読書日和

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「図書館内乱」有川浩

2012-09-08 20:34:11 | 小説
今回ご紹介するのは「図書館内乱」(著:有川浩)です。

-----内容-----
図書隊の中でも最も危険な任務を負う防衛隊員として、日々訓練に励む郁(いく)は、中澤毬江という耳の不自由な女の子と出会う。
毬江は小さいころから面倒を見てもらっていた図書隊の教官・小牧に、密かな想いを寄せていた。
そんな時、検閲機関である良化隊が、郁が勤務する図書館を襲撃、いわれのない罪で小牧を連行していく―
かくして郁と図書隊の小牧奪還作戦が発動した!?
書き下ろしも収録の本と恋のエンタテインメント第2弾!


-----感想-----
※この作品は前作「図書館戦争」の続編となります。

「あの子が自由に本を楽しむために」

今作「図書館内乱」の冒頭のページに書かれていた言葉です。
そう、この作品では世の中から「表現の自由」が失われ、図書などの出版物は検閲を通過したものしか流通せず、もはや自分の読みたいものを読むことも出来ない状態なのです
ここで前作の内容欄を振り返ってみます。

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公序良俗を乱し、人権を侵害する表現を取り締まる法律「メディア良化法」が施行され、世の中からは表現の自由が失われつつあった。
「メディア良化委員会」なる組織が作られ、その代執行組織となる「良化特務機関」があらゆるメディアの良化を目指し、公序良俗に反する書籍・映像作品・音楽作品などを取り締まっていた。
メディア良化委員会の検閲を通過したものしか世の中に流通させることが出来ないのである。
もはや自分の読みたい本を読むこともままならない時代、メディア良化委員会に唯一対抗出来る組織として、図書館が武装した!
検閲を退けてあらゆるメディア作品を自由に収集し、かつそれらを市民に供する権利を合わせ持つ公共図書館は、メディア良化委員会にとってほとんど唯一の警戒すべき「敵」となった。
この小説はメディア良化委員会と図書館の熾烈なバトルを描いた、壮大なエンターテイメント作品なのである。

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というわけで、「メディア良化委員会」対「図書館」の「表現の自由」をかけた対決の第二弾!
だいたい『公序良俗を乱し、人権を侵害する表現を取り締まる法律「メディア良化法」』って、何だその悪法はと思います
まるで現実世界でいう「人権侵害救済法案」のような法律です。
たぶん作者の有川浩さんはこの法案を意識しているのではないかと思います。

今作の「図書館内乱」では、中澤毬江という耳の不自由な女の子に対するある本を巡る「人権侵害」が焦点になっています。
その本は「レインツリーの国」という作品で、難聴の女の子がヒロインの本です。
※「レインツリーの国」のレビューをご覧になる方はこちらをどうぞ。
その本を毬江と仲良しの図書隊の小牧という人が毬江に勧めたのですが、その行為が「未成年身体障害者への人権侵害行為」とされてしまったのです。
「毬江は耳が悪いのに、難聴のヒロインの本を勧めるなんて無神経だ。人権侵害である」という感じで。
そして検閲機関である良化隊が、郁が勤務する図書館を襲撃して小牧を人権侵害の罪で連行していってしまいます。
そこから図書隊の小牧奪還作戦が発動し、物語が動いていくことになります。

今作も文章は砕けた感じで、若者言葉をたくさん使っていました。
そして郁は相変わらず感情で突っ走り、堂上教官とたびたび口論になっていました(笑)
また今作でも随所に恋愛話やギャグ的な話が出てきて、この辺りは有川さんらしい作品世界が展開されていましたね
真面目な話からいきなりギャグ的な話になったり、そこに恋愛が絡んできたりするので読んでいてなかなか面白いです^^
文章の流れもスピーディーなのでポンポンとテンポ良く読んでいけます。
まあ若者言葉を多用しているので若い人はノリノリで読め、年配の人にはちょっと読みづらいというのはあるかも知れません。

あと今作で痛快だったのが、毬江の「メディア良化委員会」に対する猛反論。
P141にその場面が出てくるのですが、以下に一部引用します。

「私がこの本を楽しんだことを何で差別だなんて言われなきゃいけないんですか?せっかくの楽しかった気持ちが台無し。私にはあなたたちが一番私の耳のことを差別したがっているとしか思えません。だって私はこの物語の主人公にすごく思い入れして読んでたのに」

「私に難聴者が出てくる本を勧めるのが酷いなんて、すごい難癖。差別をわざわざ探してるみたい。そんなに差別が好きなの?」


そうだそうだ、もっと言ってやれ!と思いましたね(笑)
別に毬江自身は小牧が毬江に「レインツリーの国」という本を勧めたことを差別だなんて思っていないのに、メディア良化委員会が勝手に差別と決め付けて騒いでいるだけなのです。
本人が楽しく本を読んでいるのに回りが勝手に差別と決め付けるのはおかしな話というもの。
この毬江対メディア良化委員会の場面はとても印象に残りました。

「あの子が自由に本を楽しむために」
冒頭のこの言葉が思い出されます。
メディア良化委員会の横暴を食い止めるため、図書隊の戦いは続きます。
次は第三巻「図書館危機」へと続くので、そちらもぜひ読んでみたいと思います


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