注:具体的性表現あります。大丈夫な方だけお願いします。
イチャイチャしてるところを書きたくて我慢できなくなったので、R18読切で書きました。
あいじょうのかたち作中の話です。
23で「月が綺麗ですね」なんてプラトニックな感じのこと書いた反動でしょうか。
「月が綺麗ですね」は、5月26日(火)の上弦の月の夜。今回は29日金曜日のお話。
登場人物
桜井浩介:フリースクール教師。身長177cm。ごくごく普通の容姿。先日、慶の愛情をようやく本当の意味で受け入れることができたところ。
渋谷慶:小児科医。身長164cm。誰もが振り返る美形。職場で男の恋人がいるとカミングアウトをしてから10日。現在、そのストレスで精神的にキツイ日々。
--------------
風のゆくえには~R18・嫉妬と苦痛と快楽と
『渋谷慶医師には男の恋人がいる』
と、2度も大手口コミ掲示板に書かれてしまい、職場でカミングアウトすることになった慶。
あまり話してはくれないけれども、そのストレスは計り知れない。普段は外のストレスは家に持ち帰ってこない慶が、今回ばかりは帰ってきてからも、疲れたようにボーっとしていることが増えた。
気分転換にスポーツジムに行く?と言いたいところだけれども、あいにく金曜日は定休日…。
晩御飯も言葉少なにモソモソと食べていたし、一緒にしている洗い物も、心ここにあらずで……。これは早く休ませてあげたほうがよさそうだ。食器の片付けがあらかた終わったところで、声をかける。
「慶、あとはやっておくからいいよ? お風呂入ってくれば?」
「ん……さんきゅー……」
ふらっと台所から出ていった慶。大丈夫かな……。
肉じゃがの残りを皿に移して、ラップをかけて冷蔵庫に入れたところで、
「………慶?」
風呂に行ったと思っていた慶が、いつのまに後ろに立っていた。おれのシャツの裾を掴んで、うつむいている。小さい子みたいでなんかすごく可愛い。
「どうしたの?」
「うん………」
慶、うつむいたままだ。どうしたんだろう……?
「お風呂入らないの?」
「入る。入るけど……」
慶は言いにくそうに、言葉をついだ。
「お前……おれが風呂入ってる間……携帯見る?」
「え?」
携帯?
なんの話だ? おれが慶の携帯を内緒でチェックするとかそういう話?
「見ないよ? どうして? 何? おれに見られると困るメールでもあるの?」
茶化し気味に言ったのだけれど、慶はニコリともせずに、
「そうじゃなくて……、ああ、いい。何でもない」
「慶?」
ふいっと行ってしまった。なんなんだろう?
そのうち、シャワーの音が聞こえてきた。入ったようだ。何がいいたかったのか分からないけれども、とりあえず、ご飯の残りを小分けにして冷凍庫に入れて、炊飯器の内釜を洗い物の残りの水で浸す作業まで終わらせてから、リビングに戻る。
リビングに戻ると、自分の携帯に着信を知らせるランプが付いていることに気が付いた。
二週間ほど前、慶に『携帯を触ってる時間が増えた』と指摘されて以来、慶がいるときには携帯を見ないことにしている。それなので、今みたいに慶がお風呂に入っている間にまとめてチェックをして……
「……あ」
携帯に手を伸ばしかけて気が付いた。
『おれが風呂入ってる間……携帯見る?』
さっきの慶の言葉………
おれが、おれの携帯を見るかどうかってことだったのか!
おれのシャツ、慶が掴んでいたあたりが皺になっている。言いにくかったんだろうな。そうだよな……
(ごめん。ごめんね慶)
速攻で風呂の前に行き、すりガラスをコンコンと叩く。
「慶?」
「………なんだ?」
そっと戸を開けると、慶はもう湯船に浸かっていた。妙にシンとしている。
「おれも入っていい?」
「………え」
目を見開いた慶。
「なにを……」
「すぐ入るから。上がらないでね?」
「…………」
慶が何か言いたげに口を開きかけたけれど、言われる前に戸をしめる。
どうして気がついてあげられなかったんだ。今、慶は普通の状態じゃない。偏見や好奇の目にさらされて神経をすり減らしている。
誰のせいで? おれのせいで。おれと付き合ってるから。一緒に暮らしてるから。だから。
でも、それはただ、おれ達が一緒にいたいからなだけで。それは譲れなくて。
でも、それを許せない人達もいて、おかしなことだという人達もいて。
だからこそ、おれは今、慶だけを見つめて、慶を唯一無二の愛で包むべきなんだ。
まわりの人間になんと言われようと、おれと一緒にいることを選んでくれたことを後悔させないために。
湯船の中、慶は引き続きボーっとしている。大急ぎで体を洗って、慶の背中と湯船の間に足を入れる。
「……狭い」
「いいからいいから」
文句を言っている慶を無理矢理膝で押して少し前に行かせ、後ろに座る。勢いよくお湯が湯船からあふれでた。
「あーもったいない」
「いいのいいの」
慶の引き締まった肢体を後ろから腿で挟み込み、腰に手を回しぎゅうっと抱きしめる。
慶の背中に思いっきり、おれの大きくなったものが当たっているけれど、それはもうごめんなさいって感じで……。
「慶……」
「ん……」
後ろから頬をすり寄せる。愛おしさがつのって耳元にささやく。
「大好きだよ」
「……知ってる」
ぼそっという慶。そして、コンとおれの肩に頭を預けた。
「ダメだな、おれ。想像以上にキツイ」
「慶……」
負けず嫌いの慶が弱音を吐くなんて………
「大丈夫……?」
「…………」
しばらくの沈黙の後………ゆっくり慶がうなずいた。
「大丈夫。お前がいるから」
「………慶」
ぎゅうっと慶を抱きしめる。
「うん。いるよ」
「ん」
うなじに口づけると、慶がくすぐったそうに首をすくめた。かわいい。
慶がまたポツリと言う。
「………おれさ」
「うん」
「今おれ、やっぱり変なんだよ。余裕がない。お前が他の奴と仲良くしてるのとか、本当にダメ。ムカついてしょうがない」
「うん」
慶の指がおれの指に絡ませてつないできた。愛おしさが伝わってくる。
慶がポツリポツリと続ける。
「おれと一緒にいるときは、おれのことだけ見てほしい」
「うん」
「おれのことだけ考えてほしい」
「うん」
「おれはお前のことしか考えてねえぞ?」
拗ねたように言う慶。かわい過ぎる。
「お前はおれのもんだろ?」
「うん」
「おれはお前のもんだしな」
「……うん」
うなずきながらも、ちょっと笑ってしまい、慶が怒ったように振り返った。
「何笑ってんだよ」
「うん………慶がかわいすぎて」
「かわいくねえよ」
「かわいいよ」
尖らせた唇に、軽く唇を合わせる。
「おれ、一緒にいないときも、慶のことしか考えてないよ?」
「だったら…………………、なんでもない」
「何?」
「なんでもない」
「けーいー?」
水中で慶のものを探しだし、優しく掴む。柔らかかったものがすぐに硬くなっていく。慶がムッとして言う。
「触んな」
「言葉と体があってないよ?」
「うるせえ。もう上がる。ずっと入ってたからのぼせてきた」
慶はザバッと音を立てて立ち上がり、湯船からでたが、
「慶?!」
すぐにその場にしゃがみ込んでしまった。
「大丈夫?!」
「……あー……だからのぼせたんだって……」
ジッと下を向いている慶……。
「なあ……」
「なに?」
「おれ、うるせえな」
「………うるさくないよ」
いつもの慶と違いすぎて、痛々しい……。
シャワーで上がり湯をかけてから、バスタオルで包み込む。慶はされるがままだ。
「慶?」
おいで、というように両手を伸ばすと、慶がおれの首にしがみついてきた。そのまま横抱きにして、ベッドに移動する。
リビングを通り過ぎるときに、おれの携帯をチラッとみた慶……。着信のランプがつきっぱなしだ。電源消しておけばよかったな……。
「携帯……」
ベッドに下ろすと同時に、慶がボソッと言った。
「携帯、ランプついてた。見ていいぞ?」
「みないよ」
耳から首筋にかけて唇を這わせると、慶がビクッと震えた。愛おしくてたまらなくなって、横に寝そべりぎゅうっと抱きしめる。
「慶……大好きだよ」
「………知ってる」
さっきと同じことを言う慶。そしておでこをおれの肩口にぐりぐりと押しつけてくる。
「なあ……おれさっき変なこといったけど……別にいいからな? 携帯……」
「おれ、慶のことしか見てないから他のことなんて見ないよ」
「でも……」
なおも何か言おうとする慶の唇をふさぐ。完璧な形をした唇が腫れてしまうほど強く吸い込む。舌を侵入させかき乱す。唾液が唇の端から流れでるのを、舌で舐めとると、慶が切なげに瞳を揺らして、再び唇を重ねてきた。掴まれた腕に爪が食い込んでくる。痛いけれど、求められていると感じられてゾクゾクする。
「こ……すけ」
「……ん?」
キスの合間に慶がささやくように言う。
「はやく……」
「はやく、なに?」
言わせたくてわざと分からないフリをする。いつもだったら「だからはやく入れろって言ってんだよっ」とかいって蹴られたりするのだけど……。慶、そうとう弱っている。いつもと反応が違う……。
慶の腕がおれの背中に回され、強くしがみつかれた。頬と頬をすり寄せられる。
「慶?」
「………てほしい」
かすれた声でささやかれた。
「え?」
聞きかえしたおれの耳元で、慶が再びささやく。
「……痛く、してほしい。何も考えられなくなるくらい」
「!」
驚いて慶の顔を見ようとしたけれど、見せたくないらしく、両腕で顔を隠してしまった。
「慶……」
「ごめん、おれ、変なこと言ってんな。忘れて……、っ!」
そんなこと、言わせない。
両足を押し開き、なんの準備もなく、慶の中に侵入する。
「う……ああっ」
潤滑のものが何もない状態で無理やり押し込んだので、擦れ感が半端ない。
相当痛かったのだろう。慶が悲鳴のような声をあげた。顔を隠していた腕が外れ、シーツを掴んでいる。
苦痛に歪んだ慶の顔にそそられて、奥まで突き上げる。すべらない分擦られて、擦られて、痛さと快楽が混ぜ合わさる。
(たまんないな……)
自分の中にSの気があることには大昔から気がついていた。なるべくそれを出さないように気をつけてきたのだけれど……
四半世紀近くも経って、まさか公認でしてもいい日がくるとは。
今まで妄想でとどめていたあれやこれやが現実に……
(いやいやいやいや……)
突っ走りそうになる自分を何とか留める。そういうことじゃない。そういうことじゃないだろ……。
涙目の慶の目じりにそっと口づける。
「慶、大好き」
「………知…ってる」
今日三度目の「知ってる」。涙声の「知ってる」
慶の膝が胸の横に着くまで足をおり、腰をあげさせる。腿を強く掴みながら奥まで突き下ろす。
「んんんっ」
痛さのためか、顎があがり、白い喉があらわになっている。その喉に食いつきたくて前かがみになると、ずるっと抜けてしまった。
「あ……」
慶の……訴えるような目。止めるな、と言いたげな、強い視線。ゾクゾクする。
喉に唇を這わせながら体を押し、背中を向けさせる。背中をずっと辿っていくと、慶がビクビクっと震えた。慶の性感帯がどこにあるかなんて、もう知り尽くしている。
慶のものも、もう糸が引いている。でも、触らない。わざと触らない。
腰を抱き、膝を立てさせる。昔、慶がバックをしたときに「犬の交尾みたいだ」と言っていたけれど……犬の交尾、結構じゃないか。動物の本能だけで交わりたい。
「………んんっ」
再び、今度は後ろから慶の中に侵入する。先走りが少しは潤滑の役目を果たしたのか、さっきよりは痛くない。けれども、
「………あ、く……ああっ」
容赦なく突き上げると、慶が苦痛の声をあげた。でも、ものはもう大きくはち切れんばかりになっている。苦痛と快楽の狭間の慶の声が堪らない。
「あ……っ、あ……んんっ」
手を伸ばし、乳首を指で挟むと、慶の体がビクンっと跳ね上がった。
「やめ……っ」
「やめない」
上半身を密着させ、腰を振りながら、乳首を強めに弄び続ける。苦痛に耐える声と喘ぎ声が混ざりあっている。わざと何にも触れないようにしている慶のものから、先走りが滴り落ちる。
「こ……、もう……、頭おかしくなる……っ」
「ん……」
慶の色っぽいかすれた声。たまらない……
「こう……っ、だから……っ」
「ん。どうしてほしい?」
「ば……ばかっ言わせんなっ」
「言って?」
言うと慶は、くそーっ後で覚えてろよっみたいなことを小さく言ってから、恥ずかしそうに絞り出すように、言った。
「触って、ほしい……っ」
「ん」
かわいいかわいい慶。
ようやく、その大きく膨張したものを掴むと、途端に慶がのけぞった。
「あ………ああっ」
数回スライドさせただけで、ビクビクビクッと震え、慶の乳白色のものが吐き出される。
挿入したままの状態で、後ろからぎゅうっと抱きしめる。ああ、かわいすぎる……
「………」
しばらくの沈黙のあと、慶は大きく大きく息を吐くと、
「…………くそおおおおっ」
その可憐な容姿からは想像できない口調で叫び、勢いよくおれのものを引き抜いた。
「わわっ」
いきなりのことでバランスを崩しかける。
「け、慶……っ」
「お前、調子に乗りすぎだっ」
「わわわっごめんっごめんなさいっごめ……っ」
謝っている口をふさがれた。舌が侵入してきてかき回してくる。く……苦しいっ
「けい……っ」
キスをしたまま、慶は器用におれのものを扱いてくる。おれが慶の性感帯を知り尽くしているのと同じで、慶もおれがどうしたら速攻でイってしまうのかよーく知っている……。
「………っ」
歯を立てられ唇をかまれて、体中に電気が走る。もう、瞬殺だ。
あっという間に、おれの中の熱いものが外に吐き出されてしまった。思わず、本気で文句を言ってしまう。
「早すぎるよっ。まだいきたくなかったのにっ」
「うるせーよっ」
ガシッと蹴られた。……いつもの慶だ。
慶はプリプリ怒りながら、汚れてもいいようにベッドの上に引いていたバスタオルをくしゃくしゃっと回収すると、
「もう一回、風呂入るぞっ」
怒りながらさっさと行ってしまった。
「慶……」
……いつもの、慶だ。
「ねえ、慶」
もう一度、今度は向い合わせに座って湯船に浸かったところで、思い出して聞いてみる。
「さっき、お風呂で何か言いかけたよね? あれなんだったの?」
「あー……何でもねえよ」
ばちゃばちゃと水面をたたく慶。ジトーッと見つめ続けていたら、観念したように息をついた。
「あのな……」
「うん」
「ライン、やめてくれって言おうとした」
慶……本当に嫌なんだな。そこまで嫉妬されるなんて……ちょっと嬉しい。
顔がにやけてしまうのを隠せずにいると、慶が眉を寄せた。
「何ニヤニヤしてんだよ?」
「いや……なんか嬉しくて」
「……なんだそりゃ」
慶はふっと息を吐くと、こちらに手を伸ばしてきた。絡めてつなぐ。
「でも、いい。やめなくていいからな」
「慶が嫌ならやめるよ? 全然やめるよ。速攻でやめるよ。なんの躊躇もなくやめるよ?」
「なんだそりゃ」
慶はおかしそうに笑うと、ぎゅっぎゅっと手を握った。
「いいんだよ。気が変わった。おれもラインやる」
「え」
やらないっていってたのに。
「なんかよく分かんねえから余計にイライラすんだよな。だったらおれもやってみる」
「慶……」
でも……よく考えてみたら、慶は友達が多い。これであちこち繋がりはじめたら、おれの方がイライラすることになるんじゃないか?
「慶、やっぱりやめよう」
「なんだよ。人がせっかく」
「だめだめ。慶はおれのものだから、他の人と繋がらなくていいの」
言うと、慶が首を傾げた。
「その繋がるとかいうのの意味がわかんねえ」
「分かんなくていいの。慶はおれとだけ繋がってればいいの」
「なんだそりゃ」
クスクス笑いながら手をマッサージしてくれる慶。
さっき一緒に入っていたときよりも、表情がずっと明るい。いつもの、慶だ。
「浩介……」
「ん?」
慶の瞳がまっすぐにおれを見つめている。
「さんきゅーな。なんか……吹っ切れた」
「え………」
瞬きをするおれの唇に、そっと慶の唇が重なる。
「おれ………もう大丈夫だから」
「…………」
「お前がいるから、おれは大丈夫だ」
「……うん」
「ずっと、ずっと、一緒にいような」
「うん」
こっくりと肯く。慶。慶……。ずっと一緒にいよう。
「あ、でも、たまにはさー、弱気な慶もおいしいんだけど」
「は?」
眉を寄せた慶にニッコリという。
「『痛くして』って、また言われたーい」
「…………」
「…………」
「…………」
「………痛っ」
無言で蹴られた。
「そういえば、お前、さっき調子にのって色々言ってたよな」
「んー……慶が触ってほしいって……、痛い痛い痛いっ」
狭い湯船の中で蹴ってくるから逃げ場がない。
「慶、本当に痛いってっ」
「うるせえ。……よし、もう一回やるぞ」
「え」
「お前、足腰立たなくしてやる。ほら、こい」
「け、慶……」
慶様、元気になりすぎです……。
まだまだ試練は続くのだろうけれど……でも、2人なら乗り越えられる、と信じたい。
愛おしい慶を抱きしめて、おれは強く強く願う。
どうか、誰にも何も言われず、二人で一緒にいられる日が来ますように。
-------------
以上です。
長っ!! 7610文字いってしまいました。
しかも、慶が普通の状態じゃなかったので、なかなか筆が進まず……
今週入ってからずっとちまちまちまちま書き足し書き足し、
後半のエッチするシーンからは一気に、今日午前中から用事の合間合間に書いておりました。
そして書き終わって……何やってんの私、と我に返ったところです。
ほんと、何やってんでしょう^^;
まあでも、慶が浮上してきてくれたので、次回本編の慶視点が書きやすくなったかも。
次回もまたよろしければお読みいただけると嬉しいです。
長々と読んでくださりありがとうございました!
そして、クリックしてくださった数人の方々、本当にありがとうございます!
皆様がいらっしゃらなければ、続き書くのやめていたかもしれません。
本当にありがとうございました!!
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「風のゆくえには」シリーズ目次 → こちら
(長編「旅立ち」のラストあたりの、浩介視点になります)
-- -- -- --
どうして「会わない」なんて選択をしたのだろう。
あらためて気付かさせられた。おれは、慶がいないと生きていけない。
受験のため1月下旬から、おれは学校に行くのをやめた。慶に触れたい、という脳の動きが、受験の妨げになっている気がしたからだ。
そのころからの記憶はあやふやだ。ただ、ずっと追い詰められていた。ずっと苦しかった。
そして、すべり止め、というより、試験に慣れるため、というつもりで受けた大学に落ちてしまい、極限状態に陥った。
落ちた、と母から報告を受けたであろう父の、「お前は本当に出来損ないだな」と言いたげな冷酷な目。
「どうしてあんなレベルの学校に落ちたの? お母さん恥ずかしくて近所の人にも言えないわ。ねえ、ちゃんと寝てる? 寝ないと本領発揮できないわよ。とにかく本命に落ちるわけにはいかないんですからね。あなたは昔から本番に弱いところがあるからお母さんそれが心配で。やっぱりこの前ついていってあげればよかったわね。電車で酔ったんじゃない? だからあんな学校に落ちたんでしょう。本命の試験の時はお母さんついていってあげるから。とにかく本命は絶対に受からないと………」
延々と続く母の呪文のような言葉。
ウルサイ、ウルサイ、ウルサイウルサイ!
頭がおかしくなる。もう、耐えられない。焦って焦って、必死に参考書を読んでも少しも言葉が入ってこない。息ができない……苦しい……
そんな状況の中、何日たったのだろう……
「こうすけっ!」
「!」
慶の声。一瞬で部屋の空気が清涼なものに変わった。それから、ドアを蹴られる音。
「開けろっおれだっ」
「………慶」
久しぶりに見る慶。心臓が鷲掴みされたようになる。記憶よりもずっと鮮やかで、眩しい瞳の慶……
頬に触れられただけで、おれをまとっていた灰色の膜がすーっと浄化していった。
抱き寄せられたら、呼吸が楽になった。おれは慶がいてくれないと、息を吸う方法さえ忘れてしまうようだ。
どうして会わないなんて選択をしたのだろう。
あらためて気付かさせられた。おれは、慶がいないと生きていけない。
抱きしめて、ベッドに組み敷く。おれのベッドに慶がいる……それだけでももう、滾るものを抑えられない。
「夢みたい……」
「夢?」
聞きかえした慶の白い耳に口づける。慶がくすぐったそうに首をすくめた。かわいい。
「うん。慶の夢、たくさんみたから」
「どんな夢だ?」
「んー………」
それは………とても言葉にできないような……。
「言えないような夢なんだろー?」
「………うん」
笑う慶の唇にそっと唇を下ろす。記憶よりももっと水々しい唇。
『おれはどんな浩介だって、大好き、だからさ』
さっきの慶の言葉………。
好き、なんて、言ってくれたの、いつ以来だろう。
『何度シュートしても入らなくてもあきらめなかったお前を思い出せ』
慶。あなたの瞳に写るおれは、いつでも一生懸命で、まっすぐで。なりたかった自分の姿がそこにはある。
そうだよね。そうだったよね。慶。もう、おれは昔のおれじゃないんだよね。
『おれはそんなお前を好きになったんだから』
そんなおれになれたのは、慶のおかげだよ。慶がいなかったら、おれはずっと大嫌いな自分のままで、今頃この世に存在すらしていなかったかもしれない。
慶。おれの光。
慶がいてくれるから、おれは生きていられる。
慶がいてくれれば、おれはなりたかった自分でいられる。
「なにニヤニヤしてんだよ?」
慶がおれの頬をつつきながら問いかけてくる。慶、なんて可愛いんだろう。
「さっきの慶の言葉思い出して……」
「言葉?」
「うん。だって慶が大好きっていってくれるなんて……」
頬に額に瞼に口づけると、慶がまたくすぐったそうに笑った。その頬を囲っておでこをくっつける。
「ねえ、もう一回言って?」
「……そんなの言わなくても分かるだろ?」
分かるだろ、だって。それはそれで嬉しいけど……
「分かるけど、言ってほしいの」
「あー………」
慶がうんうん唸りながら、おもむろにおれのズボンのボタンを外しはじめた。
「慶?」
「いや……さっさとやることやらないと、お前の母さんが買い物から帰ってきちまうかな、と思って」
「やることって……」
「え? やるんだろ? つか、さっきからやるき満々だし、お前の息子」
「ちょ……っ」
下ろされたズボンからピョコンと飛び出してきたおれの息子君……
「そりゃ慶が大好きなんていうから」
「大好きっていうと元気になんのか?」
「そりゃなるよ。だって……、あ」
掴まれて、ゆっくりと扱かれる……
慶がおれのものをジーッと見つめながら言う。
「ダイスキダイスキダイスキ、あ、ホントだ。大きくなった」
「け……いっ、もう、ふざけて……っ」
一年ぶりの慶の細い指。繊細でそれでいて力強くて……
「夢の中では何してたんだ?」
「んん………っ」
慶の左手がおれの袋を弄びながら、右手はゆっくりとスライドして、先に来るたびに、指先で先走りが出ているあたりを刺激してくる。もう、すぐにでもイってしまいそうだ……。
「やっぱ入れてた?」
「ん………」
ビクビクと腰が浮いてしまう。寝不足もあって余計に頭が朦朧としてくる。
「お前がおれに? おれがお前に?」
「おれが……慶に」
朦朧としたまま正直に答えてしまった。
でも、その先は心の中に押しとどめる。夢の中の慶は淫らで色っぽくて、おれが腰を突き上げるたびにいい声で喘いで……
「じゃ、夢の通りやってみるか」
「え」
健康的に明るい慶の声に、我に返る。夢の通りって……
「え……でも」
「でもじゃなくて。やってみようぜ?」
「でも………」
一年前は、慶が痛そうだったので、すぐにやめてしまった。今回も同じことになりそうで……
「ほら早くやるぞ。時間がない」
慶はさっさとズボンを下着ごと脱ぐと、おれの足に足を絡めてきた。素肌のすべすべの足が気持ちいい。慶は体毛が薄いので、脛毛も生えていないのだ(本人は気にしていて、おれの脛毛が羨ましいと言っているけど)。
「やるぞって、でも……」
「いいからいいから。あの薬どこにある?」
「うん……」
ベッドの下に隠してあった、潤滑作用のあるジェルの容器を取り出す。「はやくはやく」とせかされながらジェルを手に取った時点で、ふと思いついた。
とりあえず、指で慣らしてみたらどうだろう。
「慶、先にちょっと指入れてみるね」
「え?! ………ちょっ」
ジェルをまとわせた中指を、ゆっくりと慶の中に入れてみる。思ったよりもスルリと入った。今、第二関節くらい。
「……どう? 痛い?」
「……っ」
慶が歯を食いしばりながらブンブン首を振る。
「痛くはないんだけど……なんか、すっげえ、変っ」
「そっか」
すっと引き抜く。途端にホッとしたように慶が息をついた。でも直後にハッとしたように言う。
「いや、これでやめてたらいつまでたってもできねえじゃん」
「うん……でも」
ジェルのついた手で、慶のものを掴むと、慶が素直にビクッと震えた。
「ほら、受験終わるまではしないって約束だったし」
「んん……っ」
扱きはじめた途端に、慶の瞳が切なげに揺れた。一年前も思ったけど……慶、感度がものすごくいい。すぐに固くなる。
喘がせたくなって、スピードを速めると、
「ちょ、ちょっと待てっ。待てってばっ」
いきなり腕を掴まれ強制的にやめさせられてしまった。
「なんで?」
「なんでってお前速すぎんだよっ。前の時も思ったけど、なんでそんな速くできんだよっおかしいだろっ」
「おかしいって言われても……」
掴んだまま制止していると、慶はムッとしたように言葉を続けた。
「あれからおれも自分でやるときお前のスピード目指してかなりいい線までいくようになったけど、今、思った。お前のほうが全然速いっ」
「…………」
自分でやるときって……。慶の自慰行為の姿を想像したら、ムクムクと起き上がってきてしまった。
それに気が付いた慶が、指先でそっと撫でてくる。
「慶………っ」
腰が浮き上がる。それ……気持ち良すぎるっ。
「慶こそ……っそれどうやってるの?一年前も思ったけど、おれ、自分じゃできない……っ」
「………企業秘密」
慶は嬉しそうにニッとすると、んーっと言って唇を少しとがらせながら、こちらに顔を寄せてきた。
か……かわいすぎる……っ。
「慶………」
そのかわいい唇をそっと歯をたてて噛むと、慶が赤い舌を小さくだして唇をなめてきた。たまらない……。その舌を吸い込み、絡める。
ゆっくりと扱くのを再開する。キスの合間の息があがってくる。
「こ……すけ……っ」
「ん……っ」
なんとか理性が飛ぶ前に、枕元のティッシュを何枚か引き出し手に取る。
扱く速度を合わせると、体を合わせているような感覚に陥る。一つになってる気がする。
一緒にいきたい。気を抜いたらすぐにイク状態で、必死にこらえながら、慶のものを扱き続けていたら、
「あ……っ、イクッ」
「!」
ぎゅううっと強く手首をつかまれた。同時に、おれの手の中の慶が、ぶわっと更に大きく熱をもち、切ない声とともに、熱を吐き出す。
「んんっ」
一緒におれも気を投げ出す。一気に放出される。なんて快感……
ドクンドクンッとあそこと心臓が同時に波打っている……
「あー……」
しばらくの静寂のあと、慶が絞り出すように言った。
「気持ち良すぎた……」
「うん……」
ぼやっとしている慶。かわいい。
ティッシュで滴をふいてあげていたところ、
「あ、お前、これ」
慶に右手を掴まれた。
「ごめん。おれが今、掴んだところだろ」
「あ……」
右手首に爪のあと。その周りも赤くはれている。
「痛くないか?」
「全然」
全然痛くない。ついたことにも気が付かなかった。
「ごめんな。しばらくあと残るかもしんねえな」
「あと?」
思わずじっと見る。慶とエッチなことをしたあと……。
「嬉しい……」
「は?」
慶、眉間にしわが寄ってる。
「慶の跡、もっとつけてほしい。つけて?」
「………あほか」
慶はおれのお願いを一蹴すると、さっさと着替えだした。
おれ、変なこと言った? 言ったのか……。でも。
おれも急いで着替えると、何事もなかったかのように座布団に座っている慶の横に座りこみ、
「ね。慶の跡、つけて?」
「はあ?」
呆れたようにいう慶の目の前に右手首を差し出す。
「キスマーク?っていうの? あれつけて。強く吸い込むとできるんでしょ?」
「…………」
「あ、ケチ」
無情に右手を払われ、文句を言うと、慶がおもむろに左手を掴んできた。
「慶?」
「右手は鉛筆持つんだからダメだろ」
「ん…………っ」
袖をまくられ、手首の内側に口を寄せられた。強く強く吸われる。その慶の色っぽさに釘付けになってしまう……。
「……こんなもんか?」
「ん………」
赤く跡がついてる……。慶がつけてくれたしるし。
「嬉しい……ありがと」
「………変なやつ」
赤くなって目をそらした慶の頬にキスをする。
「ありがと。慶」
「変なやつ」
慶はもう一度いって、唇を重ねてくれた。
**
門を開ける音がする。母が帰ってきたようだ。慶が帰ってしまったあとの一人きりの部屋の中、手先が凍るような感覚に陥る。
「慶………」
でも大丈夫。慶がつけてくれたしるしに口づける。おれには慶がいるから大丈夫。
おれは、慶の瞳に写るおれを本当の自分にしたい。
「大好きだよ」
再びしるしに口づける。
おれは、慶の瞳に写るおれになる。
-----------------
以上です。
わりと真面目な話になってしまいました。浩介暗いよー……。
この後、浩介は本命の大学(学部は違うけど父親と同じ大学)に合格し、慶は全部落ちて浪人することになります。
ちなみに、これらのお話なんとなく続き?になってまして……
未挿入1回目:『風のゆくえには~R18・初体験にはまだ早い』
未挿入2回目:『風のゆくえには~R18・君の瞳にうつる僕に』が今回の話。
で、その後、挿入1回目から連作読切で……
目次の1993年4月~から一覧となっておりますっ。→ 風のゆくえには目次
こないだから、浩介が慶の顔にかけちゃった話を書こう書こう思ってるのに、違う話ばかりかいてます。
でも、今回ちょっと暗かったので、顔にかけちゃった話はまたまた今度にします。
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励みになります、というセリフをよくお見かけしますが……ホント、励みに、なります!というセリフを身をもって知ることができています。
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「風のゆくえには」シリーズ目次 → こちら
高校2年生のクリスマスイブ前日。
一年以上に及ぶ片想いが実を結び、晴れて浩介と恋人(!)になったおれ。
それから2ヶ月以上経つけれど、今までとそんなに変わっていない気がする……。
大きく変わったことといえば、時々キスをするようになったこと。でもそのキスも、触れるだけの軽いキスばかり。唇よりも頬とか額とか頭のてっぺんとかの割合が高い。外国だったら普通に挨拶でするくらいのノリの、軽いキス。人目を忍んでコソッと。その度にきゅんとなる。
それ以外は今までと同じように、一緒に登下校できるときはして、校内ではいつも一緒に行動して、休日は遊びに行って……今までと変わらない。
でも、健全な高校生カップルなんてそんなもんか? とも思う。
まわりをみていても、手を繋いで帰ったりするカップルはいるけれど(ちょっと羨ましい)、それ以上のことをしているとはとても思えない。
今のままで充分すぎるほど幸せだし、だからまあ、これでいいのかな……と思っていたんだけど……
「聞いたか? 東野のやつ、こないだのバレンタインで彼女と……」
「マジで?! あれだろ? S女子大付属の……」
クラスの男子14人でカラオケに来ているのだが、突然、暴露大会がはじまった。話題になっている東野自身はデートだそうで来ていない。
「バレンタインで、あたしをプレゼント! みたいな?」
「そうそう。今日、うち誰もいないから……、って誘われたらしいぞ」
「誘われてえー誰か誘ってくれー」
お調子者の溝部がマイクを使って叫び、みんなでゲラゲラ笑っている中……
「ふーん……」
おれの隣に座っている浩介がボソッと独り言のようにつぶやいた。
「いいな」
「………………え?」
え? 今、「いいな」って言った?
「浩…………」
浩介を見上げ、聞こうとしたところ、
「渋谷ー! お前はどうなんだ! どうせバレンタイン山のようにもらったんだろー!」
溝部がマイクで話しかけてきた。
「うるせー。もらってねえよ」
「三年の先輩からも、他の学校の子からももらってたじゃねーかー!」
「…………」
何で知ってるんだ。でも、最後までちゃんと見てろっての。
「あれは受け取ってねえよ。全部返した」
「はああ?!」
正直に答えると、浩介をのぞく12人に一斉につめよられた。
「なんなんだよお前はっ」
「なんだその余裕はー?!」
ゆさゆさと揺すぶられる。その横で「はいはいはい」と浩介がみんなの手を剥がしてまわる。
「僻まない僻まない。慶はそんなのもらう必要ないの」
「うるせー桜井。お前だって、バスケ部の女子からもらってただろっ」
「あれは義理だよー」
へらへらと笑う浩介。そうだ、こいつバスケ部の女子からもらってたな……。
「義理でもいい! チョコならなんでもいい!!」
「彼女ほしー」
「やりてー」
マイクを次々回して叫んでいく野郎ども。
楽しそうに笑っている浩介。
結局その後も「いいな」について追及することはできなかった。
いいなって……いいなってことだよな……。
***
翌朝、起きる寸前に夢をみた。
浩介の腕の中にいるおれ。お互い何も着ていない。浩介の肌に直接触れているという感覚が気持ちいい。
「慶……大好き」
耳元でささやかれる。大きくなったおれのものを浩介が優しく掴んでくれる。
ああ……そんなことされたら、おれ………っ。
「!!!!!!」
声にならない叫び声をあげて、飛び起きた。懐かしい感覚……
「…………マジか」
夢精してしまった……。中学生かっつの。
それもこれも、昨日浩介が「いいな」なんて変なことを言うからだ!!
と、いうことで。
「今度の日曜、おれんち誰もいないから遊びに来い」
と、誘ってみた。カラオケにいった翌週の日曜日、ちょうど親は法事で夜まで帰ってこないし、妹の南は朝から友達のうちに遊びにいくと言っていたのだ。このタイミングでこんなチャンスが回ってこようとは、神様がおれ達に次のステップに進めと言っているのに違いない。
「う、うん………」
肯きながらも真っ赤になった浩介。昨日の今日のこの誘いだ。言わなくても意味は分かるだろう。
そういうわけで、この日曜日が来るまでの一週間はお互い妙に意識してしまって、「喧嘩でもしてるの?」と南に聞かれるくらいギクシャクしてしまった。
そして、日曜の話題は故意に避け、なんとか迎えた運命の日曜日。
「お邪魔します……」
緊張した様子でうちにきた浩介。家の中が妙にシーンとしている……。
おれの部屋に通したはいいけれど、会話の糸口がつかめず、さらにシーン……としてしまう……。
「あの」
「慶」
同時に口を開いてしまい、あわてて閉じる。
「なんだよ?」
「慶こそ」
「…………」
「…………」
再びシーン………となる。
顔を見合わせ、ぷっと吹き出してしまった。
「あーダメだなー」
「なんかおれ、緊張して手に汗かいてきたよ」
「マジか」
思わず、何も考えず、その手を握ってしまい、
「!」
再び飛び離れたおれ達……。
だめだこりゃ。
「………困ったなあ」
「困るなよ」
「困るよ」
「…………」
再び訪れる沈黙………
「お前さ……」
「うん」
とりあえず、ローテーブルを挟んで斜め横、の位置から、真隣に移動させる。ベッドを背もたれにして二人で並んで座る。
浩介が、そっと手を差し出してきた。絡めて繋ぐ。ホントだ。浩介、汗かいてる。……っておれもか。
「お前……男同士ってどうやるか……知ってる?」
「………あ、うん。一応……。それで……」
浩介が繋いでいない方の手でカバンの中を探り、紙袋に入った何かを出してきた。
「何?」
「あの……普通にすると痛いでしょ? それで滑りをよくする、みたいな……薬?」
「…………」
南だな、と思う。どうせ南が、例の変な本を一緒に作ってる友達と用意して、浩介に渡したに違いない。南と浩介って結構仲が良い……というか、南が浩介を利用しているというかなんというか……。
まあ、いい。この際そんなことは後回しだ。
「じゃあ……やってみるか」
「うん……」
そういいつつも、また止まってしまったおれ達。何を、どうすればいいんだ?
「とりあえず……服脱ぐか?」
「あ、うん」
今までも海に一緒にいったり、写真部の合宿で一緒に銭湯に入ったりして、お互いの裸は見たことあるのに、自分の部屋という日常空間のせいか、これからはじまる初めてのことのせいか、上半身を晒すことですら恥ずかしくて仕方がない。……あ、そうか。
「明るいのもいけないんだな。カーテン閉めるな」
シャツのボタンを半分開けたところで気が付いた。真昼間からカーテン閉めるのもいかがなものかとも思うけれど、部屋を少しでも暗くするためにはしょうがない。ザーッと閉めて、少し薄暗くなったところで、
「!」
「……慶」
後ろから、ぎゅうっと抱きしめられた。ポツポツ……とシャツのボタンの続きが開けられていく。
「慶……大好き」
「………っ」
夢と同じささやき。でも夢よりももっと甘くて愛おしい響き。
「こう……っ」
振り返ると同時に、唇を重ねられた。いつもみたいな軽いキスじゃなくて、重ねて、吸い込まれて……
「んんん」
キスを続けながらお互いの服を脱がしていく。同時にズボンを下着ごと引き下ろした段階で、
「あ」
「あ」
顔を見合わせて笑ってしまった。
ぴょんっと跳ね上がってるお互いのもの。こんにちは、とでもいいたげにそそりたっている。
「もう、この状態?」
「しょうがねえなあ……って、浩……っ」
優しく掴まれて、震えてしまう。これも夢と一緒だ。
でも、夢と違うのは、まだ終わらないってこと……
「浩介……」
「んっ」
浩介のものを握ると、浩介がビクビクっと震えた。熱い……こんなに熱いんだ。
「慶……」
「ん……」
立ったまま、お互いのものを扱き続ける。
ああ……気持ちいい……。人にされるのってこんなに気持ちいいのか。いや……浩介だから気持ちいいんだな。
浩介のものがおれの手の中でさらに固くなっていくことも、今までしたことのない、舌を絡めるキスも、さらにまた興奮状態を誘う。
「このままじゃ……いっちまう……」
「ん……」
「どう……する? このまま、いくか……?」
「あ……そうか」
ふうっと大きくため息をついて、浩介が手をとめた。
「あまりにも気持ち良くて忘れてた」
「あーうん。別にこのままでもいいんだけどな」
無理に痛そうなことをすることもあるまい。とは思う。でも……
「でも、おれ、慶と一つになってみたい」
「………」
考えを読まれたかのようなセリフに、目を見開く。浩介の真剣な顔。
「じゃあ……するか」
「うん」
紙袋から容器を出してみる。んーと?これを塗ればいいんだな?
ぬるぬるとしたものを手に取り、浩介のものに塗ってみる。
「あ……っちょ……っあんまり触らないでっいっちゃうよっ」
浩介の腰が引けてる。相当気持ちいいらしい。確かにこのぬるぬるは気持ちよさそうだな……。
「じゃ、入れてみろ」
「え!?おれが先!?」
ぎょっとした浩介を置いて、ベッドに寝っころがる。そして両手を差し出した。
「ほら、こいよ」
「慶………」
浩介がごくりと唾を飲んだのが分かった。
「じゃあ………」
両太股をぐっと押され、足を押し広げさせられる。すべて露になる。かなり恥ずかしい体勢………。
「慶……色っぽい……」
「…………っ」
見下ろしてくる浩介の目………ドキドキする。
「じゃ………入れるね」
「ん」
覚悟を決めて、浩介のものを待つ。穴の入り口に温かいものがあてがわれ、びくりとなる。これが中に………………
「!!」
うっと声を上げそうになるのをあわてておさえる。い………痛いっ。まだ先が少し入っただけなのに……っ。
「……慶」
「…………あ」
すぐにすっと痛みがなくなった……。浩介が心配そうにこちらを見下ろしている。
「大丈夫?」
「大丈夫……ってなにやめてんだよ」
「だって……」
しまったな……。正直に痛そうな顔をしてしまった。
平気な顔を取り繕って、浩介をあごで促す。
「もう一回やれ」
「でも」
「いいから。さっさとしろよ。時間ねえんだから」
「え」
自分で言ってから、あ、と気がつく。そうだ。なんとなく気もそぞろになっているのは、家族が急に帰ってくるんじゃないかという心配もあるからかもしれない。
「時間ないの?」
「あー、ないっつーか、急に親とかの予定が変更になったりしたらって思ったりして……」
「そっか……」
浩介は頷くと、ローテーブルに置いておいたジェルに手を伸ばした。
「浩介? …………っ」
おもむろにジェルを塗られ、ぶるっと震えてしまう。予想以上に気持ちいい……っ。
「時間ないなら、余計に。今度は慶がしてみてよ」
「んー……」
考えてしまう。
もしかしたら、これから時間をかけてゆっくりやれば、痛くなくできるかもしれない。でも時間に制限がある中で、そこまでできるだろうか……。そもそも…………
「なんか、そういうの……違うんだよなあ」
「え?」
起き上がり、浩介の頬にキスをする。
「慶?」
ビックリした表情の浩介の鼻の頭にもおでこにもキスをする。最後に唇をぺろりと舐める。
「慶」
浩介がクスクス笑いながら、同じように頬に鼻におでこにキスを返してくれる。そして唇を重ねながらぎゅうっと抱きしめてくれる。素肌の触れ合いがとてつもなく気持ちいい。そのままベッドに横になる。
「うん……こういうのだよな」
「何? 何の話?」
言いながらも、浩介が耳や首にもキスをしてくれる。
「なんつーか……想像してた初体験?っていうのか? 痛いとか時間がねえとかそういうんじゃなくて、こんな風に……、あ」
言っているそばから優しく掴まれた。ジェルのぬるぬるが残っているので余計に気持ちがいい。寝そべったまま、おでこをコツンと合わせる。
「こんな風に?」
「ん」
おれも浩介のものに手を伸ばす。先走りをくるくると伸ばし先に広げると、浩介が小さくうめいた。
「慶……」
切なげな瞳でおれをまっすぐに見る浩介……。
「慶、大好き」
「ん」
「大好きだよ」
「ん」
再び唇を合わせる。合わせながらも、手は扱き続ける。
亀頭をくるっくるっと回しながら扱いてくれる浩介。たぶんいつもこうやってやってるんだろうな、と思うと、なんだか余計にゾクゾクする。
おれもいつも自分がしていて一番気持ちのいいことを浩介にしてみる。浩介が「んんんっ」と声をあげた。
「慶……いっちゃいそう……」
「ん……おれも……」
喋る余裕もない。空いているほうの手で、枕に引いていたタオルケットを取って、扱いている下に置く。
「この上、出し……」
「んん」
舌を絡ませ口づける……一段と固く大きくなる浩介。次の瞬間、
「ん……、あっ」
声と共に浩介のものが吐き出された。
浩介のいった瞬間の顔、見れた。……すげえ、かわいい……。
そんな感動に浸る前に、浩介の手が容赦ない速さで扱いてくる。
「……浩っ」
速すぎだろ……っ。追い立てられるように快感が体の中で膨れ上がってくる。
「んんんっ」
そのまま、あっという間に頂点に連れていかれてしまった。タオルの上に乳白色のものが仲良く並んでいる……。
「あー……」
タオルを上によけて、ぐてっと浩介の肩に額を押しつけると、
「慶……かわいい」
ぎゅうううっと抱きしめられた。何も着ていない素肌同士の触れ合いが心地いい……。
「んー……これだよな」
さっきから思っていたことを口にしてみる。
「なんつーか……セックスってのはこんな風にふわふわ気持ちいいもんだと思ってたんだよなあ」
「ふわふわ?」
「うん……。まあ、もしかしたら、ちゃんとやったらもっととんでもなく気持ちいいのかもしんねえけど」
「うん……」
再びおでこを合わせる。
ずっと片思いしてた浩介が好きだといってくれる。抱きしめられる。抱きしめる。キスする。キスされる。それで今はもう充分。だから……
「ちょっと……まだ早いのかもしんねえな、とか思ってな」
「うん………」
「でも、いつかは……」
「うん」
それがいつになるのかは分からないけれど……
「じゃあ……着替えるか」
「あ、待って」
「ん?」
もう一度、ぎゅううっと抱きしめられる。さわさわと背中や腹のあたりをなでられる。
「浩介?」
「今のうちに堪能させて。覚えておかないと」
「なんで?」
「覚えておいて、今晩からのオカズに」
「……………」
真面目にいってんだか、冗談でいってんだか分からない……。
「まあ、でも、ずっとやらないってわけじゃ……」
「でももう受験生になるしね。するのは受験が終わってからだね」
「あー……そうだな」
そうだった。もう受験生になるんだった…。
浩介が再びおでこをこつんとさせて言う。
「受験終わったら、どこか泊まりで旅行に行こうよ」
「おお、いいな」
「そしたらそこでちゃんと最後までしよ?」
「…………ん」
そうだな。おれたち、初体験にはまだ早かった。
「それまでは健全な交際を」
「健全ってなんだよ?」
「キスまではOK」
「ん」
触れるだけのキス。それだけでも充分気持ちいい。
「受験が終わるまでは妄想にとどめておくね」
「妄想って……」
「慶とあんなことやこんなことして……って」
「あんなことやこんなこと?」
「あんなことやこんなこと」
真面目に言ってるんだか、冗談で言ってるんだか……。真面目にいってる気がする……。
「お前……実はムッツリだな」
「バレちゃった?」
浩介がクスクス笑いながら、再び唇を合わせてくる。
いつか、その日がくるまで、ゆっくりゆっくり愛を育てよう。
--------------------
長々と書いてしまいました。
最後までお付き合いくださり、本当にありがとうございます!
初めてだから手探りすぎて、なかなか進まない二人……。
「神様がおれ達に次のステップに進めと言っているのに違いない」
なんて、現在の慶だったら言わなそうなセリフ。
でも、高校生の慶はそういうことよく言ってました。
片想い期間長かったしね……。まだ片想いの時の遠慮みたいなのが残ってますね。
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「風のゆくえには」シリーズ目次 → こちら
注:直接的性表現を含みます。
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「今日はおれが口でする」
「………はい?」
おれの19歳の誕生日の夜、ホテルに着くなり、慶に真面目な顔で宣言され、頭の中が?でいっぱいになった。
「何の話?」
「何の話って、ラブホテルでやること以外になんかすることあんのかよ?」
「………えーと」
口でする? 口で………口で?
「えええ?!」
驚きのあまり飛びのいてしまう。
「口でって、え、慶……」
「なんでそんな驚いてんだよ。お前だって何回かしてくれたことあるじゃねえかよ」
「いや………そうだけど………」
何を突然……
「せっかく誕生日だしな。なんかおれにできることねえかなって思ってさ」
「慶………」
う、嬉しい……けど、恐れ多いというかなんというか……。ホテルにくるのももう6回目なんだけど、全然慣れない。
あらためて、慶の顔を見つめる。
黒目がちな瞳。スッと通った鼻梁。透き通るような白皙……誰もが振り返る完璧に整った顔。この、小さめの形の良い口に、おれのものが???
「いやいやいやいや……無理でしょう」
「なんでだよっ」
「あ」
しまった。慶がキッと怒った目を向けてきた。
慶は負けず嫌いなのだ。無理とか出来ないとかそういう言葉をいうと、余計にムキになる傾向が……。
「あ、違う違う。無理っていうのは、そういう意味じゃなくて……」
慌てて訂正したけれど遅かった。
ムッとした顔をしたまま、慶がおれのベルトに手をかけてくる。
「無理かどうかはやってから言え」
「だから、そういう意味じゃ……っ」
ザッとズボンを下着ごと下ろされ、おもむろに掴まれた。慶の細い指。頭に血がのぼってくる。
「慶……っ」
「立ったままだとやりにくいな。そこ座れ」
「……っ」
扱かれたまま、ベッドに座らさせられる。ズボンを脱がされ、足を広げさせられると、おれの足の間に慶がちょこんと小さく正座で座りこんだ。
(か……かわいいっ)
って言葉は、どうにか飲み込んだ。たぶん、今、それ言ったら怒られる…。でも、思わずにいられない。正座して見上げてくる慶。手に持っているのが醜悪なおれのものだというアンバランスさに余計にそそられる……。ほどよい強さで扱かれ続け、あっという間に本勃ち状態になってしまった。
慶がにーっと笑った。
「もう、出てきてる」
「………んっ」
先っぽを赤い舌でなめられ、全身にぞくぞくぞくっと震えがくる。
こちらを上目遣いでみてくる慶……。こんなきれいな人がおれのために……?
おれなんかのために、おれのものを、こんなきれいな唇が………
………どうしよう。
「慶」
「あ?」
まさに、咥えようとしてくれているところを呼び止めると、慶が首を傾げた。
「なんだ?」
「やっぱり……やめようよ」
「なんで」
「……っ」
亀頭にキスをされ、一瞬息ができなくなった。ああ、どうしよう……。
「慶、だから……」
「ほら見ろ、こんな先走り出てきてる。気持ちいいんだろ?」
「そうだけど、でも……」
抑えがきかなくなる。こんなことをしてもらったら、また、おれの中の黒い黒い感情が噴出されてしまう。
慶を、めちゃくちゃにしたい、という黒い欲求が……。
………なんてことは言えない。絶対に知られたくない。
「まあ、いいから、やらせろ」
「………っ」
おれの内心ほったらかしで、慶がおもむろにおれのものを咥えこんだ。
「け……慶っ」
その映像だけでも、もうどうにかなってしまいそうなのに、慶の唇が亀頭だけを吸い込んで、舌で出てくる穴を強く舐めてくるので、もう……
慶の中に入れると時とはまた違う、快感。器用に動いている舌がいやらしい………
「慶……なんかやらしい……っ」
「ああ?」
口から離して、ちょっと笑った慶。かわいすぎる……
「お前こないだ同じことしてたぞ」
「え……んんんっ」
裏の筋のあたりをツーッと舐められる。その刺激も気持ち良いんだけど、慶の鼻の頭にトンっトンっと亀頭がぶつかることで、余計に感じでしまう……っ。
「慶……っ」
「ん」
小さな口いっぱいにおれのものが含まれる……。歯を微妙に立てられながら、出したり入れたりされ……。
慶、うますぎだろ。初めてとは思えない……っ。
「なんで……っ」
思わず一瞬よぎった嫌な気持ちを吐き出してしまう。
「まさか、初めてじゃないの? こんな……っ」
「アホか」
ぷっと吹き出した慶。
「初めてに決まってんだろ。いつ誰とやんだよ」
「だって、うますぎる……っ」
「ばーか」
再び咥えてくれる慶。舌が艶めかしく動いている。
「慶……慶」
「ん」
上目遣いの目が笑ってる。ああ、慶………愛おしい慶。
それなのに、おれは頭がおかしい。
慶、わからないでしょう? おれが今、何を考えてるのか。
「慶……」
その綺麗な顔が苦痛でゆがむくらいに、喉の奥までつっこみたい。
その柔らかい髪を掴んで、咥えたままの唇をおれのものの付け根まで押しつけたい。
思いきりその可愛い口を突き続け、そして泣きそうな慶の顔に……
「浩介?」
「!」
慶の涼やかな声に我に返る。
「変な顔してる。どうかしたのか?」
「………」
動悸が激しくなりすぎて倒れそうだ。
絶対に、こんな心の中、読まれたくない。
「浩介?」
「うん……」
すうっと頭の中が冷めてくる。ごまかさないと……
「どうしたって、こんなことしてもらって、どうにもならないわけないでしょ。気持ち良すぎだよ。どっかで練習したのかって疑いたくなるくらい」
「なんだそれ」
くすくすと慶が笑う。
その笑顔を見ながら、一度引いた感情がよみがってくる。
今日は予備校の目の前まで迎えにいったのだが、そこで慶が同じ予備校の奴らと一緒にいるところを目撃してしまったのだ。……慶、楽しそうだった。同じ医学部を目指す仲間たち。仲も良くなるのだろう……。
高校ではずっと一緒にいたし、慶の友達とも知り合いではあったから、どんな奴だか分かっていて安心だった。でも、これからはそういうわけにはいかない。分かっていても、嫉妬の心は沸騰し続けている……。
おれの黒々とした感情など、全然知るはずもない慶。
いきなり、嬉しそうにおれの腿をパチパチとたたいてきた。
「そうかそうか。そんなに上手いか。だから無理じゃなかっただろ」
「……慶」
ぷっと今度はこちらが吹き出してしまった。
得意そうな慶。かわいい。
「………」
やっぱり慶だ。さっきまでの黒い感情が浄化されていく。やっぱりおれを救ってくれるのは慶だけだ。
慶はヒヒヒと変な笑い方をすると、萎えかけたおれのものをぐいっとつかんだ。
「んじゃ、続きをしてやろう」
「んん……っ」
再び咥えられ、のけぞってしまう。慶、やっぱり上手すぎる。きっとこの人は何をやらせても器用にこなすんだろうな。
「慶、慶」
「んあ?」
咥えたままこちらを見上げる慶。ああ、かわいすぎる……
「これも気持ちいいんだけど……」
「んん?」
「でも、普通にもやりたいっ」
「……そうか」
ふむ、と慶は肯くと、
「じゃあ……」
「!!!」
うわわわわっとバタバタ手を動かしてしまった。慶がどうやったのか、たくさんの唾液でおれのものを包んだのだ。
何だこれ……っ。また更に気持ち良すぎるっ。
「んじゃ、これで」
おれのものから離した形の良い口から糸が引いている……。色っぽい……。
「ほら、やるぞ?」
姿の色っぽさとは真逆に、健康的な口調で言うと、慶はぽいぽいぽいっとあっという間に着ているものを脱ぎすてた。そして、身軽にベットの上に飛び乗り、コロンと横になる。惜しげもなく晒されるギリシャ彫刻のように整った体……。
「早くこいよ?」
「う……うん」
おれも着ていたシャツを脱いでから、遠慮なく、その白い脚を押し開く。
「慶……」
「ん……」
ゆっくりと押し入れる……。ああ……一つになっていく。
誰も、こんなことできない。おれだけに許された冒涜。
「どっちが、いい?」
おれに貫かれ、膝を胸のところまで上げられた、あられもない姿の慶が聞いてくる。
「さっきとどっちが気持ちいい?」
「どっちも」
間髪入れず答える。
「気持ち良さの種類が違う。でも……」
「あ……っ」
大きくなりかけた慶のものを優しく掴むと、慶が敏感に反応して声をあげた。そう。この声……。
「慶の声、聞きたかった……」
「んんん……っ、あ……っ」
突き上げ、腰を振りはじめると、慶の声が喘ぎ声に変わった。切ない表情もたまらない……。
「慶、慶……」
「ん……あ……浩介……っ」
慶の指が膝立ちしたおれの腿のあたりに食い込んでくる。この痛さも好き。しばらく痣になるんだけど、愛された証拠のようで見る度に嬉しくなる。
慶がぎゅうっと締め付けてくるたび、快楽の波が押し寄せてくる。そもそも、さっきまでのフェラで限界がきていた。もう、もたない。
「慶、ごめん、もう……無理っ」
「ん……っ」
慌てて引き抜くと、慶の細い指がぎゅっとおれを握りしめ、確実に頂点に連れていってくれる。
「あ……っ」
頭が真っ白になる。吐き出されたおれの全てが慶の手の中にある。ふわりと優しく笑ってくれる慶……。
「慶………」
脱力しそうになるところを何とか持ち直し、すぐさま慶に手を伸ばす。
左手の中指と人差し指を、おれが今まで入れていたところに差し入れ掻き回す。そして右手でものを強めに扱くと、慶が身をよじった。
「あ……っ 浩……」
快楽と苦痛の入り交じった慶の顔……。
たまらなくなって、慶のものにしゃぶりつく。慶の味。
「わ、ばか」
慶が慌てたようにおれを引き剥がそうと頭を押してきたが、構わず続ける。左手を出来る限り奥まで突くと、慶がビクビクっとなって両手を投げ出した。シーツを掴み、涙目でおれのことを見下ろしてくる。
(たまんないな……)
かわいくて、愛おしくて、たまらない。慶のものがおれの口と右手の中で最大限にまで膨れあがってくる。慶が喘ぎ声の合い間に文句をいっている。
「浩……っバカお前っもうイクって」
「ん」
「このままだと口ん中……っ」
「ん」
今まで口でしたことはあるけれど、口でいかせたことはない。
破裂寸前の慶が身を引こうとするのを、容赦なく肘でおさえつける。
「浩……っ」
右手で扱きながら、先の方は口でくわえ続ける。そして左手を掻き回しながら差し入れする。慶は言葉にならない喘ぎ声をあげ、身をのけぞらせると、
「……あああっ、わーっバカバカバカっ」
最後は、盛大に文句を言いながら、勢いよく吐き出した。
「……っ」
喉に直接、慶の精液が当たり、えずきそうになったところをゴクリと飲み込む。
「あ……っ」
ビクビクっと慶が震える。勢いが無くなろうとしている慶のものを丁寧に舐めつくす。苦い……
しつこく舐め続けて、ようやく口を離したところで、
「お前ー」
パタン、と両手を投げ出し、天井を見上げた慶……
「んんん?」
その横に寝そべり、慶の頭の下に腕を入れ、抱き寄せると、慶がきゅきゅきゅっとおれの胸に額を押しつけた。
「何飲んでんだよーAVじゃあるまいし、恥ずかしいだろー」
慶、本当に恥ずかしいらしく、顔が赤くなっている。
あまりにもかわいいので、からかいたくなってしまい、真面目な顔をして慶に言ってみる。
「誕生日プレゼントかな? と思って」
いうと、慶が首をかしげた。
「は? 何が?」
「だから、慶のが」
「は?」
「ごちそうさまでした! みたいな?」
「…………」
「…………」
しばらくの沈黙のあと……
「あほかっ」
「痛っ」
おもいっきり頭突きされた……。
「慶ー痛いよー」
「あほなこと言うからだっ」
ぎゅううううっと腰に腕を回され、きつくきつく締め付けられる。
ああ……幸せだ。
「あ、そうだ。髪の毛洗ってやる」
「え?」
突然の申し出にキョトンと聞きかえすと、慶は腰に手を回したままこちらを見上げ、にやっと笑った。
「さっき、お前の頭にお前の出たもんベットリつけちまったからな」
「え?!」
そ、そういえば……。記憶を甦らせ、うわっと思う。あの時、おれを剥がそうとして慶がおれの頭を押して……
「か、確認したくない……」
「だから洗ってやるって。ほら行くぞ?」
慶がグイッとおれを引っ張りあげて、楽しそうに笑ってくれる。幸せすぎて苦しい。
「……ありがとうね、慶」
「何が?」
「初めて口でしてもらっちゃった」
「…………」
慶、ぶわーっと真っ赤になった。
「うるせえっ。そういうことイチイチいうなっ恥ずかしいっ行くぞっ」
慶はいつでも引っ張りあげてくれる。
黒い闇に沈み込んだおれを明るい光で強引に引きずり出してくれる。
慶がいてくれれば、おれは大丈夫……。
大好きな慶の手をぎゅっと握りしめ、心の中で呪文のように繰り返す。
慶がいてくれれば大丈夫。
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以上でした。
このような拙い小説を最後までお読みくださりありがとうございました。
本当は、病んでる浩介が慶の顔にぶちまけてしまった話を書こうと思っていたのですが、その前に、初めて慶がフェラしたときの話を書こうかな~と思いまして。
時系列的には、「R18・本格開発&受攻決定」のあとのお話になります。
しかし……元々慶がフェラした話を書こうと思ったのに、最終的には浩介が飲み干してるってのはどういうことでしょう^^;
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「風のゆくえには」シリーズ目次 → こちら
注:具体的性表現を含みます
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「桜井先生はちゃんとゴムつけてる?」
「………は?」
突然聞かれて、素で聞きかえしてしまった。
今日はバスケ部の夏合宿最終日。
あと数分で就寝時間だというのに、OBが遊びに来ているせいか男部屋が妙に盛り上がっているため、注意をしにきたのだけれど……
「君たち、なんの話してんの……」
「避妊は男の義務って話だよ。大事な話でしょ?」
昨年までキャプテンだった大野君。背も高くて顔も良くて女の扱いにも慣れているため、在学中も非常にモテて、しょっちゅう違う女の子と歩いているところを見かけた。
「先生、高校の時から付き合ってる彼女がいるんだよね?」
「あー……まあ……」
正確には彼女ではなく彼氏です。なんて言うわけにはいかず、大野君の質問に適当に肯く。
「高校の時、買うの緊張しなかった?」
「んー……高校の時は買ったことないからなあ」
「え!」
思わず普通に答えてしまって、あ、と思ったけれど遅かった。
大野君たちOB含め、現役高校男子まで話に食いついてきてしまった。一年生はへばって全員もう寝ているので助かった。こないだまで中学生だった子に聞かせる話じゃないだろ、と思ったりして……。
「じゃ、生で……」
「あ、ううん。高校の時はしなかったから」
「えー………」
疑いの目を向けてくる男子たち……。なんだかなあ……。
「本当に、全然、何もしなかったんですか?」
「えーと……」
ぐるぐるぐるっと7年ほど前の記憶を呼び起こす。何もしなかったって、いや……
「入れること以外のことはしてたかな……と」
「おおっ」
どよどよっとどよめきがおこる。
なんだろうなあ。この高校生男子のノリって昔から変わらない。おれが高校の時の合宿の夜もこんな感じだった。
「よく我慢できたね。オレ絶対無理」
「うーん。コンドームだって、正しくつけないと避妊に失敗することもあるしね。入れないことが絶対の避妊だよ」
「じゃあ、いつからちゃんとするように?」
「大学入ってから。高校生じゃ何も責任とれないけど、まあ大学生なら……って思って」
なんて、適当なことを言ってみる。やろうとしたけど痛そうでできなかった、っていうのが本当のところなんだけど、ここは先生らしく言ってもいいだろう。なんてね。
「でもさ、ゴムするタイミングって難しいよな」
「なー」
OBの子達がうんうんと言い合っている。知った風の大野君が「だ、か、ら」と高校生に指を突き刺した。
「だから今のうちから練習しとけって言ってんだよ。もたもたしてたらかっこ悪いだろ」
「そりゃあ……」
「で、今、桜井先生も言った通り、正しくつけないと意味ないんだからな」
「正しくって……」
高校生たちが興味津々におれを振り返る。
「正しくって、どうやって?」
「え」
「ほら、先生」
大野君がポイッと一つ、コンドームを投げ渡してくる。
「みんなに教えてやってよ」
「え………」
うーん………困った。
「最近してないから忘れちゃったなあ……」
「え、最近ご無沙汰なの?」
ニヤニヤした大野君に、いやいやと首を振る。
「そういうわけじゃないんだけど」
「え! それはさっ」
今度は現キャプテンの柳沢君が食い込んでくる。
「歳も歳だし、結婚を視野にいれて生でしてるってこと?」
「いやいや。だいたい歳も歳って、そんな歳じゃないよ」
「じゃあ、何?」
「何って……」
メンバー全員に注目される中、肩をすくめてみせる。
「いつも付けてもらってるから、おれ、自分では付けないんだよね」
「…………」
「…………」
10秒ほどの沈黙のあと……
「なんだとー!」
「くっそー!うらやましすぎる!」
「オレ、今初めて桜井先生のこと尊敬したー」
一斉に口々に叫んだ男子達。
わあわあぎゃあぎゃあ盛り上がりすぎて、
「男子うるさい! って、桜井先生まで何やってるんですか!」
女子部の顧問の先生に怒られた。
**
と、いう話をしたところ、
「お前、子供相手になんの話してんだよ……」
心底呆れたように慶に言われた。
「いやあ、つい本当のことを。ちょっとした自慢話?」
「………アホだな」
慶の冷たーい目。ゾクゾクする。この冷たい目が、あと数分後には熱を帯びた切ない光に変わると思うと更にたまらない。
慶がコンドームの袋をプラプラと指でつまみながら、
「で? 付け方のコツを教えろって?」
「うんうん」
現在、している真っ最中。
慶が騎上位になるというので、それならゴムつけて、と言うついでにバスケ部の話をしたのだ。そうしたら慶が渋々コンドームを出してきた。
今までに何度か中で射精してしまったことがある。そのほとんどが騎上位の時。
慶は「別に中で出してもいいのに」と言ってくれるんだけど、そうすると後から全部出さないといけなくて慶が大変そうで……。
そりゃ、中出しの気持ち良さといったら筆舌に尽くしがたいものがあるから、できるものならしたい。けれども、慶が大変なのはやっぱり避けたい。そういうわけで、かなり高級といえるコンドームを購入して常備している。
寝そべったおれの腿の上に座った状態で、慶の指がゆっくりとおれのものをしごいてくる。天使のように美しい慶にジッと見られながらしごかれると、恥ずかしいくらいすぐに固く大きくなってしまう。
慶が真面目な顔をして言う。
「まあ、まず、本勃ちの状態でつけるということが第一条件」
「………っ」
先走りのぬるぬるを細い人差し指になぞられ、ビクビクっと震えてしまう。
「半勃ちでつけると途中で取れるからな」
「うん……」
そう、それで前に取れてしまったことがある。考えてみたら、慶が付けてくれるようになったのは、それ以降のことだ。
「あとは……ゴムは乾くと破れやすくなるからサッサとつけること」
「……………」
「袋から取り出すときも破らないように気を付けて」
器用に袋を破いて取り出したものを、亀頭にポンとのせられる。
「ここで注意しないといけないのが、この精子溜まりに空気が入らないように潰すこと」
「………」
なんだか……実験めいてきたな……。
「毛を挟みこまないように避けてから、下までおろす」
「………」
するするとあっという間に透明な膜に覆われたおれのもの……。
はい。できあがり、といって慶が肯いた。
「で、お前は大丈夫だけど、包茎の奴は一回上に戻してからもう一度下に下げた方がいいらしいぞ」
「…………うーん」
思わずうなってしまうと、慶が眉間にシワを寄せた。
「何だよ?」
「………なんか違う」
「は?」
ますます眉を寄せた慶に、口をとがらせてみせる。
「なんか……事務的すぎ。色気がない。ムードがない」
「…………なんだそりゃ」
あ、今、鼻で笑った。鼻で笑ったなー!
「だって大切なことだよ!」
「うるせえなあ」
またまた呆れたように慶が言う。
「そんなのやることやるときゃ関係ねえだろ」
「関係あるよ! ほら、せっかくゴムつけてくれたのに、萎えてきちゃったじゃん!」
「ああ?」
慶がジッと見てくる。
すると、むくむくと復活してきてしまった……。正直すぎるおれの息子……。
「萎えてねえじゃん」
「そーれーはー慶が……んんんっ」
いきなり唇を重ねられ、文句の続きは言えなかった。
舌が乱暴に押し入ってくる。口内をかき回され、唇を吸われ、思わず声が出てしまう。
「慶……っ、あ……っ」
慶の腰がおりてくる。おれのものの上に確実に。ゆっくりとからめ取られる。そしておれたちは一つになる……。いつもながら、すぐに快楽の頂点に連れていってくれそうな締め付け。苦しいほどだ。快楽と苦痛は似ている。
慶の手がおれの手を強く握ってくれる。
「ゴチャゴチャうるせーんだよ。お前は」
「だって………っ」
言葉とは裏腹に、おれを見下ろす慶の瞳に、愛おしさの光が灯っている。瞳が「好きだよ」と言ってくれている。
「浩介」
「………っ」
ぎゅっと心臓が握られたようになる。おれの名前を呼んでくれるその声に愛があふれている。愛しすぎて体が破れそうだ。
細かく腰を揺り動かしはじめながら、慶がボソッと言う。
「やっぱ、生でやりてえなあ」
「……だめだよ」
誘惑にかられそうになるのを押しとどめる。
「慶、あとで、大変、に……」
「わかってるけど……」
動きをとめた慶。切なげに瞳が揺れている。
「もっと近くでお前を感じたい」
「慶……」
ああ……おれはなんて幸せなんだろう。
ゆっくりと体を起こす。繋がったまま、その美しい額に口づける。
「近くに、いるよ?」
「たりない」
せがむように、慶の唇が求めてくる。
「全然、たりない」
「ん……」
そして……唾液が滴り落ちるほど激しく、舌を絡め、吸い尽くす。苦しいほどに。まるで唇が快楽の頂点に向かわせてくれるかのように、重ね合い、求め合う。自然と腰も動いてくる。
求められる充実感に頭が破裂しそうになったところで、
「あ……っ」
緩やかに頂点に達してしまった。慶の中にドクンドクンと放出されていく。
「浩介……っ」
同時にぎゅうっと背中にしがみつかれた。腹に生温かいものが伝ってくる。
「あ……いっちゃった」
「慶……」
いっちゃった、って! 普段は言わない可愛い言い方に、きゅんとなる。慶、キスと後ろの刺激だけでいけたんだ。嬉しい。
「慶、大好き」
「ん」
かわいい慶の頬にキスをしてから、ゆっくりと引き抜く。
コンドーム、無事に役割を果たしてくれたようだ。
「漏れてない。慶先生、完璧です」
「だろ」
慶が柔らかく笑う。
「これが正しいコンドームのつけ方だ。覚えとけ」
「それは……キス付きってこと?」
「そういうこと」
軽く頬にキスされる。幸せすぎる。
「もう一回やろーぜー」
「だから慶、その誘い方どうなの……。ムードってものが………」
「分かった分かった。今度は生でな。外出しすればいいだろ」
「本当は外出しも危険なんだよ。先走りとか出ちゃってるし、それに……」
「分かった分かった」
「んんん」
再び唇を重ねられ、流される。
ゴム一枚挟んでいてもいなくても何も変わらない。慶の一番近くにはおれがいる。
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以上でやめときます^_^;こいつらキリがない^_^;
前回暗かったので、明るい話をと思ったら、なんだかアホらしいお話しになってしまいました。
お読みくださりありがとうございました!
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嬉しすぎて天にも昇る気分とはこのことだな~と。本当に感謝してもしきれません。
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