翌日、例の手紙を持って階下を訪れた。扉が開いて、無精髭の男が出てきたときに確信した。この手紙を作ったのはコイツだ、と。
「この手紙作ったのあなたですよね?」
突き出すと、男は明らかに動揺した。
実は夫には言わなかったのだが、この手紙を始めに手に取ったときに、強烈な煙草の臭いに気が付いたのだ。それはこの男から発せられる臭いとまったく同じだった。
「これ、どういう意味ですか? 私の様子がおかしいって……」
「あの……」
いいにくそうに男は頭をかいた。
「今みたいなこと続けてたら、体壊しますよ。ご自分が一番よく分かってるでしょ?」
わけが分からない。体を壊す? もしかして、最近仕事が忙しくて、夫が寝てから明け方まで仕事をしていることを言っているのだろうか? でも、そんなことをこの人に言われる筋合いはない。
「あなたには関係ないでしょう。夫に余計なこと言わないでくださいね」
夫が家にいるときには仕事をしない、というのが夫との約束なので、深夜仕事をしていることを知られては困るのだ。
「だいたい、何であなたがそんなこと知ってるんですか?」
「それは……見てればわかりますよ」
言われて、ゾッとした。やっぱりこの人、私のこと見張ってるんだ!
「とにかく、余計なこと言わないでください! いいですね!」
言い捨てて、階段を駆け上がった。背中に視線を感じる。気味が悪い。慌てて玄関を開けて中に飛び込み、鍵を閉める。
「もう寝よ!」
思わず大声で言って、ベッドに横になる。仕事が一段落したので、仮眠をとろうと思っていたのだ。すぐに睡魔が襲ってくる。
目をつむって仰向けになっていると、目の裏に『彼』が快楽に溺れたときの表情が浮かんできた。自然と手が下着の中へと入ってしまう。少しだけ……と自分に言い聞かせて、中指を差し入れる。しばらく入り口近くを優しく撫でていると、くちゃくちゃといやらしい音がし始めた。
しかし、下着を脱いだのと同時に、インターフォンがなって、あわてて飛び起きた。
「はい?」
少しだけ玄関を開けると、煙草の臭いがしてきた。まさか……。
「ちょっといいですか?」
階下の男だった。
「なんですか? ちょ、ちょっと!」
静止も虚しく、強引に中に入られた。暗くて狭い玄関に2人でいると、息が苦しくなるほど圧迫感がある。
「お願いがあって……」
「はあ?」
なんで私がコイツのお願いを聞かなくちゃならないんだ? そんな心の声を知ってか知らずか、男は嫌な笑顔で言葉を続けた。
「今、女性の自慰行為のシーンを描いてるんですけどね。なかなか良い物ができなくて。奥さんモデルになってくれませんかねえ?」
「な……っ」
血の気が引いた。頭の中の危険信号が最大級の音をならしている。
「帰ってください!」
押し戻そうとした手を掴まれる。
「今も、してたんでしょ?」
おもむろに中指を舐められた。瞬間、顔が熱くなる。
「ここも、こんなに濡れてる」
素早く逆の手が陰部に触れてきた。細い指がスルリと抵抗なく中に入ってくる。
「離して!」
壁に押しつけられながら、首を振る。嫌だ、と思っているはずなのに、愛液が太股に流れ出てくる。頭が朦朧としてくる。
「そろそろ入れても大丈夫だね」
「?!」
聞き覚えのある声に顔を上げた。いつの間に……『彼』が男の横に立っていた。
「ねえ、もう入れて欲しいでしょ?お姉さん。入れてってお願いしてみて」
楽しげに彼が言う。男が片手で私を壁に押しつけたまま、ズボンを脱ぎはじめる。
「なんで……」
驚きで声にならない。
「なんでって、やるの大好きでしょ?色々な人とやってみたいでしょ?色々な人の入れて見たいでしょ?」
「嫌……違う………」
激しく首を振る。
違う違う違う。誰とでもしていいわけない。私がしたいのは……私がしたいのは……。
壁に背をつけたまま、片足を上げさせられる。男が自分のモノをあてがってきた。言いようもない嫌悪感が体中を走り回る。
「やめて!」
上げさせられた足で力任せに男の腹にケリを入れた。男がうずくまる。そちらには見向きもせず、驚いたような表情で固まっている彼に衝動のまま手を伸ばした。
「なに馬鹿なこといってるのよ!」
両頬を包み込み、綺麗な瞳を覗きこむ。
「私が……私がしたいのは、君だけだよ」
彼の瞳が大きく見開かれ、そして……。
「!」
驚いて目が覚めた。慌てて身を起こす。周りを見渡して、体中の力が抜けた。
「夢………か」
とんでもない夢だ。汗だくになっていた。
「私がしたいのは……」
夢の中の私は正直だ。それが本心なのだろう。たぶん……自分でも分かっている。
「この手紙作ったのあなたですよね?」
突き出すと、男は明らかに動揺した。
実は夫には言わなかったのだが、この手紙を始めに手に取ったときに、強烈な煙草の臭いに気が付いたのだ。それはこの男から発せられる臭いとまったく同じだった。
「これ、どういう意味ですか? 私の様子がおかしいって……」
「あの……」
いいにくそうに男は頭をかいた。
「今みたいなこと続けてたら、体壊しますよ。ご自分が一番よく分かってるでしょ?」
わけが分からない。体を壊す? もしかして、最近仕事が忙しくて、夫が寝てから明け方まで仕事をしていることを言っているのだろうか? でも、そんなことをこの人に言われる筋合いはない。
「あなたには関係ないでしょう。夫に余計なこと言わないでくださいね」
夫が家にいるときには仕事をしない、というのが夫との約束なので、深夜仕事をしていることを知られては困るのだ。
「だいたい、何であなたがそんなこと知ってるんですか?」
「それは……見てればわかりますよ」
言われて、ゾッとした。やっぱりこの人、私のこと見張ってるんだ!
「とにかく、余計なこと言わないでください! いいですね!」
言い捨てて、階段を駆け上がった。背中に視線を感じる。気味が悪い。慌てて玄関を開けて中に飛び込み、鍵を閉める。
「もう寝よ!」
思わず大声で言って、ベッドに横になる。仕事が一段落したので、仮眠をとろうと思っていたのだ。すぐに睡魔が襲ってくる。
目をつむって仰向けになっていると、目の裏に『彼』が快楽に溺れたときの表情が浮かんできた。自然と手が下着の中へと入ってしまう。少しだけ……と自分に言い聞かせて、中指を差し入れる。しばらく入り口近くを優しく撫でていると、くちゃくちゃといやらしい音がし始めた。
しかし、下着を脱いだのと同時に、インターフォンがなって、あわてて飛び起きた。
「はい?」
少しだけ玄関を開けると、煙草の臭いがしてきた。まさか……。
「ちょっといいですか?」
階下の男だった。
「なんですか? ちょ、ちょっと!」
静止も虚しく、強引に中に入られた。暗くて狭い玄関に2人でいると、息が苦しくなるほど圧迫感がある。
「お願いがあって……」
「はあ?」
なんで私がコイツのお願いを聞かなくちゃならないんだ? そんな心の声を知ってか知らずか、男は嫌な笑顔で言葉を続けた。
「今、女性の自慰行為のシーンを描いてるんですけどね。なかなか良い物ができなくて。奥さんモデルになってくれませんかねえ?」
「な……っ」
血の気が引いた。頭の中の危険信号が最大級の音をならしている。
「帰ってください!」
押し戻そうとした手を掴まれる。
「今も、してたんでしょ?」
おもむろに中指を舐められた。瞬間、顔が熱くなる。
「ここも、こんなに濡れてる」
素早く逆の手が陰部に触れてきた。細い指がスルリと抵抗なく中に入ってくる。
「離して!」
壁に押しつけられながら、首を振る。嫌だ、と思っているはずなのに、愛液が太股に流れ出てくる。頭が朦朧としてくる。
「そろそろ入れても大丈夫だね」
「?!」
聞き覚えのある声に顔を上げた。いつの間に……『彼』が男の横に立っていた。
「ねえ、もう入れて欲しいでしょ?お姉さん。入れてってお願いしてみて」
楽しげに彼が言う。男が片手で私を壁に押しつけたまま、ズボンを脱ぎはじめる。
「なんで……」
驚きで声にならない。
「なんでって、やるの大好きでしょ?色々な人とやってみたいでしょ?色々な人の入れて見たいでしょ?」
「嫌……違う………」
激しく首を振る。
違う違う違う。誰とでもしていいわけない。私がしたいのは……私がしたいのは……。
壁に背をつけたまま、片足を上げさせられる。男が自分のモノをあてがってきた。言いようもない嫌悪感が体中を走り回る。
「やめて!」
上げさせられた足で力任せに男の腹にケリを入れた。男がうずくまる。そちらには見向きもせず、驚いたような表情で固まっている彼に衝動のまま手を伸ばした。
「なに馬鹿なこといってるのよ!」
両頬を包み込み、綺麗な瞳を覗きこむ。
「私が……私がしたいのは、君だけだよ」
彼の瞳が大きく見開かれ、そして……。
「!」
驚いて目が覚めた。慌てて身を起こす。周りを見渡して、体中の力が抜けた。
「夢………か」
とんでもない夢だ。汗だくになっていた。
「私がしたいのは……」
夢の中の私は正直だ。それが本心なのだろう。たぶん……自分でも分かっている。