「で、アヤカちゃんママいくつになったの?」
贅沢ランチ中、コウ君ママがパスタを頬張りながら聞いてきた。
「三十八」
「ふーん。私の二コ下か」
「え、コウ君ママって年上だったんだ?」
驚いた。年下だと思っていた。コウ君ママはいつも綺麗にしている。見習わなければならないといつも思う。
「見えない~」
「お世辞はいいよ。自分では若いつもりでいてもさ、同じ干支のナナちゃんママが隣にいると、この肌艶の違いに愕然とするんだよね」
ナナちゃんママが困ったように笑っている。
「え、ナナちゃんママって、二十八?」
シュウと同じ歳だ。
「二十八歳からみたら、三十八ってずいぶんオバサンじゃない?」
ミオちゃんママが言う。彼女は私と同じ三十八歳だ。
ナナちゃんママは首をかしげ、
「んー、学生の頃は年上の人って大人―って感じしてたけど、社会人になってからは、五歳上も十歳上もたいして変わらないよ」
「変わるだろー」
コウ君ママがナナちゃんママの頬をプニプニと触る。
「ほら見て! この弾力! うちらには存在しないものだよ!」
「うわー本当だープニプニプニー」
「もー、やーめーてーよー」
三人がじゃれ合っている中に、携帯の着信音が流れてきた。私の携帯だ。
「誰だろ?」
見たことのない携帯番号。幼稚園の役員をしている関係で、最近は登録していない番号からかかってくることが多々ある。とりあえず出てみる。
「もしもし?」
しばしの沈黙の後、溜息のような声が聞こえてきた。
「うわーオレってすっげー。ちゃんと番号覚えてたよ?」
「シュ……」
頭が真っ白になる。久しぶりに聞く、電話越しのシュウの声。
「今、大丈夫?」
「えーと……」
「あ! ユイちゃん! それはお口に入れちゃだめよ!」
タイミング悪く(良く?)、ユイが店の備品を口に入れようとして、ミオちゃんママに止められた。
「ごめん、今ちょっと……」
ミオちゃんママに「ゴメン」の仕草をしてから、電話に向き直る。
「じゃ、夜電話してもいい?」
電話してもいい? 甘い声。十年前に何度も聞いたその響き。
「ん……八時半過ぎだったら……」
子供達が寝てから、という言葉は飲み込んだ。生活的な言葉は言いたくなかった。
「分かった。かけ直すね」
あっさりと電話は切られた。しばらく呆然としてしまった。
……かけ直す? え? またかかってくるってこと?
「どうした? 電話大丈夫だった?」
コウ君ママに言われ、我に返る。心臓が異常なくらいドクドクと波打っている。
今晩、シュウから、電話がかかってくる。
贅沢ランチ中、コウ君ママがパスタを頬張りながら聞いてきた。
「三十八」
「ふーん。私の二コ下か」
「え、コウ君ママって年上だったんだ?」
驚いた。年下だと思っていた。コウ君ママはいつも綺麗にしている。見習わなければならないといつも思う。
「見えない~」
「お世辞はいいよ。自分では若いつもりでいてもさ、同じ干支のナナちゃんママが隣にいると、この肌艶の違いに愕然とするんだよね」
ナナちゃんママが困ったように笑っている。
「え、ナナちゃんママって、二十八?」
シュウと同じ歳だ。
「二十八歳からみたら、三十八ってずいぶんオバサンじゃない?」
ミオちゃんママが言う。彼女は私と同じ三十八歳だ。
ナナちゃんママは首をかしげ、
「んー、学生の頃は年上の人って大人―って感じしてたけど、社会人になってからは、五歳上も十歳上もたいして変わらないよ」
「変わるだろー」
コウ君ママがナナちゃんママの頬をプニプニと触る。
「ほら見て! この弾力! うちらには存在しないものだよ!」
「うわー本当だープニプニプニー」
「もー、やーめーてーよー」
三人がじゃれ合っている中に、携帯の着信音が流れてきた。私の携帯だ。
「誰だろ?」
見たことのない携帯番号。幼稚園の役員をしている関係で、最近は登録していない番号からかかってくることが多々ある。とりあえず出てみる。
「もしもし?」
しばしの沈黙の後、溜息のような声が聞こえてきた。
「うわーオレってすっげー。ちゃんと番号覚えてたよ?」
「シュ……」
頭が真っ白になる。久しぶりに聞く、電話越しのシュウの声。
「今、大丈夫?」
「えーと……」
「あ! ユイちゃん! それはお口に入れちゃだめよ!」
タイミング悪く(良く?)、ユイが店の備品を口に入れようとして、ミオちゃんママに止められた。
「ごめん、今ちょっと……」
ミオちゃんママに「ゴメン」の仕草をしてから、電話に向き直る。
「じゃ、夜電話してもいい?」
電話してもいい? 甘い声。十年前に何度も聞いたその響き。
「ん……八時半過ぎだったら……」
子供達が寝てから、という言葉は飲み込んだ。生活的な言葉は言いたくなかった。
「分かった。かけ直すね」
あっさりと電話は切られた。しばらく呆然としてしまった。
……かけ直す? え? またかかってくるってこと?
「どうした? 電話大丈夫だった?」
コウ君ママに言われ、我に返る。心臓が異常なくらいドクドクと波打っている。
今晩、シュウから、電話がかかってくる。