僕はいつだって途方に暮れている・・・そんな気がする。
日本中の至る所で・・・世界中の至る所で。途方に暮れている自分を思い出そうとすれば、いくらだって思い出せる。とにかく、何処でだって途方に暮れているのだから。
今日の僕は、住まいから徒歩で40分の距離にある大型スーパーの軒先で、煙草を吸いながら途方に暮れていた。
今日は朝から雨のため仕事は休み。畳の上に寝転がって、ずっと本を読んで過ごした。昼寝もした。また本を読んだ。
辺りが薄暗くなって来て、ふいに思った。・・・退屈だな。退屈だな、どこかへ出かけたいな。
僕は秘密兵器の三段折畳傘を持って出かけることにした。近所のスーパーへ。徒歩で40分のスーパーへ徒歩で。
出かけてから5分で後悔の念がよぎる。外はまさに暴風雨だ。僕は・・・大雨、洪水、波浪、雷、強風、高潮、濃霧警報がこの地域に出されているなんて、ちっとも知らなかったんだから。
この地域は、震災で地盤が1メートル近く下がってしまった浸水区域だ。至る所に巨大な水溜りが出来ている。暴風に向かって傘を突き出して歩いているので、前が見えない。少しも見えない。だから水溜りがあっても、その中をじゃぶじゃぶと進むしかない。
陸地に溜まった水を、排水ポンプが海へ吐き出す音に驚きながら歩く。頭上を行く雨と風の轟音に慄きながら歩く。ひっくり返りそうになる秘密兵器の傘を頭と体で支えながら歩く。徒歩で40分。
こういう時、僕はいつもこんな言葉を思い出している。
「どんなに大変でもね、ちょっとずつ進んでいれば、いつのまにか辿り着いちゃうんだよ」
ある冒険家の言葉だ。ちっちゃな冒険家は進む。徒歩で40分。
スーパーに何をしに行ったか・・・別に何もしにいってない。ただ・・・退屈だったから。
せっかくのお休みに「退屈」はダメだよね。
そして僕は、スーパーにたどり着く。暴風雨のせいか、人影は疎ら。目的が無いのだから、する事もない。30分ほどウロウロして濡れた服を乾かす。
カンパーニュを一個とハムを買った。晩御飯にしよう。
なんとなく、こんな風に想っていたんだ。
・・・帰る頃には雨は止む・・・。
スーパーを出て目に入ったのは・・・先ほどより数倍強力になった暴風雨の姿。大きな駐車場の地面を雨が暴れながら走り抜けて行く姿が見える。
そんなわけで、僕は途方に暮れてしまうのである。
帰り道、暴風と闘いながら僕は想う。色々な事を思い出しながら僕は想う。
「もう絶対こんなことはしない・・・退屈でも部屋でジッとしているんだ」
傘を握る手に力を込めながら、想う。誓う。誓う。
そしてこう想う。
「なんでいつも忘れちゃうんだろ?」
もう千回くらい、そう想っているのにな。
日本中の至る所で・・・世界中の至る所で。途方に暮れている自分を思い出そうとすれば、いくらだって思い出せる。とにかく、何処でだって途方に暮れているのだから。
今日の僕は、住まいから徒歩で40分の距離にある大型スーパーの軒先で、煙草を吸いながら途方に暮れていた。
今日は朝から雨のため仕事は休み。畳の上に寝転がって、ずっと本を読んで過ごした。昼寝もした。また本を読んだ。
辺りが薄暗くなって来て、ふいに思った。・・・退屈だな。退屈だな、どこかへ出かけたいな。
僕は秘密兵器の三段折畳傘を持って出かけることにした。近所のスーパーへ。徒歩で40分のスーパーへ徒歩で。
出かけてから5分で後悔の念がよぎる。外はまさに暴風雨だ。僕は・・・大雨、洪水、波浪、雷、強風、高潮、濃霧警報がこの地域に出されているなんて、ちっとも知らなかったんだから。
この地域は、震災で地盤が1メートル近く下がってしまった浸水区域だ。至る所に巨大な水溜りが出来ている。暴風に向かって傘を突き出して歩いているので、前が見えない。少しも見えない。だから水溜りがあっても、その中をじゃぶじゃぶと進むしかない。
陸地に溜まった水を、排水ポンプが海へ吐き出す音に驚きながら歩く。頭上を行く雨と風の轟音に慄きながら歩く。ひっくり返りそうになる秘密兵器の傘を頭と体で支えながら歩く。徒歩で40分。
こういう時、僕はいつもこんな言葉を思い出している。
「どんなに大変でもね、ちょっとずつ進んでいれば、いつのまにか辿り着いちゃうんだよ」
ある冒険家の言葉だ。ちっちゃな冒険家は進む。徒歩で40分。
スーパーに何をしに行ったか・・・別に何もしにいってない。ただ・・・退屈だったから。
せっかくのお休みに「退屈」はダメだよね。
そして僕は、スーパーにたどり着く。暴風雨のせいか、人影は疎ら。目的が無いのだから、する事もない。30分ほどウロウロして濡れた服を乾かす。
カンパーニュを一個とハムを買った。晩御飯にしよう。
なんとなく、こんな風に想っていたんだ。
・・・帰る頃には雨は止む・・・。
スーパーを出て目に入ったのは・・・先ほどより数倍強力になった暴風雨の姿。大きな駐車場の地面を雨が暴れながら走り抜けて行く姿が見える。
そんなわけで、僕は途方に暮れてしまうのである。
帰り道、暴風と闘いながら僕は想う。色々な事を思い出しながら僕は想う。
「もう絶対こんなことはしない・・・退屈でも部屋でジッとしているんだ」
傘を握る手に力を込めながら、想う。誓う。誓う。
そしてこう想う。
「なんでいつも忘れちゃうんだろ?」
もう千回くらい、そう想っているのにな。