今回こそは要約で。
なんか説明回になっちゃいそうで嫌だけど・・・・・・しょうがないか。
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香達は、千葉にある夕子の祖母が営む民宿に滞在することになった。
誕生日以前の状態にまで能力が封印されてしまった香が、敵に場所を知られている自宅で暮らすのは危険と判断したためだった。今の状態で香とクリス達とが離れ離れになることが一番怖い。香の母も人質に取られると困るので一緒に行くことになる。
ホテルに泊まる?いや、ホテルは足がつく、ともめていたところに、夕子が遊びにきたのでその話をしたところ、祖母の民宿に泊まりにいく?と提案してくれたのだ。せっかくなので夕子も一緒に行くという。
大急ぎで支度をし、高村の車で千葉に向かう。
民宿に着く前に、近くの海を通りかかって、クリス・白龍・イズミは驚きのあまり言葉を失う。
その海辺の風景が、十年前から夢にでてきている景色とソックリだったのだ。
夕日が沈む浜辺。一人佇む少女・・・・・・。
小さい頃に、ここに来たことはないか?と香と香母に聞くと、
香母が、自分の実家がこの付近にあり(今は取り壊されていて無い)、香が小学校2年生の時に一度だけ来たことがある。その時に香は祖母にここで会った、と答える。
香はほとんど覚えていない、と言う。
驚いた、そういうことだったのか、としきりと感心したように言う、クリス・白龍・イズミの3人に、香はムッとして、いい加減、自分にも本当のことを教えてほしい、と言う。
夕子・香母・高村は先に民宿に向かい、残された香とクリス・白龍・イズミ・アーサーの5人は砂浜入口の石段に腰掛ける。
能力が完全に封印されてしまった今、隠すことももはや意味がないだろう、という白龍の意見により、夕暮れの浜辺で白龍が話し出す。(ただし全部を話す気はない、ということを暗にクリスには伝えている)
テーミス王家に伝わる月の姫の予言。
月の姫とは新世界への扉を開く者である。
月の姫が8歳になったときに、封印せし者が姫の能力を封印する。
18歳になった時に、封印は解かれ、月の姫を守るために4人の月の戦士も出現する。
その10日後に新世界への扉が開かれる。
おそらく、小学校2年生の時に会ったという祖母が、能力を封印したのでしょう、と言う白龍に、以前香母から話を聞いていたイズミが深く肯き、香とクリスが顔を見合わせる。
「もしかして、急に心の声が聞こえなくなったのって・・・・・・」
香の言葉にクリスも肯く。白龍・イズミ・アーサーが「?」という顔をしたのに対し、香は「小さい頃人の心の声が聞こえていたけど、急に聞こえなくなったの」とさらっと答える。今まで誰にも話してこなかったけれども、一度クリスに話したことで話すハードルが低くなったようだ。
「私は自分が月の姫だっていう自覚がまったくないけれど、みんなはどうして私が月の姫だって分かるの?」
もっともな疑問に白龍が淡々と答える。
18年前の7月14日、テーミス王家お抱えの能力者たちによって、どこかで月の姫が生まれたということは探知された。
でも、テーミスの血筋の女の子ということ以外、どこの誰かということまでは分からなかった。
そこでテーミス王家では、同日に生まれた子供達にこっそりと見張りをつけた。予言の詳細はテーミス王家に近しい者しか知らず、混乱や悪用に備えて大々的に月の姫が生まれたということを発表することは避けられていた。そもそも予言の詳細も皆は知らない。
18歳の誕生日を迎えたのと同時に、体を包む金のオーラが発現したので、香が月の姫であることが判明。
ちなみに香につけられていた見張りは、長谷川広樹の両親だった。広樹自身はずっと予言のことを知らずに同じ学校に通っていて、香18才の誕生日の夜に親から教えられて、翌日香に話しかけにいった、というわけだった。
白龍達は、香が月の姫であろうことは、誕生日前から予想がついていた、という。
テーミス王家から入手した月の姫候補の写真の中で、夢で見た女の子と香が一番よく似ていたから、という。
浜辺に佇む一人の少女・・・。
その浜辺はまさしくここだった。
「それじゃ、自分達が月の戦士だということは、10年も前から分かっていたということ・・・?」
コックリと肯く4人。唖然とする香。
「でも実は、月の戦士かどうかということは自己申告制だから、この中の誰かが偽物である可能性もある」
白龍の爆弾発言にぎょっとするクリス。確かに、と肯くイズミ。ニコニコしたままのアーサー。アーサーはイマイチ話の内容が分かっていないような様子。
「・・・・・・偽物なの?」
「本物だよっ」
香の問いに即答するクリス。でも、確かに月の戦士だという証拠はどこにもない。
テーミス王家からは、自らが月の戦士だという者は報告するように、とお達しが出ていたのだが・・・。
「報告したの?」
「するわけねーだろ」
クリスの答えにうんうんと肯くイズミ。
なぜ?と聞いた香に、すみません、と白龍が手で制する。そして突然、早口の英語で話しだした。
『今まで僕達はこの話題を避けてきたけれど、きちんと意思の確認をすべきだと思う』
『意思って?』
『月の姫をテーミス王家に引き渡すかどうか、だ』
『そんなの・・・・・・っ』
決まってるじゃないか、月の姫を守るのが月の戦士の使命だ。あいつらに渡したら最後、姫の意思は無視され、利用されるだけだ!
興奮した様子で英語でまくしたてるクリスを、香はビックリして見上げる。その横で静かにイズミが手を挙げ、流暢な英語で話しだす。
『私も同意見だ。クリスト・・・クリスの前で言うのは憚られるが、ホワイト家につかまったら、姫が利用されることは目に見えている。だいたい<新世界>が何なのかも正確なところはいまだに分かっていないんだし、十日後の予言の日を無事に迎えてから、その後のことは考えてもいいと思う』
『・・・・・・アーサーさんはどうお考えですか?』
白龍が石段の最上部にいるアーサーに視線を向ける。白龍的には、クリスとイズミの返答は予想できていたので、アーサーの意思を確認したい、というのが一番の目的だった。
『あ・・・・・・いや、驚いたよ』
アーサーが少し肩をすくめて答える。
『君たちは本当にホワイト家に逆らう気だったんだね。僕はそんなこと思いもしなかった』
『!!』
思わず、クリスとイズミが立ち上がる。白龍が二人に落ち着け、というように手を伸ばす。だがクリスはもう戦闘態勢だ。
『お前、本当に月の戦士なのか?!あの夢を見て、姫を守ることを一番に考えようと思わないなんてありえない!』
『そう言われても・・・・・・』
アーサーが困ったように苦笑する。あ、とクリスが思い当たってアーサーに詰め寄る。
『もしかして、カトリシアやジーンにオレ達の居場所を教えたのもお前か?!』
『ああ、聞かれたから答えたが・・・』
『お前・・・・・・っ』
クリスがアーサーの襟繰りを掴む。
『クリス、落ち着け』
白龍の制止も耳に入らないクリス。
『お前のせいで香が・・・・・・っ』
「ちょっと!なんでケンカになってるのっ」
見かねた香がクリスの腕をグッと掴み、下ろさせる。
「今、香って言ったわよね?私のことでケンカしてるの?」
「・・・・・・」
クリスが自分を落ち着かせようと大きく息を吐き、その場にしゃがみこんだ。
「ケンカなんかしてない」
「だって・・・・・・」
「ちょっとした意見の相違です」
白龍が冷静に言うと、アーサーの方を振り返った。
『あなたは今後もホワイト家の命に従うつもりですか? それならば我々は別行動をとることになります』
『あーーーーーいや、君達に従うよ』
ニッコリとアーサーが笑顔を作る。
『別にホワイト家に恩があるわけでもないし。ただ処世術として従っていただけなんだ。日本のことわざにもあるだろう<長いものに巻かれろ>って』
『・・・・・・長いもの』
クリスが眉を寄せる。白龍が訝しげにアーサーを見上げる。
『ホワイト家より僕達のほうが<長いもの>だと?』
『君達三人が姫を渡さないと言う限り、君達の方が<長い>。それに僕は新世界を見てみたいんだ』
アーサーの笑顔はつかみどころがない。
クリスは釈然としなかったが、不承不承アーサーに頭を下げた。
『ムキになって悪かった』
『いや、こちらの方こそ悪かった。意思疎通ができていなくて』
軽く握手を交わすと、アーサーはまたニコリとした。
『それにしても君は本当に姫のことを愛しているんだね』
『な・・・・・・っ』
言い返しそうになったクリスだが、ふと香に視線をうつし、またすぐに視線を外した。
『オレはこの十年、ずっと姫に会える日が来るのを待っていたんだ』
『十年前というと、君は6歳くらい?イズミは7歳? そこらへんにも温度差の理由があるのかもしれないな。僕はもう9歳だったから、予言のことはわりと冷静に受け止めていたんだよ』
『・・・・・・違う。それだけじゃない』
クリスが苦い顔をしてうつむく。イズミは海に視線をうつしたまま口をへの字に曲げている。
『白龍は8歳。半々な感じかな? クリスやイズミのように純粋に姫を守りたいという気持ちと・・・・・・』
『それだけですよ』
アーサーの言葉を白龍がバッサリと冷たく切る。
『僕も姫を守りたいだけです』
それ以上何か言ったら承知しない、という視線を向けられ、アーサーは肩をすくめて口をつぐんだ。
白龍があらたまった調子で皆に言う。
『とにかく今は、姫の封印を解くことが先決です。このままの状態で第二の予言の日がきてしまったら・・・』
『そのことについてなんだが』
イズミが、香の母親から聞きだしたことと、今までの香の話を総合して考えるに一つの結論にいたった、と言う。
能力がある=友達に嫌われる、の図式が彼女の中で根付いていて、そのせいで能力を開花させないよう、自分で自分に封印をかけてしまっているのではないか?と。
『オレもそう思う』
クリスも肯く。
英語の会話をまったく理解できず、ムッとした表情のまま頬杖をついていた香だが、急に4人がチラチラとこちらに視線を向けはじめたのを感じ、頬杖を外した。
「何?何の話してるの?」
「ヒメのハナシですよ」
ニッコリとアーサーに笑顔を向けられ、香がぱっと赤面する。
「すこしハマベをあるきませんか?」
「そうだな。行こう、香」
イズミとアーサーに言われ、海に向かって歩き出す香。
三人の後ろ姿を見ながら、クリスが白龍に愚痴めいて言う。
「アーサーってさ・・・日本語と英語でキャラ違いすぎじゃね?」
「日本語が上手に話せないって話だったけれど、聞き取ることには不自由してないんじゃないか?」
自分達のことをよく観察している、と内心面白くなく白龍は思う。
そこへ夕子が香達を呼びにやってきた。
バーベキューの用意ができた、という。
夕子とはしゃぐ香を見ていて、
「封印を解く鍵は夕子ちゃんかもしれないな・・・・・・」
と、クリスがつぶやく。
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ふう。説明回終わり。
要約、要約、と思っていても、ついつい、セリフやシーンを書いてしまった。
書きたかったシーン第二弾を早く書きたいな~次の次くらいに書けるかな・・・
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次回更新は5日金曜日夜9時です。
毎週土曜更新でしたが、ピッチあげたいので次回から週2に変更します。
よろしくお願いいたします。