ライオンの詩 ~sing's word & diary 2

~永遠に生きるつもりで僕は生きる~by sing 1.26.2012

大鷲とオジロワシ。本物とニセモノ。

2012-02-22 23:19:47 | Weblog
evergreenのネイチャークルーズ。それは、野生動物に会いに行こうツアーだ。
季節毎に内容が変わる。クジラだったりシャチだったり、アザラシだったりミズナギドリだったり。

今は冬、冬は・・・鷲。大鷲とオジロワシに会いに行こうツアーだ。

鷲は流氷に乗って狩りをする。ツアーでは、流氷の上に魚を投げる。それをカモメが食べに来る。それを奪いに鷲が舞い降りる。そんなものを乗客に見せる。仕組みはそんな感じ。

ところが、昨日の強風で流氷は海の向こうへ消えてしまった。どうするのかとおもっていたら、こんな日は港の中に残っている氷を使ってウォッチングを開催するらしい。
流氷がある外洋まで、お船で出るのかと想っていたから、少し拍子抜け。

evergreenは会社名。この会社以外にも三社ほど、こんなツアーをやっているところがある。港の中に船が四隻。
四隻の船が餌を撒く。瞬く間にカモメが集まって来る。カモメの大渋滞である。カモメの同志が、鳴き声をあげながら撒かれた餌を奪い合う。そうこうしていると・・・上空から真打ちの登場である。
尾だけが白いオジロワシ。オジロワシより一回り大きく、翼と尾が白い大鷲。上空から一気に舞い下りてカモメの餌を奪い取る。そして氷の上に自分のテリトリーを作り上げる。
その鳥たちの数か半端じゃない。鷲だけでも100羽近くいる。カモメはもっと。そこにカラスも加わる。港の中は鳥と氷と鳥の影でいっぱいだ。

基本的にはこんな感じ。港の外にでも出られていたら、違ったのかもしれないが、生憎今日は港の内側。残念ながら、30分くらいで飽きちゃった。

おじさん二号は、二時間で、2800枚もの写真を撮ったらしい。すごい数だ。

大鷲とオジロワシを間近で観られたのは嬉しかった。が、が、が、なのであるよ。
これは餌付けだ。餌付けの風景だ。いい写真を撮るための、作られた状況だ。悪く言えば・・・演出であり、ニセモノでしょ?

まぁ、いいのだよ。鷲の狩りのシーンなど、なかなか見られるものじゃない。せっかく知床に来たのだから、高いお金を払ってでも見るべきなのかもしれない。
でも、なんか違うんだよなぁ。。。
こんなの、時間の無い都会人のための遊びみたいなものだ。確実に鷲に会えます・・・なのだからね。

ガイドさんが言っていた。ホェールウォッチングは、クジラに会える確率は、五分五分です。おそらく、それは、確率50パーセント以外だということだろう。それは、なんか、本物な感じがする。

僕はそういうものの方が好きだ。基本的に、そういうものの方が好きだ。
乗客のほとんどがアマチュアカメラマンだったようで、すこいカメラにすごいレンズ。

・・・知床羅臼。そこまで本気で挑むなら、本物を求めればいいのになぁ・・・

などと、飽きちゃった後の一時間半、ずっと考えていたのであった。

僕には、知床岬に向かう道で見た、遥か上空を舞う大鷲の群れの方が心に深く焼き付いているよ。

うん、今日はそんなお話。

坂の上オバケ会館

2012-02-22 18:29:04 | Weblog
羅臼から釧路まで移動。移動ばかりで・・・正直退屈だ。移動の途中に、素晴らしきものは多々あるが、多々ありすぎるが、おじさまたちは止まらない。止まるわけがない。興味も価値観も違うのだから仕方がない。そう割り切ってはいるものの、窓越しに見える景色に心動かされる度に、少し悲しい気持ちになる。

太陽の光が反射した、何もない雪原の輝き・・・。僕が何よりも好きなのは、そんな普通の風景なんだ。

話は変わって。
釧路まで10キロほどの場所、おじさんは車を止めた。
「で、どうする?今夜の宿は?またどこかに泊まるかい?」
僕は知っている。泊まらないという選択肢はないということを。
おそらく、おじさんなりに、僕に気を遣ってくれているような気もする。
もう、泊まらせられる率100パーセントなのだから、僕はこう答える。
「いいっすよ」。

おじさんは、宿のプリントをパラパラと見る。
「これはどうだい?2500円のペンションってのがあるぞ?」
おじさん二号は反対する。
僕はこういう。
「そこにしましょう。そこに決定。2500円のペンションに決定。だって、絶対にオバケが出そうだもん。決定。電話して!そこに電話して。」

おじさんがペンションに電話をかけると、一般人の家にかかった。

結局、次の候補の、旅館坂の上会館に予約を取った。
オバケペンションがダメだった時点で、テンション下がるわぁ状態になっていたのだが、まだ望みは捨ててはいない。

坂の上にある、オバケが出そうな旅館だったらいいのに・・・怖い怖い。

一泊2600円の旅館。一体どんな旅館なんだろう?・・・三人の不安を乗せて、車は釧路へと向かうのであった。

ひとりぼっち

2012-02-22 15:16:42 | Weblog
羅臼、現在気温マイナス五度。
ヒートテックと薄手のセーター一枚で過ごせてしまうのは、普段寒い場所で仕事をしている成果なのでしょうか?

さっき、知床岬へ向かって、足跡一つない雪の中を一人で歩いた。ところどころ、膝近くまで雪に埋れながら、ただなんとなく先へ先へと。
大鷲が上空を旋回している。雄大な知床の自然の中に独りぼっち。
僕は、真っ白な雪の上に寝転がる。ただ真っ白な雪の上に寝転がって煙草を一本。・・・まるで、人生みたいだ。

ふと顔を横に向けると、僕が歩いて来た足跡だけが、一本の線になって雪の上に残っている。誰かが残した足跡と同じように、また雪が降ればすぐに消えてしまうのだろう。・・・まるで、人生のようだ。

煙草を吸い終えた僕は、再び歩き始める。
後戻りなど出来ないと分かっているのだから、先へ先へと進むしかない・・・

人生の摂理を心の深層に刻みながら、自分の足跡を辿りながら来た道を戻る、僕なのであった。

遥か頭上を、大鷲の群れが旋回している。
さよなら野生の大鷲。いつかまた、巡り逢おう。

グッドモーニングネイチャークルーズ

2012-02-22 11:59:01 | Weblog
午前7時前。
おじさんの話し声で目が覚めた。おじさんの声で目が覚めた。オジサンノコエデ・・・ブルーだ。

おじさんはどこかに電話をしているようだ。大きな声だから、耳を澄まさなくても聞こえる。

「ネイチャークルーズ、三名予約、お願いします」

あぁぁ、おれはお船に乗せられちゃうんだ。相談も無しに、お船に乗せられちゃうんだ。オフネニノセラレチャウ・・・ブルーだ。

オバケデルデルホテルを8時に出発。8時半には、もう海の上。寒風吹き荒ぶ海の上。

グッドモーニング羅臼。

予定外も予想外も、恐れることはないさ。財布の中身が空っぽになったって、気にすることはないさ。
今日も素敵があふれた一日に、なりますように。

流氷一期一会

2012-02-22 01:40:35 | Weblog
昨日、海の全てを埋め尽くすほど見えた流氷が、今日は何処にも見当たらなかった。一夜にして何処かへ消えてしまった。折からの強風で、北の海へ流されたのだそうだ。

消えてしまって想うことは・・・昨日観れて良かったなぁ。昨日乗っておいて良かったなぁ。ということである。

人に対しても、物事に対しても、事象に対しても・・・当たり前にあるものを当たり前だと想ってしまうのは、とても悲しいことだ。失ってしまって、無くなってしまって、そうなってから当たり前にあったものを、当たり前では無かったと気づくのは、とても寂しいことだ。

オホーツクに流氷が来たというニュースを聞いてから北海道に来た。
オホーツクに来てみたら、そこには流氷が軽やかに横たわっていた。
僕は、この風景を当たり前のものだと思い込んでしまった。
そして僕は、それが当たり前のものでは無かったと知ってしまった。

当たり前だと想うものを探していこうと想う。
そして、それが決して当たり前のものではないと気づきながら生きていこうと想う。

そうすれば僕は、今よりも少しだけ幸せになれるような・・・そんな気がする。

ギャンブリングツアーコンダクター

2012-02-22 00:30:57 | Weblog
お化け屋敷の確保もしたことだし、あっ違った、宿の確保もしたことだし、ご飯を食べに行くことにした。
おじさまたちはお化け屋敷に併設された、あっ、宿に併設されたオバケ出る出るレストランに行こうとしていたのだが、それは全力で阻止した。
「大丈夫です。ついてきてください。おれ、知ってますから。徒歩二分です。こっちです。ここ右です。ほら、あそこ。」

ビジネスオバケホテルに向かう時に見かけた営業しているお店。そこへ連れて行っただけなのである。どんな店かは、僕も知らない。もう、「えーい、ままよ」の精神である。

古い佇まいの、四季の味いわみ。

とりあえず、飲み物を頼んで乾杯。
おじさまが食べ物を注文し始める。すると女将さんが言う。お刺身はないの。ホッケもないの。宗八もないの。最近水揚げされてないのよね。
おじさまは聞く。じゃあ何があるの?

これはまずい状況だ。ツアーコンダクターとしては、お客様を満足させなくてはいけない。今日は何しろ食べ物にとことん縁が無い一日だ。その最後に食べたいものが何一つない店に連れてきてしまうなんて。。。こらはまずいぞ。

とりあえず、僕は羅臼名物の黒鱧の鱧丼を頼む。これは美味しいに決まってる。おじさん二号は、頼んだものがことごとく無く、まだ注文を決めかねている。

僕は言う。

考えようによってはですよ・・・この店ってすごいですよね。
だって、羅臼で水揚げされた新鮮な魚しか使わないってことじゃないですか?刺身定食に、どこで獲れたかもわからないマグロの赤身を出しちゃうような店とは違うってことですよ。
美味しくないものは出さないっていうコダワリの店ですね。
良い店に入って良かったなぁ。こんな店が見つかって、うちらラッキーですよ。

おじさんは言う。
そうだな。地場産の美味しいものしか出さないってことだもんな。つまり、今ある魚は全部美味しいってことだな。これは期待出来るな。

もう、こっちのものである。おじさんらは満面の笑みを浮かべながらビールを飲んでいる。

騙したわけではないのだよ。口車に乗せたわけではないのだよ。
僕は、あるところで常々そう感じているのだよ。

例えば、ウニの季節は夏で終わる。礼文のウニ丼屋は、ウニの季節が終わると共に、店を閉める。美味しいウニしか出さない、出すわけないという当たり前のこだわりである。
ホタテにもイクラにもホッキにも季節がある。
季節を外れたもので、お店に出るものは、全部冷凍保存されたものだ。禁漁の期間があるのだから、必然的にそうなる。
それが悪い物であるという訳では無く、それを一番美味しい物として相当な値段で出すのはいかがなものかと思うのである。

そういう観点からみると、この四季の味いわみ・・・なかなかやるなと、本気で思うのである。

さてさて、味はどうなんだ?と言う話。
鱧丼、美味しかった。おじさまたちにも分けてあげたのだけど、大絶賛だった。こんなの食べたことない!と驚いていた。
女将さんの「焦げた部分もオマケで乗せておいたわよ」の焦げた部分をおじさまたちに分けてあげたから、焦げていない部分はもっと美味しいのである。

とろろ昆布の入った味噌汁は絶品。さすがの羅臼昆布。驚きの味である。
イカの煮付けも、ドブイカのフライも、イカのお刺身も甘くて美味しかった。
おじさんはのお酒もすすむ。今夜もヘベレケになって、「昨日のなんとかキッチンも良かったけど、ここもいいなぁ」と、20回くらい言っていたよ。

そんな訳で、今夜は、ギャンブリングツアーコンダクター、大大大成功の巻なのであった。・・・あぁ、良かった。


そうそう、おじさん二号。
美味しい魚貝が食べたいと一日中ぼやいていて、頼むもの頼むものことごとく無いと言われて・・・結局・・・

「豚丼ください!!!」

えっ?豚丼?・・・すげぇ、うけた。

ビジネスホテルという名の・・・

2012-02-22 00:15:47 | Weblog
僕は宿には泊まりたくない。なぜなら、マイナス20度の中の車中泊をする気でこの地に来たからだ。なのに、おじさまたちはそれを許してはくれない。
昨日は旅館に泊まった。斜里の町外れにある温泉旅館。素泊まり3000円。なかなか素敵な旅館だった。

どうやら今日も車では寝かせてもらえないみたいだ。そんな時のために、僕は準備をして来た。これぞリスクヘッジ。安宿の値段やらなんやらの情報をプリントして来たのだ。昨日の旅館もそこから探し出した。貧乏人の知恵である。たとえば、羅臼だけでも、40軒ほどの宿情報を網羅している。
今日はそのプリントをおしさん一号に渡した。おじさんはそのプリントをパラパラと見て、すかさず予約の電話をかける。三人でお願いします。・・・今日も車中泊を出来ない事、その時点で決定。
おじさんが選んだのは、ビジネスホテルという名の・・・お化け屋敷。うけた。嘘だろ?と言いたくなった。こんなに載ってるのに、ここ?

緑色の廊下。ビジネスホテルなのに畳の部屋。洗面所の蛍光灯はパチパチと切れかかっている。うん、ここ、お化け、出るね。オバケ、出ちゃうね。ほぼ、出ちゃうね。怖いね。オバケ怖いね。面白いからいいんだけどね。

一泊4000円は高いか安いか・・・それはオバケ次第だね。
オバケが出たら安い。オバケが出なかったら高い。・・・だね。

再び吹雪、視界ゼロ

2012-02-22 00:03:37 | Weblog
ご飯屋さんを探しながら、羅臼へ向かう事になった。斜里までは来た道を戻る。
初めは、あれ食べたいこれ食べたいと言っていたおじさまたちも、次第になんでも良くなって来る。それも無理は無い。お魚市場での網焼きを逃してから四時間が過ぎている。斜里を過ぎる頃には、もうコンビニでもいいなどと言い出した。それも無理は無い。だって、蕎麦屋もラーメン屋もまったくと言っていいほど営業していないのだから。
斜里を過ぎた頃にコンビニでもいいと言い出したおじさまたちに、僕は言う。
「もう斜里を過ぎちゃったから、もうコンビニさえも無いですけどね」。

僕の予言通り、それから羅臼まで二時間、コンビニ一つ無い道が続いたという訳。

羅臼に入る頃には猛吹雪。一寸先は闇ならぬ、一寸先は雪と闇。空から吹き付ける雪と、強風が巻き上げる地面からの雪が回転して打ち付ける。

とりあえず僕らは、今夜の宿を確保する事にした。