒にいてほしい。
 我慢できずに出てしまった言葉。この美しい景色の前だから出てしまった本音……

 しばらくの間の後……
 慶はゆっくりとカメラから顔を離して、こちらは見ないままグイッとおれの腕を掴んだ。

「これ見て。この角度。この焦点。よくね?」
「ん?」

 言われるまま、慶のセットしたカメラをのぞきこむと、ふっと耳元に慶の気配がした。

「ずっと一緒に、いような?」
「…………」

 優しい声。昨日の夜聞いたのと同じ……

 振り返ると、恥ずかしそうに慶が笑っていた。おれも笑い返す。
 男同士なのに、まるで恋人みたいなやり取りだな、と思って可笑しくなる。

 と、そこへ。

「桜井」
「はい?」

 呼ばれて振り返ると、パシャリ、とシャッター音がした。橘先輩がカメラを構えて立っている。

 え、橘先輩、今、おれのこと撮った……?

 橘先輩は、よく慶のことを勝手に撮影していることはあるけれど、おれを撮ったのは初めてだ。

「あの……」
「何かあったのか?」
「え?」

 聞き返すと、橘先輩の眼鏡の奥の瞳が鋭く光った。

「一皮剥けた感じがする」
「あ……」

 カメラを覗けばその人の内面まで見えてくる、という橘先輩の言葉は嘘じゃないらしい。すごいな。お見通しだ。

「あ……はい。なんか色々」
「そうか。そりゃ良かった」
「え? 何? お前なんかあったの?」

 慶がきょとんとして聞いてくる。

 あったよ。慶のおかげでね。

 という言葉は心の中に押し込めて。

「こんな綺麗な景色みてたら、誰でも一皮剥けるでしょ」
「ああ、なるほどな」
「なんだそりゃ。なんすか、それ」

 納得していない様子の慶を置いて、橘先輩が集合をかけた。

「終わった奴から部室戻って、朝飯食べたい奴は食べてくれ。8時から打ち合わせするからそれまでは自由行動」
「はーい」

 南ちゃんと真理子ちゃんがはしゃぎながら出て行く。おれ達も戻ろうとしたところで、

「ああ、君らどっちか、8時半になったら打ち合わせ抜けて、鉄道研究部行って、今日の確認してきてくれな」
「あ、はい。じゃ、おれが……」
「待って」

 いつものように慶が手を挙げようとするのを、掴んで止める。

「おれが行くよ」
「え」

 目を瞠った慶。慶はおれが人前に立ったり、知らない人と話したりするのが苦手なことを知っているので、一緒にやっている体育委員とかでも、いつも渉外担当を請け負ってくれているのだ。

 でも、いつまでもそうやって、苦手だからって避けていてはダメだ。
 おれは決めたんだ。昨日、月光の下で。慶の温かい腕の中で。おれは変わる、と。

「鉄研、山崎いるし。大丈夫」
 正直、山崎とも2人きりになると気まずくて黙ってしまうような関係だけれども、でもいつまでもそんなことを言っていてはダメだ。

「そっか」
 慶は軽くうなずくと、ポンポンとおれの腕を叩いてくれた。

「飯食おうぜ? おれあんなアンパンだけじゃ全然足んねえ」
「うん!」

 振り返ると、もう赤ではなく、見慣れた色の太陽が照っている。

(おれは、変わる)

 空のまぶしい太陽に向かって手を挙げる。選手宣誓のように。

「慶、待って!」
 それから、おれの太陽に追いつくために走り出した。


**

 鉄道研究部との打ち合わせは滞りなく終わった。
 同じクラスの山崎とは、グループで仲が良いだけで、個人的に話すとぎこちなくなるのだけど、今日はわりと大丈夫だった。山崎も好きな電車の話だからか、いつもよりも饒舌で話しやすかったということもある。この調子なら、新学期がはじまっても山崎とは個人的に話したりできる気がする。

 鉄道研究部と演劇部の間をいったり来たりしているうちに、すぐに11時半になってしまった。

「弁当届いてるから、部室に運んでくれるか?」
 慶は演劇部の女子につかまって何か話しをしているので、橘先輩がおれだけに言ってきた。

 指示通り、昇降口で業者から弁当をもらった後、職員室に回り、部室の鍵を……と思ったら、鍵がない。

「閉め忘れた……?」
 とりあえず、部室に向かってみる。
 中央棟2階は、いつもにも増して、シンッとしている。噂通り何か出そうな薄暗さだ。

(慶が頼まれなくて良かったな)

 慶はあんなに男らしいのに、幽霊が怖いらしい。
 この階に、首吊りをした男子学生の幽霊がでる、と聞いて相当ビビっていた。

(そういえばあのノート……)

 すっかり忘れていたけれど、おれが昨日、部室に一人でいたところに、一冊のノートが突如現れたのだ。もしかしたら、その男子生徒の遺書なのかもしれない。
 中には、イジメにあっていたらしい男子生徒の恨みつらみが書き綴られていて……。

『しね みんな しね おれはぜったいにゆるさない』
『友人も失い、将来も失い、親にも失望され、生きる希望がなくなった』

 痛いほどわかる感情が漏れ出ているノートだった。おれの内面に共感して現れたのではないかと思った。

 でも。

『ずっと、一緒に……』

 慶の優しい声におれは立ち止まった。おれは、このノートの人のようにはならない。絶対に、ならない。


 今、そのノートはおれのカバンに入れてある。明日、上野先生に相談してみよう……

 そう思いながら部室のドアを開け……

「………え?」

 異変に気が付いた。棚でできた通路の奥にある写真部のスペースの床に、荷物が下ろされている……
 弁当を両手に持ったまま、静かに中に入っていくと……

「………先輩?」

 写真部のスチール棚の前に、OBの五十嵐先輩が座りこんでいた。

「あ……、あの、これは……」

 五十嵐先輩が焦ったような表情でおれを見上げてくる。大きな瞳がぎょろぎょろと泳いでいる。

『お前、いじめられっ子だっただろ? お前みたいにオドオドした奴、いつでも攻撃対象になるぞ?』

 昨日、おれにそう言ってきた五十嵐先輩……
 でも今の五十嵐先輩の目は、まさにその『オドオドした』目だ。

「どうしたんですか?」
 取りあえず弁当をテーブルの上に置き、振り返る。最下段にあった段ボール箱が全部出されている。………探しもの?

「何か探し物ですか?」
「ああ、ちょっとな……」

 言いながら段ボールを戻しはじめたので、おれも手伝う。
 なんかモヤモヤする。何だろう………何かを見落としているような……

「他の連中は?」
「まだ体育館です。演劇部の撮影をしてて」
「そっか」

 段ボールを戻し終えてから、ふと、思い出す。そうだ。あのノートはこの棚の下に突然現れたんだよな………

『しね みんな しね おれはぜったいにゆるさない』

 殴り書かれたあの字……どんなに辛かったのだろう……

『友達は裏切るものだ。信用したら、裏切られたとき、立ち直れなくなる。だから友達は信用しない。人はしょせん孤独な生き物だ』

 ノートに書いてあった文章を思い出し……

(……あれ?)
 先ほどのモヤモヤがよみがえる。

『親友、なんて言ってたって、人なんて簡単に裏切るぞ? その時、自分の足で立っていなかったら、もう起き上がれない』

 昨日の、五十嵐先輩の言葉……

『お前自身が人に頼らず立っていられるようにならないと……』

 あれ………?
 五十嵐先輩とノートの人、言ってること似てる……?

 まさか……

「あの……先輩、何を探してるんですか?」
「ああ、このくらいの大きさの茶封筒なんだけど……」
「茶封筒………」

 すうっと血の気が引く。
 先輩………それは………

「もしかして……これですか?」
「え」

 カバンから茶封筒……あのノートの入った茶封筒を取り出すと、五十嵐先輩の顔色が変わった。

「なんでお前が持ってんだよ!」
「痛っ」

 勢いよく突き飛ばされ、封筒を奪われる。
 呆気にとられて、床に尻もちをついたまま先輩を見上げた……

 次の瞬間。

「てめえ何してんだよっ」
「え?」

 ドアの方から突然、怒鳴り声がしたと思ったら、

「えええええ?!」

 五十嵐先輩が吹っ飛んだ。大袈裟でなく、本当に、吹っ飛んだ。

「うそっ」

 け、慶?! と、飛び蹴り?!

「ちょっと、慶っ」

 吹っ飛んで壁に打ち付けられた五十嵐先輩の胸ぐらをつかんで、拳を振り上げた慶の腕を慌てて抑える。

「離せっ」
「待って待って!そんな大袈裟だって!」
「何が大袈裟だっお前どつかれてんだぞっ」
「だから大丈夫だって! もうっ慶っ」

 無理矢理五十嵐先輩から引き剥がす。慶からはものすごい怒りのオーラが放出されている。

「本当に、大丈夫だから。落ちついて。ね?」
「落ちついていられるかっ」

 ものすごいパワーだ。ものすごい熱量。
 慶の怒り。おれのための、怒り。

 こんな時なのに、嬉しくなってしまう。おれのためにこんなに怒ってくれるなんて。
 でも、とにかく落ちつかせなくてはならない。

「慶、聞いて」
 両手を掴んで、おれの方に向かせる。
 
「別に先輩に悪気があったわけじゃないんだよ。先輩の私物をおれが知らないで持っちゃってて、それで先輩が驚いて……」
「だからって!」
「もう、慶」

 笑ってしまう。それから愛しさが募って、ぎゅうっと抱きしめた。

「ありがと、慶。おれのためにそんなに怒ってくれて」
「………」

 ぎゅうぎゅうぎゅうっと抱きしめ続けたら、しばらくしてようやく、慶の肩の力が抜けた。

 ホッとして、五十嵐先輩を振り返る。先輩は苦笑しながら壁に打ち付けた頭をなでている。

「あの……大丈夫ですか?」
「ああ、タンコブになってるっぽいけど」
「え」

 それはマズイ。

「慶、職員室いって氷もらってきてくれる?」
「何言って……っ」
「お願い」

 コツンとおでこを合わせると、不承不承という顔を隠しもせず、五十嵐先輩を睨みつけてから、慶が部室から出て言った。
 あらためて五十嵐先輩に向きなおり、頭を下げる。

「すみません。今日、保健室開いてないから……」
「いや、大丈夫。っていうか……」

 五十嵐先輩がケタケタと笑いだした。

「あいつすげーな。ホントに。あんな綺麗な顔して狂暴すぎだろ」
「ええ。本当に……」

 おれも笑ってしまう。

 そういえば慶は中学時代、バスケ部の上岡ともよく殴り合いの喧嘩をしたと言っていた。それに、自分を馬鹿にした奴には容赦なく鉄拳制裁をくわえていた、とも……。あの可憐な容姿からは信じられないなあと思っていたけれど、目の前で見てようやく納得した。慶はたぶん、本当に喧嘩強いんだ……。

「悪かったな」
「え」

 五十嵐先輩がポツリといった。

「今、どついたこともだけど……、昨日オレが言ったことも、忘れてくれ」
「昨日?」
「友達は裏切るって話。あいつだったら大丈夫そうだな」
「先輩……」

 先輩はゆっくり立ち上がると、吹っ飛ばされた衝撃で部屋の隅に飛んでいっていた茶封筒を拾い、こちらを振り返った。

「これ、読んだ?」
「あ……すみません。少しだけ……」

 本当は全部読んだけど。なんてことは言わず、先輩の次の言葉を待つ。

「オレさ……高3の時ちょっと友達とトラブって、それから受験も上手くいかなくて、で、その恨みつらみをずっとこのノートに書いてたんだけどさ」
「………」
「去年、浪人して……予備校で新しい友達もできたし、現役の時よりランク上の大学も狙えるようになったし、もうこのノートのこと忘れないとって思ったんだけど、なんか棄てることもできなくて……」

 それで、昨年の文化祭の時にこっそり部室に来て、ノートを入れた茶封筒を棚の下に両面テープで張りつけたのだそうだ。
 大学受験に成功して、順調な大学生活を送れるようになったら、このノートは処分しよう。それまで気持ちも記憶も高校に残しておこう……と。

「で、合宿やってるっていうから、取りにきたんだけどなくなってるし……」
「すみません……」

 おそらくおれが棚の下にホウキを差し入れた時に、封筒に触れて衝撃を与えてしまい、粘着力の弱まっていたテープから封筒が落ちてしまったのだろう。

「ああ、それで先輩やたらと部室に残ってたんですね……」
「まあな」

 昨日きたばかりのときも、おれ達が銭湯にいっている間も、五十嵐先輩は部室に残っていた。なるほどな……

「このノートのこと……」
「あ、誰にも言ってません」
「そっか」

 安心したように息をつき、再びこちらに頭を下げる先輩。

「悪かったよ。本当に。お前はオレじゃないのにな。つい……な」
「あ、全然全然! そんなことないです!」

 手をブンブンふって先輩に頭をあげてもらう。

「おれも、思います。一人で立つ力を持たないとって」
「…………」

 でも。

「でも、渋谷君は『いくらでも支えてやる』って言うんです」
「あー……言いそう」
「でしょう?」

 顔を見合わせ笑ってしまう。

「でも、おれも、友達を支えられるようになりたいって思えるようになりました。先輩の言葉と……このノートのおかげで」
「……そうか」

 ふっと、五十嵐先輩の目元が和らいだ。

「頑張れ」
「はい」

 それから、橘先輩たちが戻ってきて、氷の袋を持った慶も戻ってきて(五十嵐先輩が「転んで壁にぶつけた」と誤魔化してくれたので大ごとにならずにすんだ)、昼食の弁当を出したりしている最中に、五十嵐先輩は「バイトがあるから」と氷を頭に当てたままあっさりと帰っていってしまった。

「またな」
 軽く手を挙げた後ろ姿に深々と頭をさげる。
 次に会えた時には、おれも少しは成長できてるかな……


 その後、不機嫌な顔をした慶を何とかなだめて、午後の現像作業を一緒に頑張って………あっという間に、写真部の合宿は終了してしまった。


「おれ、もう一泊したかったなー」
「おれも」

 自転車を押しながら、二人で並んで歩く。合宿の荷物の入ったカバンが大きいので、二人乗りは危険と判断して歩くことにしたのだ。

「そういえば幽霊でなかったね」
「お前っせっかく忘れてたのに思いださせるなっ」
「ごめん」

 慌てたように言う慶が可愛くて、笑ってしまう。
 夕焼け空の下の川べりは、吹く風も心地よい。


「それにしても、慶のあの飛び蹴り!すごかったねえ」
「別にすごかねえよ」

 ムッとした慶。

「あんなものは誰でも出来る。教えてやろうか?」
「いやいやいや無理無理無理……」

 誰でも、は無理でしょう………あんな身軽にぴゅんって………

 言うと、慶は軽く肩をすくめた。

「まあ、別にお前はできなくてもいいだろ。何かあったらおれが守るし」
「…………」

 おれより15センチ背が低く、中性的に綺麗で可憐な容姿をしたおれの親友は、外見とは裏腹にそんな頼もしいことを言ってくれる。

「んじゃ、何かあったらお願いします」
「おう。まかせとけ」

 嬉しそうに笑う慶はこの上もなく可愛らしい。慶はやっぱりお兄ちゃん気質なのか、頼られたりするのが好きみたいだ。

「でも……おれのことも頼ってね?」

 頼りにならないけど、と付け加えると、慶は「それじゃ!」と言ってぴょんと飛び跳ねた。

「休み明け実力テストの勉強つきあってくれ。英語学年首位の桜井先生!」
「あ、うん。わかった」
「毎日な?残りの夏休み、毎日だぞ? 毎日うち来いよ?」
「うん」

 やった、と小さく言った慶。はしゃいでぴょんぴょん飛び跳ねている姿はやっぱり可愛い。
 月のようなおれを照らしてくれる、太陽みたいな人。

「今日も! これからちょっとだけ遊ぼうぜっ」
「うん」

 夕日が映り込んでいる綺麗な瞳に笑いかける。

 これからも、ずっと、一緒にいようね?
 


<完>

---------------------------------------



お読みくださりありがとうございました!

もうこの段階で完全に恋でしょ? つか、お前らバカップルか!!
って思うんだけど、やっぱり本人に自覚させないと~~
ということで、次回から、『巡合』編になります。
浩介の恋心自覚+慶の助けを借りないでクラスの一員として頑張る話。
どうぞよろしくお願いいたします!

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BL小説・風のゆくえには~月光5-1(浩介視点)

2016年02月17日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 月光


『おれはずっとお前のそばにいる。お前はおれの親友。おれの一番。おれの唯一無二。おれの………』

 渋谷はそこで何かを言いかけて、止めて、それから、ボソッと付け足した。

『お前にとってのおれも、そうであってくれたら嬉しいんだけどな』

 その後の渋谷の表情は、今までに見たことがないくらい儚げで……おれの知っている『渋谷』ではなかった。


 前から思っていたことがある。

 おれは中3の時に偶然バスケの試合で渋谷を見かけて、それからずっと憧れていた。だから、自分の中に理想の『渋谷』像を作り上げてしまっていたところがある。
 しかも、実際に会った渋谷は、想像通りカッコよくて強くて優しくて男らしくて、時々見せてくれる甘えた顔も可愛くて魅力的で、もう、本当に完璧な人だったから、理想像が崩れることはなかった。

 そんな人がおれなんかと一緒に笑ってくれたり怒ってくれたり泣いてくれたり……嬉しいけど、恐れ多いって気持ちはどうしても強い。

 だって『渋谷』だから。おれの憧れの『渋谷』だから。

 でも、それでいいんだろうか? おれはファインダー越しに渋谷を見てしまっていて、本当の渋谷を見れていないんじゃないだろうか?
 それは、『親友』だと言ってくれている渋谷に対しての裏切りなのではないだろうか……


 考えがまとまらないうちに銭湯にいくことになり(背中のあざを見られたくなくて大急ぎであがった)、その後、写真部のOBOGの方々との宴会まであって、ゆっくり考えている時間もなかった。そんな中、渋谷と二人で買いだしに行くことになり……


 二人で月の光の下を歩く。
 月の下の渋谷はやっぱりキラキラしている。渋谷と歩くと心がフワフワと温かい物に包まれたようになる。

「おれ、恋より友情に生きることにしたの」

 美幸さんとのことを聞かれて、そう答えると、渋谷はまた、あの儚げな表情をして笑った。

(渋谷……)

 憧れの『渋谷』の奥にある、『渋谷慶』の顔……

 ふいに、また背中がジクリと痛んだ。
 ずっと隠してて、誰にも見せたことも、存在を話したこともない、背中のあざ……
 おれの本当の顔……

 なぜだか分からないけれども、今の『渋谷慶』に、聞いてほしい、と強烈に思った。今、奥にある顔を見せてくれている『渋谷慶』に、おれも……

「うちの母親ヒステリーだから、おれよく背中バンバン叩かれてて、今でも背中にあざ残ってるんだよ~」

 真剣に話す勇気はなくて、軽口をたたくようになってしまったけれど………

(ああ……言った。言えた。言ってしまった)

 重く肩にのしかかっていたものが少しだけズルりと滑り落ちたのと同時に、ドッと汗がでてくる。手先が冷たくなってくる。……でも。

「へえ。全然そんな風に見えないな」
 渋谷は普通のことのように受け止めてくれた。

「うん。そうなんだ」
 コクリと肯きながら、大きく息をつく。

 まだまだ重い物はのしかかったままだけど、少しずつでもこうやって降ろしていけるのだろうか。
 こんなおれとでも、渋谷はずっとそばにいてくれるのだろうか……本心でそう思ってくれてるのだろうか………



 9時過ぎにOBOGの先輩方は帰っていき、翌朝は朝日撮影で早いから、ともう就寝を言い渡された。

 おれと渋谷は部室で、橘先輩はその隣の暗室で、女の子2人は茶道部の部室でそれぞれ寝ることになっている。


「あー、おれ、なんか興奮して眠れなさそう」
「学校に泊まるなんてめったにない経験だもんね」

 布団を仲良くくっつけて、隣同士に寝そべる。すぐ横に、渋谷の綺麗な顔。

「普段ベッドだから布団ってのも眠れなそう」
「ああ、そうだよね。余計に天井高いしね」

 そういって、2人で天井を眺めて、何分たっただろう。
 1分?2分? 3分はたってなかったと思う。

(………渋谷)

 寝てる……。

 眠れなそう、なんて言っておきながら即寝だ。すごい。本当に、健康優良児、という感じ。良く食べて良く遊んで良く寝る!

 渋谷の健康的な寝息を聞いていたら、なんだかとても幸せな気持ちになってきた。


(あ、そうだ……)

 こっそり起きだして、カバンにしまいっぱなしにしていたノートを取りだす。

 突然、おれの前に現れたこのノート。おれに読んでほしいかのような現れ方だった。
 でも、もし本当に首吊りをしたという男子生徒の遺書ならば、御家族の元に届けるべきだろう。
 本来なら顧問の中森先生に報告するのが筋だけれども、正直中森はあてにならない。明後日のバスケ部の練習の時に上野先生に相談してみようか……

 月の光を頼りにページをめくる。

(友達は裏切るものだ)

 途中で手を止めた。

(信用したら、裏切られたとき、立ち直れなくなる。だから友達は信用しない。人はしょせん孤独な生き物だ)

 苦しい、とノートの文字が訴えている。

 と、そこへ……

『親友だから』

 その苦悶の文字の毒々しさを吹き飛ばすかのように、渋谷の爽やかな声が脳内に響きわたった。
 
『おれっていう支えは絶対に無くならないから、いくらでも頼れ。いくらでも支えてやる』

 渋谷は言ってくれた。人は一人で立つ必要はない、と……。

 そして、

『おれはお前が一緒にいるだけで嬉しくて楽しい。それって充分な支えだろ?』

 そう断言してくれた。でも、おれなんかといて嬉しくて楽しい、なんてやっぱり信じられない。それにそれが支えになるなんてありえない。

 大きくため息をついて、ノートを再びカバンにしまう。

(おれは……)

 このノートの持ち主の気持ちが分かる。
 おれは他人の悪意に囲まれて育ってきた。だから分かる。人は裏切る。弱いものを見つけて攻撃してくる。裏切られる。だから期待してはいけない……


 鉛でも飲みこんだかのような重さを感じながら布団に入り、渋谷の寝顔をジッと見つめる。

(………綺麗だな)

 月の光に照らされたその頬は、まるで陶器でできた人形のようだ。
 そーっとその白皙に触れてみる。すべらかな頬、形のよい唇……


「……ん」

 渋谷が身じろぎしたので慌てて手をひっこめる。

「……こーすけ」
「うん」

 ぼんやりと渋谷の瞳が開き、その綺麗な黒目がこちらを見たかと思うと、

「!」

 息を飲む。

(なんて………)

 なんて幸せそうな……蕩けてしまうほどの微笑み……
 こんな表情、初めてみた……、と、

「え?」

 いきなり手が伸びてきて、首の後ろのあたりに回され、グイッと引き寄せられた。

(ええっ?)

 渋谷の肩口におでこがくっつく。抱きしめるみたいにぎゅうっとしてくる渋谷。
 寝ぼけてる。抱き枕状態だ。

「しぶ……」
「浩介……」

 耳元に響く優しい声……
 ドキンとする。

「ずっと、一緒に……」
「…………」

 優しい、優しい声……
 ふわあっと切なさが広がってくる……

『ずっと、一緒に……』

 寝ぼけてるのに、そんなこと……
 寝ぼけてるのに言うってことは、本当に、本心……?

「…………慶」

 あんな蕩けるような微笑み見たことない。あの、儚げな表情も……。
 ずっと一緒にっていってくれてるその声に、不純物は少しも含まれてなくて……
 そして、今、抱きしめてくれている、このぬくもりは……

 途端に全身に震えが走った。

「慶………」

 なんで今まで気がつかなかったんだろう。
 ずっと一緒にいたのは、憧れの『渋谷』じゃなくて『渋谷慶』その人で……

「慶」

 今、ここにあるぬくもりは、おれの親友『慶』のもので……

『ずっと、一緒に……』

 本心で一緒にいたいと言ってくれている『親友』。嘘のないその思い。信じられる人……

『ずっと、一緒に……』

 おれも一緒にいたい。『慶』と一緒にいたい。『慶』と本当の『親友』になりたい。


 ドッドッドッドッと心臓の音が大きく部室に響いている気がする。
 耳元で感じる『慶』の呼吸。
 いつでも支えてくれていた『親友』。嬉しい時も悲しい時も辛い時も。一緒にいてくれたから、笑うことも泣くこともできるようになった。『慶』がいなかったら、おれは今ごろ、あのノートの持ち主のようになっていたに違いない。

(だからこそ……おれは)

 そばにいるだけでいいって言ってくれたけど、それじゃダメだ。おれだってちゃんと『慶』を支えたい。支え合いたいんだ。『親友』だから。

 そのためには……

「慶」

 背中に腕を回し、おれからもぎゅううっと抱きつく。

(慶。おれの親友。おれの唯一無二)


 おれは、ノートの持ち主みたいにはならない。
 自分を信じて、友達を信じて、強くなる。おれは変わる。変われる。

「慶」

 温かいぬくもりをもう一度抱きしめる。

 大丈夫。おれには、慶がいてくれるから、大丈夫。





---------------------------------------



お読みくださりありがとうございました!
ようやく!ラストで地の文に「慶」と書くことができました。
今回で地の文の「渋谷」からは卒業です。渋谷呼びも新鮮で良かったけど、やっぱり慶!
ようやくようやく、『憧れの渋谷』から、『親友の慶』へと完全に意識が変わりました。

あーとーはー『親友兼恋人』になる日を目指して!
と、その前に次回「月光」最終回です。また明後日、よろしくお願いいたします!

ちなみに……浩介が背中のアザのことを話したセリフは、一年以上前に書いた「翼を広げる前(慶視点)」で慶が思い出していたセリフでした。気がついた方………いるわけないって(^-^;

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BL小説・風のゆくえには~月光4(慶視点)

2016年02月15日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 月光

 失敗したなあ……

 何度目かのため息をついてしまう。
 なんであんなことを言ってしまったんだろう。

『お前にとってのおれも、そうであってくれたら嬉しいんだけどな』

 これ、ほとんど告白じゃないか? 
 やっぱり浩介も変に思ったのか、その後、みんなで銭湯にいったんだけど、妙によそよそしかった。

 せっかくの銭湯……せっかくの浩介との銭湯……

 せっかくあれやこれやと楽しみに(決して下ネタ的な楽しみではない!)していたのに、浩介は脱衣所でもたもたしていて遅れて入ってきたかと思ったら、たいして風呂に浸かりもせずにさっさと上がっていってしまって……

 何が面白くておれ、中年の小太りのオジサン(顧問の中森先生、とも言う)と二人で風呂に浸かってるんだ? せめて橘先輩、入ってきてくれよ……。

 念を込めてシャワーを浴び続けている橘先輩の背中をジーっと見ていたら、ようやく入ってきてくれて、中森と話しはじめてくれたから助かった。

(あーあ……)
 ぶくぶくぶく……と鼻まで顔をつける。
 あれやこれや思うことが多すぎて……

(だいたい、浩介が悪いんだ!)
 文句もいいたくなる!
 6月の末に、バスケ部の美幸さんに失恋して以来、浩介は美幸さんに回っていた気持ちを全部おれに向けようとしてるみたいに、やたらめったら引っ付いてきているのだ。嬉しいけど……嬉しいけど、やっぱりちょっと困る、とあらためて思った。

 だって……友達でいようと決めたのに、変な期待をしたくなってしまう。
 そんな中で、あんな無防備な泣き顔を見せられたりしたら、もう自制が………

(でも、浩介、確実にノーマルなんだよなあ……)
 女性である美幸さんに恋をしていたくらいだ。男のおれを恋愛対象として見れるわけがない。

(だから、親友で……)
 いつまでも一緒にいるために、親友でいるんだ……


***


 銭湯から学校に帰ると、新たにOBが1人、OGが2人増えていた。毎年、合宿の時にOBが訪れるのは恒例となっているらしい。
 先にきていた五十嵐先輩が、留守番を買って出てくれて一人部室で待っていたおかげで、行き違いにならずにすんだようだ。
 
 元々夕飯として購入してあった弁当類と、先輩方が買ってきてくれた惣菜等ですぐに宴会がはじまる。
 マイペースな中森先生は、自分の分の食料を確保すると、早々に職員室に帰っていった。生徒と交流する気はサラサラないらしい。いると鬱陶しいだけなので助かるけど。

 はじめは、最近の写真部の活動のことなど、真面目な話をしていたのに、食事も終わり、おやつを食べはじめたあたりで、合宿のお約束が始まった。

「で? 新人ちゃん達は彼氏彼女いるの?」
「……………」

 どうして合宿の夜とか修学旅行の夜とかって、みんな恋の話をするんだろうか……。

「いません」と、おれ。
「いません」と、浩介。
「いません」と、南。
「いません。あ、好きな人はいるんですけど!」

 最後に真理子ちゃんがニッコリと答えた。
 真理子ちゃんは実の兄である橘先輩に密かに片想いをしている……。

「なーんだ。みんなだらしないなあ……」

 今春卒業したという女性の先輩が、呆れたように肩をすくめてから、橘先輩を振り返った。

「橘君はあの彼女とまだ付き合ってるの?」
「別れました!」

 橘先輩が答えるよりも前に真理子ちゃんがムッとして答える。
 へえ……橘先輩って彼女いたんだ……

「え、なんで? 美人な彼女だったよねえ? 振られちゃった?」

 不躾な質問にも関わらず、橘先輩は顔色ひとつ変えず、淡々と答えた。

「おれは進学しないからいいですけど、彼女は受験生ですから。恋愛は勉強の妨げになるので別れました」
「え、それどっちがいいだしたの?」
「オレですけど」
「なにそれ、最低~~!」

 うそーと叫ぶOG二人。

「そこを支えてあげるのが彼氏でしょ! 別れるなんて最悪!」
「やっぱ橘、最低~~」
「どうしてですかっ」

 本人でなく真理子ちゃんがムキになっている。

「学生の本分は勉強です! テスト前にもデートに誘ってくるような人なんだから別れて正解です!」
「橘妹、厳しいっ」

 あまりもの真理子ちゃんの剣幕に、OG2人も引いてしまっている。

「えー、私は橘先輩優しいなあって感心したけど?」
 おもむろに南が言った。

「だって、彼女の将来のために身を引いたってことでしょ? 本当にその彼女さんのこと好きなんだなあって」
「違うっ。そのくらいで身を引けるんだから、たいして好きじゃなかったんだよっ」

 真理子ちゃんがムスっとして言い返す。

「本当に好きだったら、何があったって離れるなんてできないでしょ?」
「えー、本当に好きだから、離れたんだと思うけど?」
「違う違うっ」
「でも、彼女にしてみたら別れたら勉強身に入らないよね~」
「いえてる!」

 OGも加わり、当の本人そっちのけで、女子だけが盛り上がっている。
 そんな女子達の恋愛話に辟易して、残りの男子で再び今年の文化祭のことについて話しをしていたのだけれど、

「炭酸とかないの? なんかキッツーい炭酸飲みたくない?」
「ああ、じゃあ、買ってくるよ」

 もう一人のOBの言葉に、一番の年長者の五十嵐先輩が立ち上がった。が、

「ああああっ。ダメです先輩っ」

 女子の中で騒いでいたはずの南が、五十嵐先輩にすがった。

「そんな、先輩に買い物なんて行かせられません! それは下っ端の仕事です!」
「でも、もう外暗いし、女の子に行かせるわけには……」
「大丈夫です! はいっお兄ちゃんっ浩介さんっ」
「え?」

 突然名前を呼ばれきょとんとする。

「買い物、2人でよろしくでーす」
「あ……」

 南……

 我が妹ながら……なんて良い奴!!

「もちろん!おれ達で行きます!」
「いや、オレ行くから……」
「いやいや! 大丈夫です! な?」

 五十嵐先輩の申し出に思いきり首を振ってお断りし、浩介を振り返ると、浩介もコクコク肯いている。

「じゃあ、渋谷、桜井、行ってきてくれるか?」

 橘先輩が立ち上がり、

「校門でて左まっすぐ行ったところの酒屋な? 領収書もらってきて」
「はい」

 お金の入った封筒を渡してくれた。
 この人、今も女子達が自分のことでわあわあ言っているのに、まったく動じてない。ポーカーフェイスが上手なのか、単に鈍感なのか……


 外はもうすっかり暗くなっていた。

「橘先輩に彼女がいたなんて意外じゃない?」
「だよなあ」

 銭湯でよそよそしかったのは気のせいだったのか、もういつもの浩介に戻っていてホッとする。

「どうなんだろうね? 橘先輩、まだその彼女のこと好きなのかな」
「うーん……」

 もしそうだとすると真理子ちゃん可哀想だな……と心の中で思う。
 真理子ちゃんの想いはおれしか知らない。
 相手に知られてはいけない想い……おれと一緒だ。

「まだ好きなのに、彼女の将来を思って別れたんだとしたら、相当えらいよね」
「お前だって同じだろ。美幸さんのこと好きなくせに、田辺先輩とくっつけてやって……」

 浩介は片想いをしていた美幸さんが、男子バスケ部キャプテンの田辺先輩と両想いだということに気がつき、キューピット役をしてあげたのだ。

「お前は……どうなわけ?」
「え?」

 ずっと、聞きたかったこと。意を決して聞いてみる。

「お前は……まだ、美幸さんのこと、好きなのか?」
「あー……」

 ドキドキドキドキ……と心臓の音ばかり聞こえてきて耳の中がぼわっとなる。
 そんなおれの気持ちなんて知らないまま、浩介は呑気に答えた。

「うーん……好き? かなあ? でも、引退して会えなくなったし、思い出すことほとんどないかも」
「え?!」

 思い出さないって………

「まあ、美幸さんにはもう田辺先輩がいるしね。おれがどうこういう話じゃないし」
「……そっか」
「それにさ」
「!」

 ふいにポンと頭に手を置かれ、心臓が飛び上がる。不意打ちやめろ……っ

 そんなおれの動揺にも気がつかず、浩介がニッコリと笑いかけてくる。

「おれには慶がいるし。ね」
「……え」

「おれ、恋より友情に生きることにしたの」
「なんだそりゃ」

 泣きたくなってくる。
 浩介の思いがおれの思いとは違うことはわかっているけれど……それでも、おれを選んでくれたことが嬉しくて。そして、思いが交わることはないということを突きつけられて、苦しくて……


 その後も、夜の雰囲気がそうさせるのか、珍しく浩介は饒舌だった。親の話をしてくれたり、昨日までの合宿の話をしてくれたり……
 夜道を歩きながらの、たわいのない話。まるでデートだ。

 やっぱり、浩介との二人の時間は、心地良くて、楽しくて……


 街灯に照らされて長く伸びる影……その影の、浩介の左手の先に、そっと自分の右手の影を合わせる。

 影だけみたら手をつないでいるみたい。

 本当に触れているかのように右手がジンジンと温かくなってくる。

(本当に、こうやって手を繋いで歩くことができたら、どんなに……)

 でもそれは無理。叶わない願いだから……

 せめて、影だけでも触れさせて。


「月がキレイだねえ」

 ふんわりと笑う浩介が、愛おしい。

「キレイだな」

 心から肯く。
 こうやって、一緒に同じものをみて、同じことを感じたい。ずっと、そばにいたい。

 だからおれは、お前の『親友』でいる。




---------------------------------------



お読みくださりありがとうございました!

『あいじょうのかたち』をお読みくださった方で、記憶力のすっごい良い方はお気づきかもしれません。
ラストの影で手を繋ぐシーンは、『あいじょうのかたち23』で、慶が思いだして話していたその話です。

実はこのプロットを書いたとき(私が現役女子高生のとき!)は、『月が綺麗ですね』(夏目漱石が『I love you』を『月が綺麗ね』とでも訳しておけと言ったという話)って知らなかったんです。
単に、買いだしの帰りに影で手を繋ぐ、としかなかったので、今回はあえてその話に触れませんでした。

『月光』慶視点はこれで終わりです。
『月光』浩介視点があと2回あって、本終了となります。

また明後日、よろしくお願いいたします!

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BL小説・風のゆくえには~月光3-2(浩介視点)

2016年02月13日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 月光


 ふっと目を覚ますと、心配そうにこちらを見ている渋谷の瞳があった。
 綺麗な二重。意志の強い光を帯びた、印象的な瞳。すっとした鼻、小さめの形の良い口。誰が見たって『理想的な顔』と判断するような、完璧に整った造形。

(本当に綺麗だよな……)

 ぼんやりと眺めていたら、目の前で手を振られた。

「大丈夫か? もう少ししたら中森が風呂連れて行ってくれるって」
「え……」

 今日は写真部の合宿で学校に来ている。途中で具合が悪いと判断されて、無理矢理保健室で寝かされたのだけれども、色々と考え事をしていたら本当に寝てしまったらしい。なんだか頭がボウッとする。

「お風呂ってシャワー室使うんじゃないの……?」

 バスケ部の合宿ではそうだ。学校にある5つのシャワー室を交代で使った。
 でも、渋谷はニッコニコで、

「近くの銭湯に車で連れて行ってくれるってさ。中森もたまには役に立つな」
「銭湯………」

 途端に背中にジクジクと痛みが広がりはじめる。

(背中のあざを見られてしまうかもしれない……)

 布団の中で手をギュッと握りしめる。

 甦る昔の記憶……

『どうしてこんな問題も出来ないのっ』
 母のヒステリックな叫び声と、背中に走る鋭い痛み…… 

『浩介っ』
 ゴメンナサイ ゴメンナサイ オカアサン
 モット ガンバルカラ ユルシテ……


「浩介?」
「!」

 渋谷の優しい声に我に返る。
 同じ「浩介」という言葉なのに、どうしてこんなに違うんだろう……

「大丈夫か? もう少し寝てていいぞ?」
「……慶」

 ふわっと頭をなでられる。
 ゆっくり、ゆっくり、優しく、優しく……

「………」

 その手の温かさに、鼻の奥がツーンとなって目の前がぼやけはじめる。
 ボロッと涙がこぼれると、渋谷が慌てたようにその涙をぬぐってくれた。

「どうした? どっか痛いのか?」
「………」

 首を振るけれど、涙は止まらない。
 何年も泣いていなかったのに、渋谷に会ってからは泣いてばかりだ。


『泣き止むまでここに入ってなさい!』

 おれが少しでも泣くと、母はそう言って容赦なくおれを物置に閉じ込めた。おれは悲しくても痛くても辛くても泣いてはいけなかった。だからもう涙なんか出なくなったと思っていた。

 でも、つらいときも、うれしいときも、泣いていいんだと、渋谷が教えてくれた。


「もしかして……宇野の言ったこと気にしてるのか?」
「………」

 渋谷の言葉に詰まってしまう。
 先ほど、元クラスメートの宇野に攻撃的な言葉を投げかけられて、おれは固まってしまったのだ。それを渋谷がサッと助けてくれて……

『渋谷もいつまで守ってくれるだろうな』

 その後、その様子をみていたらしい写真部OBの五十嵐先輩にそう言われた。

『親友、なんて言ってたって、人なんて簡単に裏切るぞ? その時、自分の足で立っていなかったら、もう起き上がれない。お前自身が人に頼らず立っていられるようにならないと……』

 おれはいつも渋谷に助けてもらってばかりで……
 こんなおれをいつか渋谷も見限ってしまうかもしれない……

「宇野のことは気にするな。あいつ何も考えてねえから。その時思ったことなんでも言っちゃうバカなんだよ」
「………」

 宇野と渋谷は、宇野がおれと同じクラス、というだけの繋がりなんだけど、気がついたら仲良くなっていた。渋谷は誰とでも分け隔てなく話せて、人懐こくて、友達も多くて……

「……ごめんね」
「何が?」

 キョトンとした渋谷を布団の中から見上げる。

「おれ……渋谷に頼ってばっかりで。写真部の他の部活との交渉だって全部渋谷に頼りっぱなしで」
「こ、う、す、け」
「あ」

 一文字ずつ名前を切って呼ばれて、ハッとする。今おれ「渋谷」って言ったな……。

 渋谷は「親友なんだから名前で呼べ」と言ってくれてるんだけど、どうしてもいまだに「渋谷」と言ってしまうときがある。

 渋谷はおれの中3の時からの憧れの人で、ずっと心の中で「渋谷、渋谷」って呪文みたいに言ってたくらい心の支えにしてて、今でも憧れの人で、そんな渋谷を他の誰も呼んでいない「慶」という呼び名で呼ぶことは、やっぱり恐れ多いというかなんというか……


「あのな」

 渋谷があらたまったように言った。

「別にいいじゃねえかよ。いくらでもおれを頼れよ」
「でも」
「言うじゃねえか。人っていう字は人と人が支え合っている……」
「………」

 渋谷は人差し指2本で人という字を作ってみせてくれた。

 その話、知ってる。でも、本来、人という漢字は……

「まあ、本当は人が一人で立ってる姿なんだけどな。こう腕をぶらんってしてな」
「うん……」

 あ、渋谷も知ってたんだ。
 そう、「人」というのは、一人で立っているものなんだ。五十嵐先輩のいうように……

「でも!」
「わっ」

 渋谷がいきなりベッド横の椅子から、ベッドの端の、おれの胸元の横あたりに腰をかけ直したので、ベッドが揺れて驚いてしまう。

「おれは、人は支え合ってるもんだと思うぞ?」
「でも」

 一度ひっこんだ涙が出そうになってきた。

「おれは慶に支えてもらってばかりで、何も支えてない」
「は?」

 眉を寄せた渋谷に構わず、言葉を重ねる。

「支えてばっかりじゃ、重くて嫌になるよね?」
「………」
「やっぱり人は一人で立たなくちゃいけないんだよ」
「………」
「そうじゃないと、支えがなくなったとき、おれは……」


『しね みんな しね おれはぜったいにゆるさない』

 あのノートの人のように、世の中に毒づいて、下を向いて、それで、それで……


「…………」

 渋谷がジッとこちらを見ている……

 ハッとする。
 なんでおれ、こんなこと言ってしまったんだろう。

 重くて嫌になる、なんて、そんな重いこと言って……


「あの……」
 その沈黙に耐えられなくて、口を開こうとしたのだが、

「………お前、ばか?」
 大きなため息とともに、渋谷がボソッと言ったので口をつぐんだ。……ばか?

「え」
「お前は二つ勘違いしてる」

 目の前に指が2本立てられた。ピアノでも弾けそうな細くて長い指……

「まず一つ、人は一人で立つ必要はどこにもない」
「え」

 渋谷はいたって真面目な顔をしていった。

「無人島で自給自足の生活でもしてるならともかく、人はみんな人と関わり合って生きている。足りないところはお互い補い合って生きていけばいい。一人で全部やる必要なんかどこにもない。支え合って生きていけばいい。できないことは人を頼ればいい」
「でも」

 また泣きそうになって口がへの字になってしまう。

「おれは支えられてばかりだよ。そんなんじゃ……」
「二つ目」

 再び指を突きつけられて、言葉を止めると、ふっと、渋谷の目が笑った。

「お前はおれを支えてくれてる」
「どこが……」

 何を言って……

「勉強教えてくれてるしな」
「そんなの」

 すぐに必要なくなる。
 首を振ると、渋谷は切ないほど優しく微笑んだ。

「それに………」
「…………」

 渋谷の温かい手がそっとおれの頬に触れる。

「そばにいてくれてる」
「え……」

 そばに……?

「笑ってくれてる」
「………」
「泣き顔をみせてくれてる」

 何を言って……?

「おれはそれだけで充分だ」
「…………」

 よく……わからない。

「それのどこが……」
「おれはお前が一緒にいるだけで嬉しくて楽しい。それって充分な支えだろ?」
「…………」

 そんなの……おれなんかいなくたって、渋谷にはいくらでも友達なんかいる。
 でも、でも。おれには渋谷しか……

「ああ、それから」
 渋谷はニッと笑うとおれの頬をむにっと掴んだ。

「さっき、支えがなくなったら、とかいってたけど……」
「……うん」

「おれっていう支えは絶対に無くならないから、いくらでも頼れ。いくらでも支えてやる」
「……………」

 渋谷の強い光の瞳。眩しい……

 ……わからない。

 どうして……どうして?

「どうしてそんなこと言ってくれるの……?」
「…………」
「慶?」

 渋谷はなぜか口を開きかけ、閉じて、また開けて、を繰り返した挙げ句、

「…………親友だから」

 なぜかちょっと怒ったように言った。

(親友……)

 でもそれだっていつまで……。
 その思いを読み取ったかのように、渋谷が肩をすくめた。

「つかさあ、おれ、前からさんざん言ってるよな? いい加減信じろよ」
「だって………」
「まあ、いいけど」

 トンっと渋谷は身軽に飛び降りた。

「何度でも言ってやるから、何度聞いてもいいぞ? 答えはいつも同じだけどな」

 ビシッと人差し指で眉間に指される。
 
「おれはずっとお前のそばにいる」
「…………」
「お前はおれの親友。おれの一番。おれの唯一無二。おれの………」
「…………え?」

 見返すと、渋谷はぼそっと付け足した。

「お前にとってのおれも、そうであってくれたら嬉しいんだけどな」
「え………」

 それは………

「…………慶」

 初めてみる表情………

 何だろう………『渋谷』じゃない。『渋谷』はいつも自信満々で揺るぎなくて……

 でも、今、ここにいる渋谷は、なぜか少し不安気な瞳で……

 おれの憧れの『渋谷』じゃなくて……


「風呂、行けるか?」
「あ………うん」

 ふっと渋谷は視線をそらすと、ベットを囲っているカーテンを勢いよく開けた。

「先戻ってる」
「うん」

 その後ろ姿もなぜか寂しげで………

「………慶」

 友達になって一年以上経つというのに、初めて『渋谷慶』という人を見た気がした。




---------------------------------------



お読みくださりありがとうございました!

踏み込めない慶。とんと鈍感な浩介(いや、でも同性だもんな~気がつかないよな~)、でもとりあえず、『憧れの渋谷』フィルターは外れるかも?また明後日、よろしくお願いいたします!

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