★先週更新した【浩介視点】の裏話&続きです。
【慶視点】
11月3日は『愛してる記念日』。
おれが浩介に「愛してる」と初めて言った日を、浩介が記念日認定したのだ。
こんな恥ずかしいセリフ、シラフで言えるわけがないのに、この日だけはシラフで言う、と約束してしまったのは一年前のこと……。
11月2日の夜、明日言わなくちゃいけないんだと思ったら、寝付けなくなってしまった。なんであんな約束しちまったんだ……。
寝付けないまま、水でも飲もうかと、ベッドを抜け出した。襖を開けた先、布団の上で寝ている浩介の横顔が見える。
(一緒に寝てえなあ……)
おれが浩介に「愛してる」と初めて言った日を、浩介が記念日認定したのだ。
こんな恥ずかしいセリフ、シラフで言えるわけがないのに、この日だけはシラフで言う、と約束してしまったのは一年前のこと……。
11月2日の夜、明日言わなくちゃいけないんだと思ったら、寝付けなくなってしまった。なんであんな約束しちまったんだ……。
寝付けないまま、水でも飲もうかと、ベッドを抜け出した。襖を開けた先、布団の上で寝ている浩介の横顔が見える。
(一緒に寝てえなあ……)
ため息がでてしまう。感染症対策のために寝室を別にしてからもう半年以上たつ。いつになったらまた一緒のベッドで眠れるんだろう。いつになったら思う存分触れ合えるようになるのだろう。いつになったら……
(……なんて考えててもしょうがねえな)
水とともにため息を飲みこむ。
(……なんて考えててもしょうがねえな)
水とともにため息を飲みこむ。
総合病院の医師という職業柄、感染のリスクは高い。そのため、家族と離れて暮らしている先生方もいる。一緒に住めているだけでも有り難いと思わなくては……
(…………浩介)
良く寝ている横顔を見下ろす。
(いつもだったら、後ろからギューッて抱きついて、で、寝ぼけた浩介が抱きしめ返してくれて……)
(…………浩介)
良く寝ている横顔を見下ろす。
(いつもだったら、後ろからギューッて抱きついて、で、寝ぼけた浩介が抱きしめ返してくれて……)
その流れの中でなら、「愛してる」の一言もいえそうなのになあ……
なんて、妄想しててもしょうがないか……
なんて、妄想しててもしょうがないか……
(………って。あ。そうだ!)
良い事思いついた!
もう、12時過ぎている。もう3日だ。「愛してる記念日」だ。
(今言えばいいんじゃねーか。そうだ。そうしよう!)
(今言えばいいんじゃねーか。そうだ。そうしよう!)
それで明日「夜中に言った」って言おう。よし。そうしよう。
と、いうことで。
よく眠っている愛しい耳元に、そっと囁いてやった。
「浩介、愛してるよ」
って。
***
翌朝起きたら、浩介はとっくに起きていて、何だか機嫌よく朝食を運んでいた。で、おれの顔をみるなり、ぱあっと目を輝かせて、
「おはよー♥ ちょうど良かった!今起こそうと思ってたんだー♥」
オムレツ……ハートが書いてある……。
「おお。早いな……」
「うん!だって!」
ニコニコの浩介。
「今日は『愛してる記念日』だよ! 慶が愛してるって言ってくれる日!」
「今日は『愛してる記念日』だよ! 慶が愛してるって言ってくれる日!」
「……………」
ほう。そうか。やっぱりそうきたか。
「それだけどな……」
コホン、とわざとらしく咳をしてやる。で、言えと言われる前に、「昨晩言った」と言ってやろうとしたら……
「ありがとね♥慶♥」
「は?」
いきなりハート付きで礼を言われ、きょとんとなる。何がありがとう?
「何が?」
「夜、言ってくれたじゃーん! 愛してるって♥」
…………。
…………。
…………。
え?
「は?」
「は?」
「すっごい嬉しかった!ありがとね♥」
「は?」
え?
え?
え?
えーーーーーー!!
「おま……っ! 起きて……?!」
「起きてたよー」
ピースサインの浩介がヘラヘラと続ける。
「慶ってば、耳元であんな色っぽい声、もーたまんなかったよー。腰砕けるかと思った。いつもより低い声でさー、囁くみたいに……」
「わーーーーー!やめろ!」
は、は、恥ずかしすぎるーーー!!
「起きてるなら起きてると言え!」
「えー、言う前に慶、さっさと部屋に入っていっちゃったんだもーん」
「それは……」
「だから一人で余韻に浸ってました♥慶の甘〜い愛してるの……」
「もういい!」
勘弁してくれ………
ヨレヨレとソファに倒れこんでしまった。朝から疲れた……。
ぐったりしているおれには構わず、コトリ、と浩介が皿をテーブルに置いた。
「と、いうことで、お礼のオムレツです♥」
「あー………」
それでハートなわけか……って、いつもハートか……
「うまそうだな……」
「食べて食べて!」
嬉しそうな浩介が可愛いから……まあ、いいか……
起き上がると、浩介がスープカップも置いてくれながら、ニコニコと言った。
「来年は、ちゃんと起きてる時に言ってね?」
「あー……」
「それと今日は初キス記念日でもあるけど……」
「あー……」
それもあったか……
何を言われるかと身構えた。が、
「そのお祝いは、キスしても大丈夫になるまで我慢するね」
ニコリと言われて、余計に愛おしさでギュッとなる。
「…………そうだな」
「うん」
「…………」
「…………」
見つめ合い……そして……
…………。
…………。
…………。
なんて、ここでキスしたら元も子もない。
ふっと二人で笑って、美味しそうな皿の並んだテーブルに向かう。
「じゃ、いただきます!」
「召し上がれ♥」
フワフワのオムレツの上のハートのケチャップを、ぐるぐるとスプーンで伸ばして卵の黄色を赤で覆う。そして、さっそく一口!
「おー、美味い!」
浩介の気持ちのこもったオムレツを食べる今年の「愛してる記念日」。
来年の今頃、世の中がどうなっているのかは分からないけれど……
(……愛してるよ、浩介)
その気持ちに変わりがないことだけは、分かっている。
終
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お読みくださりありがとうございました!
前回、次は初チュー記念日?とのコメントをいただき、我慢できなくなって、結局、慶視点で続きを書いてしまいました。
前回、次は初チュー記念日?とのコメントをいただき、我慢できなくなって、結局、慶視点で続きを書いてしまいました。
「言って」と言うより「聞いてたよ」の方が慶が照れるだろうな〜と思いついて内心ニヤニヤしてた浩介さん。なんだかんだ言って、こういうところは浩介の方が一枚上手な気がします。
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