創作小説屋

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BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係20-1

2019年07月30日 07時33分06秒 | BL小説・風のゆくえには~ 続々・2つの円の位置関係

【享吾視点】

 母の日。5月2週目の日曜日。

 オレがオーナーをしているワインバーで、母の日イベントを行った。発案者は歌子だ。まあ、イベントと言っても、テーブルすべてにカーネーションを飾っていることと、入り口近くにカーネーション一輪の花束をたくさん用意して、お客様に「ご自由にどうぞ」と声かけをしているだけで、あとは変わらない。演奏する曲に少し年代上の曲をまぜたくらいだ。

 8時のステージを終えて控え室に戻って一息ついたところで、歌子が呼びにきた。オレの両親が到着したらしい。

「カーネーション渡してね?」

と、一輪押し付けられて、渋々テーブルに向かう……と、

「…………え」

 その隣のテーブルに、哲成と哲成の18歳年下の妹の梨華ちゃんが座ろうとしているから驚いてしまった。「お久しぶりです」なんて、哲成とオレの両親が話してる。どうやら偶然隣になったようだ。

「あ、こんばんは!」
 オレに気が付いた梨華ちゃんが明るく挨拶してくれた。娘の花梨ちゃんとそっくりだ。……って。

「あれ? 花梨ちゃんは?」
 今朝方、哲成は、急に仕事になったという梨華ちゃんから連絡を受け、花梨ちゃんの世話のために実家に戻ったのだ。それなのに花梨ちゃんがいない……。首を傾げたオレに、梨華ちゃんが元気いっぱいに答えてくれた。

「ジイジとバアバに預けました!」
「すげー無理矢理な」

 苦笑を浮かべている哲成。

「旅行から帰ってきたばっかの親に有無を言わさず……」
「だって、歌子先生の旦那さんの演奏聴きたかったんだもんー」
「別に今日じゃなくても……」
「今聞きたいって思ったら今しないとなのっ」
「あーはいはい」

 梨華はあいかわらずせっかちだなあ、と、哲成は妹が可愛くてしょうがないって瞳をしながら言っている。昔から変わらない。大人になってからはほとんど妹の話をしなくなってしまったけれど、学生のころは、まれに、こういう顔をしながら妹のことを話してくれていたのだ。

「だって、さっちゃんのママが自慢してたんだもんー。あー今から楽しみ!」

 きゃっきゃっと言っている梨華ちゃん。その横で、歌子が「娘さんが私のピアノ教室に通ってくれてて……」と、オレの両親に説明している。


「あ、それ、カーネーション?」
「ああ……うん」

 哲成が、オレの手元のカーネーションに気が付いて言ってきた。

「そういや、入口のとこにいっぱいあったな」
「ああ、うん。母の日のイベントで……」

 今から母に渡そうとしていた、というのがバレるのが何となく気まずくて、

「梨華ちゃん、どうぞ」

 咄嗟に梨華ちゃんに差し出した。

「え」
 キョトンとした梨華ちゃん。

「え、もらっていいの?」
「帰ったら清美さんに渡せばいいじゃん」

 哲成が言うと、梨華ちゃんは目をパチパチとさせて「なんで?」と首をかしげた。なんでって……

「なんでって、母の日だから。何言ってんだ?梨華」
「あー……」

 梨華ちゃんは引き続き首をかしげ続けると……

「じゃ、テックンにあげる」

と、オレが渡したカーネーションを哲成に差し出した。



----------

お読みくださりありがとうございました!
う……もう7時半過ぎましたね……。予定の半分しか書けてませんが、更新しないのも悔しいのでここまであげます(涙)
次回金曜日更新予定です。どうぞよろしくお願いいたします。

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BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係19

2019年07月23日 07時55分11秒 | BL小説・風のゆくえには~ 続々・2つの円の位置関係

【享吾視点】



「………あーわかったわかった。え?1時間? そりゃ厳しいなあ……」
「………?」

 聞こえてきた哲成の声にぼんやりと目を覚ました。カーテン越しに射し込まれている光は朝日と思われる。今、何時だろう……

(っていうか、オレ、あのまま寝たのか……)

 哲成が風呂に入っている間に不安感が強くなってしまったため、安定剤を服用したのだ。その影響か、一緒にベッドに横になった直後、唐突な睡魔に襲われ、途中から記憶がまったくない……

(まあ、寝なかったとしても、何もできなかっただろうけど……)

 今まで20年近くも、「何もしてはいけない」と自分を律してきたのだ。それが体に染み付いているらしく、体が素直に反応してくれない……

(あの不安感はそれが原因か?)

 せっかく、哲成がしてもいいと言っているのに。長年溜まりに溜まった欲望を果たせたはずだったのに……

(…………哲成)

 何もせず寝てしまったオレをどう思っただろう……?

 起き上がり、声が聞こえる方に目をやると、ちょうど哲成がスマホを手にこちらに戻ってくるところだった。

「おー起きたか」

 いつも通りの笑顔。愛しさで胸がいっぱいになる。抱きしめたいのを我慢して、普通に問いかける。

「電話? 何かあったのか?」
「いや、梨華がさ、どうしても仕事に行かなくちゃいけないから、花梨を預かってくれって……」

 言いながら、部屋着から外出着に着替えはじめた哲成。思わず、凝視してしまう。

(ああ……その白い肌にたくさん跡をつけて、その細い足を押し開いて……)

 今まで妄想はたくさんしてきた。シミュレーションは完璧だった。それなのに……

「でな、今から一時間以内に来いっていうんだよ。だから、行ってくる」
「え」

 行ってくる?

 アッサリと言われ、我に返る。

「ああ、それじゃ、オレも帰る……」
「いや、いいよ。体キツそうだし、ゆっくりしてってくれ」

 ぶんぶんと手をふられた。

 体キツそうって何だ?と、首をかしげると、哲成は眉を寄せた。

「昨日の夜から今まで、蹴ってもくすぐっても全然起きないくらい爆睡してたじゃんお前。具合良くないんだろ。大丈夫か?」
「……………」

 そうか……そう思われてたのか……
 それは良かった、というべきか。

「お前今日、夕方からバーでピアノ弾くんだよな? 行けるのか?」
「ああ……うん。大丈夫。夕方までには治る……」
「そうか」

 哲成は、テレビの前のゴチャゴチャと物を置いてあるカゴからキーケースを取りだすと、

「んじゃ、オレも行くから、そこで鍵返して」

 キーケースから一つ鍵を抜いて渡してくれた。

「スペア作っといて」
「え」

 スペア……合鍵。その単語に胸が高鳴る。
 哲成はずっと自宅暮らしだったので、こうして鍵を貰うのは初めてだ。

 感動したオレに気付いた様子もなく、哲成はアッサリと手を上げた。

「んじゃ。適当にそこらへんのもの食べていいからな」
「あ……うん」
「じゃーな」

 玄関に向かいながら、背中に手をつけて、グーパーグーとした哲成。中学の時に決めた『またあとで』のサインだ。

 そして、振り返りもせず、出ていってしまった。今までとまったく変わらない……

「哲成……」

 閉められたドアに向かって呼んでみる。

 オレたちもう、中学の時とは違うんだよな? もう、親友だけじゃないんだよな……?

 でも…………でも。

 なんだか途方に暮れてしまった。


----------

お読みくださりありがとうございました!
また遅刻m(_ _)mしかも予定のところまで書けなかった……でも更新しないのは悔しいので上げますっ。
次回金曜日更新予定です。どうぞよろしくお願いいたします。

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BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係18

2019年07月19日 07時44分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 続々・2つの円の位置関係

【哲成視点】

 好きだよ。愛してるよ。
 そう言い合って、軽いキスを繰り返して……

 今日はこれ以上のことはしない、と言いながらも、このままでは進みそうだな……と思った矢先、

(…………ピアノ)

 階下からピアノの音が聴こえてきて、唇を離した。

「…………」
「…………」

 見つめ合い……なんとなく気まずくなって目をそらす。

(やっぱり、下に奥さんいるのに、こういうのはな……)

 ふっと息を吐いてから、少し間隔を空けて座った。ピアノの音は引き続き聴こえてくるけれど……正直、下手くそだ。

「………。これ、歌子さんじゃないよな? こんな下手なわけないもんな」

 普通に話しかけると、享吾は少し安心したようにうなずいた。

「ああ……たぶん、大人の生徒さん」

 歌子さんは、大人の生徒のために、土日祝もレッスンを受け入れているらしい。そういえば、発表会にも大人が何人か出演していた。大人になって習い始めた人もいたけれど、大人のピアノは下手でも味がある。

「もしかして、お前も習ってるのか?」
「いや。こないだ習いたいっていったら断られた」
「へえ……」

 教えてくれないんだ。不思議な夫婦だ。

(ああ、やっぱり……)

 何だかよく分からない二人の関係。そもそも、享吾が歌子さんをどう思っているのかも知らない。知らないからモヤモヤする。このモヤモヤを解消するには、そこら辺の話をちゃんとしなくてはならないのだろう。……でも。

「……そろそろ帰ろうかな」
「え!?もう!?」

 びっくりしたように叫ばれたけれど、もう6時だ。明日から旅行に行くのなら準備とかもあるだろう。

「旅行は一泊?二泊?」
「二泊三日だから、3日の夜に帰ってくる。だから哲成、4日……」
「ああ、ごめん」

 提案しかけられたのを、手で遮る。

「4、5、6はオレが都合が悪い」

 梨華たちを遊びに連れて行く約束をしているのだ。

「まー、会うのは連休明けの週末だな」
「……………」
「なんだその顔」

 いつもポーカーフェイスの享吾が、明らかにガッカリしてるから、おかしくて笑いだしてしまった。

 ほら、やっぱり、享吾はオレのことが好き。オレと一緒にいたいと思ってる。そしてオレを欲しいと…………

 思ってると、思っていたんだけど。


 11日の土曜日、享吾がお泊まりセット持参で夕方からオレの部屋に来た。だから当然、あの続きを……と思いきや。

(…………何もしねーとはな)

 いや、何も、とは言い切れない。キスして手を繋いで腕枕をされて………………寝た。大学のはじめの頃みたいな感じだ。

 享吾は普通に歩いていたので、足の調子は元に戻っているようだった。だからそれが原因とは思えない。

(オレが仕掛けてもいいんだけど……)

 未経験のため躊躇してしまった。どう考えても、ここは、結婚生活18年半の享吾がリードすべきだろ? そもそも、若い頃、2回だけそういうことしたときも、享吾主導だったし……
 
(って、まさか、オレじゃ勃たなかった、とかいう……?)

 ………。
 ………。

 ウッと詰まってしまう。そんなことはない……と思いたい。けど……

(まあ……たくさん話せたからいいか)

 ふうっと息を吐き、綺麗な横顔をジッと見つめる。

 歌子さんのことは聞けなかったけれど、他のことは色々聞けたのだ。

 そろそろ仕事復帰を考えていて、独立も視野に入れていること。
 お兄さん一家が今、鹿児島に住んでいて、この春お子さんが東京の大学に通いはじめたこと。それで、お母さんが孫の面倒をみることを楽しんでいること。
 明日の母の日には、バーでお母さんのためにピアノを演奏すること……

(…………良かった)

 享吾のお母さんの幸せそうな顔が目に浮かぶ。孫の面倒をみて、息子夫婦と旅行に行って……。きっと、お母さんはこういう「普通の幸せ」を欲していたと思う。だから、やっぱり、今までのオレたちの選択に間違いはなかったのだと思う。

(…………そうだよな?)

 眠っている享吾の唇をそっと指で撫でる。相変わらず整った横顔……

 ああ、キョウも幸せそうだ。幸せだろうな。だって……

(キョウにはご両親がいる。奥さんもいる。でも、オレには……)

 急に迫って来た孤独感に胸が苦しくなって、享吾に横からぎゅっと抱きつく。

(オレには、誰もいない。母にはもう会えないし、父も妹も清美さんに取られた)

 でも……オレには享吾がいる。だからいいじゃないか。

(でも……)

 諦めきれない自分がいる。ああ……高校生、大学生の時と同じだな。あの時も、清美さんに家族として受け入れてほしくてもがいていた。そう考えると、清美さんが家を出て行って、梨華の親がわりをしていた十数年は、オレにとっては幸せな時間だったのかもしれない。

 でも……でも……今は。

「……キョウ」

 その愛しい胸に額をおしつける。

 オレは欲張りだな……



----------

お読みくださりありがとうございました!
20分遅刻っm(__)m
哲成の家族コンプレックスは根が深い。恋愛だけで進めないこんな真面目なお話にお付き合いくださり本当にありがとうございます!もうすぐ彼らの幸せな形が見えてくるはず……
次回火曜日更新予定です。どうして享吾が手を出さなかったのかーの話になる、かな?と。どうぞよろしくお願いいたします。

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BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係17

2019年07月16日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 続々・2つの円の位置関係

【享吾視点】

 地べたに座ってるのも疲れるよな、と言って、哲成がベッドに座るのを手伝ってくれた。そのまま、ゆっくりと足を擦ってくれる。温もりが伝わってきて、足に血が巡ってくるのが分かる。

 思い出話をたくさんしたい、と言ったのに、哲成はずっと無言だった。ザーザーと布を摩る音だけが部屋に響き渡る……と、

「………お前さ」

 哲成がようやく口を開いた。

「トイレとかどうしてんだ?」
「トイレ?」

 いきなり、なんの話だ?

「この足じゃ、トイレ行けないじゃん」
「ああ……」
「毎回、歌子さんに来てもらってる、とか?」

 なぜかムッとしている哲成。何だろう……

「いや……左足は多少踏ん張れるから、壁伝いでなんとか」
「ふーん……。風呂は? 手伝ってもらってるのか?」
「まさか。時間かかるけど一人で……って、あ」

 まさか、と思ってちょっと身を離す。やばい。まずい。

「ごめん、もしかして、オレ、臭い?」

 そうだった。考えてみたら昨日も一昨日も風呂に入っていない。面倒で止めてしまって……

「悪い。オレ、しばらく風呂入ってなくて……すごい時間かかるから、つい」
「あ、そう」

 ふーん。と、なぜか今度は嬉しそうになった哲成。なんなんだ。って、いや、そんなことより、

「だから、あんま、くっつかないでくれ」
「なんで?」
「だって、臭い……って!」

 一気に頭に血がのぼる。

 いきなり哲成が立ち上がり、ぎゅと頭を抱き寄せてきたのだ。くっついた耳からドッドッドッと哲成の心臓の音が聞こえてくる。

「ちょ……っ、哲成っ」
「いいからいいから」

 哲成はグリグリとオレの頭をかき抱くと、可笑しそうにいった。

「あー確かにちょっと汗臭いかも」
「だから……っ」

 だから言ったのに! でも、離れようとするのに、力いっぱい抱え込まれて逃げられない。

「だから、哲成……っ」
「なんでもいいよ。臭かろうが、歩けなかろうが、お前はお前だから」
「…………っ」

 耳元に響いてくる優しい声………

「オレは、どんなお前でも一緒にいたい」
「哲成……」
「結婚してるお前でも、な」
 
 哲成の声に真剣みが含まれて、ハッとして顔をあげた。

「オレ、歌子さんと話したんだよ」
「…………」

 そういえば、インターフォンの音から、かなり時間がたってから、哲成はこの部屋にやってきたんだった……

「歌子さんな、オレがお前の期待に応えてもいいって言ってた」
「え」
「オレとお前の間に『何か』あってもいいんだってさ」
「………」

 何かって、それは……

「歌子さんは、享吾の幸せが自分の幸せなんだって」
「…………」
「お前……愛されてるよな」

 愛されてる……それはそうかもしれない。
 歌子のオレに対する愛情は親愛の情と呼ばれるものだと思う。

 この結婚生活18年半の間で、何度か歌子には言われたことがある。

『享吾君、あっちの処理は大丈夫なの?』

 そう言うのは、たいてい、歌子が学生時代の友人たちと飲んできた直後のことなので、その飲み会で夫婦生活の話が出ているのだろう。

『私は何もしてあげられないから……』

 申し訳なさそうに言う歌子に、オレはその度に答えてきた。

『オレには哲成しかいないから、どのみち歌子さんにできることは何もないよ』

 すると、歌子はいつも嬉しそうに安心したように笑うのだった……



「普通、自分の旦那が男と両想いになるなんて嫌だろ」
「え」

 歌子との思い出に気を取られていたのを、哲成の刺々しい感じの声で我に返った。……っていうか、今、何て言った?

「両……想い?」
「おお。歌子さんには、つい最近、オレがお前のことを好きになったって言っておいたぞ。話し合わせろよ?」
「……え」

 あっさりと言われ過ぎて、スルーしてしまいそうになったけれど、踏みとどまった。

「好き……?」
「なんだよ。好きってバラしちゃまずかったか?」

 眉を寄せて哲成は言うけれど、いや、これは聞き逃せないっ

「好きって、好きって、哲成……っ」

 思わず哲成の両腕を掴んで顔をのぞき込んでしまう。

「今、好きって言ったか?」
「だからなんなんだよ?」

 哲成は目をパチパチさせている。

「だってお前、もう好きって言わないって、大学の時に……」
「そんなの時効だ時効」

 フンッとなぜか哲成は鼻で笑うと、

「もう奥さんにもばらしたんだから、いくらだって言っていいだろ」
「…………」

 好き……
「一緒にいたい」ももちろん愛の言葉だけど、やっぱり「好き」という直接的表現の破壊力には敵わない。

「好きだよ、キョウ」

 哲成の温かい手が頬を囲ってくれる。今までずっと秘めてきた欲望が溢れ出てくる。

 これからは、好きって言っていいのか?
 これからは、触れ合っていいのか?
 ずっと一緒にいて、それで……それで……

「キョウ……」
「…………」

 啄むようなキスをくれる哲成。
 夢みたいだ。これは夢か?

 夢なら覚めるな。このまま……、ああ、でも……でも、

「哲成、でも、オレ、風呂……」
「だからどんなお前でも大丈夫っていっただろ」
「でも」
「でもじゃねえよ。って、ああ、さすがに、下に歌子さんがいるのにやる気にはなんねーか」

 そう言って、哲成は両手をあげた。

「まあ、平成のうちは清い関係でいよう」
「…………」
「令和になったら、大人の関係になるか」
「大人……」

 40半ばになってようやく大人か。
 哲成はニッと笑った。

「明日、オレの部屋来いよ」
「………っ」

 直球の誘い文句に心臓が跳ね上がる。期待で全身が震える。けれども……

「ごめん……明日からちょっと……」
「ああ、そうか。家族旅行だったっけ?」

 そうなのだ。毎年ゴールデンウィークには、うちの両親と歌子と4人で旅行に行くことになっている。父はまだ働いているし、歌子は土日にレッスンを入れているので、こうした連休でないと旅行にいけないのだ。

「あ、でも、その足で大丈夫なのか?」
「車だから、まあ、大丈夫かなって……」
「そっか」
「…………」
「…………」
「…………」

 また嫌な沈黙が部屋に落ちる。せっかく幸せな未来が見えかけていたのに……。と、哲成が、ポツリ、と言った。

「オレはお前と歌子さんに離婚してほしいわけじゃないんだよ」
「…………」
「それで悲しむ人もたくさんいるわけだから」

 確かに……両親は悲しむだろう。そして、歌子は一人になってしまう。母親は物心つく前に亡くなっていて、父親も数年前に亡くなったので、他に身よりがないのだ。精神的な問題だけではなく、実際問題としても、彼女一人でこの家を維持していくことに対する不安は残る……

 色々考えていたら、ポンと肩を叩かれた。

「ま、とりあえず、奥さん公認の愛人ってことでいいんじゃね?」
「………。その言い方は何か嫌だな」

 愛人ではないだろ。

「じゃあ、奥さん公認で浮気できる券所有」
「嫌だ」

 なんだそれは。
 哲成はまたニッと笑った。

「じゃ、オレ達やるのやめるか?」
「…………それはもっと嫌だ」
 
 これだけ期待させておいて、何を言っているんだ。

 ムッとして言うと、哲成はケタケタと笑ってから、「あ」と手を打った。

「なんかこのやり取り、呼び方決めたときみてーだな」
「…………ああ」

 懐かしい。高校一年生の二学期。あの時、渋谷と桜井が名前で呼び合っていることに影響されて、オレ達も特別な呼び方を決めよう!と言って……

「キョウ」
 あの時と同じ、クルクルした瞳で哲成が呼んでくれる。

「キョウ……大好きだよ」
「哲成……」

 愛してるよ。

 そう言うと、哲成は優しく優しく、キスをしてくれた。



----------

お読みくださりありがとうございました!
呼び方を決めたのは「続・2つの円の位置関係2」の後半部分でした。この時はまだ明るく前向きな哲成君。この後色々あって後ろ向きになっていき……、これからまた前向きに明るくなってくれることを期待しています。
次回金曜日更新予定です。どうぞよろしくお願いいたします。

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BL小説・風のゆくえには~続々・2つの円の位置関係16

2019年07月12日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 続々・2つの円の位置関係

【哲成視点】

 2019年4月30日。平成最後の日。

 初めて、享吾と歌子さんの家を訪れた。妹の梨華に聞いた住所を頼りに行ってみたところ、本当に実家から徒歩20分ほどのところにあって驚いた。最寄り駅が違うので今まで会うことがなかったらしい。
 小学校が近くにある住宅街の一角で、駅から5分のところにあるのに、大通りからは奥に入っているため静かでとても環境が良い。

(なんか……しゃれてるな)

 緑に囲まれた玄関口。英語で書かれたピアノ教室の看板。こんな洒落たところに二人で住んでるんだ。二人で相談してこの家を建てたんだ。……なんてことを思うと、胸のあたりがモヤモヤしてくる。

(だから今まで来なかったんだよな……)

 18年半も享吾と歌子さんのことから目を背けてきた。
 18年半、オレは何をしてきたんだろう……

(子育て………かな)

 そんなことを思って少し笑ってしまった。

 妹の梨華の母親が家を出て行ったのは、梨華が小学一年生の時だった。その時オレはもう社会人だったので、脳梗塞の後遺症で少し言葉に不自由のある父に代わって、懇談会も授業参観もPTAの役員会もよそのお母さん達に囲まれながら参加してきたし、個人面談も入学準備も受験の手続きも全部オレがこなしてきた。梨華とはよく一緒に外出もしたし、勉強も教えたし、梨華に母親がいないことでの不自由を感じさせたことはなかった……と思う。思いたい。

 梨華が専門学校を卒業して、無事に就職をして、ようやく肩の荷が下りた……と安心する間もなく、彼氏ができたせいか毎日帰りが遅いことを心配する日々が続き……それから、妊娠、結婚。急なことではあったけれど、結婚相手の耕太君は好青年だったし、何より梨華が幸せそうだったので、

(親業は卒業だな)

 そう、覚悟をした。もう、見守るだけで、口出しするのはやめよう、と思った。
 だから、タイ行きの話を受けた時も、梨華のことは考えの中にいれていなかった。今思えば、タイに行っていなければ、離婚を阻止できたのかもしれないけれど……、でも、花梨が生まれたことで、母親の清美さんとの距離は縮まっていたので、梨華もオレではなく、清美さんに相談していただろう……

(……でも)

 でも、オレには享吾がいるからいい、と思っていた。
 享吾との関係を壊したくなくて、頭を冷やすために3年も離れたけれど、それは元に戻るためであって、元に戻れるものと思っていた……のに。

(浅はかだったな……)

 3年の離別の後、残ったものは結局、享吾の病気と享吾と歌子さんの絆だけだ。

(MURAKAMI……)

 二人の家の表札を見つめる。
 MURAKAMI……村上。村上享吾。村上歌子。

(……オレも「村上」だけどな)

 だから、出席番号も前後だった。同じ村上。中学からはじまったオレ達の関係……

(終わりにしたくない)

 胸に手を押し当てる。先日、同級生の渋谷慶に言われた言葉を思い出す。

(『自分の心に正直に……』)

 キョウ。今、この瞬間、オレはお前と一緒にいたい。


***


 覚悟を決めてインターフォンを鳴らした。
 出てきてくれた歌子さんは、いつものキチッとした格好とは違って、大きめのシャツにパンツ姿だった。それもお洒落に見えるのは、スタイルが抜群にいいからだろうか。普段着風の雰囲気に日常が見えて、ぐっと詰まってしまう……

「こんにちは」
 ふわりと笑った歌子さん。「会わないで」と言われてからはじめて会うので、余計に気まずい。でも、歌子さんの方はいつも通りの自然さだ。

「享吾君、今日も調子悪くて部屋で寝てるの」
「そう……ですか」

 調子が悪いのは、また、オレのせいなのか? でも……でも。

「……会っても、いいですか?」
 見上げると、歌子さんの切れ長の綺麗な瞳が瞬いた。でも、ひるまず言葉を継ぐ。

「こないだ、オレが享吾を恋愛対象として受け入れるのなら何かあってもいい、って歌子さん言ってましたけど……その考えに変わりはありませんか?」
「え……」

 パチパチパチと瞬きが続いている。でも、構わず続けた。

「期待もたせるようなことをするなら会うな、とも言ってたけど……期待に応えられるなら、会ってもいいってことですよね?」

 でも………
 玄関に置かれた猫の絵のスリッパ。大きな鏡。ピンクの花。享吾と歌子さん、二人で築きあげてきた空間。幸せな匂い。………だから。

「二人の結婚生活を壊すつもりはないんです。オレはただ……」

 そう。オレはただ……

「ただ……会いたくて」
「………」
「ただ……会いたいだけなんです」

 オレの望みは、それだけなんだ。

「………」
「………」
「………」
「………」

 長い長い沈黙の後……

「え……」
 歌子さんは、ポツン、と言ってから、

「え、えええ?!」

と、叫んでしゃがみこんでしまった。な、なんだ?なんだ?

「哲成君……享吾君の期待に応えてあげるって……」

 歌子さんは口元に手を当てながら、なぜか期待のこもった目をしてこちらを見上げている。

「哲成君も享吾君のこと好きになったってこと?」
「え……」
「会えるなら、期待に応えてもいいって、要はそういうことよね?」
「あ……」
「そうよね?!」
「………………。はい」

 強めに言われて、思わず肯いてしまう。……と、歌子さんはパアッと表情を明るくした。

「やっぱり少し距離を置いたのが良かったのかしら? それで自分の気持ちに気が付いたとかそんな感じ?」
「あー……まあ……はい」

 まさか学生の時からずっと好きで、享吾もそれを知っていた、なんて言えるわけがないので適当に肯くと、

「そっかそっか。なるほどなるほど……」

 歌子さんは一人でブツブツ肯いてから、「良かったあ……」とため息と一緒に吐き出した。

 ……良かった?

「良かったって……」
「だって、享吾君、ずっとずっと、哲成君のこと好きだったのよ? それが叶うなんて、嬉しすぎる」
「…………」

 自分の旦那が男と両想いになって嬉しいって……何言ってんだこの人?

「あの……歌子さんはそれでいいんですか?」
「私?」

 歌子さんはゆっくりと立ち上がると、また、ふんわりと笑った。

「もちろんよ。私は享吾君が幸せになってくれることが一番なんだから」
「…………」

 なんだそれ……意味が分からない。

「本気で言ってるんですか?」

 思わず口調を強めて聞いたけれど、歌子さんは「もちろん」とまた笑顔でうなずいた。

「享吾君を幸せにしてあげて?」
「………」
「それが私の幸せでもあるから」
「………」

 意味が分からない。分からないけど……

(歌子さん……キョウのこと本当に大切に思ってるんだな)

 それだけは分かった。なんだか負けた気がして、モヤモヤしてくる。…………でも。

(今は、それは置いておこう)

 せっかくの平成最後の日。享吾と一緒に過ごしたい。それが今のオレの望みだ。


***


「キョウ、入るぞ? いいな?」

 二階の一番奥。歌子さんに教えてもらった享吾が寝ているという部屋のドアを、覚悟を決めて開けた。

「具合大丈夫か?」
「あ……うん」

 ベッドの中にいた享吾がゆっくりと上半身を起こした。
 ダブルベッドだったりしたら、回れ右して帰りたくなったと思うけど、ドアを開いた先の部屋は、独身時代の享吾の部屋とそっくりで驚いてしまった。

「なんか……変だな」
「変? 何が?」
「だって……一人暮らししてた時とほとんど変わんねえじゃん。この部屋」

 思わず口を尖らせて言ってしまう。

「お前、結婚してるのに、おかしくね? 最近は夫婦別室っていうのもアリなんだろうけど、ここまで一人だけの空間って珍しくね? お互いのプライベートを尊重してるってことか?」
「ああ、そう……だな」
「ふーん」

 そういう部屋を与えてくれる歌子さんの享吾に対する愛情の深さに、心の奥の方がグツグツしてくる。腹立ち紛れに勢いよくベッドに腰かけた。

「歌子さん……良い奥さんだな。こんな風に一人部屋もくれて。お前、大切にされてるんだな」

 思わず文句みたいに言ってしまうと、享吾が眉を寄せた。

「哲成。何が言いたい?」
「………」
「………」
「………」

 何が言いたいって……そんな風に愛されてることがムカつくってことを言いたい。言えるわけないけど。

 意味もなく本棚を見る……。仕事用らしき難しそうな本が並んでいるけど、一番上の段には、オレも好きだったバスケの漫画がずらっと並んでる。あれ、学生時代に借りて読んだよな。歌子さんにも貸したのかな……。

(ああ、ダメだ。文句しか出てこねえ……)

 やっぱりダメだ。ここに来たのは間違いだった。こんな、歌子さんの愛情いっぱいの家なんかじゃなくて、もっと違うところで会うべきだったんだ。……出直そう。

「………じゃあな」
「え? 哲成?」

 呼び止められたけれど、振り向かず、ドアに向かう。このままじゃ、オレ、嫌なことをたくさん言ってしまいそうだ。そうなる前に……、と、ドアノブに手をかけた、その時。

 ドサッと、何かが落ちたような大きな音がした。驚いて振り返ると、そこには、肩を打ったのか、身を丸めるようにして床に転んでいる享吾の姿が……

「キョウ?!」 
 とっさに駆け寄って、抱きかかえた。

「大丈夫か?」
「…………」

 コクリと肯いた様子で、大丈夫だと判断できて安心する。

「…………」
「…………」

 思わず、引き寄せた。柔らかい長めの髪が頬に当たって愛しさが募ってくる。離したくないぬくもり……

 ……と、思っていたら、享吾がなぜかふっと笑った。

「……前もこんなことあったよな」
「え」

 こんなこと? ってなんだろう? 
 思いつく前に、強めに腕を掴まれて思考を中断させられた。

「悪い。ちょっと手、貸してくれ。今、足の調子が悪くて」
「え……」

 足の調子? だからベッドから落ちたのか。オレを追いかけようとして……

「大丈夫なのか?」
「大丈夫」

 なんとか上半身を起こしてやって、ベッドにもたれかけさせる。足……両方とも動かないようだ。

「足って、何が悪いんだ?」
「ああ…………うん」

 肯いただけで答えない享吾。もしかして、精神的なもののせいで動かないということか。それはつまり、オレのせい……

 申し訳なさと、ここまで享吾に影響を与えられることに対する醜い優越感で心の中と頭の中がグルグルする……

「…………」
「…………」
「…………」
「…………」

 無言で享吾の横に座る。くっついたところから伝わってくる温もり……。中学の時からオレたちはいつもこうして隣に座ってて……。
 と、ふいに先ほどのぬくもりに一つのシーンが結びついて「あ」と手を打った。

「『前も』って、もしかしてあれか? 暁生に殴られた時のことか?」
「……当たり」

 思い出した。中学の時に、享吾がオレの幼なじみの松浦暁生に殴られて倒れたところを、さっきみたいに抱きかかえたんだった。そういえば、あの時……

「お前あの時、殴られたくせにゲラゲラ笑ってたよな」
「あー…うん」
「打ちどころが悪くて頭おかしくなったのかと思ったんだよなあオレ」
「……そうか」

 あの時の享吾は変だった。暁生も変だったけど……

「今さらだけど……なんで笑ってたんだ?あれ」

 今さらだけど、真面目に聞いてみると、享吾は「あれは……」と少し言い淀んでから、意を決したように、答えた。

「あれは、お前がオレのところに先に来てくれて嬉しかったから、だよ」
「………え」

 先に来た? そりゃ行くだろ。被害者は享吾なんだから。

 つか、それが嬉しかった? 何言ってんだ。

「嘘だな。あれは『嬉しかった』って笑いじゃなかった」
「…………そんなことはない」
「いいや嘘だ」

 言い切ってやると、享吾はしどろもどろに言葉を足した。

「まあ……松浦に対して『ざまあみろ』って思ったってのも否定はしないけど」
「ざまあみろ? なんだそれ」

 そういえば、享吾と暁生って妙に仲悪かったよな……。
 あの仲の悪さは享吾の暁生に対する嫉妬のせいだったのかな、なんて思うと可笑しくて笑えてくる。

 そうやって、ずっとずっと前から、オレ達は一緒にいた。

「……あれは中三だから、平成2年、だよな?」

 あらためて、享吾のこと見つめる。初めて見た時と同じ、涼し気な目……

「オレさあ……お前のこと認識したの、中二の終わりだったんだよ」
「え、なんで」

 キョトンとした享吾。それはそうだろう。今まで話したことのない話だ。平成も終わるから、言ってしまおう。

「中二の終わりの球技大会でさ、途中で本気だすの止めたお前見て、すっげー腹立ってさ」
「そう……だったんだ」

 それで、同じクラスになって早々に声をかけた。あれからオレ達は始まったんだ。

「あれが、平成になってすぐの話だろ」
「そうだな……」

 平成が始まったのは、中二の冬だった。

「で、その平成も、今日で終わるわけじゃん?」
「そうだな」
「だから……」

 すっと、手を重ねる。愛しいぬくもり……

「だから、今日はそんな思い出話とか、たくさんしたいと思って…」
「哲成……」
「ずっとお前と一緒にいたいと思って………それで、来た」
「……そうか」

 重ねた手が握り返さる。指を絡めて繋ぎ直す。心が溢れていく……

「オレも……お前と一緒にいたい」
「……ん」

 ぎゅっと握り合って、微笑みあう。恋人のように。
 心臓のあたりがぎゅっとなる。嬉しいのと、安心したのと、それから……

(『ざまあみろ』、だな……)

 オレは今、歌子さんに対して『ざまあみろ』って思ってしまった。
 オレは嫌な奴だ。享吾の幸せを願っている優しい歌子さんとは大違いだ……



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長文お読みくださりありがとうございました!
「続々・二つの円の位置関係14」の終わりと終わりを合わせたくて、ついつい長くなりました。
せっかく一緒にいるのに、グルグルしてる哲成。鬱陶しいー(^_^;)

余談ですが……
哲成の実家は私鉄の駅が最寄り駅。享吾と歌子の家は市営地下鉄の駅が最寄り駅。路線も違うため、偶然駅や電車内で会う、ということもなかなかなかったのでした。

次回金曜日更新予定です。どうぞよろしくお願いいたします。

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