【須藤友視点】
年齢イコール恋人いない歴
なんて奴は自分の周りに何人もいる。親に言わせると、23歳でそれは「自分たちの頃ではありえない」らしいけど、今は別にそんなの普通。恋人なんかいなくても、人生楽しく送れてる。
「ゲームの中の女の子が可愛すぎて」
と、言うのは、大学卒業間近に、引っ越しの短期バイトで知り合って友達になったタツミだ。
タツミは僕と同じ歳で、見た目はクールな雰囲気で背も高くてかなりカッコいいのに、年齢イコール彼女無しで、二次元にしか興味がない。厳しい親の元で色々制限を受けながら育ってきたため、大学に入って一人暮らしをはじめた途端、たかが外れてしまった、と本人は言っている。
でも、三次元に興味ないからといって、性的欲求がないわけではない。
「これエロ過ぎー。もうずっと勃ちっぱなし」
と、ゲームをしながらヘラヘラと言うタツミに、
「じゃ、ゲームしてる最中、僕が抜いてあげよっか?」
と、もちかけたのは、友達になって半年くらいした頃。
僕はゲイであることを隠しているので、あくまで「男友達の酒の上での悪ノリ風」に言ってみたんだけど、タツミもノリでオッケーしてくれて……。僕的には大興奮でタツミのそれを弄くり回したら、結構良かった!そうで、それ以来、時々、タツミの部屋に泊まらせてもらうお礼、ということにして、抜いてやってる。かれこれ8か月になるので、もう何回したか分からない。
一度、口でしようとしたら、
「さすがにそれは無いなー」
って言われたから、そこまでは出来てないんだけど……その時は「冗談に決まってんじゃん」って誤魔化したけど……僕的にはフェラもかなり興味あるんだけどなあ……
(そのうち、やってやる)
なんてことを密かに思っていた。
タツミは、黙ってると取っ付きにくい感じだけど、中身はいつでも呑気で適当でヘラヘラしてる。好きなアニメが同じなことで友達になっただけあって、趣味が合うから一緒にいて楽しいしラクだ。
このままずっとこんな風にダラダラとのんびり一緒に過ごせたらいいなあと思ってたんだけど……
「オレ、彼女出来たんだよー」
土曜日、いつものように泊まりに行ったら、タツミにヘラヘラ言われてしまった。
「さすがにお前に抜いてもらってるなんて彼女に言えねーから、今日で最後なー」
「あ……っそう」
じゃあ、最後にフェラやらせてよ。……って言葉はどうにか飲み込んだ。友達としてのタツミを失いたくない。
「んじゃ、泊まりも最後かあ」
「彼女来てない時は来ていいぞ?」
「急に来られたりしたらヤだからいいよ」
「そうかー? まー、お前も彼女作れよー二次元ばっかみてないでさー」
なんて、ヘラヘラ言うタツミ。人の気も知らないで……。
(いや、別に、好きだったわけじゃないけど)
そう。僕は別にタツミを好きだったわけではない。ただ、性の興味を満たしてただけで……
(だから悲しくなんかない)
悲しくなんかない。
そう思いながら、最後のタツミをこねくり回してやった。
**
その翌々日の月曜日の朝、駅で偶然、渋谷先生に会った。
(うわ……)
直視に耐えられないくらいのキラキラオーラを振りまいてる……
一ヶ月ほど前、ロッカー室の前で佇んでいた渋谷先生とは大違いだ。
渋谷先生とは訳あって、数日間だけ、荷物置き場を共有することになったおかげで、個人的に話をする機会が増えた。
一ヶ月前の先生は、何だか憂いを帯びていたんだけど(それはそれで色っぽくて良かったんだけど)、そのあとしばらくしてから何かあったのか、段々段々、吹っ切れたように、キラキラが復活してきて……今日はさらに、最強だ。
「おはよう!」
「………っす」
だから、眩しすぎるって……
キラキラにクラクラなりながら何とか頭を下げると、渋谷先生が可愛く小首を傾げた。
「なんか元気ないけど大丈夫?」
「あー、いやー……」
元気ない……か。それはやっぱり、タツミのせい……なのかなあ…
話を広げたい気持ちもあって、何となく話を盛って言ってみる。
「あのー失恋したっていうか……」
「え、そうなんだ」
聞いてごめん、と頭を下げてくれた渋谷先生。何かちょっと気分よくなってきて、言葉を続けた。
「あの……ずっと友達してきた奴に、彼女出来たって言われちゃって……」
「そっか……」
それは辛いね……と心から同情したように言ってくれた先生。もしかして、そういう経験あるんだろうか……
「先生もそういう経験……」
「あるよ」
アッサリと頷いた先生。こんなイケメンを振るやつなんて……と思ったけれど、相手がノンケだったらそういうこともあるだろうな……と思いきや。
突っ込んで聞いてみたら、先生はそのノンケの友人を諦めず思い続けて、一年以上かけて振り向かせたそうで……
「すごいなあ……」
「いや、まあ、たまたま……」
照れたように頬をかいて「運が良かったんだよ」なんて言ったけど、その相手と今も付き合ってて一緒に住んでるっていうんだから、もう、何ていうか……
「幸せですねえ…」
「あー……」
引き続き頬をかいてる。……幸せ、否定しないし。ホント、幸せそうだし……
「先生はその人が好きなタイプだったんですか?」
聞いてみると、先生は「うーん……」と困ったようにうんうん唸りはじめた。
で、首を傾げたまま、うーん……と言っている間に病院に着いてしまった。何となく立ち止まって、先生を見返す。
「タイプじゃなかったんですか?」
「うーん……女の好きなタイプは考えたことあったけど、男の好きなタイプなんて考えたことなかったなあ……」
こめかみに指を置いて、先生がいう。
「須藤さんはその人が好きなタイプだったの?」
「…………」
タイプって良く分からない。
渋谷先生みたいな綺麗な人とあわよくば、とも思うし、院長みたいな大人の色気満載な人に可愛がってもらいたい気もするし……
タツミは……
「タイプとかじゃなくて……単純に一緒にいてラクというか」
何も考えずにボーッとしていられて。
「一緒にいると楽しいというか」
楽しいと思うことが同じだから、余計に楽しくて。
「それから……」
それから……
「一緒にいたい、とか?」
「…………はい」
コクリ、と頷くと、
「そっか」
渋谷先生はフワリと微笑んで……
「それが好きってことだもんね」
と、優しく、優しく、言った。
**
それから一ヶ月後、タツミから「家に泊まりに来い」と誘われた。彼女ができた、と言われたあの日以来、連絡は取ってたけど、会うのははじめてだ。
(ちょっと、ドキドキする……)
本当は会いたかったけど、我慢してたから余計に…なんて思ったけど。
(あれ?)
タツミの間の抜けた顔みたら、ドキドキは引っ込んだ。
(………渋谷先生。やっぱり「好き」とは違うかもデス……)
なんて色々思ってる僕をよそに、部屋に上がって早々、タツミがアッサリと言った。
「オレ、彼女と別れた」
「え、もう?」
早っ! と言ったら、タツミはいつものようにヘラヘラと「うるせー」と言って、押入れの中に潜っていった。
「何やってんの?」
「封印解くから手伝ってくれ」
「封印?」
何だ?と思ったら、エロゲーやらDVDやらが入ったダンボールを押し出してきて……
「並び順、お前に任せた」
「…………」
なるほど。
「じゃあ、僕のお気に入り順にしちゃおっかな」
「おー頼んだ」
ヘラヘラヘラ、としたタツミ。
このヘラヘラとまた今までみたいに一緒にいられるんだ……
なんだかホッとしたというか、心の奥の方が温かいというか……
なんていう僕の気持ちなんか知るはずもないタツミが、ダンボールからDVDを出しながら言った。
「夜、鍋にするからなー」
「夏に鍋?」
あいかわらず適当。ちょっと笑ってしまうと、タツミもニッと笑った。
「鍋が一番ラクだから一番好きなんだよオレ」
「…………」
一番ラクだから一番好き、か。
「……そっか」
「おお」
「そうだね」
「だろ?」
「…………」
「…………」
何となく……見つめあって……
キス、とかにはならない。だって僕達は友達だから。
「あ、これ、懐かしい。これ観たい」
「おーいいなー」
好きなDVDを一緒にみる。
「トモ、鶏と鮭どっちがいい?」
「えーどっちも捨てがたいなあ」
「じゃあ、今日鶏鍋で明日石狩鍋な」
「明日も鍋か」
明日も一緒にご飯を食べることが当然で。
「タツミ」
「あ?」
呼ぶと振り向いてくれる。
友達。友達だから……
「……失恋のやけ酒付き合うよ」
「おー頼んだ」
ヘラヘラっとしたタツミを抱きしめたくなったけど、我慢することにした。
完
-----
お読みくださりありがとうございました!
長々と失礼しました💦
この二人、そのうちなし崩しにやることやりそうですな〜。
須藤君、フワフワしてるけど複雑ではないので書きやすかったです。
そして、慶君。20歳近く年下の子を相手にしてるので、いつもと話し方とか全然違う。なんか大人だ。
そして余談ですが。最強キラキラだったのは、同窓会でカミングアウトした直後の月曜日だったからだと思われます。お幸せな人です。
ということで……
お休み中もクリックしてくださった方、読みにきてくださった方、本当に本当に本当にありがとうございます!
またいつの日か……