創作小説屋

創作小説置き場。BL・R18あるのでご注意を。

ベベアンの扉あとがき+次回予告?

2006年12月06日 16時07分28秒 | ベベアンの扉(原稿用紙73枚)
そういえば作中、触れなかったのですが・・・
というか触れようもなかったが・・・
「ベベアン」という言葉はどこから来ているのか?

それは私が小学生の時に、養鶏所で卵を買った帰り道、
柿の木の上にいた不良高校生が、
「ベベアンベベアン!」
と叫んで、こちらに柿を投げてきたからです。
え?!と思ってもう一度そちらをみたときには、もう彼はいなかった。
きっとベベアンの扉が開いたのでしょう。
だから「ベベアン」がなんなのか、私にも分かりません。

中学時代に、今で言うところのイジメみたいなものに合ったことがあります。
クラスの目立つグループに目をつけられて、呼び出しをされて・・・みたいな。
でも、それまでの友達はそのままつきあいを続けてくれたので、孤独になることはなかったのですがね。
それでも、私にとっては衝撃の事件で、めっちゃトラウマになりました。
学校に行くのが嫌で嫌でしょうがなかった。
でも、それでも学校に行けたのは、他に友達がいたことや、部活の友人がいたおかげ。
それよりなにより、校外で参加していたとあるクラブの仲間がいてくれたからでした。
そのクラブは土曜日の午後からだったので、学校休んだら行かせてもらえなかったからね。
今日はクラブだ!って自分を励まして学校行ってた。

だから何をいいたかったのかというと・・・
人間逃げ場は必要だということ。
心の支えさえあれば、どんな困難にも立ち向かっていくことができるってこと。
それと時間がたてば、物事は好転していくってこと。
実際、私はそれからそれなりに勉強をがんばって、そのイジメグループが入学できないレベルの高校(それも学区外受験)に行って、その鎖を断ち切ることができました。

でもさ~・・・
長男が一歳になる前くらいだったかな・・・
育児サークルで、そのイジメグループの一員(といっても中心ではないけど)と再会しちゃったんだよね~。
一瞬血の気引いたけど、でももうお互い大人ですから。
お互い何喰わぬ顔で、普通の世間話だけしました。
ま、その後一回もあってないけどね。

まあ、何がいいたいのかというと・・・
時間が解決してくれるってことです。
あの時の私、つらかったけど、未来はきっと違うって信じて戦ってきた。
おかげであれからたくさんいいことあったもんね。

だから、今、もし、とっても嫌な目にあっている方がいらしたら。
どうぞ、一つでもいいから自分の居場所を作って、そこで栄養蓄えて耐え忍んでいただきたい。
きっと、その後に、輝ける未来が待っているはずなので・・・。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ベベアンの扉(22/22)

2006年12月04日 23時26分06秒 | ベベアンの扉(原稿用紙73枚)
 帰ってからは大変な騒ぎになった。
 何しろ二階の高さから落ちたものだから、緑澤君は右腕を骨折した。私は緑澤君が下敷きになってくれたおかげで打撲ですんだ。和也は運動神経がいいだけあって、とっさに屋根につかまったとかで無傷。ずるい。
 おかげで高校時の友人とは会えなかった。でも近いうちに第二弾をやるというので、その時には緑澤君とも一緒にいこうと思う。
 入寮も怪我が治るまで遅らせることになった。居心地の悪い父の家だけど、優紀子さんの手料理がおいしいことと、萌が懐いてくれることは、悪くない。
「萌がもう少し大きくなったら、ちゃんと事情を話すから」
 父にはそういって頭を下げられた。
 それから、
「緑澤君とはどういうつきあいをしてるんだ?」
と、詰め寄られた。
 心配してくれるんだ、と茶化すと、
「娘なんだから当然だろう」
と憮然とされて、東京には悪い男がいっぱいいるんだから、とか何とかお説教をされた。
 ・・・・・・嬉しかった。

「出遅れちゃったなあ」
 お見舞いに行くと、緑澤君が眉を寄せて言った。
「山本さんって、もう大学生になるんでしょ? しまったなあ・・・オレより先に社会人になっちゃうのかあ・・・。あ、留年すればいいのか。山本さん、留年してよ」
「何いってんのよ」
 睨もうとしたが、失敗して笑ってしまった。
「あ、そうそう、私、今、山本じゃないのよ。『吉川』っていうの」
「よしかわ・・・さん?」
 小首をかしげる緑澤君。
「ピンとこないなあ・・・。名前で呼んでも・・・いい?」
「・・・いいよ」
 言ってから恥ずかしくなってきた。緑澤君も首まで真っ赤になっている。
「えーと・・・、七重・・・さん」
「さんはいいよ」
「じゃ・・・七重」
「はい」
 見つめ合って・・・吹き出した。
 こんなことでとっても楽しい。とっても幸せ。
 これからも逃げ出したくなるくらい嫌なことはたくさんあるんだろう。
 でも、大丈夫。私には居場所がある。自分で見つけた居場所がある。
 そして、私は緑澤君の居場所でもある。
 まだ家族との関係はぎこちないようだけれども、私がいる限り、二度と緑澤君をベベアンに行かせはしない。 
 もう、ベベアンの扉が開くことはないだろう。

<完>
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ベベアンの扉(21/22)

2006年12月01日 22時20分38秒 | ベベアンの扉(原稿用紙73枚)
「緑澤君!」
 あわてて緑澤君の腕をつかんで引っ張る。まるで綱引きのようだ。
 緑澤君が痛そうに顔をゆがめた。
「ごめん、僕・・・」
「謝ってる場合じゃない! 緑澤君も力入れて、足を抜いて!」
「ねえ、ねえ」
 この緊急事態に場違いな呑気な声をかけられた。姉妹の姉が首をかしげてこちらをみている。
「七重は達之のことが好きなの?」
「は?」
 何をこんな時に・・・
「ねえ、二人は結婚するの?」
「そんな先のことは分からない! でも今、一緒にいたいのよ!」
「それならここで一緒に暮らせばいいじゃないの?」
「ここでは生きている実感がない!」
 おもわず叫んでしまった。
「生きてるっていうのはね、ご飯を食べたり、映画をみたり、おしゃべりしたり、感動したり、傷ついたりすることなんだよ!」
 わずかに、光が弱まった。その隙に力をこめて緑澤君を引っ張り上げる。その瞳を見上げて、切に訴える。
「緑澤君、生きよう。私たち、一緒に生きよう。六年前、あなたが私を助けてくれた。今度は私が助ける番だよ」
「山本さん・・・」
 眼鏡の奥の優しい瞳が、ふっと笑って・・・、ふいに、抱きしめられた。
「ありがとう・・・」
 緑澤君のぬくもりが伝わってくる。胸がきゅうっとなって、体の力が抜けていく・・・場合じゃない!
「早く! 行こう!」
「ど、どっちへ?!」
「あっちだよ」
 すっと姉妹の姉が指をさした。
「ここずっとまっすぐいくと扉につくよ」
「・・・どうして・・・」
 姉は肩をすくめた。
「もういいよ。無理強いしていてもらっても楽しくないしさ。また違う人に来てもらうから別にいいよ」
「・・・・・・」
「それより、早く行った方がいいよ。今ちょうど『白い女の人』の力が弱まったみたいだから。あの人、自分のいる扉から離れると強い力を出し続けられないみたいなんだよ」
「ねえ、あの人っていったい何者なの?」
「さあ?」
 さあって・・・。
「分からないけど、別に悪い人じゃないよ。私たちにおうち作ってくれたし」
 確かに、妹を抱き上げたときの彼女は母性に満ちあふれていた。おそらくこの子達に危害を加えることはないのだろうが・・・。
「ねえ、あなたたちはこれからどうするの?」
 聞くと、姉は妹をふわりと抱きしめた。
「私たちの居場所はここなの。二人一緒だから寂しくないよ」
「・・・そっか」
「ここは居心地がいいよ。いつでも戻ってきて」
「・・・・・・」
 私と緑澤君は顔を見合わせ、しっかりと手を握りあった。
「じゃ、行くね。教えてくれてありがとう」
「うん。じゃあね」
 後は振り返りもせず、教えてもらった通り、まっすぐ走った。二人で一緒に。
「あれかな・・・」
 しばらく走ると扉がうっすらと見えてきた。そこから和也とおばさんの声がもれ聞こえてくる。
 緑澤君の手に力がこもった。
「大丈夫だよ」
 私も力いっぱい握りかえす。
 家に居場所がない? 学校に居場所がない? だったら他に居場所を作ればいい。それは公園のベンチでもいい。デパートの洋服売り場でもいい。本屋でもいい。そんなの自分次第なんだ。そこで力を蓄えて、また戦いに出ればいい。
『本当にいいの?』
 扉の前に着くと、突然、空から白い女の人の声が聞こえてきた。
『本当にいいの? 外には嫌なことがたくさんあるわよ。また傷つくわよ』
「・・・大丈夫」
 緑澤君が力強くうなずいた。
「がんばってみる。山本さんがいてくれるからがんばれると思う」
「・・・行こう」
 そして・・・二人で扉を開けた。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ベベアンの扉(20/22)

2006年11月29日 22時59分55秒 | ベベアンの扉(原稿用紙73枚)
 白い光が、ギュンッとこちらまで伸びてきたのを、すんででかわして走る。
 その後、幼い姉妹が追いかけてきたが、何とか先にロープの先を結んでおいた木を見つけることができた。このロープを辿っていけば、あちらに戻れるはずだ。
「緑澤君、がんばって走って!」
「山本さん、僕は・・・」
 泣きそうな顔をしながら緑澤君が首を横に振った。
「僕は、もう、いいんだよ。山本さん、一人で帰って」
「馬鹿なこといわないで。行くよ!」
 ロープに合図を送ってみる。・・・が。
「何よ・・・これ」
 スルスルとロープの先が手元まですぐに来てしまった。途中で切れている・・・。
「ロープは切ったよ」
 いつのまに姉妹が木の横に立っていた。
「帰らないで。一緒にいようよ。どうせあっちにいったって居場所ないんでしょ」
「だーかーらー!」
 何度この問答をしただろう。自分自身でも何度も何度も問いかけてきた。そして一つの答えを信じてきた。
「居場所は自分で作ればいい! 一生同じなんてことないのよ。あんたたちだってそうだよ。家に居場所がなかったのなら、学校の先生に相談するとか、近所の人に言ってみるとか、警察に行くとか、すればよかったじゃないのよ!」
「言ったもん」
 わあっと妹が泣き出した。
「隣のおばちゃんに言ったもん。でも誰も助けてくれなかったもん。ずーっとずっとあのままなんだよ。変わらないよ」
「私たちは、居場所をみつけたよ。それがここなの。ここは居心地がいいもの」
「・・・ごめん」
 こんな幼い子たちに酷なことを言ってしまった。確かに、まだ幼い子では最低限の保護を受けなければ、現状を打破するのは難しい。そう考えると、居場所はないまでも、衣食住を満たしてもらえていた私や緑澤君は幸せだ。この子達とは違う。でも、それでも私は行く。
「でも、私たちは行くよ。外の世界のほうが、嫌なこともたくさんあるけど、楽しいこともたくさんあるから」
『勝手に行けばいい』
 わあん、と頭上に『白い女の人』の声が響き渡った。
『でも達之は渡さない。ねえ、達之、あなたは帰りたくないものね? 私と一緒にいたほうが居心地がいいものね』
「ごめん、山本さん」
 やんわりと、掴んでいた手を振り払われた。
「僕、やっぱり自信がない。あそこでは居場所をみつけられない」
「緑澤君・・・」
 その時、遠くの方から声が聞こえてきた。
(たつゆきーーー)
(お兄ちゃーん! 七重さーん!)
 緑澤君のお母さんと和也の声だ。
「ほら、お母さんも弟もあなたのこと呼んでるよ! 帰ろうよ」
「・・・無理だよ」
 一瞬にして緑澤君の顔がこわばった。その緑澤君を白い光が包みはじめた。
「ごめんね、山本さん。せっかく来てくれたのに。本当にごめんね。でもありがとうね」
「緑澤君・・・」
「大好きな君に会えて、本当に嬉しかったよ」
「緑澤君・・・」
 光に抱きしめられるように、緑澤君が静かに目を閉じる。
 足の先の方の光がゆっくりと強くなり・・・そして・・・。
「ちょっと待て」
 ダメだ。無性に腹が立ってきた。
「自己完結してんじゃないわよ! こんなのが最後なんて許さないわよ!」
 光の中に手を突っ込んで、緑澤君を引きずり出した。
「何のために私が今まで頑張ってきたと思ってるの? あなたが好きになってくれた私になって、もう一度あなたに会うためだよ! あなたのおかげで友達もたくさんできたのよ。あなたのこと紹介する約束だってしてるんだから。こんなところでこもっている場合じゃないのよ」
 眼鏡の奥の瞳が驚いたままこちらを見返している。
「山本さん・・・」
「一緒に帰ろう。緑澤君。居場所がないっていうのなら・・・私があなたの居場所になるよ」
 思わず出た言葉だった。でも、本心だ。
「私があなたの居場所になる。だから・・・一緒に帰ろう」
「山本さん・・・」
 優しい瞳。六年前、私を助けてくれたときと同じ瞳。この瞳に会えなくなるなんて嫌だ。絶対に嫌だ。
「ね、帰ろう」
『ゆるさない!』
 グンッと光がまた強く緑澤君を取り囲む。
『達之は私が喰らう。喰らうんだよっ』
「冗談じゃない! 帰るのよ! 早く!」
 こちらに手を伸ばした緑澤君が勢いよく倒れた。足を光に捕らわれている!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ベベアンの扉(19/22)

2006年11月28日 23時00分39秒 | ベベアンの扉(原稿用紙73枚)
 リンリンンリンリンリン・・・
 突然、軽やかな鈴の音が響き渡った。
「あ、白い女の人が来るよ」
 妹の方が嬉しそうに走り出した。その先に、扉が現れた。ここに来るときに現れた扉より少し小さい扉。
 ゆっくりとその扉が開き、人影が現れた。
 まぶしくて・・・見えない。
「七重ちゃん、ようやくきてくれたのね」
 優しい声。妹が抱き上げられた気配がする。でも白くまぶしくて、姿は見えない。
「あら? 和也君は?」
「和也君は家に帰りました。私と緑澤君も帰ります。あっちに待っている人がいるんです。ね、緑澤君?」
 振り返ったが・・・緑澤君がいない!
「緑澤君!?」
 緑澤君は白い光の方にフラフラと歩いていくところだった。『白い女の人』が迎えいれるように緑澤君に向かって手を伸ばしている気配がする。
「待って! 緑澤君!」
「七重ちゃんもおいでなさい。こちらに来たら楽になれるわよ。もうお父さんとお母さんの顔色を伺って生活することもなくなるのよ。お友達に気を使うこともないわ。お勉強だってしなくてもいい。こちらには気持ちいいことだけしかないのよ」
「・・・何よ、それ」
 ばかばかしい。
「私は親の顔色のために生きてるんじゃないし、友達にはそりゃ気は使うけど、それを上回る楽しい時間をすごせてるし、勉強だって、せっかく大学に合格したんだから、これからたくさんしたいわよ。時間が過ぎれば人は変わっていくのよ。居場所がないってグチグチしていた私はもういないの」
「そう・・・」
 ゾッとするほど声が冷ややかになった。
「じゃあ、あなたは勝手に帰ればいい。でも達之は私がもらうわ。これから達之は私の中で生き続けるの」
「は?」
 私の中で・・・?
「さあ、達之君、いらっしゃい。こちらの扉へ・・・ここに入れば、もう何も考えなくてすむようになるわよ」
 ゆっくりと緑澤君が扉の方へ向かっていく。
 ダメだ! いけない! 
「緑澤君! ダメ!」
 力一杯、緑澤君の腕を掴む。
「・・・山本さん」
 力無く緑澤君が笑う。ダメだ!ダメだ!
「行くよ! 帰るよ!! 走って!!」
 強引に腕を引っ張って、緑澤君を引きずるようにして、走り出した。 
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする