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BL小説・風のゆくえには〜王子の王子とバレンタイン(前編)

2023年02月14日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 短編読切
<登場人物・あらすじ>

渋谷慶……医学部5年。身長164センチ。中性的で美しい容姿。でも性格は男らしい。
桜井浩介……高校教師2年目。身長177センチ。外面明るく、内面病んでる。慶の親友兼恋人。

渡辺恵……医学部5年。身長155センチ。慶と同じ実習グループの一人。あだ名はナベちゃん。本読み切りの主人公。


高校2年生のクリスマス前日から晴れて恋人同士となった慶と浩介。
それから7年。浩介が就職して、慶の大学の近くにアパートを借りているため、現在は半同棲状態。
カミングアウトはしていないため、まわりには仲の良い親友と言っている。

渡辺恵ちゃん、2回目の登場です。
短編「王子の王子」で、浩介に、慶に手を出さないよう釘をさされた女の子です)




【渡辺恵視点】


「バレンタイン、今年こそは!って思ってるのよ

 実習の帰り道、同じ班の山田さん(サバサバしてて、全然洒落っ気なくて、女捨ててる女子)に打ち明けたところ、山田さんは間髪入れず、

「王子は今年も『誰からも受け取らない』宣言してたから難しいんじゃない?」

と、いやーなことを言った。

 そんなこと知ってるっつーの。だから今、話してるっつーの!

「でも! 義理は受け取るでしょ?だから……」
「義理も、連名の場合のみだったよね?」
「だからー!」

 聞け!

「山田さんに協力してほしいんだって!」

 そう。渋谷君は、連名の義理チョコだけは何とか受け取る。そこを突くのだ。

「山田さんとの連名で、他の男子にも渡すようにして、その中に私の本命チョコを紛れさすのよ!」
「…………。あー、それはちょっと……」

 山田さん、珍しく返事に困ったように言葉を濁した。

「え、何? 何か都合悪い?」
「うーん……チョコ誰かにあげるのは、彼が嫌がるから」
「…………」
「…………」
「…………え?」

 何て言った?今。 え? 彼?

「彼…………って?」
「え?」
「え?」

 は?

「山田さんて……彼氏いるの?」

 現実に? 

「まあ……うん」
「…………」
「…………」

 気まずそうに頬をかいた山田さん。

 …………マジか。

「え、いつから?」

 そんな話、聞いたことない。全然男っ気ない……というか、女捨ててる感じのくせに、彼氏? 最近出来たってこと!? そんな話、聞いたこと……

「あー……、高3の卒業式から」
「はああああ!?」

 って、今、大学5年。5年付き合ってるってこと!?

「ちょっとーー!!そういうことは言ってよーー!!」
「いや……聞かれなかったから……」
「…………。そうだけど」

 だって……だって!当然いないと思ってたんだもん!聞いたら失礼だと思ってたんだもんーー!!

「……なんか、すごいショック」
「何が」
「私だけが不幸な海を泳いでいるということが」
「何それ」

 ふっと笑った山田さん。今までは感じなかったその乾いた笑いが、めちゃめちゃ上からな気がして…………ムカつくー!!

「こうなったら山田さん! とことん協力してもらうからね!」
「なにを?」
「なんでもだよ!!友達でしょ!?」
「そうだっけ?」
「そうだよ!」

 もー!!
 不幸な海から陸に上がってやるー!!


***


 山田さんの彼氏は、更にムカつくことに、めちゃめちゃ可愛い2つ年下の男の子だった。

『高校の漫研の後輩』

だそうで、今だに「山田先輩」「三ツ谷君」と呼び合ってるのが、また、微笑ましいというかなんというか!!

「山田先輩の彼氏の三ツ谷です」

 ニコニコ、と、これでもかというくらい愛想の良い笑顔。顔がすごく良いというわけではないけれど、その笑顔のおかげでものすごく可愛くみえる。その上、背も高い。何なんだコイツ!

「山田先輩の大学のお友達紹介してもらえるの初めてで、めっちゃ嬉しいです!」
「あー…、そう……」

 利用しようとしてるだけだから、ちょっと気まずい……。

 でも、でもでも。いいよね? 私だって幸せになりたいもん!

 今日は、バレンタイン!
 ダブルデートすることになったんだよ!

 ただ……

『三ツ谷君、演技とかできない子だから、内緒で協力は無理だからね?』

と、いうことなので、ダブルデート、とは言わず、ただ一緒に遊びに行く、ということになっている。

『山田さんの彼氏が渋谷君に会いたがってる!2月14日しか空いてない!』

と、ごり押しして、日にちを設定したのだ。渋谷君、夜は空いてないけれど、日中ならば……と何とかOKしてくれたわけで。

「今日はよろしくね」
「はい!」

と、三ツ谷君が元気よく返事してくれたのと同時に、

「悪い!遅くなった!」

と、待ち焦がれた声! 振り返ると、超、超、超、美形のその人が!

(きゃー!今日も紛れもない王子ーーー!)

 どうしてこんなにかっこいいのー!?

 もう、本当に、本当に、本当に…………と?

 あれ? あれれれれ……?

 その横にいるのは……………

「今日、こいつも一緒で」

 すいっと、横を指さした渋谷君。
 その横で、ゆっくりと頭を下げたのは……

 王子の王子、桜井浩介、だった……。


---

お読みくださりありがとうございました!

せっかく、バレンタインが火曜日なので、バレンタインネタをあげたくて!
何にしようかな〜〜何か若い頃の話が読みたいな〜〜と思った結果、1999年2月のお話にしました!
ナベちゃんと山田さん、また見てみたかったのでちょっと嬉しい。
続きはまた来週以降〜〜

読みにきてくださった方、クリックしてくださった方、本当にありがとうございます!


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「風のゆくえには」シリーズ目次1(1989年~2014年) → こちら
「風のゆくえには」シリーズ目次2(2015年~) → こちら

コメント (4)
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